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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
勇気の章
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72/364

さて、絶望ってやつを見せようか

自分の更新ペースは一定ではございません。出せる時にとことんまで出す。と言うのが私のモットーだからです。

なので今回みたく連日で出す時も今後あるかもしれません。とんだ受験生です。落ちてしまえって感じです。


「師匠大丈夫っすか?」


「痛い痛い痛い!痛いってば!なにこれ!スゲーー傷口にしみる!!


俺はスカラさんの元から逃げ出した後、俺達は学校から50キロほど離れた山奥にワープして、俺は薬草を利用して太ももにできた傷を修復していた。

本当はベッドを利用して一瞬で治したかったのだが、ベッドの全ての管理をしているのはスカラさんであるという事を聞いていたので、ベッドの使用を避けたのだ。まさか俺が使っているところをピンポイントで働きを禁止したりとか毒を流し込むとか、そんなことは出来ないだろうと思うのだけれども、万が一を考え薬草で痛みを覚えながらの治癒となった。

イリナが俺の体を押さえ、染島さんが傷口に薬草を塗り込む。黒垓君には既に入り口を作ってもらい、すぐに逃げられる環境を作っておいた。

ほとんど全ての魔法を使えると言っていたのだからきっとワープ系の魔法も使えるのだろう。


「しかしなんでスカラさんはいきなり攻撃してきたんだ?いや、そりゃまぁ俺の身分的に絶対にぶっ殺さなきゃならないってのは分かるんだが、あの人はいままで魔族は絶対にぶっ殺す。みたいな昔の黒垓君みたいな性格ではなかったはずなんだけどなぁ」


あらかた治療も終え、俺はその場に倒れる。

傷口も塞がってはいるがやはりまだ立てるような状況ではないのだ。太ももがまだ痛む。さっきまでのあの痛烈な痛みがずっと残っているのだ。ざわつくような感触。それを感じるだけで足から力が抜けて上手く立ち上がれない。だから無意識で太ももをさすってしまう


「戦争を終わらせる。とか言ってたよね………」


俺の横で空を見上げながらイリナが応えた


「…………確かに、3人いるうちの1人が死ねば勇者と魔族の均衡は崩れるよな。そうすりゃ絶対勇者の勝ちだ。」


魔族が強力な戦力の1つを失ってしまえば、勇者側の士気は上がり団結力を持ち魔族に総攻撃をかけるチャンスとなる。そうなれば魔族崩壊は時間の問題だろう。

俺がスカラさんにあっけなく殺される。それだけで勇者が勝ってしまうのだ


「それならさ、なんで慶次さんは俺を殺さなかったのかな?ぶっちゃけ、あの人なら幾らでも未来が見えるんだから、俺を殺した後の未来も見えたはずだ。そしたら、勇者が勝ってるヴィジョンも見えたはずで…………」


いまいち、勇者の上層部の考えていることがわからなかった。一枚岩ではないだろうことはなんとなく、てか予想するまでもなく分かっていた。グレンだって俺の正体がバレても受け入れてくたからな。人によって魔族の受け止め方は違うのだろう。………いや、グレンだって俺達に対して恨みを持っているはずなんだ。それなのに一体どうして……………


「ヴィジョンが見えていて、それでいてやらなかったってことはさ、ミフィー君を殺すよりも生かす方が得だって思った証拠なんじゃないの?」


俺の隣にいたイリナがまた応えた。

………さっきは本当に助けられたな。黒垓君にも…………彼らがいなかったら俺は確実に死んでいた。せっかくイリナからもらった命なのだから無駄にはしたくないのだ。


「…………私、あの時、スカラさんの心の中を覗いていたのですが…………」


すると、遠くの街並みを見ていた染島さんがポツリと漏らした


「怒り………と言うよりかは覚悟を感じました。冷静で、冷徹で…………絶対にやり切るって思いが彼女のほとんどを占めていました。まるで戦争を終わらせるのが使命であるかのような……………」


