終いの舞
ざっざっざっ…………
俺はひたすらに歩く。吹き飛んだ家屋、ダンジョンと化した地下街、生み出された森、どこから飛んできたかも分からない巨大な岩。そんなものが横を通り過ぎていく。
感傷に浸るわけではないけれど、ここ1ヶ月の事を考えてしまう。色々あったようななかったような………まぁ、冒険は特になかったな。英雄的な話もなかった。感動もなかった。俺がカッコよく映えるシーンもなかった。
…………なんだこれ。えーーっと、その、なんだこれ。ろくな記憶がないなー
もう陽は暮れて辺りは真っ暗だ。いや、今日は十六夜だから月が明るくはあるから真っ暗とは言えないか。
ほんの少しの月光が俺の行くべき道を照らしていく。心許ない光だ。何か1つ大きな明かりがほしい。行くべき道を全て照らすことができるような、闇を全て貫くような、そんな明るく清らかな光が…………
森のような景色は終わり、徐々に傷1つない家屋が姿を現していく。
俺の目標はイリナに殺されること。これほど簡単で、これほど無意味な目標はそうはないだろう。
イリナのパートナーであるカイを殺したのは俺だ。それなら、それの償いとして命を差し出すのは当然のこと。それで、機会をもらったイリナが俺を殺すのもまた必然だろう。
ピタッ
俺の足が止まる。
目標はそんなちゃちなものだ。が、俺の夢の話になった途端、俺の夢はそんなものに反比例して超極悪に難しくなる。なぜかって?…………だって、そんなの……………
「約束した時間の10分前に来るっていうことはあれかな?そんなに私に会いたかったのかな?」
俺の見据える先に、金色の髪を揺らす女性が立っていた。
ゴウッ
と吹く風に髪はなびき、それが夜の光に反射してその女性の周りが光り輝いているかのようだ。
闇夜に浮かぶ、1人輝く灯火。俺なんかじゃ、近づいていいような人間じゃない。
「何言ってんだ。10分前行動が俺のモットウだぜ?これは俺のナチュラルな姿さ、何もお前に会いたかったわけじゃないさ」
「あらそう?それは残念。」
特に残念でもなさそうに、ブロンドの女性……イリナは残念がる
「今日、委員長のお陰で私は登校できたんだ。そのお礼として何か1つしてあげてもいいよ?私は寛大だからね、君の言うことの1つぐらいならなんとかやってあげられると思う」
……………そうじゃないだろう
「そうじゃないだろうイリナ。殺すのか、殺さないのか。俺とお前の間にあるのはただのそれだけだろ?」
「冥土の土産ってやつさ。私がお願いを聞いてあげたなんてこと、喜ばしいことだからあの世で自慢できるでしょ?」
「ああ、そりゃ結構なことで。でもおあいにく様、そんなことで情が移ってやっぱ殺さないとかなられたらこちらとしても困るんだ。だからそういうのはなしな」
少しかけた満月が、俺の心に発破をかける。
色々と時間をかけすぎた。さっさと終わらせないと……未練が残ってしまう。
「何言ってんのさ。そんなことで、私が君を許してあげるなんて思っているの?それに、カイの為にも君のことを殺さなきゃならない。」
イリナが背中の剣を納めている鞘から剣を引き抜く
「おう、それじゃあバッサリと…………」
「ただ、無抵抗の君を殺しても意味がない。それじゃあまるで私の為カイの為、じゃなくて君の為に殺すかのようだ。それじゃあダメなんだよ。私が君に戦いを挑んで、勝たないとカイに申し訳がたたない」
イリナは剣先を俺に向ける
「私は君に決闘を申し込む。手加減無用の真剣勝負だよ。」
「…………おいおい、いいのか。昨日遼鋭と戦って分かっただろ?2人がかりでようやく勝てたっていうあの結果が何よりも物語っているはずだ。俺とお前とじゃあ覆せない力の差ってものが…………」
「うるさい黙ってろ」
バチバチバチ!
