金だ!金を持ってこい!
「あの子の保護者……と言うには少々人数が多いようね。それにもう21時は回っているから、遊びの同伴ってこともなさそうだから………本格的にこの子を引き取ったのはどなたかしら?」
カツカツとかかとが高いヒールを響かせながら近づいてくるスカラさん。
うわーーやっぱりたけーー。ヒールを履いてるってのもあるけど、やっぱり女性でこの大きさは珍しいよ。
「あ、えーーっと………俺です」
そして、俺は仕方なくおずおずと手を挙げる。
四賢者なんて初めて聞いたけれど、要は知識人なわけだろ?てことは常識も当然持っているはずだ。そんな人なら、子供を好き放題遊ばせて迷惑かけた自称保護者を叱らないわけがない。そう判断した俺はすこぶる嫌だが、手を挙げたのだ。
怒られたくないのは確かであるが、怒られなくてはいけないのもまた事実である。完璧に亜花君の存在を忘れていたのだから。保護者失格である。
「ふーーん、あなたねぇ………」
そう言うとスカラさんは視線を俺から外して亜花君の方に向ける。
あ、あれ?それだけ?怒られないのか?
「何回か見たことあるのよねぇ……この子。グレンちゃんの側にいつもついてたような………あなた、グレンちゃんの友達?」
亜花君の方を向きながら言葉をかけてくるスカラさん。
グレンちゃん?ちゃん?大の大人がちゃん呼ばわり?………一体どういう関係だよ
「友達ってわけではないです。今年の勇検の時にお世話になって、なんやかんやあって亜花君を預かることになりました。特に親しくはありません」
あんな無責任な大人と友達だと思われるのは心外だ。俺の親父が親父であることぐらい心外だ。ろくでなしと一緒だと思われたくないね。
「あらーーまだあの子勇検なんて無意味なことを引き受けてたのね………なんだかんだ言ってグレンちゃんは世話好きなのよねー」
………なんですんなり会話してるんだ?なんだこの空気。
「今年受けて分かったと思うけど、あれって対象が農民だからいい人材が集まりにくいの。グレンちゃんが求めるような逸材に会えるのは本当に稀なのよねーー。グレンちゃんぐらいの事例しかないのよ農民からあれほどの人間が産まれたっていうのはね」
…………まぁ、確かに筧君や鬼貫君レベルで人からチヤホヤされるって言うんだからなぁ………いや、彼らが弱いってわけじゃないんだぜ?俺よりは強いからな。ただ、イリナとか黒垓君とか染島さんとか宏美とか遼鋭を見た後じゃ、尻すぼみ感は否めない。
「それに比べて学校はいいわよ?学校の評価さえ上がれば能力高い人間が勝手に来てくれるからね、すごく効率がいいわ。だから毎年グレンちゃんに教師になるように誘っているんだけどねぇ…………」
腕を組んで困ったポーズをするスカラさん。
「…………いや、あの。なにかお咎めとかないんですか?器物破損とか監督不行き届きとか」
あまりにも普通に会話をしてしまっていて、突っ込みづらかった。まぁ、このままうやむやにしても良かったのだがなんか………うん、なんかやだった。釈然としないというか、気にくわないというか…………怒られるべきところではさっさと怒られておきたいのだ。
「あら、そんなこと?いいのよいいのよ別に。壊れたものなんて私の力で一瞬で元に戻るし、この子だって私ならすぐに無力化出来るもの。私に実害はなかったから、何も責めはしないは」
おお………寛大な人だなぁ。これがイリナとかだったら絶対にきれてたぞ。「破いた紙の枚数×10個、チョコーレト買ってこい」とか言ってそう。…………うわーー簡単に想像できるわ。
「それに、私からすれば、あなたがグレンちゃんからこの子を預けるに足る人間だと評価されたことの方が気になるしね」
そう言うと俺のことをジロジロと見てくるスカラさん。
うわーー大人の女性にジロジロ見られることってそんなないから恥ずかしいなーー。顔が爆発しそうなほど熱くなってきたんだけど
「まだ詳しくは見ていないからなんとも言えないけれど、貴方結構隠してるわね?素性も性格も能力も、何もかも…………私も仕事上色々な人間と関わってきたからある程度見ただけで人は分かるのよ。」
すっごいな………見ただけで色々とバレちまうなんて。やっぱ頭いい人は違うな。羨ましいぜ、俺もその能力が欲しいぜ。
「それに貴方のお友達………悪名高いイリナと悪名高い梅雨美じゃないの。友好関係がとても気に成るところね。」
スカラさんは俺の後ろにいるイリナと染島さんの方を向いて笑う。
「…………あのさ、2人とも。凄く聞きづらいことを聞こうと思うんだけど」「喋ったら声帯が迷子になる可能性があるからやめといた方がいいよ」「……………以下同文です」
