表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
勇気の章
PR
61/364

天才の思考を知りたい

「………もしさ、自分がウサギを飼ってるとするじゃない?真っ白で、パッと見安そうなのに値段がうん十万のやつ。」


私は手に持っているホットミルクを啜る


「そんな大事にしてきたウサギが逃げ出してしまった。と…………2人ならどうする?ウサギが帰ってくるまで待ってる?それとも探しに行くの?」


私はカップを置き、2人の方を見る。


「……………………」


2人とも目が点になって唖然としている。いや、胸美は笑顔のまま固まっているから目が点ではないか


「…………なにさ、なんか私の質問変だった?」


2人の反応が気に入らなかったのでムスッとする。


「いやいやいや!変じゃないっすよ全然!なにもおかしなことは言ってないっすよ!」


黒垓君は慌てて手をブンブンと振る。うーーん、そこまで全力で否定されるとなぁ、なんか嫌な気分だなぁ。


「変ではなかったですよね。どちらかというと私はストレート過ぎて驚いてただけですしね」


胸美は机に置いてあったコーヒーを口まで運び啜る。コーヒーの奥深い匂いが鼻を包む。あのコーヒー豆の匂いと言うのか、別のものの匂いと言うのか…………シンプルではないんだよね。なんか色々なものが混ざっている感じのやつ。個人的にあの匂いは好きだ。

まぁ、苦いから飲まないけれどね。もっと甘かったら最高なのに。


「………ストレートって何さ。[もしこんなんだったらどうする?]って質問をしているだけだけど?何かの例え話でもなければ比喩でもない。ほんのちょっとの興味話だよ」


「………やっぱりあれっすねー。人って周りの人間の影響を色濃く受けるものなんすね」


「嘘下手くそだなー」という小言が聞こえた。


ガン!

私がテーブルに手を振り下ろすとテーブルは粉々に吹き飛んだ。


「…………もう一回言ってごらん?」


私は笑顔を黒垓君に向ける。

怒ってないよ?私は。うん、全然怒ってない。私って寛大だからね、コンナノジャキレナイヨ


「……………さぁて!それで、えーっとなんの話でしたっけ?逃げ出したウサギがなんたらかんたらとか言ってたっすけど」


黒垓君は能力でテーブルを持ってきて設置する。

ここは勇者領内のとある喫茶店だ。ここ最近オープンしたばかりだけれども結構人が入っているから繁盛しているのだろう。


「だからーー。逃がしたウサギを捕まえにいくか、何もせずに待っておくか、どっちかって聞いてんの」


「ちょーっと!その拳はしまってくださいよ!イリナさんのパンチはシャレにならないんすよ!第二類勇者の中で1番腕力あるんすから!」


「…………その言い方だとまるで私がゴリラみたいじゃない。」


私は拳に更に力を加える


「そ、そういうことを言ってるんじゃないっすよ!才能があり過ぎて格が違うってことを言いたいんすよ!オラとイリナさんとじゃ確かに階級差は1個しかないっすけど、ステータス面から見れば雲泥の差ですからね!?」


「…………まぁ、許しちゃる」


私は拳を引っ込める


「ふぅーーー…………それじゃあ質問に答えますよ。そうっすねーーオラならさっさと探しに行きますね。愛情深く育てた家族みたいなものなのなら、そりゃ大切ですからね。必死こいて探すと思いますよ」


黒垓君は店員さんを呼び止め、注文を取る。さっき私がテーブルを壊した時に彼の飲み物も一緒に吹き飛ばしてしまっていたからだ。


「なんつったってオラは純愛タイプっすからねぇー。イリナさんは知ってるでしょ?」


「いや、知らないんだけど…………」


黒垓君にはそんなイメージないなぁ。どっちかっていうと二股とか余裕でやってそう


「そうですね、黒垓君は変な子なので変な人にしか恋愛感情わきませんもんね。」


私と黒垓君が喋っていると染島さんが補足を入れてくれる


「この子、昔っから変人を好きになっちゃうんですよ。[普通の人だとオラとは釣り合わない。いや、釣り合わないというか多分オラについてこれない]とかなんとか言ってねぇ、色んな人達を振ってきたんですよ」


