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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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狩虎の終いの舞

とかなんとか言ってる時期が昔ありましたね。まぁ、今となっては忘れてしまいましたが。

「狩虎って結構裏表のある性格でしょ」


塾の帰り道、遼鋭が欠伸をしながら聞いてくる


「………そりゃあお前、俺は人間だからな。表しかない一次元的な者じゃないぞ。」


人間だぞ?この世で最も面倒くさい存在だろ。人間の体は宇宙だとか言う野郎もいるぐらいだしな。


「いやぁまぁ、そりゃそうなんだけどさ。………なんて言うのかな、[会話の中で嘘をついているのだけれど、実は本当は本音を言っている。]みたいな感じなんだよね」


「……………イマイチ何を言っているのか分からんが」


嘘をつきながら本音を語る?なんだそりゃ、どんだけ器用なんだよ。ホーミーなんて俺できねーよ?


「いやーー難しいよね。僕もうまく説明できる自信がないよ。なにせ狩虎みたいな性格の人は多いようで実は少ないからね。」


「だからだなぁ、普通すぎる普通の人間ってのは周りのみんなから変なやつだと思われてしまうんだって何回言えば気がすむんだ。」


多分俺が1番普通だ。特にこれといった才能もないし、かといってなにか人の目をひくような劣悪なものもない。こんなもんよ俺なんて人間は


「そう言いたければいくらでも言ってていいよ。僕はそんなこと認める気はないから全部聴きながすけれどさ」


そう言われて「俺は普通の人間だ!」なんて言うほど俺はバカじゃないぞ


「確か、君が今回のことについて計画を立て始めたのが去年の4月の暮れだったっけかな?事件から1週間ちょっと経った日だから間違いはないと思うけど……………」


うーーむ、結構いい記憶力してるな。確かに1週間と3日後だ


「イリナさんの為に自分の命を差し出す。多分それは昔の中国のお偉いさん達が唱えた忠とか恕に一致する素晴らしいことなんだと思うよ。狩虎はまさしく大丈夫だね!」


「ああ、孟子だっけか?なんかそんな薄っぺらいことを言ってるやついたな。俺はあの時代の人間が嫌いだな。簡単に自分の命を粗末にする。正義なんてものに命をかけるとか馬鹿馬鹿しい。」


「……………狩虎ってさ、やっぱり狩虎だよね。全然僕の期待を裏切らない。」


街灯と電灯のせいで星は見えないが、それでも真っ暗な夜空。

人間は夜空(これ)と同じだってか?真っ黒なところしかあってないだろ。


「僕が思うにさ、狩虎は正論をとにかく言うくせにその正論を打ち破って欲しいんだよね?まったく、遠廻しすぎるんだよ君は。乙女かって言いたくなっちゃうよ」


…………なーんでそうなっちゃうのかなぁ


「理性、理論、正論、適確、正確、正直、………正義。確かにこの世の全てはそんなもので回ってる。全てをこれらで証明してしまうのも簡単だろう。でも、[それじゃあつまらない。]そんな世の中なら小説なんてものは多分誕生しなかっただろうし、マンガとアニメなんて以ての外だよね。」


トボトボと帰路につく俺と遼鋭。遼鋭は俺の前を歩き、俺の顔を見ないで喋り続ける


「君は確かめたくもあり、それでいて祈っている。世界がそんなにつまらないものだと認めたくない。………いいや、ごめんよ。それは本音じゃなくて建前だったね。君の本音はそんなめんどくさいものじゃないよね。」


語り続ける遼鋭。みっちりとお勉強をした後だと言うのに、何故こいつはここまで饒舌でいられるのだろうか?


「君はどうでもいいことは長々と語るタイプだったもんね。そして、大切なことは本当に、本当に些細な言葉として置いていく。だってそんなことは君からすればとても恥ずかしいことなのだから。」


俺の方を振り向く遼鋭。

…………笑っていやがる。こいつはいつも、俺の心を簡単に見透かす。どんなに隠そうとしても、簡単に探し出してしまう。


「ね?そうでしょう?だって君の本当の願いは…………………」


その直後、俺の頭は思考の渦にはまりいつの間にか家に帰っていた。

遼鋭の最後の言葉が思い出せそうで思い出せない。思い出さなきゃいけないはずなのにどうしても思い出せない……………




バチバチバチ!

イリナの体が帯電する!

