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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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45/364

たまには真面目なバトルシーンを…………

ボボッ、ズォォォオオ!!

炎はうねりながら、周りの岩盤を焼き溶かしていく。その姿は地を這う蛇のように、また獲物をじっくりと品定めするチーターのように、俺の周りを浮遊し這いずり染島さんと黒垓君の2人を注意深く観察しているようだ。

彼ら2人はそう簡単には俺のところには突っ込んでこれないだろ。いくら魔力を斬ったり何処かに飛ばせようとも、俺の炎なら当たれば一撃だ。慎重にならざるを得ない。


…………仕方ない、俺から行くか


俺が腕を上げると俺の真上で炎が出現し、巨大な剣を形作っていく。長さ7メートル厚さ67センチだ。斬るためではなく叩き潰すための剣。それに、たった2人を相手にするには無駄に大きすぎる。まぁ、こういうのを作る時って結構気分だからね。無駄だとしてもカッコいいでしょ?

そして俺がくいっと指を傾けると、巨大な炎剣は2人めがけて振り下ろされ、固い岩盤を粉砕する!

バゴンン!!

吹き飛んだ岩が高速で他の岩や石にぶつかり吹き飛ばす!


だがそれを2人はかわすと、そのまますぐに俺の元へと走り出す!

くそっ、染島さんの動きにならまだ対応できるんだが黒垓君が速すぎる!さすがは勇者だ、身体能力に関しては俺に勝てる要素がない。


…………それなら動かなければいい。


ボンボンボンボンボン!!


俺の手から射出された巨大な炎弾がまるで爆弾かのように触れた地面を吹き飛ばす!

しかし、黒垓君はそれを横に逸れることで簡単にかわし、俺との距離をさらに詰める


「んーー…………速いなぁ。どうにかして動きを止めないと」


「あははは!いいんすか師匠!?考えてることがだだ漏れっすよ!そんなこと言われたら足元警戒しちゃうじゃないっすか!」


俺が独り言を何となく漏らすと、黒垓君が反応する。

いいんだよ別に。足を攻撃するつもりはないからね


「動きを止める方法は足を攻撃する以外にもまだあるからね」


指をさっと横に振ると、俺と黒垓君の間に巨大な炎の壁が現れる。無駄に綺麗な装飾が施された豪華な壁だ。右端には犬の、左端には鳥の形をした悪魔をモチーフにした炎で作った獣が配置されている。これもまた無駄に大きい。4回建てマンションぐらいある。しかも天井が結構高めのやつ。


流石の黒垓君もこれには立ち止まりざるを得ないだろう。ここからじゃ炎が邪魔で見えないから今の状況がよくわからないが…………


俺は炎を出現させるとそれに乗り、炎を上空まで上昇させた。

おっ、やはり立ち止まっているな。それにあの化け物2体との戦いも始まったようだ。黒垓君は白色の剣で応戦して斬りつけているけれど、無駄無駄。飛ばされた分の炎は壁から継ぎ足しされるんだ。もし全部消すとなったら1時間はかかるぜ?

そうだ、逃さないように炎で周りを覆うか


俺は壁を拡張させ、曲げて、ドーム状にして黒垓君と化け物2人を囲んだ。そして、蓋を炎で作りくっ付けた。


よし、完璧に閉じ込めたぞ。これで黒垓君はもう逃げられない。さて問題は…………


俺は炎を消し地上に降り、辺りを見渡す。

上から見た限りでは染島さんはあのドームの中には入ってなかった。多分どこかに隠れて俺の隙を窺っているのだろう。

水で場所を探ってもいいが染島さんには一度この手を見られているから、そこまで有用じゃないだろうし…………


「…………めんどくせーや。全部吹き飛ばせばいいか」


俺の真上に5個の巨大な炎の球体が出現するとそれが1つになり、更に巨大な炎の塊となる。あまりにも巨大。無駄である。無駄、無駄、無駄、無駄、無駄。こんなの落としたらここ一帯が消えてしまうだろう。てかこの溶岩地帯がなくなる。それに多分爆発した時の熱風で、半径数十キロの木々が熱風で燃えてなくなると思う。