俺の言葉を遮るように、イリナの体から雷が溢れ出す。
その雷は周辺の建物にぶつかる度に焼き焦がし、木造のものは火をあげる。
「おいおいおい、冗談だろ…………」
イリナから溢れ出した雷は五つの太長い線となり、そこから細工が施されていく。
「ゴォォォオォォァァァァァアアアア!!!」
上空に五体の竜が絡みつくように、うねるように、全てを焼き尽くさんとするかのように、巨体を動かす。
「君に拒否権はないよ。なにがなんでも、嫌でも戦わなくちゃならなくなるんだから」
五体の竜の巨大な顔が一斉に俺の方へと向けられる。
…………やばい
「グルルルルァァァァァアアアア!!!!」
ゴロゴロゴロゴロゴロ!!
雷迅が轟き、5匹の竜が先を争うように俺ほど向かってくる!
なんてでかいんだ!上空にいたからイマイチピンとはこなかったが、近づいてくるとはっきりとわかる。こいつはでかすぎる!!
「加減ってものを……」
俺は周りに巨大な槍を5本作ると、2本を一斉に放ち、竜の首元に突き刺す!
「グガッ………」
バチン!!
竜の首から息が漏れたかと思えば、竜は元の雷へと戻り、弾けて消えた。
「考えろ………っ!!」
ギリギリまで近づいてきていた3匹の竜の頭の上に槍を構え突き刺そうとした瞬間、イリナが俺の胸元に滑り込んできた!
んのヤロォ!
ボッ、ガインん!!
ザシュッッ!!
俺がイリナに胸をおもいっきり殴られるのと、竜の頭に槍が突き刺さり弾けたのは同時だった。
ズザッザッザザザッザァァーーー
俺はイリナに殴られた衝撃で地面を泥だらけになりながら滑る!そして、
俺は滑る速度が遅くなったのを見極め、体勢を立て直し横へと走り出す!
くそっ、胸当て出してなかったら死んでたぞ!まぁ、それでも今の一撃でベッコリ凹んでしまったけれどな!
「逃がさないよ」
俺が走り出したのもつかの間、イリナはすぐに俺に追いつき腰の入ったキツイ一撃を放つ!
ボウッッ!!!
俺の身体から炎が吹き出し、イリナの進行を阻む!
そして、それを見てイリナは一旦距離を置いた。
くそっ、マジだ。マジでイリナは俺に戦いを挑んで勝とうとしていやがる。
…………それならてきとうに戦って、ちょうどいい頃合いで負ければいいだろう。何も本気でやる必要はないだろう
パリっ、ブン!
イリナは雷と同化し、高速で動き俺の死角に入っては攻撃を仕掛けてくる。
その都度俺は炎を出し対処する。
黒垓君なんかとじゃ全然速さが違うじゃないか!体が全然追いつかない。真後ろに移動されたら勘で防御しなきゃならないなんて…………なんて辛いんだ。
「だったら攻撃すりゃいいってことじゃねーか!!」
ボゴンンンン!!!
俺を覆い尽くしていた炎が急激に膨張して、全てを吹き飛ばす爆弾へと変化する!
膨大なエネルギーの爆発て周りの地面が吹き飛び、消滅する!
バシシ!!
だが、それでも空間をかける稲妻は消えない。その爆発の隙をついてすぐに俺の背後へと潜り込もうとしてくる
くそっ!
ダンダンダンダンダン!!
拳ぐらいの大きさの火の玉を高密度に発射する!
が、それでもイリナの動きは止まらない。稲妻が大量に発射される火の玉の隙間をぬい、残した跡を火炎に巻き込まれ消されながら迫ってくる!
ダメだ、これじゃまだかわされる!!
ダダダダダダダダダッンンンン!!!!
火炎の数を急激に増やし、隙間を全て埋める!!隙間なく埋め尽くされた火の玉はまるで一つの大きな火球のように、触れた全てを飲み込んでいく。イリナが生み出す光線の跡を飲み干し、触れた地面を深く抉り吹き飛ばす!