正直雷と一体化されたら戦いが圧倒的に不利になる。確かに目でギリギリ追えるとは言え、あの速さで攻撃され続けたら耐えられない。確実にやられる。

…………その手段を潰さなきゃいけないな


俺の周りから水が溢れ出し、広範囲に水の膜ができる。


「雷と一体化してもいいけれど、足元に濃度が濃い水を満たした。それに触れてしまうと雷が流動するようになるから体がなくなっちゃうんじゃないか?」


俺はそう言い終えるとイリナの元に駆け出す!

バシャバシャと水が勢いよく跳ねる!ちょっと口に入ったけれどしょっぱいね!


「こんなんで私の行動を制限したつもりだろうけれど、自分の首を絞めているってことには気づかないのかな!?」


イリナの足元からできが流れ出し、水を伝って俺の元へとくる!


「ここはもはや私のフィールドだよ!全ての方向、全範囲が私の攻撃範囲さ!」


…………まったく、俺がなんの対策もなしにこんな危険な技をすると思っているのかい?


パキン!

俺の足が触れた部分から水が広がるように氷となる。

そして、氷が雷がぶつかり火花が上がる!


「分かってねぇなぁイリナ!俺はもう小学生の頃から電気については……」


俺は水を、踏む部分だけ退かし、イリナに走り寄る。そして、拳を思いっきり握りしめて、体全体を使うように、横から肩がひっこぬけるんじゃないかってくらい腕を振るう!


「勉強済みなんだよ!!」


遠心力を利用して振り抜かれた右の拳は、顔を守るために防御に使ったイリナの左腕に直撃する!


「……くっ!?」


その一撃の衝撃によって、イリナはバシャバシャと水音を立てながら、後ろへともつれながら退く。


「こちとら5分しかないんでな!続けて攻撃させてもらうぜ!」


俺はイリナへと再度近づき、花華のジャブを見よう見まねでやる!


パシパシ!


「…………キレのないジャブだね君。これなら、右手でジャブジャブしたほうがよかったんじゃない?」


俺の放ったジャブをイリナは片手で悠々と受け止めた。


「………っ、ジャブジャブってなんだよ!」


俺は、宏美の見よう見まねだけれど、顔面へのハイキックを繰り出す!


パシン!


「ジャブを二回してるんだからジャブジャブでしょ?」


当然と言わんばかりの顔で俺の蹴りをイリナは受け止めると、俺の足を持ち上げて俺の体勢を崩す。

そして、ボコん!と俺の腹の中心に重たい一発を入れて俺を吹き飛ばす!


バチャバチャー!

俺の体が水の上に着地したことによって水が跳ね上がる!


「……っ!?ヴェッ!」


ちょっと口から血を吐き出してしまった。あーーこりゃ内臓やっちまったか?


「雷封じられて少し焦ったけれど、よくよく考えると君の身体能力は紙みたいなもんだもんね。どんなに強化されようと、私との身体能力の差は覆せないよね。てか君の炎の魔力が封じられた分私のほうが優勢になったのかな?」


「…………いいかイリナ、確かに俺は弱い。それは認めなきゃならない事実だ。だがしかし、だからと言ってそれで勝敗が必ずしも決定するとは限らない」


ブワッ!

イリナの背後から水の塊が襲う!


「こんなもん!」


パァン!!


イリナは後ろを向き、手をあわせる。そして、その衝撃によって水が吹き飛ぶ!


「俺の学習能力は高いんだ。これからまだまだ伸びるぜ?俺の実力は」


俺はそう言うと、後ろを向いたイリナに近づく!


シュシュシュシュシュッ

俺の放ったジャブはまたもさばかれる


単純に肩と腕の筋肉不足だが、それ以前にフォームにまだまだ改善点があるな。まだまだこれから速くすることができる。


俺の体はほんの少し、ほーんの少し、動いたかどうかもわからないぐらい少しずつ体を前に傾けていく。


シュン!

そして、ある一瞬パンチの速度が速くなった。

ここか、ここが俺のベストポジションか。


タタタン!

自分の重心を崩さないように、ステップをしてイリナを揺さぶる。


確かに俺はボクシングなんてプロに習ったことはない。それでも毎日のように花華からパンチを食らう時に花華のフォームは凝視しているし、暇な時には強制的に花華の練習に参加させられているのだ(その都度胃の内容物を全て吐き出している)。経験者とまではいかないが人並み以上には出来るのさ。


シュシュシュシュッ!

