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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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意思は変わらぬままに

「宏美ー。おはよー」


「………ん、おはよ」


俺の声に反応して宏美が振り向く。

あららークマなんて作っちゃって、寝不足か?


「なんだなんだ、元気がないなー。俺は宏美と学校の行き帰りに会話するのが楽しみだってのに、これじゃあつまんねーよ」


今日も今日とていい天気だ。雀はさえずりカラスが煩い。横を通っていく車も騒がしい。前を歩いている女子高生のバカ笑いも五月蝿い。この世は騒音まみれだな


「ごめんごめん………少し、寝不足でさ」


俺と宏美はそのまま学校に通行する。

とぼとぼと歩道を歩く。


「だろうな、クマが出来てるもんな。………なんか悩み事か?俺でよければ聞いてやるぞ。うまいアドバイスをする自信はないけどな」


しかしあれだな。小学生の時に寝る前に死んだ後のことを考えちゃって寝れなかったことがあるな。その時は輪廻転生を信じていたから「もし今の俺が死んで新しい俺が生まれるとしよう。そうするとその新しい俺は今の俺の記憶を持っていなくて、そうだけれど俺であって。つまり今の俺もきっと前世があったわけで、でもその記憶がないんだよね。だから俺は記憶を持たないまま人生を繰り返す訳だろ?それって[俺が生まれ変わる]って言ってしまっていいのか?記憶のないまま生まれ変わったところで俺を俺だと認識する術はない。俺であるという確証はどこにもない。それはつまり、俺はやっぱり死んだらそこで終わりってことなんじゃないのか?輪廻転生はありえないんじゃねーのか?」

って、思っちゃって全然寝れなかった。「どう頑張っても今の俺は死ぬしかないじゃねーか!」とかいいながら、今の俺が死なない可能性を考え続けていた。

……………今考えるとつまらない幼少時代だったなぁ。「夢は消防車です!」とか言ってる方がまだ可愛げがあった。


「アドバイス…………それじゃあ、相談しようかな。正直困ってたんだ、私じゃどうしようもなくて」


ほほうほう。宏美でもどうしようもないことか…………果たして俺の手に負えるのか?


「狩虎…………正直私には分からないんだ。なぜお前が死ななきゃいけないんだ?」


ピタッ

俺の足が止まる


「殺したくて殺した訳じゃないんだろ?花華ちゃんと光輝から聞いただけだから簡単なことは言えないけれど、あれはどう考えても…………不慮の事故だ。」


俺は宏美の方に振り返る


「運が悪かっただけなんだよどちらも………それなのに、狩虎が罪の意識でイリナちゃんに自分の命を差し出すのは間違いだと私は思うんだ。」


「…………前に言ったよな?宏美」


俺は宏美の言葉に区切りがついた時に喋り始める。


「[これは俺が決めた道だ。変えることはない、変わることもない。例えどんなに歪んでいようが、崩れ落ちそうだろうが、行き止まりであろうが、突き進むんだ。]って。そしてその時宏美も分かってくれたじゃないか。」


「あ、あれはお前を元気付けるためだけに言っただけだ。………私がそんなこと、本当に認める訳ないだろ…………」


宏美は俯き、顔に影ができる。

………だよな。俺も宏美に同じことを言われたら認められないだろうし


「………それにな、宏美。これは俺の意思どうこうの問題じゃないんだ。例えば、俺か遼鋭が誰かに殺されたとして、宏美はその犯人を許せるのか?」


「許せる訳がないじゃないか!どれだけ一緒に過ごしてきたと思ってるんだ!一緒に笑って、一緒に泣いて。かけがえの無い時間を一緒に暮らしてきたんだぞ!それなのに、そんな、よくも分かんない奴に殺されたりなんかしたら私は………私…は……………」


激しく声を荒らげたかと思えば、宏美はすぐにおし黙る。


「……………そういうこった。俺は1人の人間から、かけがえの無いものを根こそぎ奪ってしまった。俺がイリナをどれだけ悲しませたのかなんて、俺には分かりようも無い。大切な人間を失ったことなんて無いからな…………イリナはもう十分に悲しんだ。人生すべての悲しみを受けたと言っても過言じゃ無い。それなのにまだ悲しませるなんて俺には出来ない。これ以上はもう、悲しませちゃいかんのよ…………」