「…………え?胸美と黒垓君って昔からの顔なじみなの?」


それも初耳なんだけど


「………そうっすよ?なんせ師匠をワープさせる時に座標を指定しなきゃいけなかったじゃないっすか。その時に信用に足りる人間の元に飛ばしてあげないと、敵に囲まれちゃったりしちゃうっすからね…………まぁ、結局戦う羽目になったんすけどね」


「…………あのさ、私それ聞いてないんだけど」


「あれ?そうっすか?………あーーそういえば言ってなかったっすね。まぁ、オラの能力をある程度理解してくれれば簡単にわかるだろうと思って説明するの忘れてました」


あははーーと笑う黒垓君。うーーん、笑顔が素敵だ。

まぁ、知らなかったってのはショックだけれども正直重要な情報じゃないだろ。知っていようが知らなかろうがどうってことはないかな。


「………で?胸美、昔の黒垓君って一体どんな感じだったの?教えて欲しいなぁ」


「なっ!?ちょっ、それはダメに決まってるじゃないっすか!オラだって恥ずかしいことの1つや2つぐらいはあるんすよ!?聞かないで欲しいっすね!」


自分の過去を聞かれまいとして慌てふためく黒垓君。

いままで慌てる様子とか全然見れなかったからなぁ、可愛いなぁ。本当に男の子なのか?黒垓君は


「だ、大体梅雨美もそんなオラの昔の話を語りたいとか思うわけないじゃないすか!」


「そうですね…………あれは去年の冬の出来事でしょうか?いつものように学校から帰ってきた黒垓君は………」


「なんで語り出す!?ねぇ止めてよー梅雨美ーー。意地悪しないでよお願いだからぁ!」


黒垓君は胸美にすがりついて泣きわめく。

そ、そこまでして聞かせたくない内容なの!?………すごく気になる!


「あ、ああ!そう言えば梅雨美はまだウサギの奴答えてないよね!それ答えなきゃダメだよ!うん、絶対に答えた方がいいと思うなぁ!」


「…………そうですね、そうするとしましょうか」


そう言うと胸美は話を変える。

くっ、まさか私のどうでもいい話でこんな興味深い話を遮ってしまうとは………後で直接聞き出すしかないか。


「ウサギですか……………飼ったことがないので勝手は分かりませんが、高等動物ではあるんですよね?…………それならばそうですね」


梅雨美は唸りながら頭を捻らせる。

そこまで真剣に答えてくれなくてもいいんだけどなぁ。かーるくでいいんだよ?こんなどうでもいい質問


「………放っておきますね。追いかけるほどのことではないでしょう」


「ふーーん、淡白だね。黒垓君みたく探しに行かないの?自分で必死に育てたんだよ?いなくなったら大変じゃない」


ペットって逃げるからね。よく見かけるもん、電柱とかに貼られた[このペット探してます]ってやつ。動物なんだからそりゃ人間なんかに束縛されたくないよね


「………ぷっ、あはははは!イリナさん、貴方はウサギが自分の元からいなくなる事が不安なんですか?」


胸美は腹を抱えて笑う

………こんなになって笑う胸美を初めて見た。


「てっきり私は車にひかれるのが心配だとか、心ない人間に傷つけられるのが心配だとか、あずかり知らぬところで怪我をする事に対して危機を持っていると思っていたのですが…………なるほど、そんな些細なことなのですね」


「なによ、そんなに笑うこと?ペットなんて所詮は動物でしょ?人間ほど頭脳がないから育てられた恩義なんて感じないでしょ。どうせそこらへんにいるメスにでも惹かれて家を飛び出すのがオチだよ」


「それは違いますよ。」


さっきまで笑っていた胸美が真顔になる


「私はペットなんてものは一度も飼ったことがないので確かなことは言えませんが、それでもこれだけは断言できます。[バカじゃない動物もいる]。動物にも個体差はあります。天才も出てきますし、落ちこぼれも出てきます。それなのに人間とは違って動物は全て[バカだ]なんてみなすのは間違いです。それに人間もバカですよ。なぜなら人間だって所詮は動物ですからね。私から言わせれば人間を動物と区別するのは傲慢ですよ。ただですらこの世には自分の欲望を満たすためだけに犯罪を犯す人間がいる訳ですから、動物。もしくは獣と言っても構いませんね。」