ジャブをメインでバトルを組み立てていく。時折右ストレートを混ぜるが、いかんせん相手はイリナだ。簡単に対処してくる。


それなら、もっとだ。もっと速く動かなければ。もっと、パンチの速度と移動速度を上げていかなければ!


トトトトン!

地面を踏む音が変わる。足裏全体で踏む方が確かに威力は上がるが、速さメインならつま先立ちだろう。着地面積を限りなく狭くする。そうじゃないと俺の反応速度と初速度が上がらない!


右へ左へ、ステップを刻みながらジャブと右ストレートを組み合わせていく。


「…………ちっ、ちょこまかとめんどくさいね!」


ブン!!

イリナの上段蹴りが、俺の頭をかすめる!

俺は咄嗟に体を前に傾けることによって蹴りをかわしたのだ。


チャンスだ!!


メシッ!!

思いっきり地面に足をつける!土踏まずすらも地面についてしまうんじゃないかってぐらい足を力強く踏み鳴らす!


ズダダダダダダダ!!!!

イリナの脇腹に俺のラッシュが炸裂する!

左右左左右左右右!!


バシャバシャ…………

俺のパンチを食らったイリナはぐらつきながらもまだ倒れない。

くそっ、やはり体術に関しては俺は劣るのか!


……………が、そんなのは関係ない!!人間の体力は無限じゃない。攻撃し続ければいずれなくなるのさ!!


俺は再度イリナとの距離を詰める!………が、その時


バシバシバシバシ!

イリナの身体中から電撃が放たれる!

俺はそれを水で絡め取ることによって直撃を防いだ。


「ボクシングっぽい動きをするね。でも、経験者と違ってキレがない。」


イリナは口から出た血を腕で拭い取る


「だからそのキレの分を数で埋めてるって所かな?」


………うーむ、完璧に見透かされてる。


「だったらなんだよ!!」


俺はさっきし損ねた分の距離を詰める!


シュシュシュッシュっ!!

パパパパパン!!


俺の放ったジャブをイリナは全て受け止めると最後に1発、俺の顔面に軽くパンチを決めた。


「いって!!」


俺はおもわず仰け反り距離をとる


「ほんの少しかんだ程度の人間のパンチは経験者よりも遅いからね、もう目が慣れたよ。これ以上君の攻撃を食らう気は私はないよ」


バシャ………パシャ……………

イリナがゆっくりと近づいてくる


…………おいおい、これだけだと本当に思っているのかい?この俺が、たった1つしか作戦を考えていないと思うのかい?

まったく安直ったらありゃしない。


俺はゆっくりと歩いてくるイリナに再度突撃する!


ジャブジャブ、ワン………

パシパシ!

ことごとくイリナに止められる


「ツーー!!」


ブン!!

俺の、自分の中ではベストの速度とキレのパンチを放つ!!


「……だから、こんなのさばけないわけが……………!?」


イリナはそう言いながらおれの右拳をさばき左下に落とす。

………これだけだと思うじゃん?

俺はさばかれるのを前提にストレートを放っていたのだ。いなされた右手はそのまま回転するように俺の下をくぐっていき俺の体を持ち上げる。最初にイリナの前に来た左足が相手を見定め、遅れてやってきた右足が俺の回転エネルギー全てを保持したまま上から下へとイリナを蹴り落とす!!


メシッ!!

イリナが頭の上に両腕を滑り込ませ、俺の蹴りを受け止める!


空手の何たらかんたらってやつだ。伊達に宏美の蹴りとパンチを毎日食らって、暇あらば宏美の練習に無理矢理付き合わされているわけではないのだ(毎回胃の内容物を吐き出している)。

ボクシング同様、人並み以上には出来るのさ。


まぁつまりボクシングと空手の組み合わせよ。修練者には通用しないだろうが何も修めていない初心者相手にはまぁまぁ通用するんじゃない?


「まだまだ行くぜ!」


主にパンチで攻め立てるが、隙あらば蹴りを使って追い詰めていく。そして、イリナも俺になんて負けてはいない。その都度全てをさばききり、俺へと攻撃を仕掛ける。

水が蹴りや後ずさり、前進によって跳ね上がり水滴が宙を舞う。それが月の光に輝き白色になり、しかし夜空のせいで黒色に塗りつぶされる。俺は、それを雷が伝って攻撃してくることを危惧して氷の粒へと変える。


俺とイリナの周りが輝き続けている。輝きは俺たちの手で潰されても、その都度俺たちの手で生み出されていく。


2分ほどこんなやりとりが続いた。

確かにこの光景は綺麗だがそろそろ俺は飽きてきたぞ。もう終わらせても良いんじゃないか?時間的にも余裕はないしな


俺はフゥーーーッと息を吐き切ると、重心をずらさないように移動し、何発もの最高速度の突きを繰り出す!!


