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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
勇気の章
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ああ、建てるかな建てるかな。

「オラオラ邪魔だ邪魔だ。お前らがちんたらやってたせいで後がつかえてんだよ、さっさとステージから降りな」


俺はグレンに急かされるようにステージから降ろされる。

………俺だって一応は怪我人だぞ?少しぐらい気遣ってくれても良いじゃない。


「か、狩虎!お前そんなに強かったのか!?」


ステージから降りた俺に沢山の人間が群がる。そこには当然エンタもいた


「…………あのなぁ、試合見てたんだろ?あれはどう考えても筧君の方が俺より強かったろ。俺が勝てたのはたまたまさ」


俺はその群衆からさっさと離れて亜花君のところへと向かう。


「俺を囲んでないで、友情の深い筧君のお見舞いにでも行ってやるんだな。君達は[筧君が強いから]群がってたわけじゃないんだろ?友情の為にも行ってやりなよ」


「………………」


俺がそう言うと、試験者達はなんとも言えない顔でその場から離れていった。筧君の所へ行こうとする奴は…………いなかった。

全く………なんつー場所だよここは。利害関係だけかよお前らの人間関係は。


「なぁ、狩虎………その…………さっきは」


「謝るな。なんで俺ごときに謝るんだよ。お前もまさか、俺が筧君を偶然倒せて、俺が強いと錯覚して態度が馴れ馴れしくなるのか?そう言うのは俺求めてないから」


「い、いや!そうじゃないんだ…………頑張ってるのに俺がチャチャ入れて、やる気をそいじまったかと思って…………」


「…………まったくだな、頑張ってる人間に対してあの言葉はないよな。」


頑張ってる人間に諦めろは暴言以外の何物でもないだろう。


「他人が全員お前と同じ思考だと思わないほうが良い。いや、思考じゃないな………お前と違ってビビリだと思わないほうが良いぞ。お前ぐらいだぞ?そこまで頭でっかちな臆病者はな」


少し言い過ぎか?…………いや、これぐらいが丁度いいだろう。


「お前は努力してんだろ?それなら必然的にお前には自信が生まれるはずだ。そして、その自信は勇気へと変わる…………はずなんだ。なのになんでそこまで臆病なんだろうな………俺にはイマイチよくわからん」


「なんでって…………俺も分からんよ」


うーーむ………なんだろうな、一体何がエンタの邪魔をしてんだろうなぁ


「………そう言えばよ、お前、まだ魔力が発動してないんだよな?」


「ん?そうだが………」


「………お前さぁ、勇気なんてそんな大層な言葉以前に何かに立ち向かったことないだろ。」


魔力の発現なんてこんな俺でも出来たんだぞ?なんでそんな筋肉があるエンタが出来ないんだよ


「た、立ち向かったことぐらい…………あ、あるぞ?」


「…………いいや、ないね。さっきの筧君の時も、亜花君の時でもそうだ。お前は戦う前にすでにその戦いを放棄してるんだよ。傷つくのが怖いんだろ?」


まぁ、俺も怪我をするのはやだな。だって痛いもの。腕をバキバキにしてからマジでそう思うようになった。いやーー骨折って本当痛いな。そう言う時だけ神経の伝達を遮断したいよね。


「傷なんて布団に入って寝れば治るだろ。なんだよこの世界、医療設備に関してはパーフェクトだな」


なんなんだよこの世界の布団は。もしかしたらこの世界の布団だったら真面目に[寝る子は育つ]んじゃないのか?


「安い言葉で悪いが、傷つくのを恐れてちゃ何も前には進めないぞ。人生なんて茨の道なんだからな。それに勇者の人生を選ぶなんて薙刀の道を突き進んでるようなものだ。怪我しないなんて言ってるほうがバカだぞ」


俺はさっさと亜花君の所へと向かう。


「まっ、頑張れよ。憧れがあるんだろ?それならば今必死に成長するこったな」


「…………なぁ狩虎」


俺がその場を去ろうとした時、エンタが呼び止める。

………さっきは呼び止めなかったのに、何か心境に変化でもあったか?