使命か…………確かにそれは俺も感じていた。あれは怒りって感じではなかった。仕事を引き受けた暗殺者のような………それが仕事だから対象を殺すような冷静さ。そして、それを絶対に完遂してやるという熱意。そして、完遂するためには人を殺すのも辞さない非情さ。それら全てが真っ黒な瞳に集約されていた。

…………でも、どうしても、スカラさんの瞳が嫌いになれなかった。目をそらすことができなかった。俺に向けられた殺意から、目をそらすことができなかったのだ。

なぜか、少し寂しそうだったから…………


「………それじゃあさ、今後はスカラさんが俺を殺そうとした動機を探ろうか。そして、それを吟味した上で今後スカラさんに接触するかどうかを測るってことでさ…………」


俺はまだ痛む太ももをさする。

染島さんの言葉を信じれば、足が完璧に治るのにあと10分ほどかかるらしい。それまでの辛抱だ。


「まだ魔法を教わろうっていうの?ミフィー君ってやっぱり変わってるよね………執念深いっていうかなんていうのか………命を狙われている人間がする行動じゃないよ」


「…………なんて言うのかな、スカラさんなら大丈夫だと思うんだよね。あの人は賢いからさ。スカラさんの事情を聞かなければなんとも言えないけれど、俺を殺しても意味がないってことを分からせられれば攻撃が止むと思うんだ。」


俺は隣で寝ている亜花君の方を見る。

…………こんな所にこの子を眠らせたくなかったな。あったかい布団で今日は眠らせたかったんだけど…………今は託児所に彼を預けておけない。スカラさんの脅威が除かれたわけじゃないから、彼を1人にすることができないのだ。


「楽天家だよね…………それで?スカラさんの事情を知るためには情報収集するってことでしょ?なんかツテがあるの?」


「ああ、グレンに聞けばいい。俺の足が治り次第あいつの元にワープしてスカラさんの情報を聞き出すんだ。」


スカラさんの話から推測するに、どうやら2人は知り合いのようだ。それならばある程度の情報も知っているはず……………


「…………大変ですね」


俺とイリナが会話をしていると、急に染島さんの神妙な声が俺たちの会話を遮った。


「すぐに逃げる準備をしましょう。亜花君を起こしてください」


染島さんは立ち上がり、見張りをしていた黒垓君の元へと向かう。どうやらこっちに呼び戻しているようだ。


「あの、どうしたんですか染島さん。いきなり慌てて逃げるだなんて…………スカラさんの意志でも感じ取ったんですか?」


俺は亜花君を起こしながら染島さんに尋ねる


「いいえ、彼女は常に私のテレパシーをジャミングしています。きっと妨害する魔法でも使っているのでしょう」


「だったらいきなりなんで逃げようだなんて………」


「23の地区の電気の供給が突然ストップされ、この世界にあるすべてのベッドへの魔力の供給が停止しました。世界中から困惑の声が聞こえます」


事務的に流れる染島さんの声。早口で、それなのに聞き取りやすいはっきりとした声。緊張感が否応なく伝わってくる

電気の供給が止まる………ベッドの使用不能…………スカラさんの持ち場か。


嫌な汗がたらりと首筋を伝った。


「すぐにグレンさんのところに行きましょう。黒垓君、場所は記録してい……」


ズゴゴゴゴ!!!

突然地面が大きく縦揺れを起こした!


「キャッ!?」


染島さんは尻餅をつき、亜花君は地震の衝撃で目を覚ました。

凄まじい地震だ。平然と立っているイリナと黒垓君が3人に増えたように見えるほどだ。


ガバァ!!

地面から、岩で出来た巨大な腕が出現する!高さが20メートルぐらいの腕の先に、分厚い手がパーの状態でくっついている。

それは俺の方を向いた。

しなるように腕を後ろへと引き絞り、凄まじい速さで、俺へと手のひらを思いっきり叩きつけようとする!!


