男女比2:1の奇跡
ここ最近俺は成功を収めたことがない。いや、最近どころか人生で成功と言える成功を収めた記憶がない。なぜだろうか。
いつも完璧な計画を立てるのだがそれがなぜか途中で狂ってしまい、必死で修正するが思わぬ方向へと向かい結果として失敗する。
こんなことが何十何回と起きたわけだ。今回のことなんてその数十のうちの1つでしかない。俺からすれば人生という形。無垢から削りあげてきた形。すなわち型抜きの細かなカスでしかない。
作戦は練りに練った。
まず第一になぜか夢に出てくるカイの記憶を使いイリナを誘き寄せる。
第一にと言ったがここが最難関だった。まず小説をイリナの目にとまらせないといけないわけだからそれ相応に面白くないといけない。いや、まぁストーリーは面白いのだ。ノンフィクションの冒険活劇。聞こえてくるような息遣いや目を閉じれば見えてくるような背景タッチ。それが俺の頭の中には経験として詰め込まれているのだから。ただ、表現力が足りなかった。別に小説家目指して生きてたわけじゃないし、推薦で行く気もないから評論文も練習してない。やっていたのは現代文の要約だけ。正直絶望だった。
表現方法なんて問題解くために覚えた対比とか否定とか例とかだけ。こんなんで面白い小説が書けるわけがない。
だから俺は寝る間も惜しんで文章の書き方をひたすら練習した。勉強の合間合間に[これは現代文の解くための練習なんだ。そう!これは無駄なことではない、もはや有意義!無意味なわけがない!]とかブツブツ言いながら書きまくりましたよ。
その甲斐あって小説が有名になってイリナの目に留まって、イリナが思惑通り[こいつ炎帝の仲間なんじゃねーの?]とか思いながら俺に会いに来てくれて。と、もう完璧に計画通りだった。計画通りすぎてパニクったほどだ。
それなのに俺の顔がカイにそっくりなんてさぁ……………思うわけないじゃん?思えないよそんなこと。いや鏡を見なかったのは俺が悪かった。ああそうさ!悪かったよ!全力で謝るよ。鏡見とけばもう少しマシな結末迎えられたと思います誠心誠意謝らせていただきますごめんなさい!
でもね?殺した人間の顔が自分にそっくりだなんて思いたくないでしょ?てか思えないでしょ?
どうかんがえてもおかしいよあれは。
と嘆いたところで結末は迎えてしまうわけだ。賽は投げられたってやつ。それまでに嫌われそうなことをいろいろとやってきたがあんまし効果なかったぽいしね。
チョップして泣かせて勘違いするようなこともたくさん言ってきた。ナンパものが嫌いだって言ってたから「綺麗だ」とか言いまくったのにそこまで意味はなかった。努力が求めている方向に向かわなくて泣きそうだよ。
……………まぁもう俺にはどうしようもない。ここから俺が出来ることといえばいつでも殺せる環境を整えて、イリナが今回の件について踏ん切りがつくのを待つだけだ。
会った時に殺してもらうはずだったのに無駄に長引いてしまい余計な感情が芽生えてしまうかもしれないが…………俺への憎しみは変わらないはずだ。だから俺はただ待ち続けるだけなのさ
「もう3日目だね。イリナさんが休み始めてからさ」
俺は自分の席に座ってペン回しの練習をしている。が、どうも俺は不器用なようでペン回しが全然出来ない。さっきから机に落としっぱなしだ。
そんな俺の背後から遼鋭は近づいてくる。
「本当だな。風邪っつってもそんなに長引くもんかね?小学生じゃあるまいし1日2日休んだらさっさと来いってんだよな。」
「うん。いや、まぁ普通はそんなに風邪は長引かないけれど、今回は長引いてるってことは危険な状態ってことじゃないかな。心配だよ」
イリナの欠席は風邪ということになっている。それも長引くかどうかも分からない不安定な風邪だということだ。それならいっそインフルエンザとかにしとけばよかったのにな。
「まぁ危険な状態であることは確かだな。いつどんな状態で何が起こるかわからない、そんな状態なんだ。俺たちは待って見守るしか出来ないんだよ」
俺はペンを回すのをやめ、バッグから次の授業に使うテキストを取り出す。
数学か…………この時間は暇だな。
「………らしくないなぁ狩虎。いつもの君ならもっと心配してなかったかい?[あ、あっべー!やべーよ遼鋭!イリナさんどうしたんだろうなインフルエンザ?結核?角膜剥離?ああ、心配だ!今日イリナさんの家に押しかけようぜ!そして目の前でポテチ食ってやろうぜ!]とか言ってそうなもんだけどね」
「最後の部分が酷いなんてもんじゃないな」
いや、でもどうだろうか。熱が酷い人って食欲ないから別に目の前でポテチ食われてもなんとも思わないんじゃないのか?
「いや、これが狩虎のチャームポイントだから。狩虎がこれを言わないわけがない。[目の前でポテチ食ってやろうぜ]がない狩虎なんて狩虎じゃないさ」
「遼鋭…………お前の中の飯田狩虎像が一体どうなっているのか考えたくもないよ。」
なんだろう、見てはいけない気がする。考えてはいけない気がする。
「まぁつまり僕が何を言いたいかと言うと元気出そうよ。そんなつまらなそうな顔で受け答えされるとこちらとしてもつまらないんだ。」
あら、俺ってそんな顔してましたか?