「お前は本当に俺とタメなのか?言葉の重みが俺なんかと全然違くて………どこで俺はお前みたいなまともな人間じゃなくなったのかな…………」


…………それは間違いだなエンタ


「俺はただ道徳の教科書に書いてあることを理解してそのまんま言ってるだけだ。言葉に重みなんてこれっぽっちもないよ。それにな、俺がまともな人間なわけないだろ?失敗ばっかりだぜ?何回死にかけたか分からん………まぁ、」


死にかけたってか死にに行ったっていうのかな…………よく分からんな


「そのお陰で今俺は、俺なんかよりもよっぽど人間が出来た仲間に恵まれたからな。その影響がほんの少しだけ有るのかもしれない」


「……そうか……………」


神妙に頷くエンタ。

まぁ、仲間に関しては、失敗ばかりの俺の唯一の成功とも言えるな。そこに関しては俺は誇らしいぞ


「それじゃあ試験頑張れよ。お前の頑張ってる様をみといてやるからな」


俺はそう言うと、ダーツの的を作っている途中の亜花君に合流する。


「おう!」


良い返事だ…………頑張れよ




「よっしゃー、次は第37試合目。エンタ対クランカだ。俺も飽きてきたんだ、さっさと終わらせてくれ………よーい、どーん」


「………おっ、さっさく始まったな。」


俺は作業をやめて顔を上げる。


「………?どうしたのお兄さん?」


一緒にダーツを作っていた亜花君が、途中で作業をやめた俺の方をキョトンと見つめる。


「んーーとね、俺の友達が今戦っているんだよ。あのゴリゴリなおっさんみたいな人」


「へーーー…………なんか、老けてるね!」


あっはっはっはっ!と笑う亜花君。

笑ってやるな亜花君、彼だってあの顔で生まれたくて生まれたわけじゃないんだからさ………顔で笑うのはよしてあげなさい。


「まぁ、年相応以上に苦労してきたんだろうね、だから今日からその努力が報われてほしいものだね」


ステージでは…………両者とも一歩も動かない。どうやら出方を窺っているようだ。


「うーーん………そんなに2人とも隙がないのか?俺には全然そうは見えないけれど」


エンタの相手は細っちい男だ。パンチが1発でも決まればすぐに勝てそうだ。たぶん頭が良いんだろうなぁ、だからこんな勇検なんて鬼畜じみた難易度の試験を受けに来たんだろうな。


ポタリポタリと汗が流れ落ちるエンタ。一向に動こうとしない両者。見かねたグレンもキレながら2人を叱責する。


「おーい、エンタ。早く闘えよ。お前は勇者になりたいんだろ?そのために来たんだろ?それならどうして攻撃しないんだよ」


「……………ボソ」


「………ん?聞こえないぞ」


「………む、無理………………」


おい、なんでだよ。なんで無理なんだよ。相手はあんなに弱そうなのに、それなのに無理なの?…………これは相当重症だな


「おいおいおい!エンタ!なんでそこで諦めてんだよ!なりたいんだろ!?お前の夢とか目標ってのはお前の意気地なさだけでへし折られるような弱いものなのか!?」


「む、無理だ!今もしここで攻撃していったらカウンターを食らうかもしれないだろ!なんでそんな怖いことをしなきゃいけないんだ!」


…………あ、これもうダメだ。俺じゃどうしようもない。


「…………オーケー、それじゃあそのままずっと彼とにらみ合っていてくれ。間違ってもワンサウザンドウォーズにはなるなよ。」


俺はこの試合にさっさと見切りをつけて、亜花君との作業に戻る。亜花君はまだ魔力の調整が出来ないからなぁ、こういう小物を作るのにも一苦労だ。


「………お兄さん、見届けなくて良いの?」


不思議そうな目を向けてくる亜花君


「良いんだよ。今俺が行動しても彼のためにならない。まだ時間が必要だ………彼は時間をかけて追い込まないと」


「………?まぁ、一緒に作ってくれるんなら嬉しいよ!」


「だろー?お兄ちゃんも亜花君と一緒に物を作れて嬉しいよ!」


それから俺と亜花君は黙々とダーツと的を作り続けた。




「あーーーやっと第三次試験が終わってくれた。なげーんだよこれ、つまんないったらありゃしない」


試験も終わり、合格者が石で作られたステージに集められた。

そこには筧君の隣でずっと黙っていた男がいたし、それに


「な、なぁ、狩虎…………」


俺の隣でオドオドしているエンタ。

あのクソな試合で彼は勝てた様だ。

どうやら10分のにらみ合いの末に対戦相手の方がギブアップをしたそうで

試合とは一体………………


まぁ、俺はエンタを無視する。自分の信念を簡単に曲げる奴なんかとは意地でも会話してやらないぞ。


「お前らの試合って、本当、見ごたえがないんだよな。もうちょっと観客を魅せる様な試合をしてほしいものだな」


おい試験官。なに試験に楽しさを求めてるんだよ。しかも騎士レベルの人間たちがどうやって第二類勇者を楽しませる事ができるってんだよ。高望みをするな!