イリナはいつも通りすかした顔で、染島さんはいつも通り微笑みながら応える。
………あれ?気のせいかな、染島さんの笑顔が今凄く怖い。
「ふふっ………面白い人間の集まりって感じね…………まっ、長々と立ち話をするのも何だから、座って喋りましょう。私の部屋に案内するわ。貴方達が意味もなくこんな学校なんかに来るはずないでしょうからね。ちゃんと話は聞いてあげるわよ〜?」
笑いながらスカラさんは振り返り廊下を歩いていく。
俺は慌てて倒れている亜花君をおぶって、スカラさんについていく。
亜花君は一向に起き上がってくる気配がない。まるで死んだようだ。………いや、スカラさんが言うには仮死状態なのか。ほとんど死んでいるので正しいのだ。
亜花君をあっという間に仮死状態に持って行ったスカラさん。それに物を1度に大量に操作して修復までもをやってのけた。人間1人がやりきってしまう所業とは俺には全然思えなかった。燃やすことしかできない俺からすれば羨ましい限りである。
…………それもこれも魔法なのか。興味がグングン伸長していくぜ。熱湯に温度計ぶっ刺した時みたいにやる気が伸び上がっていく。もはや破裂しちまってもおかしくはない。てか破裂しそう。鼻から赤い液体が飛び出そうだ。
「しかし染島さん。変人で、喧嘩の時に街を吹き飛ばしたっていう割には常識人じゃないですかスカラさんは。全然怒らないし笑って許してくれましたからね」
俺は前を歩いているスカラさんを見つめる。カツカツと優雅な音を立てながら廊下を歩いている。長いコートをゆったり目に揺らし、コートがのけた部分から時折黒色のストッキングが顔を覗かせる。ピンク色の艶やかな髪がフワッと空を舞う。現実じゃ、ピンクの髪でここまでの艶を出すのは難しいだろう。染料をコーティングをして、それでもそのコーティングは細密でかつ最小粒じゃないとここまで光を反射しないはずだ。魔法か………それともこの世界にしかない染料なのか…………細かいことはわからないが、髪の光沢が凄いなんてことは素人の俺でもわかる。
こんなに見た目が良くて性格もいい?そして天才で強いだぁ?おいおい、なんで神様はこの世に二物じゃなくて三物を与えているんだ。不公平すぎるだろ。その才能を13割ぐらい分けてくれよ。
「それは………まだある事と絡んでいないですからね。スカラさんは根はいい人………と言うか他に無頓着なだけなのですが、いつも怒りはしないんですよ。」
ある事?………なんだろうな、人とか?命とか?………まぁ賢者って言われているぐらいだからモラル的な何かだろ。人としてやってはいけない事とか……………あれ?めっちゃいい人やん。どんだけいい人なんだよスカラさんは
「…………ある事って何だと思うよイリナ。」
「さぁね、男とかじゃない?」
横を歩いているイリナに尋ねると、イリナはそっぽを向いてそっけなく答えた。イリナの横顔…………真っ白な肌が機械的な光に照らされて、白さがより一層際立っている。髪も、光がかかった部分は煌めいていて、そして光が薄い部分では闇に溶け込むようにほんのりと彩色を奏でる。
何でふてくされているのかも、てか目を合わせてくれないのかも分からないし、ぶっちゃけ分かったところで俺にはどうしようもないからわかろうとも思わない。けれど、芸術じみたイリナの横顔は、ほんの少し見つめてしまうほど、芳しかった。
「…………なんで男だと思うんだよ。」
「やっぱり世間なんてものは男と女の関係で成り立っているからね。女の欠点なんて[男!]と言っておけば大抵当たるもんなのさ」
お前は女性と男の一体何を知っているんだよ!俺だっていまだ男について理解できないところがあるっていうのに………女性については尚更だ。全然わからん。宏美ぐらいとしか喋ってこなかったからな……………それに、宏美ですらも男だと思って接していたからねぇ。経験なんて1年ぐらいになっちゃうのかな。すくねぇなぁ。
「それじゃああれか?イリナの弱点も男なのか?」
「んなわけないでしょうよ。男なんて弱点じゃないわ。手玉にとって扱うことのできる道具ぐらいにしか思ってないね」
ひっでぇ………クラスの男たちがかわいそうでならないよ
「ミフィー君だって私からすればあれだね、関数電卓みたいなものだね。」
「関数電卓ってお前…………計算にしか使えねぇじゃないか。もう少し応用性があるものを所望するぜ」
「いいじゃんいいじゃん。一家に一台関数電卓って言うぐらいなんだからさ、かけがえのない存在ではないけれど、当たり前の存在だって事なんだからさ。」
「お、おう…………センキュー」
…………一家に一台関数電卓なんて言葉あったっけ?