………まぁ、いいんじゃないかな?うん。宏美が作った森を消すには丁度いい


「染島さん。今からこれ落とすんで注意してくださいね。」


そう言い終わると俺は腕を上から下へと振る。


ゴゴゴゴゴ……………

巨大な火球はゆっくりと下降を始める。

まったく、頭上が明るいったらないぜ。「巨大な電球か何かかよ。」って言いたくなるほどだ。


俺はちらりと炎のドームの方を見るが、これといった変化はない。それに染島さんも全然出てくる気配がない。姿を見せてくれたら消すつもりなんだがな……………


火球はどんどん落下する。高くそびえ立っている火山がジュウァァア、と溶けていく。

…………まぁ、こんなもんだよな。俺が本気出したらそりゃこうなるわ。実力差がありすぎるんだよなー。ほんの少し力を出しただけだぜこんなの。それなのに黒垓君は閉じ込められ、染島さんは特大火球の前になす術もなく隠れている。………まぁ、しゃあないよ。

どんなに2人が対人戦で強かろうが近づけれなかったら何も出来ないんだから。


仕方ない。地表ギリギリでドームも火球も消すことにしよう。これで彼らが俺を止めようなどとは思えなくなるだろう。ここまで実力差があれば俺を止める手段がないと痛感するに違いない。うんうん、それでいい。それでいいじゃないか。何も殺すことはない。圧倒的実力差を見せるだけでいいだろ。


…………ただまぁ、なんだろうな。少し悲しいかな。開始1分もしないで戦いが終わってしまうというのは…………つまらないとかじゃなくてやるせない。

折角旧友が俺を止める為に戦っているのにこんなに簡単に終わってしまうなんて……………


俺が考えふけっているその間も火球はじわりじわりと降下して、もうそろそろ地面にぶつかり全てを吹き飛ばしてしまうところまで来ていた。


「ほっっっっんと無駄だよなこの力。彼らの思いをこうも簡単に踏みにじってしまうなんて…………」


「簡単に踏みにじられるような思いを私達が持つとでもお思いですか?」


声がした………いや、なんだろう。頭に響く何かが飛んできた方向から真っ黒な線が上空に向かって飛んだ。

あれは……剣だ。真っ黒な刀身の剣。


それは火球に向かって飛んでいき、吸い込まれるように中に入っていくと何秒か後、火球がボコンボコン!と膨らんだり凹んだりを繰り返し、最後は大きく爆発して吹き飛んだ。俺の見える範囲の空の全てが炎だ。だが熱風はそこまで熱くない。たぶん炎全てのコントロールをしていた中心部の魔力を消されたからだろう。そこまでの熱が出なかったようだ。


「………っ!?」


俺が上空を見上げているとドームの方向から何か嫌な殺気を感じ、俺はすぐさま顔をそらす!

ボッ

すると、俺の顔があった場所を見えない何かが通過し、その直線上の岩に丸い穴が開く。


「安心して全力を出してください。例え師匠がここ一面を消し炭にしてもオラ達は死なないっすから。………師匠のその考えを変えさせるためなら、オラ達は何でもしますよ」


ブォォォおおおお!!

炎のドームが跡形もなく消される。そして………

ビュウウウウウ!!

暖かな風が俺の体を押してくる


炎から出てきた黒垓君の両手には緑色の槍があった。先っぽには53センチの刃。気のせいか目の錯覚か、風が周りを覆っているように見える。


「聖剣………つってもこれじゃあ聖槍っすよね。こんなに持つ場所が長くて刃が短ければ……………こいつの名前は風牙ゲイボルグ。魔剣光剣と同じ7大聖剣っす」


カチャリ

音がした方を見ると染島さんが黒色の剣を拾っていた。


「私達の思いなんてどうでもいい。踏み潰したければいくらでも踏み潰して構いません。踏みにじりたければいくらでも踏みにじりなさい。だって私達の思いはただのわがままなのですから。飯田君のことなど何も考慮してない浅い考えなのですから。…………ただ、私達はいくら踏みにじられても貴方を止めるつもりです。貴方の思いを変えるためならね」


