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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
勇気の章
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輝けよ今度こそ

迷路………結構でかいな。さっきの川の水を利用して作られたってところで、高さは3メートルぐらいか。

そして、この迷路をすっぽりと覆い尽くすほどのドーム状の氷。………逃がさないってか?逆だ、お前が勝手に退路をたっただけだ。


「こんなんで俺が迷うと思ってるのか?全部ぶっ壊しながら進めばお前のところにすぐに行けるんだぞ?」


…………返事がない。そりゃそうだ、この迷路の利点は自分の姿を隠すことだ。声なんて出したら俺に位置を知られてしまうからな。あいつはバカじゃない。そんなお粗末なことをするわけがない。


………まっ、お前の位置ぐらいならすぐに分かるんだけどな。

俺は凍り始めた壁の方向へと走る!

お前が水を凍らせられるのは触っている時だけだろ?だったら俺の前の、1番最初に凍り始めた壁に沿っていけばお前に辿り着けるってわけだ。

やっぱりこの作戦は愚策だ。自分の位置を示し、壁なんてもので自分の逃げ道を塞ぎ、壁を壊して逃げることもできない。ましてやあの怪我だ。そう簡単に遠くには逃げれない。


俺の目利きが外れるってことは珍しいんだが………まぁ、俺も人間だ。常に相手の才能を見きれるってわけじゃないんだろう。


俺は複雑に作られた迷路を、壁に沿って進んでいく。

あいつは俺の前方にいた。あらかたの位置がわかっているから、壁を壊す必要もない。

首を絞めてばっかだな狩虎。


何度も行き止まりにぶつかるが、そんなの今の俺には関係ない。壁を伝いさえすればいいのだ。この壁に行き止まりはない。あいつの元に必ず繋がっているのだから。


………しかし複雑な迷路だ。行きどまりを何箇所も作っているし、90度曲がる部分が結構ある。1つの通路も短めだし………遠くを把握する手段を潰している。今の一瞬でここまで考えれたっていうのか?


………いや、違うな。これは事前に作られたものだ。今の一瞬で1平方キロメートル以上の迷路の構図をここまで精密に作られるわけがない。きっと、最終試験前にあらかじめ作っておいたんだ。最終試験に到着するのが遅かったのはきっとこれが理由だ。

………野郎、なんとなく試験内容が分かってたんだな?だからこんなものを事前に用意しやがって…………


タタタタッ

走り続ける俺。

おかしい、さすがに長すぎないか?迷路を作る前の俺とあいつとの距離は、15メートルかそこらだ。5分も迷路の中を走って辿り着かないなんておかしい。いや、仮に迷路の構造があまりにも複雑すぎて辿り着けないとしてもだ、霧ができてからすぐに水は凍ったんだぞ?どの壁よりも早く凍ったんだ。つまりこの壁は最短距離ってわけで複雑なのはおかしい…………


ピタッ


俺の足が止まる。

なぜかって、そんなの簡単だ。止まらざるをえなかったからだ。

俺の目の前には氷のドームがあった。つまり、この迷路の端っこに来ていたわけだ。壁はドーム状の氷にくっ付いていて、この壁の終着駅だってことになる。


「…………おいおい、どういうことだ。」


いや、どういうこともくそもないか。あいつがどっかの壁を凍らせた直後にその場から逃げ出したってことだ。そして、俺はマヌケにもそれに気づかずに凍り始めた地点のさらに奥の地点まで走って行ったってわけだ。…………いや、ちょっと待て。


俺は元来た道へと戻り、孰考し始める。

確かにそれが1番納得がいくが、穴がないというわけではない。そもそも俺がこの[壁に沿って敵を探す]方法を利用したのは、水の壁が生み出されて凍らされるまでの時間が短かったからだ。

そして、さっきも言ったように俺の元まで何よりも早く凍った壁って言うのはつまりあいつの最短距離ってことになる。その壁を俺の足で走って沿っていけば、怪我をしたあいつの元に向かうのにはそうは時間がかからないのは当然で、だから今回選んだんだ。

それなのに俺は5分間も走り続けて、挙げ句の果てにはドームの端まで来ている。これはどう考えてもおかしい…………


「…………ん?」


俺は地面に一本の氷の筋があることに気づく。それは水の壁の真下を通っていた。


「なんだこれは」


俺はさらに元来た道を歩いて行くと、今度は2本ほどの地面を伝う氷の筋を見つける。

……まさか……………


俺は迷路の中を走り回る!今度は地面を見ながらだ!

ここにも!ここにも!ここにもあるぞ!…………ああ、嵌められた!!


パリーーン!!!

俺は近くにあった氷の壁を殴る!