ビュオオ!!

巨大な手のひらが風を切る音が聞こえる!

やばいやばい!普通の状態ならまだしも、こんな足を怪我した状態でかわせるわけが………


バキィッ!!

岩で出来た腕が黒垓君の蹴りによって粉々に吹き飛ばされる!!


「………結構柔らかいっすね。」


ズゴゴゴゴ!!!

また同じ手が、今度は30本ほど同時に出現する!!


数で押してくるか!………くそ、どうする!?迎撃するか!?でも、亜花君を戦闘に参加させたくないな………せっかく破壊することから遠ざけているんだ。これでまた破壊する感覚を取り戻してしまったら


「師匠大丈夫っすよ。こんなのオラが1人でぜーんぶ壊してあげますから。………問題は、これの対処なんかじゃないでしょう?」


バキィ!!メシ!!ガガガガガンン!!!


黒垓君が高速で移動して、俺に振り下ろされる鉄槌を順々に壊していく!

ザクザク!

壊れた破片が凄まじい勢いで地面に突き刺さっていく!!だから俺は水を出して吹き飛んでくる破片たちを受け止めた。


「亜花君、染島さんと一緒にいるんだ。絶対に戦いに参加しちゃダメだよ」


俺は近くにいる亜花君に話しかける。

とにかく、亜花君が戦闘に参加しない条件を整えておかなければいけない。さっきスカラさんが言った通りだ。今この子のは破壊することしかできない。彼を正常に戻すには、破壊から遠ざけて、生み出すことの喜びを教える必要があるのだ。


「ええ………でも、僕も混ざりたい………」


「…………ダメなんだよ亜花君。さっき言ったよね?スナイパー井上の上達のコツは破壊することを抑えることなんだってさ。」


「あっ………そうだった。」


よし、わかってくれたか。


「それじゃあ亜花君、染島さんの側についてあげてね。………あ、でも、染島さんが危なそうだったら助けてあげるんだよ?スナイパー井上の上達のコツだからね」


「うん!わかった!!」


うはーー!!心苦しーー!!こんな子供を騙すなんて…………まぁいい。ひとまず俺の側から亜花君を引き離すことができた。スカラさんの狙いは俺だ。俺の周りに亜花君を待機させていたら巻き添えをくらっちまうからな


「………?」


突然目の前の空間の一部分に黒色のよく分からないものが出現した。歪な黒豆みたいな形だ。

そして、その黒色の物体はシミが広がっていくように、まるで空間に細い溝がいくつもあるかのように、ジワジワと広がっていく。まるでヒビだ。空間にヒビが入っているかのような…………


パリーーン!!


ヒビが入った空間が砕け散り、中から手が突然出てきた!!


「ぐっ!!」


そして、その手は俺の首を掴むと、力を込めて俺の首をへし折ろうとする!


ギチギチギチ………っと、腕に力が加わっていく。血管を押しつぶされて最高に気持ち悪い。いや、もう、気管も潰されそうで息が…………


俺は左手で俺の首をへし折ろうとしている腕を掴み引き剥がそうとするが、離れる気配がない。

なんて力だ………今の俺じゃ引き剥がせない!!

だったら!!!


右人差し指を首を掴んでいる手に当てる

ゴボゴボゴボ!!

俺は1段階力を解放して、内部で水蒸気を生み出し指先に圧力を集中させ、まるでピストルのように指先から水を発射する!!


ダンダンダンダン!!


腕に何発も撃ち込む!!

が、全然貫通しない。ほんの少し皮膚が削れて血が出てくる程度だ


「いったいわね!!」


ブン!!

俺は思いっきりぶん投げられた!!


くそ!結構な速度だ!このままの速度で何かにぶつかったら………っ!?後ろ岩かよ!!

俺は後方に水を放出して岩と俺の間に水の壁を作り出し、頭を両腕で覆う!


びしッッッ!!!

俺の体は水を突き抜け、岩に体をぶつける!