「………まぁいいや。ここで愚痴ってても仕方がない、次の試験もさっさと終わらせて最終試験に臨もうじゃないの。」


えーーー…………次の試験は消化試合か?なんだよこのやる気のなさは。


「えーーひとまずお前らに地図を用意する。ここから約100キロ先まで精密に描かれた奴だ」


…………すげー嫌な予感がする。


「次の試験はここから100キロ先の[喚きの森]の1番高い高台まで行くことだ」


ザワザワザワ…………

試験者達が騒めき出す


「なんすかそれ!去年までクソ簡単だったのになんで今年に限って死ぬほど辛いんですか!殺すきですか!?」


試験者から不満が漏れ出す。


「ああん?黙ってろよゆとりの脆弱どもが。正直今までのが特例すぎたんだよ。やれ、試験者が怪我したら危ないだの、試験に不合格者が出るのは不平等だの…………なんだお前らは!!お前らの脳内にはお花畑と手をつないで輪になって笑いあってる下手くそな棒人間みたいなのしか映ってないのか!?」


ビシッ

グレンは思いっきり地面を踏んづけ、地面にヒビが入る!


「大体な、簡単な試験を受けて大量に生み出されたお前らの先輩の末路を知ってっか?」


「…………全員死んだ?」


「イエス。全員とまではいかなくても99%が死んだ。あいつらには荷が重すぎたんだよ。このままじゃ騎士どもが使い捨てのホッカイロみたいにどんどん死んでは補充されて、死んでは補充されてを繰り返されてしまう。」


全員死んだ…………まぁ、あの魔物と魔族が相手だ。死んでしまうのは必然だろう。


「てな訳で今年度からおもっクソ難しくして、本当の強者しか勇者になれない様にしたってわけよ。これ以上無駄な死人を増やさないためにな」


なるほどな…………確かにそれは納得だ。


「で、でもそれじゃあ勇者になれる人間なんて本当にごく一部になってしまうんじゃ…………」


試験者からの質問。確かにその通りだな。入口がアホみたくせばまるな。


「当たり前だろ。そもそも勇者になんてそうホイホイとなれて良いもんじゃねーんだよ。金やら地位とかにこだわるクソ共が群がって邪魔ったらありゃしない」


まぁ…………イリナのあのバカな買い方を見る限り、勇者は儲かるんだろうな。


「つーーわけで、分かったか?勇者は飽和しちゃいけないんだよ。そして、無駄な死体を増やすのもまたやっちゃいけないことだ。残念だったな、勇者になって楽するつもりだったんだろうが、人生はそう甘かねーぞ」


パチン!

グレンが指を鳴らすと周りの結界が消える


「まぁ、それじゃあ明日の12時までに指定の場所に来いよ。…………それと、お前らはもうわかってると思うが」


ドズン!!

結界の外にわんさか集まっていたモンスター共が一斉になだれ込んでくる!


「今回の試験で見るのは魔物への対処方法と、的確な状況判断力だ。お前らがピンチになったら頑張って助けてはやるが…………下手したら死ぬからな。気を付けて取り組め」


そう言うとグレンは颯爽とその場を後にした。亜花君もそれについて行った


「……………はぁぁぁぁぁ!!?!?!?」


…………俺、分かったよ。この世界の大人はダメ人間ばかりだ……………


ドズゥゥンン!!!

俺の背後の地面が揺れる!

あっはーー!!!そう言えばさっきこいつら挑発しちまったんだよなぁ!しまったなぁ!!!!


俺はチラッと後ろを振り返る。すると、

血管をピクピクと浮き上がらせて、すげー怒っている鬼やら豚やらゴリラやらが10数匹いた。

……………なんでだろうな、なんでこうも俺は自分の行動で自分の首を絞めるんだろう……………

重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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