口休めなのだろうか、胸美はコーヒーを啜る


「私がもしペットを飼うときがあるとしましょうか。その時私はその動物の可愛さじゃなくて知性で買うことを判断すると思います。私が欲しいのはアイドルではございません。家族の一員です。人間のように愛情を注ぎたいんです。」


なんだろうな、これがまさしくペットは家族だって感じがする。可愛いからって訳じゃなくて、頼りになるから飼う。そんな感じだ


「そんな私が飼ったウサギが逃げた時、私は多分こう考えるはずです。[きっと彼には何か事情があったのだろう。どうせいつか帰ってくるだろう]。私のペットは私から受けた恩義を忘れるはずがありません。賢いのであれば確実です。」


なるほど、確かに賢いペットならそうなるね。南極物語とかの犬もそんなんだったもんね。


「…………イリナさん、貴方も同じなはずです。貴方がペットを飼う時、貴方がそのペットを見るのは上っ面だけのステータスじゃない、そのものの本当の性格と力量のはずなんです。…………これは推測ですが、多分イリナさんは一目惚れをしたことがないはずです。よく品定めをするのではないでしょうか?」


「………なんでわかるのよ」


「簡単ですよ。私が大学で専攻しているのは脳科学と人間心理学ですからね。人の心を見るぐらい朝飯前ですよ」


胸美は素で人の心を読み取ることができるんだ。それでいて魔力でさらに人の心を見透かすわけね。道理で心理を読むのが一流なわけだよ。


「貴方のペットはバカじゃないはずです。貴方への恩義は決して忘れることはない、なぜなら貴方のその優しさに彼は命を救われたのですから。これは比喩でもなんでもない、文字通り命を救われたのですから」


……………バカじゃないか。まぁ、確かにバカではないな。天才だよね、どう考えても。


「だから私はペットを待ちます。自分の会いに行きたい気持ちを抑えてとにかく待つのです。それが1番だと私は考えます。」


私はホットミルクをスプーンで混ぜながら胸美の話を聞いていた。

言っていることは一理ある。一理あるってか道理にかないすぎているぐらいだ。身につまされるってのはこういうことを言うんだろうね、やっぱり大人なんだなぁと実感してしまう。


「………まっ、私は多分ペットなんて飼わないでしょうからこんなこと考える意味はないんですけどね。仕方なしに自分の意見をでっち上げたという感じですから、そこまで参考にしないほうがいいですよ。たかが嘘ですから。」


「……………いや、参考にさせてもらうよ。大人の意見は正しいことが多いからね。生きた教科書とはまさにこのことだよ」


私はいい感じに冷めたホットミルクを啜る。

さっき飲んだ時少し熱かったんだよね。


「おっと?オラの意見も参考にしてくれても良いんすよ?天才肌のオラが思ったことなんですから間違ってはないはずですし」


「何言ってんだか………自称天才の意見は参考にしないって私は決めてるからね。そういう人に限って、自分にしか当てはまらないような意見を言うからね。万人にはあてはまらないものだからね、当てにならないのよ」


自称は危険だね、バカでも[自分は天才]だと言えるのだから。


「そんなはずがないでしょうに。オラのあだ名は[やればできる子白紙のペーちゃん]っすからね、そこらへんの天才どもと比較されちゃオラが安く見られちまうっすよ」


「あーーなんかようやく分かってきたわ。胸美、こういうところが黒垓君の嫌な過去に繋がってるの?」


なんだろう、ミフィー君みたいな雰囲気を感じる。確実に何かやらかしている感じだ。


「そうなんですよ。あれは確か4年前の出来事だったでしょうか?私が彼の元に遊びに行った時、私はとんでもないものを見てしまったんです…………」


「ダメーー!!なんでとんでもないことを言おうとしてるんすか!?ダメに決まってるじゃないすか!もうオラはあの過去を封印したいんすよ。分かる?今まで念入りにボディーガードまで雇って守っていたブラックボックスを梅雨美は無断で開けようとしてるの。ボディーガードを暗殺して開けようとしているの。本当そういうのはダメっすよ!見ないでって言ってるんだから見ないで欲しいなぁ!言うなって言ってるんだから言わないでほしいなぁ!」