ズズン…………
俺とイリナが攻防を繰り返す度周辺の建物が全壊して倒れていく。その衝撃で埃が舞い上がり、イリナの姿を隠す。
くそっ、どうだ?さっきので仕留めることができたんじゃないか?………っ!?
砂煙の中から剣の切っ先が出現し、そのまま伸びてくる!!
俺は咄嗟に首をそらすことでかわせたが、完璧に頭を狙ってきてやがる。黒垓君といい勇者ってのは頭を狙うのが主流なのか?
俺はすぐに後ろに退き、その時に半径1メートルぐらいのそこまで大きくない火球を計50個作り出し、剣が伸びてきた方向へと放つ!
だんだんダン!
大規模な爆発が生じる!
ついでにおまけだ、くれてやるよ。
俺の放った第一次弾幕が炸裂するのと同時に、火龍を数匹生み出す。それがイリナを食い尽くそうと爆発している場所にうねりながら突撃し、爆発がより巨大になり、周りの建物全てを粉々に吹き飛ばす!
…………やり過ぎちまったか?
「そんなトロイ攻撃じゃ、私には当たらないよ」
イリナが上空から剣を振り下ろす!
俺はそれをなんとかかわすが、イリナはそれを見越していたのだろう。剣を双剣へと変えてそのまま俺に連舞をふるう。
壁として生み出した炎は、目にも留まらぬ幾千もの剣線により瞬く間に破壊されていく。
くそっ、動きを止めないとイリナの速さじゃ全てかわされてしまう!
俺はイリナが壁を破壊している間に距離をとる。そして、
ズァァア!!!
イリナの周りを炎が囲い込む。高さ13メートル、半径8メートルの円柱。
もう逃げ場はないぞ。いや、天井が空いているといえば空いてはいるのだが…………
ズツッッゴゴゴゴゴゴゴゴ
炎で作られた囲むような壁の上空に、壁の直径よりも幅の広い巨大な火の球体が出現し墜落していく!
火球は触れる壁を焼き尽くしながら落ちていく!
流石にこれは逃げ場がないだろう!たとえあのイリナであろうと、この絶対的状況を打破できるような手段はないはずだ!
まぁ、俺の場所から中を覗くことは出来ないから確証はないわけだけれど…………
炎で生み出された壁が火球に押しつぶされ音を上げながら崩壊していく。
あと3メートル!イリナ、もうお前に為す術はないぜ
バゴォォォオオンンンンンん!!!!
イリナがいる場所から耳をつんざくような、弾けるような騒音が生み出された!!弾ける?ああ、こりゃ確実に何か弾けたな。空気か?地面か?てか俺の鼓膜大丈夫か?耳をつんざくようなってかマジで貫いたんじゃないのか?
その音と共に生み出された巨大な衝撃が炎を全て吹き飛ばす!!炎の壁がなびき打ち消され、巨大な火球もチリヂリに消えてしまった。
なんだ?どうやってこんな衝撃を生み出した?衝撃だけで全てを吹き飛ばすなんて相当な威力のものじゃないと…………
くっそ、半規管がかなり揺れている!目の前がグニャングニャンするぞ!!
俺はその衝撃に当てられて、体が吹き飛ばされた。半規管の揺れと相まって最高に目の前がグワングワンする。
そんな揺れる視界の中で、一筋の稲妻が俺に向かってくるのが見えた。それは、視界が揺れていたせいか決して直進しているようには見えなかったが、確実に俺の方向へと向かっていた。
足止めは失敗した。それに今から足止めしても間に合わないだろう。また、生半可な攻撃じゃ全てかわされてしまう。
だったらそれじゃあ、生半可じゃなければいいんだろ?
