なるほど、そうだったのか
ベッドへの魔力の供給。いや、魔法というべきなのだろうかどうかわからないが、とにかくベッドが使用できるようになったのはスカラさんが俺達の元を去ってから1時間後だった。
1時間………それほどの時間をスカラさんは考えに費やしたのだろうか。もしかしたら何も考えちゃいなかったのかもしれない。カフェラテみたいなものを飲んで一息ついていただけかもしれない。お気に入りのテレビ番組の放送時間だったからそれを見ていたのかしもれない。もしかしたら両方かもしれない。そんなの俺にはわからない。俺がわかるのはただの1つだけである。
「ぎゃァァアアア!!!イッッッッテェ!!なんっ、これっ、腕がァァアアア!!!」
意識を戻してから30分間ほど、俺は痛みでのたうちまわっていた。スカラさんが最後に放った魔族にしか効かないという光の魔法、あれが今になって全貌を明らかにしてきたのだ。
残った右腕部分に刻印みたいなよく分からない模様が浮かび上がっている。それが俺の体を内側から燃やし尽くすように痛めつける。この感じ、俺の魔族側の魔力に反応してそれを燃やし尽くしているかのようだ。体が見えない炎で覆い尽くされているんじゃないのか?それに痛みはだんだんと身体中に広がっていってる。俺の魔力を探し回っているのだろう。
この光魔法、最初は魔族の体を粉々に吹き飛ばし、生きていたら魔力を燃やして苦しめるっていうクソ恐ろしい代物だ。
「む、む、無茶するからだよ!どうすんの!?私は手当のしようがないよ!?」
んで、それを見てイリナが狼狽える。
まぁ、そりゃそうだろう。気絶して起きた瞬間、大声で喚き散らしてるんだもんな。側から見たらビックリしてしまうだろう。
薬草を食っても痛みは全然癒えない。痛みが緩和しないのだ。こいつは困った。俺じゃ対処のしようがないのだ。ただ耐えるしかない。
「………………くれ」「はい?」
俺の声が聞こえなかったのだろう。イリナが俺の口付近に耳を近づける。
「なんか面白いこと言ってくれ!!!」
「………はぁ?」
「面白いことだよ面白いこと!!なんかさ、笑ったら痛みが幾分か和らぐと思うんだよ!!!」
ドッタンバッタンと地面を転がり回る俺
力がとうとう胸にまで来てしまった。やばい、そこには俺の魔力が機械によって溜め込まれているのだ。大量の燃料が溜め込まれているようなものだ。そこに火がつけば、どれだけ燃え上がるかなんて火を見るよりも明らかだ。いや、あれだ、ここでいう時の火を見るっていうのは俺の体の魔力に火がついて燃えてるのを見るってことじゃないんだ。例だ。例なんだよ。………面倒くさい言葉を使っちまったなーー。
「え、え、えぇぇ……………」
困り果てた後、イリナはよく分からないポーズをした。
右手で電気コードを掴み、左手をそっと床につけた。右手と左手は交差されていて、右腹横筋と腹斜筋が伸びきっている。まるでヨガのポーズだ
「私今、アースと一体化してる…………」
「…………………」
アースってのはきっと電気製品とか電柱につけられている電気を逃すアースと、地球のアースがかけられているのかな?魔力が電撃のイリナだから出来るギャグか…………
「…………ぐあぁぁああああ!!!痛い!!痛すぎる!!痛すぎて目を開けてらんねぇぇえええ!!!なんて痛みだ!!!」
ゴッタンバッタンと地面を転がり続ける俺。
だが、のたうちまわり方がさっきの比ではない。バッタンバッタンと。ドッタンバッタンと。ダンダカダンダンダンと、まるで打ち上げられた海洋生物みたくピチピチと、それでいて瀕死の巨大爬虫類みたいに荒々しくのたうち回った。
「イリナさんのネタを初めて見たっすけどこいつは酷いっすね。人を笑わせようという意思が何1つとして感じられなかったっすよ」