氷の壁を触って凍らせたんじゃない。あの氷の筋………きっと糸だ。糸を、大量の水の壁を通過するように這わせたんだ!そして、その糸を通して水を凍らせた。これなら発火点があいつの場所である必要はない。どこからでも水を凍らせられる!

…………あいつに時間を与えすぎた!急いであいつを見つけ出さねーと!!


パリンパリンパリん!!!

俺は氷の壁を手当たり次第に壊していく!

あいつの退路を封じるためにあえて壊さなかったが、もうそんな余裕をかましている暇はない!早急に見つけ出して早急に叩かなくちゃならない!あいつの危険なところは力じゃない、作戦を練ることのできる頭脳だ!


ヒュン!!

俺の頬を氷の刃が掠める!

………氷のドームから刃が飛んできやがった。狩虎が放っているわけはないだろう。きっと、壁の糸が俺の破壊行動によって切れて、その糸に引っ張られていた氷の刃が飛んできた。って所か。


抜け目がないな。時間を稼ぐだけじゃなくて俺にダメージを与えようともしてくるとは。

このお陰で利口な俺は、壁を壊すのは止める………てのがお前の考えか?

でもそうだな………こんなことされたら尚更…………


パリンパリンパリん!!!!

氷の壁を破壊するのを続行する!!!


攻撃してまで俺に壁を破壊されたくないって言うのなら、俺はどんどん壊すぞ!それだけ姿を隠したいんだろ?なら晒させてやるよ!人の嫌がることってすすんでやりたくなっちまうよな!!


幾本も飛んでくる刃を俺はかわしながら壁を破壊し続ける!

けれど、何本かが服と皮膚をかすめてしまい血が垂れる!

やっぱり腕を止めずにかわすのは難しいな。少しだけ掠める!………ただ、掠めた程度だ。こんなもの、ダメージとは言わねぇ!!



あらかたの壁を破壊することができた。あとは真ん中の部分だけだ。

………真ん中って所が俺は嫌だったんだ。真ん中ってことはすべての方向から距離が一定になる。要は全方向から攻撃される可能性が高くなるのだ。なるべくあそこには行きたくなかった。何が起こるか予想し辛いからな


だが、逆を言えば、俺が行きたがらないような所に逃げ込めばあいつは助かるわけだ。………それなら、ねぇ、行かないわけにはいかねぇだろ!


ズガガガガガガガガガガ!!!!

俺は真ん中の部分まで走り、真ん中の氷を壊していく!!


さぁて、何が飛んでくるんだ!?来いよ、全て俺が壊してやっから!!


ピュピュピュピュピュピュン!!!!!


全方向から無数の氷の刃が飛んでくる!!

1、2、3、…………ああくそ!数えきれねぇ!どんだけ多いんだよ!俺をここで倒そうって魂胆だな!?

………だがあいにく、覚悟は決まっていたんだ!!こんなの、簡単に全てぶっ壊せる!!!!


俺は先に飛んでくる刃を見極め、刃の側面を撫でる!

パリン!!刃が地面にあたり先端が砕ける!!

武術の心得はある!こんなトロい刃なんて、何本来ようがどうってことはない!!


パリンパリンパリンパリンパリンパリン!!!!!!

無数の刃が地面や、俺の拳と蹴りによって粉砕されていく!!

空中で粉々に砕かれる刃、3本同時に粉砕されるもの、地面で粉々に砕け散るもの。多種多様である。

……壊せていない迷路部分はあと少しだ。きっと、あの部分に狩虎は隠れている。つまり、この氷の刃の大群を捌ききれば俺の勝ちだ!!


…………しかし多すぎんだろ!!どんだけ用意してんだ!!………っ!


パリン!!

背後から飛んできた氷を肘で撃ち落とす!!


………さっきから思うが氷の割れる音が軽すぎる。水の量が不足しているのか?


ピシン!

俺が氷の刃をさばいていると、上空で氷にヒビが入る音が聞こえた。

………やな予感がするな。


俺はほんの一瞬上空を振り向くと、ドームの天井部分にいつの間にか巨大な氷柱のようなものが取り付けられていて、それを中心にして亀裂が円のように氷のドームに作られていた。

氷柱は俺の真上にある。


ピシッピシシ

ドームの亀裂が入った部分の氷が融解していく


「おいおいおい、まさか…………」


ヒュン!!

ドームの天井部分が落下してくる!!

まじかよ、こんなクソ忙しい時に!!


俺は飛んでくる刃の軌道を読み解く。

まぁ待て慌てるな。あんなバカでかい氷柱は拳の1発で壊せる!焦るな、焦れば相手の思う壺だ。


0.5秒後右斜めから飛んできている刃がぶつかる。その0.2秒後に左の氷が、そして0.3秒後に3本が同時に右左斜め左下から飛んでくる!


パリん!!

1本目の刃を拳で砕く!

そのまま俺は左肘で氷をはたき落とす。そして………


パシパシ!