ガンガンガンガン!!

それをイリナは腕を使って全て受け止め、俺の最後の一発を受け止めようと構えているが………ゴメンよ、これはフェイントだ。


俺は腕を引っ込めると同時に、イリナの顔面に蹴りを1発振り抜く!!


勝った!!完璧にこれ、俺の勝ちだろ!!


スカッ


勝利を確信した瞬間、俺の蹴りが何にも当たらずすかした感覚に襲われる。


「………蹴りをするときさ、君前傾姿勢じゃなくなるよね。少しだけ上体を起こすよね。」


…………ありゃ、バレてたか。そうなんだよねーー。実は空手とボクシングって相性最悪なんだよね。


ダダダダダダダダダッ!!!!

さっきの仕返しと言わんばかりに、俺の脇腹にイリナのパンチが何発も何十発も決められる!!

でも俺なんかの威力とは全然比べものにならなくて、もう完璧に骨折れたねこれってぐらい痛かった。


ズッズザッバシャバシャバシャバシャ!!!

俺はそのまま吹き飛んだ!!


「肉弾戦は君にとって不得意分野だけれど頑張った方だと私は思うよ。でもまぁ、この状態に持って行かれた時点で君の負けは確定していたって所かな」


イリナが光剣を引き抜く


「……………確定か。なるほど、確かにそりゃ俺の負けは決定していたわけだ。」


俺は魔剣を杖代わりにして起き上がる。

ああ、くそ。めっちゃ脇腹いてーーよ。呼吸もし辛いし…………完璧に肺を傷つけてるなこれは。


「………あれ?魔剣は私の背中に帯刀していたはずなんだけど……………」


イリナが背中の上の方で何かを握ろうとするが、残念そこにはありません。俺が殴られた時に、その瞬間に盗んだんだ、


「だけれど、そんな、負け確なんて言われたら………俄然!やる気が出ちまうじゃねーか!!」


俺は痛む脇腹を我慢してイリナの元に走り出す!


「まだ抗おうっての!?往生際が悪いんじゃないの!?」


ツルッ!?

イリナが光剣を構え、足に力を入れたその時地面が滑りイリナの体勢が崩れる!


「なん!?………これ、氷!?!?………っ!?」


気づいた時にはもう遅い。俺は完璧に剣の間合いに入っていた。


「クッッッッソ!!!」


シュッっっ!!!

イリナが無理な体勢で剣を突き刺す!………が、


「光剣(貢献)空回り。なんつって」


俺はすでにイリナの背後に辿り着いていた。魔剣の能力の1つ、空間移動だ。


それじゃあな


ブン!!!

魔剣が振り抜かれる!!


しかし、俺の目の前には誰もいなかった。

……………イリナが消えた?いや、ちょっと待て。消えたってのはその、えーっと、その…………え?俺の目の前から一瞬で消えた?ちょっと待てよ、あんな不安定でしかも完璧に体勢が崩れてたんだぞ?俺の剣をかわせるか?

いや、それよりもっと重要な問題として………もし、速く動けたとしようか。

…………俺の目は何も捉えなかったぞ?いままでのイリナの動きは俺の目で追えた。首までは動きが追いつけなかったけれど、目で見ることはできた。それが例え雷との同化の時でもだ。稲妻の跡がはっきり見えたし、何より姿も少しだけ見えた。

なのに、今回は見えなかった。動いたことなんて何もわからなかった。


いままでと比べものにならないほどの速さだ。光とまではいかないだろうけれど、それに近い速さなんじゃ…………………



ジャッ


俺の背後で何かが地面を滑る音がする。


ドクン!

心臓が大きな音を上げ、心拍数が跳ね上がる!