黒垓君はあまりの恥ずかしさにのたうちまわる。

ええ、過去を話してすらいないのにここまでのたうちまわるなんて………どれほど恥ずかしい過去をしまっているんだ?


「確かにそうですね…………人が嫌がることをやるのは良くないことですもんね…………そう言えば昔の黒垓君のあだ名知ってます?さっきはでっちあげで[白紙のペーちゃん]とか言ってましたけど、本当はもっと凄いのが」


「ダメって言ってるよね!!??そうやっていつもいつも意地悪ばっか言ってきてーー!!!もう知らない!オラはもう梅雨美のことなんて知らない!!」


腕を組んでそっぽを向いてプリプリ怒る黒垓君。そして、それを見てクスクスと笑う胸美。

………なんか微笑ましいなぁ、兄弟みたいだ。それになんだろう、この3人での会話ってのもなんだかんだで新鮮だ。黒垓君は男だけれども、なんか仲の良い同性同士で喋ってるみたいな……………


「…………おや?飯田くんからテレパシーが飛んでいますね。暇でも持て余しているのでしょうか?」


黒垓君を見て2人で笑っていると、胸美の魔力がミフィー君の発信をキャッチしたようだ。


「はいはい、梅雨美でーす。飯田君どうしたのですか?」


…………うわ、ぶりっ子が出た。

そう言えばテレパシーって声を出す必要ないんだよね。てことはこれはわざと声に出してるのかな?それにミフィー君の声も聞こえるし………うーむ、こんな使い方もあったのか


「いやーーーひと段落ついたので少し声を聞いておこうかなと。」


「ひと段落ついたということは試験は順調ってことですか?」


「いや…………順調ではないんですよ。さっきまでモンスターに追っかけられてましたからね。1時間ぐらいですかね?50匹くらいのモンスターの塊に襲われて…………1匹ずつ処理していったんですけどさすがに辛いですね、もう服ボロボロですよ」


「服がボロボロですか…………損傷具合はどれくらいですか?肌が露出しちゃったりとか?」


おい、なんでそんなこと聞くのよ


「いやんエッチ。汚れを知らない無垢な男にそんな過激なことを聞いちゃダメですよ。そういう男は些細な衝動で獣に豹変するのですから。[さくらんぼ 揺られ抑える うぶ心 されども増すは 熟れる身の丈]ってやつですね」


…………おい、なんだその会話


「…………ねぇ梅雨美。君達ってもしかしていつもテレパシーでそんな下世話な話をしているの?」


「…………………え?なんでイリナの声が聞こえるの?ちょっと待って?まさかこれって染島さん以外にまる聞こえ?……………………えーーただいま、この電話は使用されておりません。御用のある方は我が家の投函ポストに要件を書いたハガキでも入れといてください。それでは交信途絶交信途絶、あーーー目の前が砂嵐ダーー!!」


そんな言葉が聞こえると、それ以来ミフィー君の言葉は聞こえてこなかった。


「……………さて、胸美。少し聞きたいことがあるんだ。なに、これもさっきと同じで他愛ない質問だから安心して答えてね。………もし目の前に、下ネタを公共の場で垂れ流すクソザルがいたとして、胸美ならどうする?私は正直な答えを求めているんだよ。私はそれを少しだけ参考にしようと思ってるんだ」