……………はぁ、何でこんな俺ごときにそこまで頑張るんだ。俺には何の魅力もないぜ?運動もそこまで出来ない、勉強ができるだけ。人の頼み事を引き受けたと思ったら途中でその依頼人を裏切るし、親友の想いにも気づけなかった。それに…………イリナに悲しい思いをさせた。

俺は自分を欠陥品だとは思わない。多分これが俺という1つの完成品なのだ。人の期待を裏切り人を不幸にするという本質が俺なのだ。どこかが欠けてるとかはない。これ以上何か新しいものを付与できる余地がない。これが俺なのだ。


「そんなことを言ってもらえるってのは素直に喜ぶべきなんでしょうが、あいにく今の俺にはそんな余裕は無いんですよ。」


ボン!ボン!

俺が火球を2人めがけて放つと、どちらの火球も打ち消される。

ダッ!

そして黒垓君は距離を詰めると槍による連撃を放ってくる!

それをなんとか紙一重でかわすが、その度にかすめる風が俺の体を少しずつ切り裂いてく。

炎を使って攻撃を防ぎたいが、さっき俺の炎の壁を貫いて風で炎を消しやがったからな…………


シュッ!

それに、攻撃と攻撃の間。つまり黒垓君の息継ぎの時には染島さんが剣を振り隙を与えないようにしてくる。

くそっ、俺は運動が苦手なんだ。少し勇者の力があるってだけで、2人の攻撃をかわし続けられる程ではないんだよ


ボオォッ!

俺が腕を振るとその軌道の通りに炎が通り、周りの物を焼き尽くす。2人の体をまとめて焼き尽くすのが狙いだが…………


シャンシャン!ボッ!

炎は断ち切られ、風の槍が炎を穿ち吹き飛ばす。

だよなー。そうだと思ったよ。

だがしかし俺は諦めずに何度も何度も炎で攻撃する。俺にはこの能力しかないんだ。無効だとわかっていても使い続けないと。でもその度に炎は消されていく。

風のくせにどうやって俺の炎を消してんだ?


「………秘密を暴かなくちゃいけないようだな……………」


パン!と合掌すると周りの溶岩溜まりからマグマが噴き上がる。

そして、それが波のように黒垓君達の元へと押し寄せる!


「無駄っすよ無駄っすよ!師匠の火力に劣るこんなもの、すぐに吹き消してやるっす!」


黒垓君が槍を振り回すと黒垓君の周りを風が吹き荒れ、押し寄せるマグマが消えていく。

…………黒垓君を中心に綺麗に円形状にマグマが消えている。うーむ、いまいち法則が掴めないな。


まっ、マグマはここに腐るほどあるんだ。気長にやろうや


「飯田君………」


俺が周りのマグマを黒垓君の方へと流し続けていると、染島さんの声が頭に流れてきた。


「なんですか染島さん。やめてくれって言われても俺はやめないですよ。」


「いやいや、いいですよー。いくら流されても頼もしい黒垓君がさばいてくれますからね。私的にはやる事がなくて暇を持て余しているんですよ。どうです?雑談でもしませんか?」


「………まっ、いいでしょう。どうせ俺もこんな作業飽きてきていたところですし。でも説得はやめてくださいね。俺の意志はもう決定しているんですから」


黒垓君の周りに岩石が堆積し始める。マグマが冷えて固まったのだろう。

………なんとなくわかってきたぞ


「わかりました。…………そうですねぇ。飯田君はどんな靴下を履きますか?」


「靴下……ですか……………。長めのやつですね。あ、でもサッカーソックスみたいに長くないですよ。くるぶしを隠す程度です」


「ふむふむなるほど…………私も実は長めの方が好きです。短いと靴を履いた時に[あら、この人ソックス履いてないんじゃ?]とか思われそうなのでそこまで好きじゃありません」


理由がなんとも言えない…………


「それでは、色は何色が好きですか?あ、もちろん靴下の色ですよ」


「黒ですかねー。シンプルでいいですし、何より目立たなくて済む。赤とか派手なのはなるたけ履きたくありません」


「なるほどなるほど…………私的には白色が好きですね。あ、でも水色とか黄色もいいですよね。鮮やかで綺麗ですし、何より可愛く見えますから」


………染島さんは可愛いというよりは綺麗だと思うんだけどな。


「綺麗と言われるのは嬉しいですけど、私も一応は年頃の女の子です。まだ若いんですよ。だから綺麗よりは可愛いと言われたいものですね」


「そういうものなんですか女の人って………。ああ、あれですね。小学生の頃に可愛い可愛いってもてはやされていた男の子が中学生になったら急にワックスで髪セットしてくるやつですね。[俺も男だ!可愛いよりもカッコいいの方が良い!]って彼は言っていましたよ」