また、落ち着け。後ろを確認するのなら首を回す必要はない。氷を作ってそれで見ればいいんだ。

俺は周りの水を凍らせて氷を作り、それを鏡のように利用した。

その鏡面には俺の汗がダラッダラの顔と、そしてもう1人、黄色く弾けている鎧を着た者が俺の背後で構えを取っていた。

…………雷で作られた鎧?硬いのか?…………いや、今考慮すべきなのは[硬さ]じゃなくて[速さ]だ。多分あれを着ている間イリナは、俺でも視認できないほどのありえない速さで移動ができるのだろ。そして、移動だけでも視認できないというのに、それがパンチもしくは蹴りとなると一体いかほどの速さに…………


完璧に死ぬ


それが俺の頭の中で叩きだした答えだ。


…………だったらいいぜ。もういい、もういいんだ。もう俺は十分に楽しんだ。もう思い残すことはない。あとはただ俺は…………


俺は思いっきり後ろを振り返った!!


「潔く死ぬだけだ!!!!」

バッッッッッツッツゴォォォオオン!!!!


イリナの拳が地面を撃ち抜く!その衝撃は凄まじく、地面が陥没し、俺とイリナは奈落へと落ちていった。


そういえばここって空洞だったっけ…………じゃなくて!!なんでイリナは俺を攻撃しなかったんだよ!!


チラッと落ち行く中でイリナを見ると、イリナはピクリとも動かない。


あーーもーー何やってんだよ!!


タタン!

俺は空中の岩を足場として踏んでいきイリナの元まで着くと、イリナを抱っこしてそのまま落ちていった。




「…………んーーー背中いてーー」


地面にぶつかる時に閉じた目を開くと、光が結構小さく見えた。

結構高いところから落ちたな。


「おいイリナ大丈夫か?」


胸付近にあるイリナの顔をペチペチと叩く


「ん、全然大丈夫。」


そう返事をするが、一向に動こうとしてくれない。


「…………なんで動かないんだ?」


「いやーーさっきの攻撃ってさ、私のファイナルアタックなわけよ。あれ使うと体は全然動かせ無くなるし魔力もすっからかんになるんだよね。1時間ぐらい」


……………おまえそれ、やばくね?


「…………じゃあなんで俺に当てなかったんだ?そんな危険な状態に1時間なるってことは、つまり外したら俺に好き放題されちゃうわけだぞ?もしかしたら俺に殺されてしまうかもしれないんだぞ?」


「…………ぷっ、あはははは!!何言ってんのさ!!君が私を殺す?それはないよ確実に!この状況が物語ってるでしょ?こんな絶好の私を殺す機会なのに、私と呑気に喋っている。殺す気があったら私の安否を確認しないし、確実に私に剣を突き刺してただろうからね」


イリナはこんな真っ暗な所で笑い続ける。音が反響して、イリナがすごく大きな声で笑っているかのようだ。


「…………本当はね、君を殺すことは昨日の段階で決定していたんだ。カイの為にも、私の為にも…………」.


ぶっ通しで笑い続けた後イリナが話し始める


「でもね、それでも、全然やれる気がしてなかった。踏ん切りがつかなかったんだよ。もしかしたら本当に、本当に本当に本当の最後…………君を絶対に殺せるって状況になったら嫌が応にも踏ん切りがつくと思ってたんだけどね……………でもさ、この状況の通り…………」


ふうと息を吐くイリナ


「ダメだったよ」


…………俺はイリナの顔をじっと見つめていた。いつの日か見たく空を見続けてもいいが、それじゃあ何かダメな気がしたから。


「カイの為なら君を殺すべきなんだよね。でも、よくよく考えるとさ、こんなこと私の為にならないんだよ」


真っ暗な地面を見続けるイリナ。

一体イリナは何を思っているんだ?何を見ているんだ?…………多分、俺が知っていいことじゃない。


「顔はカイそっくりで、勉強も教えてくれて、面白くて、友達になってくれて、たまにちょっと抜けてるところとかあるけれど………それもまた面白くって……………そして、やっぱり……………うん。そして何より、やっぱりミフィー君は優しすぎるんだよ。」


ギュッとイリナが俺の服を握る。


「私に友達がいないって知ってたから生徒会に誘ってくれたんでしょ?イリナファンクラブだって、潰そうと思えばいつでも潰せたはずだよね。けれど、私の周りから人を消さない為にあえて残してくれた。」


ああ、くそ。イリナの目を直視できない。そうするとなんかこみ上げてきそうで……………


「カイの件について忘れたわけじゃないよ。そこに関しては償ってもらわなきゃいけない。でも、[それでも私は君に死んでほしくないんだよ。]私はミフィー君からあまりに多くのものを貰いすぎたから。私の為にならないから………」