「誇ってもいいのよ?」
前髪をさらっとかき、片方の眉を下げて口角を持ち上げながらそんな事を言うイリナ。
「………もう少し謙遜の気持ちというものをだな………………」
「楽しく会話しているところ悪いわね、私の部屋に着いたわよ」
俺の言葉を遮るように前からスカラさんの言葉が飛んでくる。
ちっ、もう少しイリナに謙遜とはいかなるものかを説明したかったのだが…………まぁいい。今は魔法の方が大切だ。
…………まっ、自信家な所がイリナの個性であり魅力でもあるから、謙遜なんてされたら調子が狂ってしまうけどな
前のスカラさんが立ち止まった。
俺もイリナの方に向けていた顔を元に戻し、辺りを見渡す。
おかしいな、すっごく大きな扉がある。人間1人じゃ開けるのにひどく苦労しそうな扉がね、目の前にあるわけですよ。勇者だからってね、もう少し小さな扉の方がいいんじゃない?家庭的な人1人が入れるぐらいの感じのやつでさ
「言っとくけれど、私の部屋は豪華よ?そこら辺の庶民じゃ人生30回ぐらいやってお金貯めてようやく買えるようなお部屋なの。驚かないでね?」
…………驚かないわけがないじゃん。てかもう奇抜な学校の外観だけでも十分に驚いているんだよな。
カツン
スカラさんが一歩踏み出す。すると
ゴゴゴゴゴ………
と、重い音を立てながら巨大な扉が開いていく。まるで城門だ。個人の部屋のための扉だとはとてもじゃないが思えない。
そして、扉と扉の隙間から部屋の内部がだんだんと見えてきた。光が眩しい………目眩がするほどだ。
「うわーー…………こう来たか」
部屋の中はルビーで作られていた。部屋中が真っ赤だ。いや、流石に床はルビーなんてものは敷き詰められてはいないが、それでも高そうな大理石なのだけれども。とにかく、壁と天井がほとんどルビーだ。目に突き刺さるような赤い光で部屋中が埋め尽くされている。なんつーー透明度だ。しかも一粒が大きい…………一個一個が最高級だ。確かルビーででかいものってそこまで発見されてないはずだから、いったいどれだけの価値が…………
「本当はピンクサファイアにしたかったのよ。もうわかっているだろうけれど、私ってピンクが大好きだからね。………ただね、安いのよピンクサファイアって。安いもので私の周りを固めたくなかったのよ。だから仕方なくルビーにしたの。あっ、ちなみにレッドダイヤモンドも一部使っているわよ。あれって希少すぎで全然売られていないのよ」
まてよ?翔石君が、最高級のルビーはダイヤモンドの次に値段が高いって言ってたよな。てことはなんだ?この部屋の壁を埋め尽くすほどルビーがあるわけだから、億なんてものは下らないわけだ。ルビーだけでも。それでいてえーーっと………レッドダイヤモンド?確かダイヤモンドよりも希少だったよな?ほんのちょっとの量でも億単位の金額で売買されるって聞いたな……………うわ、頭が痛くなってきた。そして目も痛くなってきた。ここの光は強すぎるんだ。
「まっ、いいから座って座って。ここのソファーはフカフカよ」
スカラさんに促されて、真っピンクの長〜いソファに俺達は腰をかけた。亜花君はまだ仮死状態なのでソファーに寝かせた。
正直、ソファーがピンクなだけじゃ全然驚かないぞ。ただ、ソファーがフカフカだって事にはめっちゃ驚くけどな。ハリがあるんだよ、しっかりと俺のお尻を支えるようなハリがあるんだよ。でもね、おかしいんだよなぁ。硬いって感じがしないのだ。フワフワって感触しかしない。硬くてフワフワ………なんだこの矛盾は。マシュマロか?このソファーはマシュマロで出来ているのか?