焼き鳥を頬張りながら、黒垓君がそんなことを言った。
「本当だな。今のなんて酒のつまみにすらなりえないな。いって豚の資料のトウキビの一粒って言ったところか?こいつはセンスがなくていけねぇ」
そして、なんだかんだで起きているグレンも続けて言葉を漏らした。
「まぁまぁ皆さん。いくら面白くないとは言え、今のはイリナさんが飯田君を思って精一杯考えた渾身のネタなんですよ?それを馬鹿にするのは思いやりのない行動だと私は思いますね。だから私達は面白くなくても[面白いよ]って笑顔で言わなきゃいけないんですよ」
そして、グレンと楽しく会話していた染島さんが追い打ちをかける。
…………まったく、その通りだな。
「だぁああああ!!!面白い!!すっごく面白いぞイリナぁぁあああ!!!痛みがひいていってるぞまじで!!!」「やーーー流石はイリナさんっすね。雷だけじゃなくて氷も使えるなんて恐れ入ったっすよ。いつの間に魔法を習得したんすか?勤勉なんすねぇ。」「まっ、そうだな。愛情を感じる素晴らしいネタだったんじゃないか?凄クオモシロカッタナー」「初恋の感覚もこんな感覚に似ていたんでしょうか。胸がキュンキュンしちゃって大変ですよ。貴方達の仲睦まじい関係を私は直視できそうにありません。羨ましいものですね」
「よし、君達。惨殺と半殺しとどっちがいい?え?惨殺?仕方がない、惨殺にしてあげよう」
イリナの顔は真っ赤になっていた。そして、その状態のままイリナは背中の剣を引き抜いた
「生きて帰れると思うなよ君達」
とまぁね、こんな感じでみんなで30分間ほど騒いでいたんですよ。
んでベッドが復旧して今に至ると
「ベッドベッドベッドベッドベッドベッドぉぉおおお!!!待ってた!!俺この時を待ってたんだよ!!!」
俺はベッドに滑り込み、毛布を被る
シュゥゥウと音を立てながら傷が回復していく。スカラさんによって消された右手も回復して生えてくる。イリナによって生み出された傷もどんどん回復していく。さすがはベッドである。
「しっかし、こいつが暴れたらここまで被害が出るのか…………今後はもう少し考えてからこいつをからかわねえとな」
グレンの家の中はイリナの破壊行動のお陰でメチャクチャになっていた。家具という家具が全て粉々で壁なんて殆どに穴が空いている。グレンと黒垓君は何回か雷が直撃したのだろう。服が黒焦げだ。
「ふん………私をコケにすることは万死に値するからね。部屋をメチャクチャにされる程度で済んで良かったじゃん」
「とか言ってますけど、内心では[ちょっとやりすぎちゃったかなー]って考えちゃうような優しい子だったりして………」
「胸美………あんた!」
イリナが染島さんに飛びかかろうとするが、染島さんはその行動を先読みし、すぐに黒垓君の後ろに隠れる。
「…………チッ、今回は見逃してやる」
「…………痛みがひかない」
俺はベッドから起き上がった。
「痛みがひかないってどういうこと?」
俺の言葉を心配してか、イリナが声をかける
「まんまの意味だ。確かに腕とかは治ったけれど、なんか燃えるような痛みは残ったままなんだ…………」
身体中の外傷による痛みは消えた。けれど、この、体を焼き尽くすような痛みだけは顕在している。腕の付け根部分にはいまだになんかよくわからない印が残っている。
「ベッドで治らない傷………そう言えばスカラさんは解呪の魔法は使えないって言ってたよな。ってことはつまりこれは………っ」
イッッッテェェエエエエ!!
俺は胸に手を当て、毛布を思いっきり握りしめた。とうとう胸にまで魔法が回ったみたいだ。痛みが酷い。痛みだけで吐き出してしまいそうだ。胸がキリキリギリギリと悲鳴をあげる。心臓を握りつぶされているかのようだ!
ふっふっ………!