別に可愛くても良いと思うんだけどなー。どうせ思春期になったら嫌が応にも顔変わって男臭くなるんだよ。だから髪にワックスベタベタくっつける必要はないんだよ。毛根の死期を早めるだけだぞ


「そういうものです。みんな、自分を可愛く見せるために必死です。美容にお金をつぎ込み、可愛いお洋服を買って、自分を着飾る。お化粧にいたってはどんな人でも可愛くなれてしまいますからね。私は全員同じに見えてしまいますが」


「そうなんですか…………俺はいまいちわかりませんね。女性との繋がりがそこまでないですし、なにより俺の周りはスッピンですからね。全く、年頃なのだからそこんところおろそかにしちゃいけないですよね。小学生じゃあるまいし………」


「良いじゃないですか、スッピンでいられるというのは美女の証ですよ。羨ましいですねー。飯田君の周りは美少女が沢山いるわけですね」


うーーん…………まぁ、そうだな。美人ばっかりだな。イリナといい宏美といい雪さんといい染島さんといい、最高な状況だ。ここで俺がイケメンなら尚のこと良かったんだが………


「いやいや、飯田君。あなたはスッピンですよね?だったら大丈夫。あなたもイケメンですよ」


「いや、俺は男ですから。化粧なんてするわけないじゃないですか。てかスッピンじゃない男なんて嫌ですよ。」


「そうですか?私の周りにはチークをつけている人が結構いますよ?」


染島さんの周りがすごく気になる!韓国のイケメンサムゲタンといいメイクする男といい、一体どんな大学なんだ!今度こっそりと入ってみようかな!?


マグマはなおも黒垓君の元へと流れ続ける。それに岩石も結構堆積してきた。てか1回ほとんど黒垓君達を埋め尽くしたんだけど破壊しちゃったんだよね。破壊したというか溶かしたのだけれど。

なんといってもあの岩石達のせいで溶岩の進行が阻止されてしまうからね


「………まぁ、チークの話はおきましょうか。」


お、おかないでくれ染島さん!めっちゃ気になるんだよ!


「なんで私がソックスの話をしたか分かりますか?まさか私が脈絡もなくこんな話を振るとは思ってないですよね?」


「思ってはいなかったですけれど、いまいち何を求められているのかわかりません。ソックス、靴下、そんなものに何かあるなんて俺にはてんでさっぱりで…………俺みたいに下らない存在だってことぐらいしかわからないですね」


俺は染島さんの興味深い言葉を心に留めたまま会話を再開する。といっても溶岩とマグマの壁があるし、テレパシーみたいなものだから会話というにはちと言葉足らずな気もするが


「…………そういえばこの前、飯田君はこんなことを言ってましたよね。[染島さんと俺とじゃソックスとスマートフォンみたいに似て非なるものだ。スマートフォンの依存者はいるが靴下の依存者はいない]と。多少言葉は変えてますが、そこはわかり易さ重視でやっているのでご承知願います」


…………あれ?それ俺思っただけで言葉にしてはいなかったような…………ああ、そうか。染島さんは[説明]すらも分かってしまうのか


「確かにその通りですよ。スマートフォンには中毒性があって、靴下にはない。だからってスマートフォンと靴下に共通点が何1つもないという説明にはなりません。………あるんですよ、共通点。誰もが気にも留めない当たり前なことが」


俺は再度炎を操って溶岩を溶かす。

もうそろそろだ。もうそろそろで準備が整う。


「共通点?ないですよそんなもの。素材も違うし有用性も違う。スマートフォンはカーナビにもなるしテレビにもなるしゲームにもなる。といってもお手軽な暇つぶし程度のものにしかならないやつですけどね。」


靴下がカーナビになるか?テレビになるか?ゲームになるか?

