解放してもこんなもの
俺はグレンに向かって走り出す!
体が頑丈なのが俺の唯一の取り柄だ!怪我なんて気にせず突っ込むのが自分の特性を生かした最高の戦略だ!
「どれ、いっちょお前の可能性ってのを見せてもらおうか」
………ちっ、イラつく人間だなぁ本当!
俺は相手の胴めがけて突きを放つ!
ピタッ
俺の剣が相手の胴に刺さる前に止まる
「3次試験の時から思ってたが、お前の身体能力は異常だよな。体は頑丈なくせに攻撃はしょっぱい。俺のたった2本指で止められるような攻撃なんだからよ」
グレンの親指と人差し指が俺の剣を掴んでいるのだ。全然ビクとも動かない。
「くっそ、離せ!」
ブシャァァアア!!!
俺は左手から水を出してグレンの胴にぶつける!
「イテテ………ジョット風呂のジェットを間近で受けてるようなダメージだな」
それでもグレンは動かない。水を浴びながら俺の剣を掴んで離さない
グイン!
そして、俺の体ごと剣を持ち上げ投げ飛ばす!
「失望させんなよ狩虎君。イリナと行動を共にしてるくせに、なんでお前はそんなに弱いんだ?」
…………なんで知ってんだこいつ!
「いやーー昨日はああ言ったが、俺は個人的にお前に興味を持ってな、ここ最近のお前の経歴を調べさせてもらった。そしたら第一類勇者とか第二類勇者とかと一緒に行動してるじゃないの。いやーー驚いたね俺は。勇者になる前から勇者の、しかもとびきり上位の奴と知り合いだなんて………」
俺はさっさと起き上がり、周りを見る。
丘か…………結構広いが、それでも行動が制限されているのは変わりない。この狭いフィールドで、俺が今できる行動を考えつかなくては…………
「そいつらを惹きつけるような人間だ。本当はお前強いんだろ?ウォーミングアップが足りなくて、まだ本気を出せていないっていうんなら………」
ガシャン!ガシャン!ガシャン!
上空から鎧が降ってきて地面に落下する。それはガタガタと動き出し自立し、まるで人間のような姿となった。
「いくらでもさせてやっから、体あったまったら呼んでくれ」
ガシャンガシャンガシャン!!
複数の鎧達は一斉に俺に向かって走り出す!
………ちっ、こりゃ今のままじゃやられるな。一段階だけ解放するか
カチッ
胸に付けた装置が音を立てる
体の隅々にまで微弱な力が流れ始める。
ボシュボシュ!
体の中で水が沸騰し、湯気が溢れ出る!
先頭の鎧の男が拳を振り上げる。
ウォーミングアップ?そんなもの必要ないね。だって俺は、
がシャン!!!
鎧のパンチが地面に激突する!
そして、その鎧と後ろにいた鎧の兜が跳ね上がる!
「常に煮えたぎってんだからな!」
空中に飛んだ俺は、空中に氷で足場を作り他の鎧達に突撃する!
ザシュ!
1つの鎧が斜めに裂ける!
鎧達は俺を視認すると拳を持ち上げ、迎撃態勢をとる。
………ふん、遅いったらありゃしないな。さっきまでの俺ぐらいじゃないの?
キンキンキンキン!!!
鎧達の間を水蒸気が駆け抜け、真っ二つになった鎧達が地面にカランカランと音を立てながら崩れ落ちる
残り3体………めんどくさい、一気に片付けるか
俺の足元から水が溢れ出て、3つの鎧を掴み上空へと持ち上げる!
パキパキ!
そして、水は凍りつき鎧達は空中に拘束された!
ザク!ザク!ザク!
そして、俺の手元で作られた鋭い、アイスピックのような氷が鎧達の兜に突き刺さる!
カランカラン………と鎧の関節部の接合が外れ地面に落下する。
「………さて、ウォーミングアップ完了だ。少し温めすぎて湯気が出てるが気にしないでほしい」
「………変わりすぎだろ。さっきまであんなに遅かったくせに、いきなり速くなりやがって………階級が変わったようにしか見えねぇぞ」
笑ったままのグレン。まだ余裕があるのだろう。………まぁ、確かにそうだ。まだまだ力の差がありすぎる。
「階級は変わっちゃいない。準備運動のおかげで体があったまっただけだ。スロースターターなのよね、俺って」
俺は剣を腰に収める。
「しかし湯気ね………どっから来てんだろうなその熱。まだまだお前には謎があるようだな」
俺は人差し指をグレンに向ける
「謎なんてないよ。たった1つだけ隠していることがあるだけだ。」
ボコボコボコッ
体の中で水が沸騰する!指先の水の魔力が急激な体積膨張の圧力によって、外へ外へと押し出される。
だがしかし、まだ発射しない。限界まで圧力をためなくてはいけない。
グツグツグツグツ
身体中から蒸気が噴き出る!