俺はとにかく大きく息を吐き出し続けた。本当は叫びたかったのだが、今ここで叫んだらこの痛みを我慢できないような気がしたからだ。さっきまでのは叫べばある程度はマシになった。でも、今回のこの痛みは………
「ふふふ………辛いでしょう?」
聞きなれた声が後ろでした。
俺はすかさず後ろを振り向いた。その時少し、胸が苦しくなって吐きそうになったけれど、我慢だ。今ここで吐くなんてみっともないマネは出来ない。
そこにはスカラさんが立っていた。いつの間に来てたんだ…………
「そろそろ私の魔法が貴方の胸付近に到達する頃だと思って来てみれば………案の定ね。凄く辛そうだわ。」
「あんたねぇ………今のこの状況でノコノコとよく来れたわね。今の私ならあんたをなんのためらいもなく殺せるんだけど」
「あら、そう。別にいいわよ?私は彼の苦しみを解放するための方法を教えに来たの。知りたくなかったら幾らでも殺せばいいわ」
「………それは、俺を肯定的に受け取ってくれたとみてもいいんですかね?」
俺は胸を掴みながら、思いっきり体を丸めた。こうすると痛みがマシになるのだ。まぁ、マシ程度だが。
「さぁ、どうかしら?私が貴方を認めていたら、こうも勿体ぶって話すと思う?」
「まぁ、ないでしょうね。味方だと言うのなら助かる方法をさっさと教えてくれますもんね。どうせあれでしょう?解呪の時でだって俺を試すんでしょう?」
俺はこんな痛みの中でも最大限頭を回す。スカラさんは頭がいい。俺なんかよりもずっとずっとずっとだ。それでいて狡猾だ。下手な隙は見せられない。
ドバドバと流れ出る汗を俺はひたすらぬぐい、スカラさんの方をしっかりと見据える。
「そう、その通りよ。私はさっき貴方達に言ったわよね?私は解呪の魔法が使えないって。だからね、私が教えるその呪いを解く方法は、私じゃなくて貴方が何をするかの説明なのよ」
スカラさんは魔法で壊れたソファを直すとそこに腰かけた。
「…………なるほど、それじゃあ教えてくれませんか?俺は一体何をすればいいんですか?」
「私を殺せばいいのよ」
…………なるほど、そう来たか。
「スカラさん………そんなことするわけないじゃないですか。これは俺を試しているんですよね?なのにスカラさんを殺すなんてそんな………ぐッッあああああ!!」
痛みが増して来た!これは、本当に、なんとかして早急に治さないと!!
「ちなみに言っとくけど、呪いを解く方法はそれしかないわ。今はどの街の解呪の専門家も寝ているわね。それに、もしやっていたとしても間に合わないわ。私はその魔法でいろんな魔族を殺して来たけれど、もって1時間30分間といったところだったわ。貴方は規格外だから2時間ぐらいはもちそうだけれどね」
2時間………俺がこの魔法を食らったのが1時間半前だから、あったとして30分といったところか……………
「よし、こいつを殺そう!」
とまぁ、予想した通りイリナが剣を引き抜きながら言う。
「あのなぁイリナ………そんなこと、していいわけが、な、いだろう」
スカラさんは俺に魔法を教えてくれる大切な人だ。俺が生きるために殺すなんてそんなバカバカしいことが出来るわけがない。
スカラさんは俺を試している。殺すのか殺さないのか………いや、求めているのはそんなことじゃないのかもしれない。だって俺に[試している]と、ハッキリと言ってはいないが行動で示しているのだから。スカラさんは俺の何かを見ようとしている。それによって、俺に判断を下そうとしているんだ。こう言う状態は1番素がでるからな…………
「もう一度言うわよ。タイムリミットは30分間。呪いを解く方法は私を殺す以外には存在しない。さて、貴方は一体どうするのかしらね?」
スカラさんから与えられた条件が、俺の胸で発生している巨大な火を鎮めてくれる。
今こんなところでのたうち回っている時間がない。とにかく頭を働かせて、自分がとるべき最善の方法を導き出さなくては!!