「…………で、でもそれじゃあ、狩虎が死んだら私は悲しい!多分一生引きずっていくと思う………ねぇ、狩虎は、私達にも悲しみを残していくつもりなの?」


宏美のほんの少し悲しそうな顔。

きっと、宏美はもう知ってるんだろう。分かっているんだろう。俺がこれから何を言うのかを、俺の意思を。

分かりきった上で、問い直しているんだろう。


「……………1つを取ってしまったら、補うためにはどこから何かを1つとってこなければならない。失わないものなんてないんだよ。そして、俺は人生を引っこ抜いてしまった。だから俺が穴埋めをしなくちゃなんないんだ。同等かそれ以上の何かでな」


「…………そうか。なんで狩虎はこんなにも強情で頑ななんだろうな。変えることが出来ないんだろう」


「簡単な話さ。時間は止まらない、未来は変わり続ける。今は動き続ける。それでも、過去だけは変わらない。それが世界の本質よ」


「……ふふふっ、お前がそのネタ使うなんて反則だろ。実は結構自分の名前気に入ってるんじゃないのか?」


当たり前だろ?こんな素晴らしい名前、俺にはもったいないぐらいだ。


「俺がいなくなって、悲しんでくれるのは有難い。その言葉を聞けて、俺の人生も無駄じゃなかったなって思えたよ。…………それでもこの世には変わらないもの、変わっちゃいけないものがあると俺は信じている。」


正義がなんたらとか言うつもりはない。理性で考えたことでもない。これは俺が勝手に感じた俺のクソみたいな主観だ。証拠もない、理論もない。だけれども、だからと言って、それが常に間違いだと俺は思いたくない。俺の心が感じたものを俺が否定するなんて、間違い以外の何物でもない。


「俺はその、変わらないものを信じて、自分の信念を貫いて、こうなった。それならばこれは俺からすれば正しいことなんだ。正しいことを俺はなす。例えそれでも宏美と遼鋭が悲しんだとしてもな」


「………そうか、いいよ、わかったよ。それで狩虎が救われるっていうのなら、私はもうこのことに関しちゃ言及するつもりはない。それでも…………」


宏美は俺に歩み寄ると

俺の頬にキスをした。触れるか触れないかの柔らかなタッチ。刹那のような短な時間であった


「口出しはするがな。………でも、安心しろ。これで最後だ。これ以降はもう言及もしないし口も出さない。」


そう言うと宏美は先に歩いて行った


立ち止まってしまった俺。

柔らかな唇が触れた部分を手でさすり、宏美の後ろ姿を眺めていた。


「………………」


開いた口がふさがらない。俺は宏美が行ってしまった方向を呆然と見続ける。


「…………まったく、口腐っても知らねーぞ?」


そう言うと俺は動き出す。

いや、でも、ちょっとあれだな。案外、


「…………いい気分だったりして」


俺はまた空を見上げた。雲1つない快晴。だけれど、雀のさえずり、カラスの鳴き声、自動車の駆動音が耳障りだ。

……………でも、こんな音でも、今の俺からすれば心地よく感じてしまっている。………かもね


そう言うと、俺はまた歩き出した。




「なぁ狩虎。イリナさんが休み始めてから今日でもう4日目だよ。さすがに僕達も動き始めた方がいいんじゃないかい?」


教室のお昼休みにて


「そうか?もしかしたらインフルエンザにかかってしまったのかもしれないだろ?何も心配することはないって」


「心配することはないって…………この教室の雰囲気見てみなよ。昨日は大人しかった男達が今や奇声あげながら暴れまわってるじゃないか。イリナさんを心配してないわけじゃないけれど、イリナさんを襲っているであろう危機以上の危機が教室に蔓延ってるんだよ。」


まぁ………確かに奇声はうるさいな。それに皮膚を掻き毟る音と紙を破く音、こいつらもうるさい。


「見なよ狩虎。あそこの寺井君なんて頭をかきむしっちゃって、周りに髪の毛が大量に落ちてしまってる。あれはきっと将来ハゲるね」


あーー確かに。あのペースで髪を削ってくと、40代にはツルピカになるな。


「でもまぁ、正直こんなのは些細なことだよ。一番困ってるのは紙の無駄遣いさ」


「おいおい、髪よりも紙の方が大切なのか?人間に優しくないな」


「いや、紙の使い方が正しいのであれば[頭皮をお大事に]って言うんだけれどさ、ちょっと使い方が酷いからねー」


クラスの大半の男共は、鬼気迫る顔で、何かの裏紙に[飯田狩虎]と書いて、その紙を破り捨てているのだ。1分間に34は破られているな。どれだけ恨み込めてんだよ


「てか男子達に恨まれるようなことをした覚えがないぞ。何に対しての恨みなんだ?」


これと言ったことをした記憶がないな。学祭をぶっ壊したとかそう言うこともしてないし、発言もそんなにしていない。唯一ノリが悪い程度…………うん、1分間に34ビリビリされるような覚えはないぞ