なんつーー力だ…………ある程度速度殺してこの威力か!


「抵抗なんて野暮なことやめて、さっさと私に殺されなさい。それが何よりも最善の選択だわ」


ビシッメシメシメシ…………

腕が出てきた周辺の空間にヒビが入り砕け、バラバラに粉砕され、中からスカラさんが出てきた。

フサッとピンク色の運動靴が草を踏んだ。どうやらスカラさんは戦闘用に服などを変えてきたようだ。長かった髪は切られ、動きやすいように長いマントを外していた。ミニスカートはタイトなピンク色のジーパンに………うむ、ピンク色のジーパンって言っていて気持ち悪いな。


シュゥゥウ………

俺に水で攻撃されたスカラさんの右腕が煙を上げながら回復していく。回復魔法………ベッドのあの驚異的な回復をあの人は生み出しているんだもんな…………


「本当しつこいね。味が濃いデミグラスハンバーグ並みにしつこい。そんなにしつこかったら、私にぐちゃぐちゃにされてビーフシチューの材料にされても仕方ないよね?」


俺とスカラさんの間にイリナと黒垓君が割り込む。

もうすでにイリナは剣を引き抜き、黒垓君は剣を2本作り出し臨戦態勢だ。


「………やっぱり貴方、ツンデレじゃない。あの子が心配で心配でたまらないってずっと思ってるものね」


「…………思ってないけど?」


「嘘ね。明らかに嘘だわ。今だってほら、[黒垓君の能力を使っていったいどのタイミングで逃がそうかな?]って考えているじゃないの。自分の心配よりも他人の心配………これがデレじゃなかったらいったい何というのかしらね?」


…………嫌な予感がする


「[嫌な予感がする]?嫌な予感なんて前々からしてるじゃない。だって私はこう言ったんだからね」


スカラさんが空中に指を走らせ、光がその後を追い、何か文字のようなものを書く。

ピッと、最後に文字群の下に線をひいた。


「私は2つの魔法以外全てが使えるってね」


ズゴゴゴゴ!!!!

またも地震が発生する!!さっきよりも大規模だ!周りの木々が倒れ所々が岩雪崩を起こし、基盤が不安定な部分だと山が崩れ落ちた。

しかし、先ほどみたく腕は出てこないようだ。地震だけらしい。地震のおかげで上手く行動できないが、それはスカラさんも同じだ。さっきみたく攻撃されないんなら………

バシャバシャバシャバシャ!!!!

スカラさんの目の前から大量の水が出現し、まるで百獣が襲いかかってくるかのように、大量の水が山肌を削りながら突っ込んでくる!


「カタクリズム」


水が、前出している水を飲み込み、それを更に後の水が飲み込み………と、水で水を洗うという意味のわからない状況が迫り来る。

………前言撤回だ。襲ってこないわけがないんだこんな絶好の機会を。


20メートルぐらいの津波だ。月影を遮り、俺達に暗い影を落とす。

イリナと黒垓君は大丈夫だ。魔力を利用すればこんなの簡単に対処できる。

だが、問題があるとすれば俺と染島さんと亜花君だ。この3人はこういうエレメント系の攻撃の対処が苦手だ!

………まぁ、今回は水で助かったけどな。


俺は水を大量に出して俺と染島さんと亜花君を水で覆い尽くした。そして、その水を凍らし氷にする!


ガガガガガが!!!

氷が水の力で削られていく!!このままだったらいずれ氷の壁が壊されて、水にもまれて大ダメージだ。だが、俺もそこまで間抜けではない。次の対策ぐらいはしている。

俺は常に氷の壁を触れて冷やし続けることによって、壁に触れた水を凍らせていく。氷の壁の増強だ。これでなんとか水も防げるだろう……………

しかし厄介だ。スカラさん、絶対心を読んでたぞ。………あの階級の人間にあの力はまずい。イリナでもさすがに辛いんじゃ


バシャバシャ!!