………今だ!
バシュッッッ!!!
人差し指から放たれた水は、弾丸のようにグレンへと飛んでいく!
「………ちっ」
さすがのグレンもダメージは負いたくなかったのだろう。その水をギリギリでかわす!
だろうな、右側に跳んだらすぐにかわせたもんな。
俺はその場から勢いよく飛び出し、グレンに抱きつき、そのまま丘の外に飛び出す!!
「………っこの野郎!」
「あのステージは俺からすればちと狭すぎるんでな!一緒に落ちてもらうぞグレン!」
ドゴォォォオンンン!!!
勢いよく地面に落下する!
「イテテて………それじゃあ戦闘開始といこうじゃない」
俺は剣を引き抜き、立ち上がろうとしているグレンに切っ先を向ける
「無茶しやがるな本当………怪我が怖くないのか?」
起き上がったグレンに向かって剣を振るう!
ブンブンブンブン!!
高速の真っ青な軌道がグレンを捉えようと空中に複雑に描かれるが、それでもグレンを捉えきれない!
「怪我?全然怖くないね!寝れば治るものに一体なぜ恐怖しなきゃいけないんだ!それこそ俺には意味がわからんよ!」
俺はさらに水を出して操る!
ブンブン!ギュイン!ズガガガ!!
水が地面をえぐり、グレンの行動範囲を削り、俺の剣で攻撃していくがそれでもかわされる!!
良いとこグレンの髪の毛を切るぐらいだ!
四方から水を出し、グレンを水が襲う!
それをグレンは後ろに飛ぶことでかわす!俺はクロスした氷を凍らせて、それを思いっきり蹴飛ばし氷の破片をグレンにぶつける!
「………ちっ、目障りだな!」
それをグレンは両手で払いのける。
……隙がようやく出来た!
俺は斜め下から、胴体をバッサリと断ち切るように、もはや躊躇いも何もなく剣を振り抜く!
ガキン!!
グレンの肘と膝に剣が挟まれて動きを止められる!
そして、グレンはもう片方の手で剣の側面を掴み、俺を引っ張る!
メシッ!
グレンの蹴りが俺の脇腹を捉える!
そして俺はそのまま吹き飛ばされる!ああ、なんだこの蹴り!1発が重たすぎるだろ!!
「治る治らないじゃないだろ。今俺に蹴らたとき結構痛かったろ?まさか感じないってわけではねぇだろうしな」
俺は剣を地面に突き刺し吹き飛ぶのを止めて、再度グレンに突っ込む!
「ああ、痛えよ!めっちゃくちゃ痛えよ!お腹蹴られたんだぜ?俺の体は筋肉で守られているわけじゃないからな、骨に響いて軋むんだよ!」
ボシューー!!
体から噴き出る水蒸気の量が増加する!
シュシュシュシュ!
空を切る斬撃!ダメだ、やはり馬鹿正直に突っ込んでるだけじゃ勝てねぇ!
「だったら!!」
グレンは俺の斬撃をかわすと、俺の剣を握っている手を掴む。そして
だだだダダダダダッ!!!
俺の腹に何発もの蹴りを入れる!!
「これでも食らって悶絶してろ!!」
グレンの最後の蹴りが俺の腹にめり込み、再度俺は吹き飛ばされる!
ズザザザぁぁあ!!!
俺は地面を滑り、摩擦によって滑るのが止まる。
いっっってぇぇぇえ!!!折れた!絶対これ骨が折れた!なんだよあいつ!少しぐらい手加減してくれてもいいじゃん!1発ぐらい攻撃食らってくれてもいいじゃん!てか1発だけ食らってください!剣が体に1発でも刺さってくれたら勝機が見えるんだよ!!
俺は腹を抱え、剣を杖にして起き上がろうとする。
ガハッ
少し、口から血を吐いてしまった。
クソォォオオ!!いってぇよ!!インドア系男子の俺になんて数の蹴りを叩き込んでくれやがったんだよ!!
「どうよ?さすがにいまので最低1本は骨が折れただろ。まだ立ち向かってくるのかい?」
グレンはスタスタとこちらへと歩いてくる。
………絶対あの重りハンデになってないな。
「………さっき言ったろ?是が非でも試験に合格してやるってな。骨が1本折れた程度じゃ匙は投げないよ。………あっ、でも[1本でダメなら2本以上折ってやるぜヒャッハー!!]とかはなしね。体の危機に反応して色々とやばいことになるから」
俺は起き上がる。けれど、ダメージが大きすぎて剣を地面に刺しっぱなしで体を支えないといけない状態だ。
くそっ、第一段階を解放したら上位聖騎士ぐらいの力を解放できるはずなんだがな………それでも一撃を与えることができないってのか。
「………それじゃ仕方ない。頭でも揺すって気絶させるか。俺は優しくてな、相手が嫌がるような事はやらないんだ」
よく言うわ。いままでも、今回の試験も狂ったような難易度を設定してたくせに。………やっぱあれか、イリナといい第二類勇者ってのはサド野郎が多いのか?