そしてスカラさんは俺たちに向かい合うように、机の向かいのソファーに座った。
「どう?この部屋。悪趣味でしょう」
スカラさんが笑いながらたずねる。
自覚あんのかよ!
「………まぁ、目には悪いですよね。もう目が疲れてきましたよ」
光の刺激が強すぎて強すぎて、ブルーライトも顔負けだよこの光の強さは。
「そうなのよねーー。この部屋に初めて入った人って誰もがそう言うのよ。………けれど、私はやめるつもりはないわよ。私の部屋だもの、他人のことを気にして、私のためにならないようなものにするつもりはないわ。」
ふふっと笑うスカラさん。なるほど、毎回こんな感じの会話をしているのか。
………多分、この学校の他の先生からも指摘をされているのかな?確かに、校長の部屋がこんな成金部屋みたいだったら、健全な学生に見せ辛いもんな。
「まぁ、部屋の感想を聞けたから本題に入るわ。あなた達がこの学校に来た目的は何かしら?」
スカラさんは姿勢を変えないまま、余裕を持ったままで聞いてくる。
「…………おこがましいことだとは思うのですが、俺に魔法について教えてくださいませんか?」
本戦は1週間後だ。いや、6日後か?とにかく、時間がない。正規ルートでコツコツ覚えていくってのもありっちゃありだが多分間に合わないだろう。ここは、学校の校長になれるだけの教育の才をもったスカラさんに頼むしかない。
…………ただ、そう簡単には引き受けてはくれないだろう。校長だから教鞭を取りはしないだろうが経営やら何やらで忙しいに違いない。それに、ここの生徒でもない奴にいきなり頼まれて、ソッコーで「オッケー」なんて言える人間はいないだろ。何よりも素性が全然わからないからな。俺って有名人でもなんでもないからね。イリナとかなら話は別なのだろうが…………
まぁ、断られたその時には土下座でもしてとにかく頼み込もう。プライドなんてものは俺にはないからな、いくらでも土下座をしてやるよ
「うん、いいわよ」
「……………はい?」
何も姿勢を変えないまま、スカラさんは答える。
えっと………その、聞こえなかったな。「うん、いいわよ」って言葉しか俺には聞こえなかったぞ。あれ?なんか抜けてない?「うん、ありえないいわよ」って本当は言ってたんじゃないの?
「だから、いいわよ。教えてあげるわ。私も暇だからね、いくらでも教えてあげるわ」
「え、えええ!?いいんですか!?こんなみすぼらしいガキに教えてくださっていいんですか!?」
「ええ、いいわよ。私のモットーは[才能関係なしに接してあげる]だからね。貴方の才能がなかったとしても、親切に教えてあげるわよ。………まぁ、私の授業は少し、いいえ、かなり辛いけれどね。叩き上げタイプだからね。1週間程度である程度の下地は作ってあげられるわ」
「完璧だ!理想的だ!丁度1週間で魔法の下地を作れるなんて!それじゃあ早速明日からでも………」
「と、その前に」
スカラさんは俺の言葉を遮り、右手を出してくる。
………手?握手か?契約成立の時に握手をする的な?でもそんなこと必要なのか?………わからんなぁ、大人の世界はよくわからん。
俺も右手を差し出す。が
「ああ、違う違う。握手なんかじゃないわ。もっと大切なものよ。」
とスカラさんは言うと俺の右手を拒む。
握手じゃない?それじゃ一体俺は何をすれば……………
「お・か・ね・♡」
スカラさんが甘く囁く。
「お、お金ですか?」
「ええ、お金よ。…………まさか、私の授業をタダで受けられると思っていたのかしら?………まったく、とんだねぼすけやろうね。四賢者と呼ばれ、世界一の学校を作り上げたこの私をそんな甘く見ていたなんて………貴方よっぽどの馬鹿ね?」
あれ?人が変わった?