水の流出が止まったため、俺は氷を融解して水へと戻す。


イリナと黒垓君の安否を確認すると、どうやら2人とも無事みたいだ。

もう既にスカラさんとの闘いが始まっていた


イリナと黒垓君2人がかりでスカラさんを攻撃していた。

空中にある物質の結合を破壊してしまうような威力の蹴りとパンチが交互に放たれる。


だが、スカラさんはそれを見事にかわしていた。

タタン、タンと軽やかなリズムで攻撃全てをいなし、かわしていく。後ろに下がりながら、たまには横や前に移動しながら、2人の攻撃を危なげなく、完璧に、かわしていく


「黒垓ちゃん。貴方確か私と同じ階級よね?………それじゃあ私に攻撃を当てれないのは仕方ないわね。」


黒垓君が右手で攻撃しようとしたその瞬間、スカラさんが黒垓君の左側に移動する。

シャシャッと高速で空中に図形を描くと、その近辺から爆発が発生した!


「いって!!」


それをモロにくらった黒垓君は吹き飛ばされる


「………それじゃあこれならどうっすかね!?」


空中を漂っていた白色の球体から沢山のナイフが出てくる。1,2,……26本か。これは多いな。一度に全部を持つのは不可能だ


黒垓君は空中で1本のナイフを掴むと、スカラさんの方ではない、明後日の方向にそれを投げた!


ピュッ!!

スカラさんの頬を1本のナイフが掠める。頬から少し血が流れていくが、すぐまた傷は塞がった。


ワープか…………多分、黒垓君の周りに沢山の入り口を作っておいたんだろう。そこに向けて投げたら、出口がスカラさんの周りに設定されているからあっちに出てくると…………


ヒュンヒュンヒュン!!

未だ落下をしているナイフを掴み、無造作に投げ飛ばしていく黒垓君。そのナイフたちは上から下から右から左から斜め上から奥から前からと色々な所から出現する

確かにこれなら入り口を予め自分で設定できるから、考えずに適当に投げ飛ばすことが出来る。つまり思考を読まれても対処が出来ないってことじゃないか…………流石だぜ黒垓君。カッコよすぎるぜ黒垓君。ベタ褒めだぜ黒垓君。


トスッ

1本がスカラさんの右腕に当たる


「まだまだこれからっすよ!!」


それでも黒垓君はナイフを投げ続ける。一撃じゃあスカラさんはすぐに回復してしまうと考えての事だろう。

ナイフの数が減っていくと、白色の球体からナイフが供給され更にナイフの投擲は続く!

30秒………それぐらい経ったろうか?ようやく黒垓君のナイフのストックがきれたようだ。


スカラさんには大量のナイフが突き刺さっていた。1秒に5本投げたとしたら150本だもんな…………そりゃあかわせないよ。


カラン


スカラさんに刺さっていたナイフが1本落ちた。きっと、刺さりが甘かったのだろう。


カランカラン…………


が、続々とナイフが落ちていく。ナイフが地面に落ちて聞こえるあのやかましい音が立て続けに聞こえる。途切れることがない。


カラン…………


そして、最後の一本が落ちた。それは、スカラさんに突き刺さっていた最後の一本であった。

………どうやら、全ての刺さりが甘かったらしい。


「このアーマーがなかったら危なかったわね」


ん?スカラさんが最初の時よりも大きくなっている?それにアーマー…………ああ、優馬君の魔力みたいなやつね。硬い層を自分にコーティングするやつ。


「ねぇ、貴方たち。私はね、さっきも言ったけど仲間に手は出したくないのよ。あの男さえ殺せればそれでいいわけ。だからね、潔く道を開けて欲しいの」


「誰が!」


ボゴン!!

イリナの踵落としが地面を吹き飛ばす!!