俺に向かって走り出すグレン!
ああ、くそ!速い!こんなヨボヨボな体じゃ絶対にかわせないな…………
ズゴゴゴゴゴゴゴ
地鳴りのような音が聞こえ始める。
バキバキバキ!!
そして、それにともない遠くから木が押し倒されるような音も聞こえ始める。
時間を増すごとに音は大きくなり、地鳴りは更に大きさを増していく。
「………なんだこりゃ、でっかい地震か?」
走るのをやめ、辺りを見渡すグレン。
さすがに自然災害中に試験を続行するわけにはいかないよな。そこは試験官、ある程度の、本当に本当に必要最低限の常識はあるらしい。
ただ、まぁ、………そのなんだ、実はこれって地震じゃないんだよね
ザパーーンンン!!!
高さ20メートル以上の波が突然姿を表す!!
体内に何十本もの木々と数トンの泥を蓄積した茶色な濁流!何十匹か生物も巻き込まれてしまったのだろうか、ほんの少し赤みを帯びながらこちらへと迫り来る!
「なんだよこれ!………まさかお前が!」
だいせいかーい。ここら辺の川を堰き止めて大量の水を貯めておいたんだ。いやーーこのの規模になると進行方向の修正ぐらいしかできなくてね、あの丘から引きずり下ろす必要があったのよ
「かわせないならお前をどっかにやればいいんだよ。何も俺が動く必要はない。そうだろ?」
ザプーーンン!!!!!
さすがのグレンでもひとたまりもなかったようだ。波はグレンを巻き込む!濁流の乱回転に巻き込まれグレンは濁った水中でグルングルンと回転し続ける!
俺は自分の近くに来る水を氷にして濁流から身を守るが………濁流の勢いが強すぎてそんな氷1秒ももたない。だから俺は永遠と氷にし続けて濁流から身を守り続けた!
ザァァァアア…………
濁流が引き、辺りにはズタボロの地面と木だけが残った。
怪我はしないだろうが、さすがのグレンでも遠くに流されただろ。今のうちに準備を整えて…………
ジャリ
地面を何者かが踏む音が聞こえた。
…………やっぱ出鱈目だなこのレベルまでくると
「初めて津波に巻き込まれたわ!いやーーすごいなあの水の中、洗濯機の中に放り込まれたような感覚だったわ。………ただ、まぁ、そんだけだ。あの中から抜け出そうと思えば簡単だったな。外に行こうとするエネルギーがあの波には強すぎる。簡単に出れたぞ」
「やっぱあんたら出鱈目だよ本当。たかが水程度じゃあんたらを倒すことができないからな。イリナの時もそうだ。窒息させようとしたら合掌の衝撃で水を吹き飛ばされた。なんだよお前ら、反則にもほどがあるだろう」
ボシューー!!
俺は再度体から蒸気を噴出させる。
「何言ってんだ、お前が弱いだけだろ。………あっ間違えたわ。俺が強すぎてお前が弱すぎるだけだ。圧倒的戦力差ってのは拭えないもんだ」
…………確かにそうだな。こればっかりはどうしようもない。
仕方ない、
「だがしかーし!どんな戦力差があろうとも、俺はお前に勝つと宣言してしまった。宣言したからにはやる男、飯田狩虎である。俺の作戦がたった1個で終わると思うなよ?」
プランBと洒落込もうじゃないの
ボシューー!!!!
俺の体から大量の蒸気が噴き出し辺りを蒸気で満たす!
「くっそ、なんも見えないな」
そうだろうそうだろう?慶次さんじゃないんだ。たとえ視力が良かろうが、この水蒸気の中、俺を探すのは至難の技。そして…………
ズァァアアア!!!
水が地面から噴出して巨大な壁を築き上げていく!
しかし、壁は横一列でも縦一列でもない。クネクネと曲がり、複雑な形だ。まるで……………
さっきの濁流の水をいくらか拝借した。結構巨大だぞ?俺が作り出す………
ピキピキピキ!!
複雑に入り組んだ水の壁は奥の方から次第に凍りついていき、全てが凍りついた。
次第に霧が晴れていき、周りが見えるようになってくる。
「さぁて、楽しんでいただこうじゃないのグレン。この俺が作ったとびきりの迷路ってやつをな!」
グレンは巨大な迷路の真ん中に1人、ポツンと立っていた
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