まずタイムリミットだ。これは正直考えてもどうしようもない。俺はこの世界で出来ることをほとんど知らない。何分で何が出来るのかがさっぱりと分からないのだ。だからこれは考えるに値しない。さっさとパスだ。
次に解呪の方法。これは[スカラさんを殺す]と言うものだが、こんなものは論外だ。俺達の目的はスカラさんと仲良くなって魔法を教えてもらい今週のトーナメントを有利に勝ち進めると言うものだ。それなのに自分の為にスカラさんを殺すなんてことは本末転倒も甚だしい。てか、そもそも俺に殺人なんて選択肢はない。イリナの前でそんなことできるわけがない。
「私のこの光の呪いはね、魔族の魔力を食い尽くして貴方の器、アルケーを破壊してしまうのよ。アルケーと貴方の体は2つで1つ。どちらか一方がなくなれば両方とも完全に消失するのよ。」
アルケーを食い尽くす…………くそっ、これで俺が魔法とかを使えればアルケーをいじってなんとか対応することができただろうに。今の俺じゃお手上げだ。
だぁぁああああああ!!!体が熱い!!炎じゃ全然熱く感じない俺が、こんなに焼き尽くされそうな思いをするなんて思ってもみなかった!!!
正直、スカラさんが俺の何を見定めようとしているのかが分からない。俺がスカラさんを殺すかどうかなんていう、信用の話であるのなら、事前に俺に[試している]なんて言葉は言わないはずだ。それじゃあ何も試せない。俺が潔く死を待つだけだ。でもそれじゃあ俺を試したところで俺は死ぬのだから意味がないじゃないか。なんだ?俺に何を求めているんだ?………まさかこの魔法じゃ本当は俺は死なないとかあるんじゃないのか?潔く死を待つことをスカラさんは望んでいる?
………そんな奴を本当にスカラさんは求めているのか?そんな、何も抗わずにただ死を待つぐうたらを本当に求めているというのか?
「私はね、今貴方の何をみていると思う?誠実さ?美しさ?道徳観?それとも、自分の心を殺して正義を実行しようとする偽善の心かしら?」
スカラさんの最後の言葉が、俺の心を突き動かした。
分からない、分からないことだらけだ。何を求めているのかさっぱりと分からない。
ただ、偽善の心………確かに、そうだ。自分を殺してまでやることじゃないよな。やっぱり何よりも自分が1番だ。せっかくイリナから貰ったかけがえのない命だ。今ここで無駄にするなんて馬鹿げている。つまらない倫理観なんて俺の足枷にしかならない。俺は座して死を待つような人間じゃない。何かしらして抗わないと気が済まないんだ。
俺はスカラさんをマジマジとみた。
ベッドの使用が可能になったってことはスカラさんの力が分散されているってことだ。さっきみたいに回復魔法をバンバン使用して攻撃魔法をドカドカ放つなんて攻撃はできないはず。もしかしたらテレパシーの魔法も使用していないかもしれない。………やろうと思えば出来るな。
俺は腰の剣に手をかけ………
「ミフィー君!やるなら私も手助けするよ!」
………なかった。
そうだった。俺の目の前にはイリナがいるんだった。だめだ、イリナにこれ以上殺人なんて重たいことはさせらんない。そんなことさせたらイリナの経歴に傷が付く。俺なんかのためにあいつに傷を作っちゃいけない。それに、スカラさんなんて言ってしまえばこの世界で超ビッグな人間だ。勇者の世界に最も貢献している人間と言ってもいい。教育に携わり孤児を救っている。そんな人間を殺したら、事情を知らない人間がイリナをどれだけ非難するか分からない。それにもし俺の身分がバレてしまったらイリナに対するバッシングが加熱する。[魔族のそれも魔王なんて人間を助けるために、四賢者であり第一類勇者でありこの世界で1番の教育者を殺した]。これは、あまりにも酷すぎる。
…………それはダメだ。やはりダメだ。絶対にダメだ。俺のことなんてどうでもいい、イリナを傷つけるなんて選択肢は俺には存在しない。
やはりスカラさんを殺すのはナンセンスだ。それによってイリナには損しか生まれない。
「…………仕方ないか」
俺は剣を引き抜いた。そして、その切っ先を自分の胸に向けた。
「自殺………またつまらないものを考えたわね。それじゃあ何も生まれないわよ?」
俺の行動を見て、鼻で笑うスカラさん。
………まったくだな、俺もそう思うよ。
「スカラさん、もう一度確認させてくれ。貴方のその呪いは俺のアレケーを食い尽くすんだよな?」
「そうよ。貴方のアレケーを食い尽くすのよ。これの対処法は貴方はもう勘付いているでしょうが、アレケーの形を変えることなの。でも残念ね、貴方はまだその手段を知らない。私は知っているのだけどね。………どうする?今から教えてくれと頼んでみる?二、三ヶ月もあれば習得できるわよ?」
……ふっ、全く…………
「やなこった」
バリン!!