「そりゃあ、イリナさんと楽しそうに話していたからだろうね」


…………俺関係ねーじゃん。俺を恨むのおかしいじゃん。お前らいつもイリナを包囲して喋りかけまくってるじゃん


「イリナさんを心配してないってわけじゃないんだよ。僕も大いに心を痛めている。でもね、イリナさんが来ないことで起こされるであろう狂気と暴動で彩られた吐き気しか催さない[汚れしかないデモ運動]の方が、どうしても僕は危険視してしまうんだ。そっちの方が凄く心配」


「字面だけ見るとお前、この学校の男子達への表現がエゲツないな。ここは一応お嬢様お坊ちゃま学校だろ?そんな、きわどい表現を使うのは間違いじゃないか?」


「……………何言ってるんだい狩虎?」


俺の一言で、いままで曇っていた顔がさらに曇る。

何って……………


「だから、この学校はあれだろ?お金持ちとかの家系で、優雅な方々が来るような学校だろ?だから俺はこの学校に入ったんだ。」


一度、金持ち達の行動を知りたかったのだ。俺みたいな庶民じゃ考えつかない発想とか言動とかさ、味わってみたいじゃないの


「……………もう一度聞くよ狩虎。君は何を言っているんだい?」


「………………俺って今変なこと言ってる?」


………えー、なんだこの状況。全然わからないんだけど


「変なことって言うか、アホみたいなことを言ってるよね」


「アホみたいなことだって!?一体どこがさ!」


「ここがお金持ちが来るような上層階級の学校だって部分が」


「ふぁい!?何言ってるんだい遼鋭!?この学校は[上北高校]だろ!?」


「もちろん。何回上北高校って書かれた門をくぐったと思っているんだい」


「だろ!?だからそりゃつまりあれだよ。俺は間違ってないんだよ!」


「いや、なぜそうなるんだよ。名前が記憶と合っているからって、高校の内容が正しいとは言えないじゃないか」


「はぁいぃい!?何言ってんだい!?俺はちゃんと中学生の時にパンフレット読んでこの学校がその、上層階級の学校だって言うことはちゃんと確認して……………」


「そこ間違い。この学校はそんな上品な人が集まるような所じゃないよ」


うおぉぉおぉおお!?一体どういうことだ!?だめだ、今俺の理解を超えたよく分からないやりとりをしているぞ!


「そもそもこの学校は頭さえよければ誰でも入れるような学校だから。そりゃ確かに偏差値も高いさ、進学校という名がピッタリさ。でもこの学校の入試の時に見られる学力と内申点の比率は10:0だからね。」


…………はぁぁぁああ!?!?なんだそりゃぁあ!?


「生活態度が悪い天才どもが集まるのがこの学校だよ。だから狩虎はここを選んだんでしょ?」


「ちょっちょっちょっちょっちょっ、ちょちょちょ!!待て落ち着け、落ち着くんだ俺よ。机の木目から人の顔に見えるものを探すんだ……………」


……………うん。そんなものはやはりないな。

さて、いい感じに頭が落ち着いてきたぞ。

まずだ。俺はこの学校がお上品なところだと思っていた。ああ、大いに思っていたさ。てか俺の志望動機のほとんどであるぐらいだからな。


「…………まずよ、少しだけ整理させてくれ。」


「いいよ」


遼鋭はそう言うとバッグから紙切れを取り出し俺の前に置いてくれた。


「ありがとな、でも俺は書くのが面倒くさいから頭の中だけでいいよ。だから鉛筆と紙はいらない」


それを聞くと遼鋭は「だよねー」と言いながら紙切れをバッグに入れなおした。


「さて、そもそもこの学校の名前は上北高校で良いんだよな?」


「うん。」


「で、この学校は内申よりも偏差値重視の進学校だと。」


「そう言うことだね」


「お上品な所ではない?」


「ではないね。お上品な学校はお隣さんだよ。…………そう言えばイリナさんが元いた所だね」


ガタガタ!!