2本の刃を掴み、残りの1本を2本の刃で挟んで壊す!!


…………あと3本!!3本さばいたら、あの天井が俺にぶつかる!!


パリン!!パリン!!

飛んでくる2本の刃を砕く!!そして………


パリーーン!!!

最後の1本を打ち砕く!!


さぁて、壊すか…………


俺の頭すぐにまで近づいてきていた氷柱に目を向ける。

あと0.5秒………さて、派手に行くか。


俺はジャンプし、そのついでに右足を頭上に持っていく!!


派手に散れ!!!


ビシッっっびしビシビシビシビシ!!!

グレンの蹴りが氷柱の側面に直撃し、氷柱にヒビが入る!そして………


パアァアアアンンンン!!!

氷が勢いよく弾け飛ぶ!!!

天井が壊れたことで強力な光が俺の顔にかかる。


………これで、あとはあいつの元に行くだ………


「………え」


俺の顔に再度影が落ちる。

俺の目の前に狩虎がいた。剣を俺に向けて、上空から降ってきていた。

天井にへばり付いていたのか?………いや、そんなことよりも


俺と狩虎の距離が短すぎる!

カッコつけて回し蹴りなんかして氷を砕いてしまったから俺はまだ空中だし、何よりも態勢が不十分だ!このままじゃ!!!


キン!!!!


俺はハンマーを出して、ハンマーの柄の部分で狩虎の剣を受け止める!!


「はぁぁぁあああ!?!?っぶっっっ!!」


驚いた表情の狩虎をハンマーで思いっきり殴る!!


ズガン!!………ズザザザァァアアア


狩虎は吹き飛び、氷のドームに直撃しても貫いてなおも吹き飛び地面を滑る


パリンパリン……………


氷のドームが崩れ落ちていく。


「くっそ………いままでハンマー出してなかったくせに。なんでいきなり使うんだよ。反則だろうが!!」


吹き飛ばされた俺は、起き上がろうと力を入れるが、うまく力が入らない。きっと殴られた衝撃で筋肉が硬直しているんだ。時間さえ経てば治るだろうが…………そんな余裕があるはずない!!


ジャリっ


グレンが俺の前まで歩いてくる。


「やはりお前は只者じゃねーよ。この俺に武器まで出させたんだからな。………ただ、惜しかったな。それでも俺は倒せなかった。試験不合格だ。」


巨大なハンマーを軽々と振り回すグレン。


「…………はっ、試験不合格だぁ?何を言ってるんだ。俺はまだ負けを認めちゃいないし、お前に倒されてもいない。勝手に不合格にされるのは困る。」


くっそ………めっちゃくちゃ腹が痛い!!腕にも力が入らないし………絶体絶命ってか?はっ、確かにそうかもしれない。今の俺じゃどうしようもない。


「勝手に不合格にするわけじゃねぇよ。お前をこのハンマーで叩きのめして戦闘不能状況に持ってくんだよ。………今回の最終試験者飯田狩虎、お前の負けでこの試験は終わりを迎えるってわけだ」


「…………ははっはははははは!!!!いいね、いいねぇ!その響き!!俺が最後の試験者か…………なるほど、確かにそりゃ名誉だ。俺にしたら頑張った方ってわけだ!」


「だろ?これを記念にして来年またこい。来年は今年よりも簡単にしといて」「ただそれは間違いだ。」


俺は痛む脇腹と、足に鞭を打って無理やり立ち上がる。


ブッ

その途中で幾らか血を吹いてしまったが………大丈夫だ。まだ血は足りている。俺はまだ動ける!!


「そもそも足し算が間違っている。いや、足し算てか引き算か?」


なぁ、そうだろう?なんでお前が落ちたことになっているんだ?お前は誰よりもこの試験に合格したがってたじゃないか。憧れがあったんじゃないか。夢があったんじゃないか。それに、お前はもう立派に脱皮したじゃないか。たったの一撃で、お前の全てを決めさせるな。


輝けよ、今度こそ。


「なぁ、エンタ」


「!!!」


キン!!!

振り向いたグレンは、エンタの一撃をハンマーの柄で防ぐ!………が!


ドゴォオオン!!!

グレンは木をへし折りながら吹き飛ばされる!!


「俺だってなるって決めたんだよ!!このまま、このまま終わらせられるわけがないだろ!!!」


涙を垂れ流しながら、剣を構えるエンタ。

もう彼に震えはない。もう恐怖はない。彼の目は、敵だけをしっかりと見据えている。


………輝けてるじゃないの今度こそ。


「ふふっ」


俺は思わず、嬉しくて笑ってしまった

あああああ!!!

そうだ、今回の話が終わったらもう書かないってことにしよう!そうしよう!そうしようと思います宜しくお願いします!!!!


重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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