「あんたなんかに!」


思いっきり振り抜かれた右腕は、またも空を切った。


「イリナちゃん………貴方学習能力がないわね。今の私は心が読めるのよ?そんな馬鹿正直に突っ込んだところで当たるわけがないわ」


…………まったくその通りだな。魔法だからある程度の制限があるのだろうけれど、多分距離制限だろう、けれどやはりイリナの持ち味は近接戦闘だ。距離制限だとしてもそんなのは関係ない。


「それじゃあ、心を読まれても、対処できないぐらいの手数で攻撃すればいいってことでしょ?」


イリナの持つ光剣が双剣へと姿を変える


ブンブンブン!!

目にも留まらぬ乱舞が、スカラさんを襲う。右手の剣が振り抜かれたかと思えば、いつの間にかまた右手の剣が振られている。それぐらいの恐ろしい速度だ。普通なら絶対にかわせない。盾でもなんでも作って逃げ出さないといけないような攻撃だ。

それでも、スカラさんはそれをかわしていく。先読みして安全地帯を見極めかわし続ける。階級差があるのに、まるでものともしてないようだ。


ブン!!

黒垓君の白刀がスカラさんの肩をかすめる!

肩の装甲が削れ、服が剥き出しになる。


「………後ろから攻撃なんて卑怯じゃない」


スカラさんの右手から炎が生まれ、左手から風が生み出される。それが合体して、巨大な炎の竜巻が辺りを焼き尽くす!竜巻は高さが20メートルほどにまで到達した。炎の壁みたいだ…………まったく、出鱈目にも程があるだろう


イリナと黒垓君は攻撃をかわすためにその場から離れた!


「いやーねぇ…………貴方達って強いから時間がかかっちゃうわ。どうしたらいいかしら…………」


炎の渦が晴れると、スカラさんが腕を組んで悩んでいた。いや、どうせ悩んだふりだろう。アーマーと回復、読心と染島さんのジャミングと二回同時に放たれる攻撃魔法。正直これを突破するのは至難の技だ。スカラさんが困るような状況では確実にない。


………ん?

俺はスカラさんの切られた肩に少し違和感が感じたので凝視した。黒垓君に切られたアーマーが回復していたのだが…………遅い。体に受けた傷の回復は早かったのに、アーマーの回復は比較すると遅かった。別の魔法を使っている間は回復が遅くなる?…………まだ断定はできないが、その可能性が出てきたな。


「くそっ!」「捉えきれない!」


イリナと黒垓君が2人同時で攻撃しても、ほとんど全てがかわされ、当たっても回復され、スカラさんの魔法でじわりじわりとダメージが蓄積していた。

長引けば不利だ………流れを変える必要があるな。


俺は足を動かした。

………うん、もう足は動くな。これなら少しばかり無理をしても大丈夫だろう


カチっ

俺は機械の2段階目の封印を解いた。

ゴボゴボゴボゴボと体で熱が燃え上がるのを感じる。身体中が湧き立つ感覚だ。水の蒸発速度も増加した。これなら聖騎士長クラスの身体能力を引き出せる。

俺は立ち上がり染島さんの方を向いた


「染島さん」「分かってますよ」


ポン

手元に白色の球体が出現した。俺はそれに手を突っ込み魔剣を引きずり出す。


紫色の刀身を持つ悪趣味な剣が、俺の手にすっぽりと収まる。

怪しい光を絶えず放ち続ける刀。力の源があんな化け物なのだ。それは仕方がないことだとわりきろう。


ブン!!

俺がふった一撃は、空間を断裂しながらスカラさんに襲いかかる!!


「っ!!」


それをスカラさんは、危険だと判断したのだろうか?受け止めることなくかわした。そして、そのまま距離をとった。


「さて2人とも、そろそろ………」


俺はイリナと黒垓君の場所まで歩いて行った。


「反撃といきましょうか?」


絶え間なく吹き出し続ける湯気が、[これからの戦い]の開戦の狼煙を上げているかのようだ。いや、ようだじゃない。狼煙を上げているのだ。

ここからが、本番であるのだ。

重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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