「飯田君」
俺がスカラさんの言葉を聞いていると、テレパシーで染島さんが語りかけてくる。
「実はスカラさん………お金に目がないんですよ。お金が絡むと人が豹変するといいますか、攻撃的になるというか…………まるで別人格みたいになるんです。きっと、お金以外に興味がないからそうなるんでしょうけどね」
染島さんから話を聞いている間も、スカラさんの言葉は止まらない。お金についてと自分の授業の素晴らしさを語っている。
「街一つを喧嘩の時に吹き飛ばしたって言ったじゃないですか。………実はあれ、金銭トラブルでの喧嘩だったんですよ。相手がスカラさんから150角を借りてジュースを買ったのですが、約束の150角の返却期限を忘れてしまい、スカラさんが怒って相手を街ごと消したんです。」
お、え?あれ?ちょ、ちょちょ、えーっと?え?まって?ちょっと待って?少し混乱してきた…………えーーっと、つまりスカラさんは守銭奴?……………やべー人と絡んでしまった。
「そもそもこの世はお金が全てよ。お金で全てが回っている。お金を大量に持っている人間が、圧倒的な権力を手に入れることができる。権力だけじゃないわ、全てがお金で手に入るのよ。愛はお金じゃ買えない?………馬鹿ね、愛はお金で買えるわよ。付き合う相手というのは相手のステータスを見るものなの。ド○クエ知ってる?貴方もやったことがあるでしょう?」
え?この世界にド○クエってあるの?
「メニュー開いたらキャラクターのステータス見れるじゃない。そして、その画面の中にお金の量が記載されているわけよ。………つまりね、お金はステータスなのよ。ルックスや知恵や運動神経や性格に並ぶステータスなわけ。そうだと言うのに何故お金で愛を買えないのかしら?相手は顔も知恵も性格も何も見てないってことになるわ」
あーー確かにそうだ。やりこんだからわかる。お金は確かにステータスだ。
「お金で買えないものは何一つとしてないわ。お金は最高のアイテムよ。世を渡っていく上で必ず必要となるアイテムね。………そして、私はお金が大好きなの。自分の命以上に大切なものだと思っているわ。お金儲けのためにこの学校を作ったほどよ」
うっわーー!!!最低だ!学校を作った理由が最低すぎる!!
スカラさんは身を乗り出して、俺の顔にスカラさんの顔がくっつくんじゃないのかってぐらい接近してくる。
すごい………目力が違う。いままで、すべてを見つめて余裕のある知識人みたいな顔だったのに、今じゃ獲物を狙う空腹の獅子のような殺意に似た強力な闘志を感じる。
ダメだ、この人を怒らせたらイリナの時みたくタダで済むわけがない。
「あ、あの…………スカラさんの授業を受けるにはどれ位のお金が必要ですか?」
お金を払う意思は見せておこう!せめても、最低でもこれぐらいはしないと殺されかねない!
「そうね…………貴方の魔法が大成するまでに1年かかるとしたら……………」
バッ!
スカラさんは掌を開いて俺の前に突き出す。
「5億…………と言ったところかしら」
たっかーーーー!!!!子供になんて額のお金を払わせようとしてるんだよ!!!!
「どうするの?私はこれぐらいのお金を出さないと絶対に教えないわよ?お金は人の価値を表す。そして、私の価値は5億なの。貴方には払えるかしら?」
5億か………まぁ、しゃあないよな。すっごい人だもんな。それぐらいの価格がして当然だ。
俺なんかの力じゃ到底払えそうにもないな…………仕方ないか………………
「黒垓君出してくれ」
染島さんを通して黒垓君を呼ぶ。
するとすぐに、真っ白な空間が上空に漂う。
「これは………ワープ系の魔力ね。あら、払えないの?帰るってことな…………」
ドサドサドサドサ!!ガラガラガラガラガラガラ!!ガシャン!ガシャン!ガシャーーーン!!