[イリナ]という言葉に反応して、周りの男どもがこちらを振り向く。

こえーよ。そして紙を破るんじゃねぇ。そんな事しても俺に呪いなんて掛からねーからな


……………さて、整理し直すとなんかこう、あれだ。俺が思っていたのと違う。


「おかしいな…………俺が中学生の頃に見たパンフレットには[真面目でお上品な言葉をもっとうに、学校を運営しています]って書いてあったのに……………」


「どんなパンフレットさ。僕が見たパンフレットには[我が校は伝統と規格を打ち壊し、新たな時代を作り出す学校です]って書かれていたけどね」


いや、それも十分おかしいとおもうぞ。


「きっと狩虎が覚え間違いをしちゃったんだよ。ほら、だってよく君アクションゲームの時とかに弱攻撃と強攻撃を押し間違えるし」


「あれは違うんだ…………指先が不器用すぎて思い通りに動かせないだけなんだ。」


ゲームとかって指の繊細な動きが要求されるわけで、難易度が上がり始めるともう指先がこんがらがっちゃうわけですよ。

コントローラー上で指同士がぶつかる事なんてよくあるからね。


「とにかく、この学校は決して上品とは言えないんだよ。粗野な人間の集まりさ」


「むむっ…………じゃあ俺が見たパンフレットは本当に一体何だったんだ?確かに書いてあったのに…………」


「だぁかぁらぁ、きっと隣の学校とこの学校のパンフレットを一緒に見てこんがらかっちゃったんだよ。」


ぬぬぬぬ……………なんだってー!?そんなことがあって良いのか!こんがらかっただって?…………まぁ、たまに俺もこんがらがって間違える時は確かにある。焼きそば弁当にお水入れて「あ、お湯じゃないといけないんだった」とか言いながら焼きそば弁当をコンロの上に置いて火をつけたことも確かにある!ああ、一瞬で燃えたよ!石油製品だからだろうな!

……………俺きっと間違って覚えたんだなパンフレットのこと。こんなことする人間だもんな、間違えることぐらいあるわ


「きっとそうだな、多分俺間違って覚えたんだろうな。なんかそんな気がしてきた」


「きっとそうだよ。君だってたまには間違えるのさ」


うーーむ…………てことは何か?俺は勘違いで進路間違ってしまったってのか?…………なんだろう、人生を無駄にしたような気分だ。


「まぁそんなことはどうでもいいじゃないか。狩虎はどこに行こうが狩虎さ。お隣さんに行った所で今の生活とはそこまで変化はなかったんじゃないかな?」


「うーーん…………そうだろうかね。…………うん。もうそうしよう。そうだと決めよう。これ以上うじうじ考えたって何も意味はないからな」


もうどうしようもねーよ。今から転校なんて馬鹿馬鹿しいし、何気にこの学校の生活も楽しいからな


「うんうん。それがいいよ…………で、話は戻るけどさ、イリナさんの事どうする?」


「はぁ、結局その話になるのか。だから、もういいんじゃないのか?風邪なんだろ?それなのに無理強いして学校に来てもらうってのは、間違ってるんじゃないの?」


「確かにそうだけどさ……………もうそんなこと言ってられないでしょ。本当に学校崩壊するよ?このままだったら」


……………まぁ、確かにそれも事実だ。間違っちゃいない


「でもだからって病人をさぁ………」


バン!

遼鋭が机を力強く叩く!


「ダメだね。このままじゃ堂々巡りだ。話が何も決まらない。僕達はちゃんと見極めなければならないと思うんだ。イリナさんを労って、その為に学校獣の男子どもを…………間違ったね。学校中の男子どもを発狂させて犯罪に駆り立てるのか、どっちが大切なのかを」


「いや、まぁ、その………うぐむぅ……………」


「狩虎がイリナさんを大切に思う気持ちは分かる。僕も同じさ。でも、それとこれとは別問題だ………………そうだね、もう少し議論の時間が必要だ。いや、もう少しじゃない、大量の時間が必要だ。君を説得させるのには時間がかかるからね。」