カーナビはもしかしたら亀の甲羅のような要領で行き先を案内してくれるかもしれないが、まぁないだろ。バカバカしい。靴下とスマートフォンじゃ違いしかない


「ありますよー……1つだけ。…………靴下はなくてはならない存在。とまではいかなくても[あるのが当たり前な存在]ではあるでしょう?外靴を履くときには必ず靴下を履くはずです。いや、履かないって人もいますよ?でもそれはごく一部の例外であって、大方の人は履かないわけにはいかないはずです。スマートフォンも然りです。こんなに利用されていても、ごく一部では使われていないんです。」


まぁ確かに一部では嫌って使わない人がいるよな。あんな便利なもの、使わないなんてもったいない。


「靴下があるのは[当たり前]。スマートフォンがあるのも[当たり前]。それじゃあつまり私がいるのも[当たり前]で、飯田君がいるのも?……………そういうことですよ。靴下とスマートフォンは[当たり前]であり続けることが共通点です。」


「……………それはないですよ。もし仮にそうだとしても、それじゃこの世にある全てのものが共通していることになってしまうじゃないですか。[当たり前であり続けること]が、当たり前になってしまうじゃないですか」


「ええ、そうですよ。この世にあるもの全ては当たり前なんです。この世に当たり前でないものはない。この世にいらないものはない。この世に、無駄なものなど何1つとしてない。それは全てに普遍的に、不変的に、不返的に当てはまります。………たとえ飯田君が過去に何をしようとも、当てはまることなんですよ。」


……………結局、説得じゃないか。


俺が手を挙げると、マグマの流動は止まり黒垓君達を包囲するものは堆積した岩石だけとなった。


「もういい。説得は聞き飽きた。俺は何度も言ったはずだ、[俺の意思は変わらない]と。そして[邪魔をするのなら傷つけてでも払い退ける]とも。」


俺がパチンと指を鳴らすと周りにある火山が噴火し、大量の溶岩が空へと舞う。

火山を刺激しておいた。だから少し刺激を与えればあっという間に噴火をしてしまうのだ。


ボォォォン!!!と巨大な爆発音があたりに響き渡り、ドロドロとして重たい溶岩が上空を舞う。空は薄めていない赤色の油絵の具を塗ったくったような、密度の濃いところは重苦しいほどに真っ赤で、密度の低いところはまだ底があるかのように明るい。


最底辺な光景だ。こんなクソみたいな背景はまさしく絶景だ。絶(対に見たくない光)景。まさにその一言に尽きる。


そして俺はそれをすすっと指で操ると、黒垓君達めがけて溶岩の塊を叩きつける!


「オラもさっきから言ってるはずっす!こんな炎、[消すなんて簡単だ]と!」


黒垓君は槍を大いに振り回すと、巨大な風が発生し、空めがけて飛んでいく!

そして、その風に触れた溶岩の炎は一瞬で消されてしまった。

…………が、


ヒュウウウウウ!!!


巨大な岩石が高速で落下し、風を切り裂く音が山々の間を木霊する!


「おかしいと思ってたんだよ。ただの風なら俺の炎をかき消すことはできない。せいぜい火力をほんの少しあげてくれるだけだ。だから俺は考えた、[もしかしたらあの風には現実ではありえない能力を持っているんじゃないのか?]と」


だがしかし黒垓君はうろたえることなく、風を作り続けて、岩を切り刻んでいく。


「んで最初に考えたのが[冷やす]ことだった。温度を極端に減らして化学反応を行わせない……………が、これはなし。俺の頬を撫でた風が異様に温かかった。冷やしていたのならばその風すらも冷たいはずだ。」


迫ってきた岩石を黒垓君が槍で貫き、粉々に吹き飛ばす!

が、その後ろにすでにもうひとつの溶岩塊が降り注いでいた


「………くっ!!」


バコッビキビキ!