真っ白な空間から大量に物が落ちてくる。
それは、大量の札束と金貨と財宝だった。色んな顔を描かれた札束、いろいろな国や世界から集めてきたのであろう様々な色と柄の金貨。そして、宝石がちりばめられた王冠や宝剣。ネックレス、貴重な魔道書、巨大な宝石、金塊が、真っ赤な部屋の真ん中に大量に降り注いだ。
6トンぐらいはあるだろう。計ったことがないからなんでも言えないが……………
「実はこれ、俺の親父が稼いだものなんです。………父親としては最低ですが、商人としては立派な才能を持っていたってことでしょう」
どうやって稼いだのかは聞いていない。だって、たった3年でこれだけ集めた。と親父が言っていて、こんなものを3年ごときで集められるわけがないのだ。どうせやらしい手段でも使ったのだろう。俺はそう言うのは見習いたくないので聞かなかった。
まぁ、今は役に立っているからあまり批判はできないが………………
スカラさんのいままで攻撃的だった雰囲気が解けて、最初の頃のような雰囲気に戻っていた。
………いや、心なしかこの財宝を見ている目がハートの形に見えなくもないぐらいには変化しているか。
「この財宝の山は最低でも7億の価値があります。本人が言ってましたからね。………ただ、俺はお金に興味がありません。こんなに持っていても使う機会が全然ないんですよ。なので、スカラさんに全部あげちゃいます」
健全なお金ではないだろうが………まぁ、スカラさん相手になら大丈夫だろう。お金ならどんな汚れたものだろうと全部好きそうだし
「最低でも7億ね…………私の価値以上のお金を出してきたじゃないの。どういう目論見かしら、授業以外のことでも私に何か頑張らせたいのかしら?」
………………はっ!ダメだ!最近染島さんと色々な会話をしすぎて、全てが下ネタにつながってしまいそ………
パシーーン!!
頭を思いっきり叩かれる!
「…………お金でそういうのを買い始めたら終わりだよ?ミフィー君」
イリナの笑顔が向けられる。
…………あーーーこれ以上考えたら制裁が飛んでくるな。
「いやいや、ただの友好の証ですよ。お金で貴方の授業を買ったとはいえ、やはり面識もない人間にこんな夜に突然押しかけて頼み込むというのは失礼じゃないですか。無礼の穴埋めだとでも思ってください」
「…………うふふ、素直じゃないんだから」
す、素直ですけど!?スカラさんのむ……ゲフンゲフンに触りたいとか、キ……オッフンオッフンしたいとかゲフン!オフェ!ゲホゲホゲホ!がしたいだなんてこの俺が考えるわけがない!俺はピュアで純愛を愛するような男だからな!そんな不純なことを好むわけが…………
「ミフィー君、明日学校に朝早くから来てね。1時間ぐらい前に来てくれると助かるな…………悲鳴が聞こえないように小細工するのって面倒くさいんだよね」
ブベラッ!!!
ああ、明日学校行きたくねぇ!!月曜日ってこともあるけどやはりなによりもイリナのことがすごくこぇぇぇええ!!!
てか悲鳴が聞こえないような小細工ってなんだよ!!猿轡か!?猿轡なのか!?
「それじゃあ明日の夜9時から授業を始めようかしら。………なんなら貴方のお友達もまとめて教えてあげるわよ?余計にもらった分、今は気前がいいのよ」
スカラさんは立ち上がると、部屋の奥の方に歩いていく。
………入った時には気づかなかったが、部屋の奥に別のドアがある。もう一つ部屋があるのか?こんな広いのに?………どんだけ金がかかってるんだよ
「あ、そうそう名前なんていうのかしら?明日から授業を教えてあげる生徒の名前を知らないなんて教師としては失格よね」
ドアノブに手をかけたまま、スカラさんが聞いてくる。
「あ、飯田狩虎です」
「飯田狩虎ね………変な名前ね。それじゃあ狩虎君。明日また生きていられたら会いましょう」
そう言うと、スカラさんは扉を開けて中に入っていった。
ガチャリ
扉が閉まる
「…………それじゃあ俺達も帰りましょうか。なんだかんだでもう10時を過ぎちゃってますからね」
結構いい時間までここに留まってしまった。さっさと黒垓君を呼んで、各々の帰宅場所に飛ばしてもらおう。
「ミフィー君…………明日、忘れんなよ?」
イリナの手が俺の肩にポンと乗っけられる。
口調が………凄く変わっていますよイリナさん。あははは、ドキドキしすぎて今日は眠れなさそうだなぁ!あーーー明日滅んじまえよ!!
俺は泣きながら白色の扉をくぐった
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