お、おお…………なんか嫌な予感がする


「放課後、あの場所に来てくれ。僕と狩虎が初めて意見が割れたあの場所に……………今の僕は君の考えを変えるためなら腕力を使うことも考えている。」


実力まで行使しようってのか。いやーーその情熱恐れ入ったぜ


「さすがクラスの委員長だ。クラスのことを目一杯考えているな」


「ああそうさ。僕は君達クラスメイトにとって最も良いことを考えている。僕からすれば、これが最良の方法なのさ」


…………まったく、熱くなってきやがったな遼鋭。ここが教室じゃなかったら今にでも突っかかってきそうだぜ」


「…………オーケー。分かったよ。それじゃ放課後7時半にあの場所に集まろうぜ。俺も真面目なんだ、この考えだけは譲れない」


今、不安定なイリナを外に無理矢理連れ出すのは得策じゃない。あいつの精神が落ち着くまで、家で休養を取ってもらわないといけないんだ。

世界は俺がイリナに裁かれることを望んでいる。だから昨日俺は助かった。あの2人のおかげで助かった。だったら俺は何が何でもこれを成し遂げなきゃならないんだ。


「…………久々に、真面目に語り合おうぜ狩虎」


そう言うと、遼鋭は自分の席に戻って行った。

……………今日もまた、イリナには会えそうにないな。

俺は額を伝い始めた汗を拭った。暑い、暑すぎるぜ。

キーンコーンカーンコーン

放課後終了のベルが響く




ガチャリ

茶色く、重たい扉が開かれる。


目の前に広がるのは、私が日頃見ている街並み………とは少し違う景色。ところどころ破壊された一軒家。森に覆われた街。崩壊したビル。ダンジョンへと変化した地下鉄 (新宿駅に変化したと言ってもいいだろう)。

そして、一番の違う点は…………


家の真ん前に炎で作られた円柱ができていた。ボッボッボッボッと音を立てながら燃え続けている。


「…………これは……」


私はそれにゆっくりと近づいて行った。階段の一段一段を踏みしめていく。躓くはずもないけれど、なんとなく手すりに手をかけながら……………

そして、私がその炎に触ろうとした瞬間、炎が一瞬で消え去り、地面に突き刺された剣が姿を現した。

真っ黒な剣。すべての光を吸収してしまいそうなほどの仰々しさ。

そして、剣の前の地面に


[返す]


ただその一言が彫られていた。


「………………」


私は拳を思いっきり握りしめた後、剣を持ち上げ背中の、剣をしまう部分に装着した。

ああ、4週間前に逆戻りだ…………なぜか少し、悲しかった。


その後私は当てもなく歩き続けた。自分の出した結論が正しいのかどうかを確かめる為に。


「私はきっと、彼を殺さなければいけないんだろう。」


彼はカイを殺した張本人だ。私の恨みでしかない。だから私が彼を殺すのは道理であって、正しい選択なのだと思う。いや、本当は許すことが一番なんだろう


許す…………そんなこと、出来るのだろうか。私は彼ほどできた人間じゃない。大切な者を殺されて、それでいて許せるほど、私は寛大じゃない。


「…………そうだ、あそこに行かないと」


当てもなく歩き続けた私の足は一瞬止まると、すぐに方向を変え、目的地を据えた。


カイと初めて会った場所に行こう。そこに行かないと多分私は決心がつかないと思う。もう結論は出ている、後は私が覚悟を決めるだけだ。


歩きながら、ここ3週間の思い出が出てきては消え………ない。出てきてはその場にとどまり、増え続ける。

ダメだダメだダメだダメだ。このままじゃダメだ。吐きそう。この気持ち悪い気分を晴らす為に何かにあたりたい。


私はふらつきながら、歩き続けた。

ああ、何でいつも彼の顔がよぎるんだろう。いや、そもそも彼なのか?カイなのか?…………正直、今の私には違いがわからない。


ピタッ

私の足が止まる。


「…………何でいつもお前らは、私の邪魔をするんだ!」


巨大な岩が道の途中に置かれていた。そしてその上に1人、人間が座っていた。


茶色の巨大な鎧に身を包み、静かに座っている。遠くの月を見ているようだ、私の方に背を向けている。

そして、私の声に反応して鎧の男はこちらに振り返った。


「三王の1人………土石竜」


土石竜は、まるで興味のない者を見つめるかのように、ほんの少しの間私を見た後、元の方向に向き、月を見始めた。


……………私には興味はないのか。弱いとでも思ってんの?


私は剣を背中から抜いた。


「丁度イラついてたんだよね。私はあんたらが本当に大っ嫌いなんだ。叩き潰させてもらうよ」


それでも土石竜は振り向かない。


…………チッ!


「やっぱり私は……………あんたらが!!」


私は力の限り、地面を蹴り飛ばす!


「気にくわないよ!!!!」


月明かりのみの夜空に一筋の稲妻が輝き始めた

今回は次の展開の前置き的な部分だったので少し………いや、過少表現はダメですね、そこまで面白くありません。

まぁ、常に面白いかどうかはと言われたらなにも言えませんが………………


重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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