剣が俺の胸の機械を貫く!!
「ちょっ、何やって…………」
ゴウ!!!
俺の周りから大量の炎が噴き出す!!いままで俺が機械を使って必死こいて封じ込んでいた炎だ。
俺はその炎が他の人に当たらないように、なんとかして真上に噴き出るようにコントロールする。
まるで炎の柱だ。グレンの家の天井を突き破って、この真っ暗な夜空を照らす。まるで昼間だ。燦々と輝く太陽のように、この真っ暗な世界に光をもたらす。
そして、それは、
ギュオォォオ!!!
という音ともに俺の体に収束していった。
「スカラさんは知らないと思うのですが、魔族には身体強化魔法があるんですよ。………ずーっとおかしいと思っていたんだ。なんで名前に魔法がつくのかなって。魔力で良いじゃないかってさ。でも違った」
ビシッ
俺の体の内部から音がした。まるで体の内部の構造が変わっているかのようだ。
「これって魔法の一環なんですよね。俺のアルケーを身体強化のアルケーに魔法で変えていたんだ。それならば身体強化魔法中に炎が使えないのも説明がつく。」
メシッビキッバキバキ!!
本当はこんなことしたくなかったんだ。俺の炎を封じ込めるのに時間がかかるからな。………今日は寝れないな。
「さて、これで………」
ばきぃぃいっっ!!!
大きな音と共に、俺の身体中を蝕んでいた痛みが消えた。
「俺の選択は、あんたは殺さない。そして俺も殺さない。俺は偽善者じゃなければ倫理観を尊重するクソつまんねぇモラリストでもない。そんなかっこいいものじゃない。俺は常に最善を求める諦めの悪いバカなんだよ」
「………なるほどねぇ、分かったわ」
ポンと俺の頭にスカラさんは手を置いた。
「気に入ったわ。」
そして、俺の頭をワシャワシャとした。
「私が見ていたのは貴方の新しい道を切り開こうとする意志よ。与えられた条件を加味し、それでいて自分の出来ることを付け加え、自分の出来る最善手を迷いなく判断できるその力強い意志。そういう人間じゃないと、グレンちゃんがいうような、この世界を根本から変えるなんてことは出来ないのよ」
スカラさんが空間を撫でると、そこから空間にヒビが入りポロポロと崩れていく。
「未来と今は常に変わり続けるわ。でもね、過去は日を追うごとに積み重ねられていくの。変わらずに、常に上へと堆積し続ける。貴方のその力強い意志を、誇りに思いなさい。それは必ず貴方の道を切り開く武器に、そして正しい道を指し示す指針になるわ。」
「力強い意志?………全く、そんなものないですよ。ただ頑固なだけです。」
「ふふっ………そうね。狩虎ちゃんが一体どんなことをなしていくのか、私は楽しみで仕方ないわ。合格よ。」
そう言うと、スカラさんはこんどこそ空間の狭間へと消えていった。
「…………ふぅ、今度こそなんとかなったな。」
俺はグレン達の方に振り返った。
「修理費1500万角を払いやがれ」「解決方法を思いついてたんなら最初っからそれをやれ」
と言うような表情をしたグレンとイリナが立っていた。
「………あのですね、2人とも。落ち着きなさい。良いですか、落ち着き………ぐっ、胸が苦しい!!なんて痛みだ!!意識が………なく、な………る……………バタリ。」
「よし、今の内に身ぐるみを剥がしてやれ。換金できそうなものは根こそぎ奪い取れよ」
「キャァァアア!!ごめんはさいごめんなさい!!追い剥ぎはやめて!!女性の前で裸になるなんて俺のプライドが許さないんだーーー!!!」
俺は身体強化魔法がかかった状態でとにかく全速力で2人から逃げた。
まぁ、当然5分もかからないで2人に捕まって丸裸にされましたよ。
まったく、秋の夜風は身にしみるぜ…………
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