黒垓君の槍に極大の風が巻きつき、辺りの岩を砕いていく


「あれでもないこれでもない。…………考え抜いた結果、君の風は酸素を奪っているという推測を立てることができた。火は燃えるものがなければ存在しえない。まして俺の炎は酸素に大きく依存している。それ以外に燃やすものがないからな。だから君のその酸素を奪う風は俺の炎を一瞬で消してしまったわけだ。」


つまり無風状態を作って消火しているだけだ。それならば溶岩は冷えてただの岩石となる。だから彼らの上に降り注いでいる。


「………秘密を知られたからってどうってことはないっすね。オラの風は師匠の炎を打ち消し、岩をも砕く!」


ビュオオオオ!!!

そして、黒垓君は槍に溜めた巨大な風を解き放つ!


「誇り高き我が白き翼 (デザートイーグル)!!」


巨大な風は溶岩塊を飲み込むと一瞬で岩石へと状態を変化させ、荒々しい風の一筋一筋が岩を切り、粉砕し粉々にする。

空には何1つとして溶岩も岩石もない。黒垓君が全て粉々に砕いたからだ。曇天ぐらいしかない。

あの風は物質変換されてるな。刃物のように鋭い風。きっと酸素を消す能力とは独立しているのだろう


誠にあっぱれ。あそこまで巨大な隕石のようなものを砕くとは素晴らしい能力と集中力と、それを扱いきる君の技量に敬意を表する。

…………まぁ、計算通りなのだが。


「だから、これから俺が使う炎はいままでのものじゃない」


吹き飛ばされた岩石が、黒垓君達を囲っていた岩石に堆積し、黒垓君達を覆い塞ぐ。


「魔力を拠り所とし、魔力を焚べて、魔力を燃やす。この世の物理法則を無視した、魔法の法則の上で成り立つ別次元の火焔。これはフィクションじゃないぜ、ノンフィクションだ。」


岩石で作られた球体の周りに無数の片手剣ぐらいの刃が出現する。


「闇を求めし陽光 (バーンズアワクルゥ)。俺への道は、全て途絶える。」


風で消せない炎に対処するには、槍で叩き斬らなくてはならない。しかし炎は周り全てを覆っている。一本だけじゃ防ぎきれないぜ


「まぁ、暇つぶしぐらいにはなったかな」


俺がパチンと指を鳴らすと、黒垓君達の周りに配置された火焔の刃が放たれ岩石を貫き岩が弾け飛び散る。


……………さて、今日も結構いい時間になってしまったな。これ以上待っててもイリナはこの世界に現れないだろう。今日はもう家に帰って明日もう一度来ようかな


俺は家に向かうため背を向ける。

だがその時、ほんの少し風の匂いが変わっていることに気がつく。

なんというか香り高い。少し嗅いだだけでこれが普通の空気でないことは分かる。研ぎ澄まされた緊張感。いや、これは………高貴だ。高貴な風だ。まるでいままで閉じ込められていた太古の風が解き放たれたかのような…………


「一本じゃ足りないなら増やせばいい。二本でも足りないならさらに増やせばいい。オラの座右の銘は[やるなら徹底的に]。粘着気質で有名なんすよ、オラって」


岩石を貫いた火焔の刃は人を貫くこともなく地面にカランと落下する。

中では風が渦巻き、小さな岩は風で巻き上がり切り刻まれながら上空へと運ばれる。そして、彼の体から離れる頃には石はただの砂へと変わっていた。


八雲之機織(やくものはたおり)風牙ゲイボルグ。この槍の本来の姿っす。」


黒垓君の周りに7本の槍が浮かび、一本を黒垓君が握りしめている。

風がとぐろを巻いている。いや、これはそんな甘っちょろいものじゃない。台風と言ってもいいぐらいだ。黒垓君が丁度台風の目で、全てを巻き込み斬り刻む。


「さーて、オラはもう手を出し尽くしました。どうです?オラとのラストバトルと洒落込みませんか?」


巨大な風の塊が俺めがけて飛んでぶつかる。

くっ、すげー風だ。勇者の力がなければまともに向かい合えていなかったかもしれない。


「いいぜ黒垓君。俺の知恵と力を全て使って君と戦うとここに誓おう。それじゃあ………」


ボッボボボ!

俺の体が炎で燃え上がり、ゴツゴツとした大きな鎧がいつの間にか装着される


ズラッ


俺の背後に何百もの火焔の刃が出現する。


「ラストバトルだ」

重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/

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