「よけれるもんなら避けてみな!!全てを破壊する炎って奴を見せてやるよ!!!」
俺の身体から炎が染み出す。それは、いままで見たこともない膨れ上がり方をした。
いままでは体の倍までしか膨れ上がらなかったが、今回のは10倍以上に膨れ上がっている。はちきれそうな風船のようだ。
炎が外に出ようと暴れまわる。だが待て、まだだ。まだ圧縮するぞ。まだ炎を放出するぞ。エネルギーを限界まで溜め込め。
確かイリナはこう言ってたはずだ。「炎帝の得意分野は炎の膨張と爆発。」………ああ、その通りだ。俺がいままで扱っていた炎を馬鹿正直に相手に放つのは俺の苦手分野なんだ。特大火球?ああ、確かにそんな弱い技もあったな。ガーゴイルとか龍とかも作ったが………ゴメンよ。あれも俺からすれば弱い攻撃なんだわ。
これが俺の、得意分野だ。
カッっっ!!!!!
限界まで溜め込まれた炎の熱エネルギーと外へ行こうとする運動エネルギーが、解放と共に暴れ出す。一瞬で半径数キロを炎が飲み込んでしまった。木なんてものは一瞬で消えた。建物なんてものも当然のように消滅した。地面?そんなのあってないようなものだろう。
さすがにこれはかわせないはずだ。一瞬で数キロを移動できる脚力があるのなら話は別だが…………まぁ、イリナでもさすがに無理なはずだ。
…………あれ、なんかおかしいな。こんなやりとりをさっきもやんなかったっけか?
ズボォォォッッ!!!
消滅しようとしていた炎の中からイリナが飛び出す!手元には真っ黒な刀。…………カイのか!!
結構引きつけてから技を繰り出したからイリナをギリギリまで引き寄せてしまった!くそっ、あと0.5秒ぐらいで俺の心臓にあの刀が突き刺さってしまう!
どうする?どうする??どうする!?どうする!?!?
ビキビメキゴキッバキィッ!!
ブシュッ
ポタッポタッ…………
俺の横腹から血が滴り落ちる。
「こうするしかないよな……………」
身体強化まで使って剣の軌道を逸らしたってのに逸らしきれなかったか…………剣が横腹を掠めて血が出てしまった
ガシっっ
俺はイリナの剣を握っている手を掴む
パキパキパキ…………
そうすると、イリナの手の表皮が凍り始める
「つっ!?」
イリナは剣を手放し後ろへと飛んだ。
「そう言えば君って氷使えるようになってたね。昨日はちょびっとしか使ってなかったから忘れてたよ」
窪地となった場所にイリナはいる
「氷と言っても水を凍らせらるだけだけどな。だからイリナが警戒していただろう、腕を凍らせて粉砕するなんてことは出来ないんだ。」
俺はここ何キロの中で1番高いであろう、俺がいる場所に黒色の刀を突き刺す。
「なるほどね。ハッタリってやつか…………んーー騙されたね」
イリナは腕についた氷を払うと、すぐさま戦闘態勢へと入る。
あーーーくそ、殴り合いは苦手なんだけどな……………
ダン!
地面を思いっきり踏みつける。その時少し横っ腹が痛いがなんてことはない、我慢だ我慢。
魔族対勇者の戦いはこれで終わりだ。これからは人間の限界を逸脱した喧嘩だとでも思って見ていてくれ
夏休みに入りました。この時期はデュエマ的に言えば1〜5ターン目のようなものです。勝つ為にマナを貯める。力を蓄える時期なわけです。ここでどれだけマナと手札を貯められるかが勝負の分かれ目って奴です。
なので8月の中盤まで出せないと思います。てか出せないようにしなければいけません。というか「出してるとか頭狂ってんじゃねーの?」状態なわけです。
なので今回5000文字と少ないのか丁度いいのか分かりませんが、仕上げて投稿することとなりました。
こんなどうしようもないど素人の小説を読んでくれる皆様、誠に、切実に、誠心誠意、深厚に、ありがとうございます。
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カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/
カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/