…………いつぞやのイリナの言葉だ。なんかこの時も、イリナの目を見れなかった。


「だから、そうだね。こうしようか。死ぬなんてそんなつまらないことで償っちゃいけない。もっと私の為になるように、もっと君の為にもなるように。」「ね?そうでしょう?だって………」


イリナといつの日かの遼鋭の言葉が重なる。


「君は私に一生ついていかなくてはならない。たとえ何があろうと、たとえ何が起ころうと、生き続けなければならない。」「君の本当の願いは……………」


俺の瞳孔が大きくなっていくのが感じる。

…………ああ、そうか。イリナにも結局バレていたのか。


「これは私と君の為の誓いであり約束でもある。そうでしょ?だってミフィー君の願いは………………」




「「[生きたい。]なのだから。」」




「…………夢にいつも出てくるんだ。イリナとカイの楽しそうな笑顔がさぁ……………それを俺が潰してしまった。俺が全てを台無しにしてしまった」


俺は手のひらで顔を覆い隠す。


「それでも、いけないことだと分かっていても、その笑顔を見てるとさ…………俺も、その生活を一緒に過ごしたいとか思っちゃうんだよなぁ。そんなの、……………無理だっ……て、わがってる………の……………に………………」


喉を震わせるたびに、嗚咽の頻度が上がる。それはまるでいままで押しとどめていた物が、上へと這い上がるのを手伝うように加速させていく。何かが喉を駆け上がっていく。ざわざわっと、こそばゆいモゾモゾとした感情が喉を撫で、さらに俺の嗚咽を加速させる。


俺の顔を押さえていた手を何かが濡らす。………いや、そもそも俺の手はカイの温かいが、どこか冷たい真っ赤な血で濡れているのだ。

だけれど、それを薄めるように…………もしかしたら、何も薄めることも出来ていないのかもしれないけれど、冷たいが触るとどこか温かい液体で濡らしていく。


救われたと思っちゃいけないのかもしれない。俺の罪の返済は何も済んじゃいない。まだ許してもらえていない。これから償っていくのだから。


…………けれど、少しぐらいは、傲慢かもしれないけれど、救われたいんだ。


だからかな、イリナの言葉を聞いて、少し、救われた気がした。





「よっこらしょ」


イリナが作った穴から、イリナを担いだ俺が姿を表す。

一応大事をとって勇者領までいって回復させてもらいますか。何かあったら困るしね。


「………ねぇ、ミフィー君」


俺に背負われているイリナの吐息が耳にかかってこしょばゆい。そのせいか鼓動が早まる


「なんだ?」


「なんかこう、ドキドキとかしないの?こう、肌と肌が密着してるんだからさ……………」


…………まったく、イリナよ。何を言ってるんだい?肌と肌というがそこには鎧と制服という分厚い布とかの壁があるんだぜ?

…………ただ、まぁ、そうだな。


「何言ってんだよイリナ。」


俺は振り返り、横目でイリナの顔を見る。顔と頬がくっつきそうなほど近い。ふぅーーっと、イリナの吐息が俺の頬に当たる。


「俺は、会った時からドキドキしっぱなしだよ。」


俺は、ニッとイリナに笑いかけた。


[目的は変わり、夢は現実へ。]

俺の夢はもう叶った。さぁ、これからはもう1つの物語だ

えーっとこれは、[Face of the Suface]であると言いましたが、どちらかと言うと[地底800マイル]の続編に近いものがあります。狩虎が産み落とした謎というべきなのでしょうか、はたまた行動の結果どうしようもなくできてしまったゴミだというべきなのでしょうか?


とにかくこれは[Face of the Surface]においての狩虎の章とでも名付けようかと思います。


さて、文の最後にもあった通りまだ話は続きますが、安心してください。これから先の章は狩虎の章のように50万とかそんな変な数字にするつもりはありません。…………ただ、まぁ、なんというんでしょうかね。狩虎の章は必要最低限を盛り込んだ形であるわけでして、もしかしたらこれ以降の章には[本当に無駄な話]とかが含まれてしまうかもしれません。だからもしかしたら結構ヘヴィーな量になってしまうのかもしれません。


それでも50万にはなり得ないので大丈夫なはずです!


とまぁ、そんな感じでひと段落させることができました。今度こそ、8月の末までは出す気はございません。


また会える日を楽しみにしています。それでは


重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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