私はこんなことじゃ怒らない。もうね、全然怒らないよ。体から少し雷が漏れてるような気もするけど………きっと気のせいだ。




「……………やべぇ」


俺はだだっ広い森の中で1人ポツンと呟いた。

せっかく死地をくぐり抜けて来たってのになんでまた新たな地獄を召喚してしまったんだよ………


目の前が真っ白になった。お風呂とか上がって立ちくらみした時のあの感じだ。もう本当になにも見えない、光なのか闇なのかもわからないような視界だ。


染島さんと会話するときはいつもアダルティーな単語を利用していたのがばれてしまった!くそっ、こいつはやばいぞ!絶対イリナがきれる!なんだかんだ言って彼女はピュアだからなぁ、下ネタとか絶対に許さないタイプだろ。


俺は光なのか闇なのかわからない視界の中目的地へと歩いていく。

まぁ、落ち込んでいたところで今は試験中だ。急いでゴール地点に行かなくては。ただですら俺は他の試験者よりも出遅れているというのに……………


フラフラしながら歩く


ああ、もう。1時間も走りっぱなしだったから足に力が入らない。さっきの他愛ない下世話な会話でエネルギーを補充しようと思ったのに………これじゃあんまりだ。少し休憩しようかな


俺は登れてかつ、寝れそうな木を探す。

枝が絡み合って体を支えることができそうな木だ。それでいて幹が太くて葉が生い茂っていて隠れられるような……………お、

この葉の間から結構大きめな木が離れたところに見える。

1、2キロと言ったところか?今はもう夜中だし手頃な睡眠スポットじゃないの、

俺はそこを次の目的地として歩き始めた。



「………はーー遠くから見たらそこまで大きく感じなかったけれど、こう、近くで見ると大きいなぁ」


すっごく大きな木だった。枝が俺の体以上の太さだ。これなら安心して身を任せて寝れるな。

今にでも動き出しそうな木だ。幹から生気を感じる。力強く脈を打っているのではないかってぐらい、見ているだけで生命を感じる。俺の家の周りが自然だから、今世代の子供たちよりは自然に慣れしたんしできたから分かるが、ここまではっきりと[生命]を感じる樹はそうそうない。

青々とした鮮明な葉っぱ、地面と深く絡みついた根っこ。これならばきっとカトリーナが来ても吹き飛ばされることはないだろう。

見上げてため息をついてしまうような巨木だ。少し、こんな所で寝るのは悪い気がしたけれど………まぁ、寝たいんだよ俺は。そんな道徳観とか捨てたからね?寝たいから寝る。これのなにが悪いって言うんだ。


俺は木の登りやすそうな部分を探す。

剣で突き刺して登ることも出来なくはないが、この木を痛めつけるのはさすがにちょっと気が引ける。この木を手にかけるつもりはないが、手と足をかけるつもりは満々なんだ。


うーーん、ここは少し凹みが少ないなぁ。もう少し深くて多い方が…………

俺は回り込んでさらに良い場所を探す。

……….おっ、ここなんて良いんじゃないの?丁度窪んでいて登るにはさいて………っ!?

俺はすぐさま一歩後ろに跳ねる!


木には死体が横たわっていた。身体中に穴が開けられて血が垂れ流し状態だ。顔なんて苦痛で歪んでいる。きっと、生きたままこの無数の穴を開けられたのだろう。

普通こんなに血が流れていたら匂いで気づくはずなんだが………きっとこの森の匂いで打ち消されていたのだろう。それに、多分、この死体がまだ新しくて、新鮮な血だからだろう。まだ酸化されていない真っ赤な血だ。時間にして1時間も経っていないな。


俺はぐるりと回りを見渡す


別に死体がなんだとか女々しいことを言うつもりはない。こんな暴力の世界だ、盗賊やらモンスターに殺されたなんてきっと少なくないはずだ。

…………けれど、こいつの顔に見覚えがあるって言うのが俺の心を不安にさせる。こいつはさっきまで俺と同じように試験を受けていたやつだ。名前までは分からないが顔は覚えている。俺は一度見た顔は忘れないからな。


俺は水を周りに張りめぐらせる。


この試験中に、ドサクサに紛れてライバルを削っているやつがいる。魔物でこんな無数の穴を開けれるようなやつを俺は見たことがない。人間の、しかも魔力の仕業だ。完璧に試験者を邪魔しているやつがいる。


…………これからがマジで命懸けだな

重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