「いやいや元気よ?アイムファインセンキューアンドユー?ですよ?もう俺の心は有頂天さ」
「いや、さすがに有頂天はダメじゃないかな。イリナさんのファンに嬲られるよ」
ああ、確かにそうだな。彼ら今すごく落ち込んでるもんな。
というか教室が静まり返っている。イリナがいないってだけで男達はうなだれ、他クラスから来るファンどもが来ないため熱気すらも感じない。
これがイリナが来る前の教室。何も熱気のない本来の姿か……………凄いな。人一人で雰囲気って変わるもんなんだな。恐ろしいね人間の力っていうのは
「最近の男どもはダメだな。アイドルが1人いなくなっただけで落ち込みやがって…………そんなの松田聖子さんだけよ?聖子ちゃんだけよ?」
俺が思うに最高のアイドルだと思う。目指すべき目標ってやつなのかな?
「古いなぁ…………狩虎は現代に生きてないのかい?」
「最近の若者はようわからん。てか最近の流行がわからん。意味がわからん。一番よかった時代は1990〜2004年だと俺は思うぞ。」
音楽しかりゲームしかりだ。最近のゲームは無駄に3Dに拘ってしまって気持ち悪い。そこはやはり職人さんに頑張って原画を描いてもらいたいものですね。
まぁアニメの世界は俺にはわからないからこれ以上テキトウなことを言うつもりはない。経験したことがないことはなるべく言わないようにしているからね俺は。
「うーーん…………まぁ僕もそう思うけれど過去の栄光にしがみつくのは間違ってるんじゃないかなー。どんなにつまんなくても未来はくるわけだし?…………カッコつけるとよく聞こえるけれど要は嫌なものに自分から突っ込んで受容してなぁなぁに過ごせってことだもんね。はぁ、そんな人生送りたくないねー」
「思うが遼鋭って話が飛ぶよな。聞いてて聞きづらいぜ」
「いやいや、これは狩虎がしない分を僕が補填しているだけだよ。僕はこんなおちゃらけた性格じゃないよ?この小説は狩虎のテキトウな発言で成り立っているんだから僕がそれを補填しなくちゃ小説が終わってしまうんだよ。」
「どえらい事ぶち込んできやがったな。この小説は[シリアスになる]って目標掲げて書いてんだぞ。そんな俺の身も蓋も底もない話がメインだなんて信じられんな」
「それ要は何もないじゃん。………まぁ、仕方ないよ。力が足りないんだからさ」
「そうだな。何度目か分からんがこれが読みにくい理由は全て筆者であるという事は改めて提示しておこう。」
「そんないらない議論は置いといて、今日僕はイリナさんの家にプリント届けるんだけれどどうだい、一緒に行かないかい?」
「あーー俺はいいよ、遠慮しとく。生徒会からは代わりに宏美を行かせるからさ。」
「宏美はもう行く事になってるよ。なんか[私、嫌な女だったんだ。それの罪滅ぼしとして行かせてくれ]とかなんとか言ってたね。宏美のあんな申し訳なさそうな顔は久しぶりだよ。」
嫌な女ねぇ…………まぁ、できた女性でもたまには失敗するさ
「ふーーん…………申し訳なさそうな顔ってどんな感じ?目が細くなってた?」
「狩虎ほどではないけれど目は細くなってたね。それになんかもう今にも泣きそうで………狩虎の股間を間違って蹴っちゃった時のあの申し訳なさそうな顔に近いよ。」
ああ、あの時か。なんであんな泣きそうな顔なのか当時はわからなかったけど今なら分かる。確か俺あの数分前に宏美に出産の痛みよりも股間蹴られた時の痛みの方が大きいんだぞ。とかなんか言ってたんだよな。……………それのせいであんなに謝ってくれたのか。なんか申し訳ない気分になってきた。
「それは結構な落ち込みようだな。明日にでも励ましといてやろうかな」
「それがいいよ…………で、結局狩虎は来ないのかい?」
「いかんよ俺は。もう二度と会えないってわけじゃないんだ。そんな少し会えないからってわざわざ出向くなんて事するわけないだろ」
「……………ま、わかったよ。そういう事なら今日は僕達だけで行く事にするよ。まったく、素直じゃないんだから」
「素直じゃわい。俺は自分の心に素直よ?」
「そういう事にしておく。おっと、そろそろ時間だね。着席しなきゃ」
おお、確かに。もうそろそろ教師が来てしまうぞ。
遼鋭は自分の席へと戻っていく。
その後何事もなく授業は終わり俺は生徒会室へと向かった。
ガララ
「おっ、今日は先に翔石君たちが来ていたのか。こんにちは」
扉を開けると翔石君と雪さんが机に座って仕事をしていた
「こんにちは会長。おや?変顔してませんね。という事はイリナさんは今日も休みですか」
なんで変な事で推測してんだ翔石君よ。てか俺そんな変顔なんてしてたの?全然意識してないんだけど…………うわっ、まさか無意識で俺って変顔やるタイプ?………いや、どういうタイプだよ
「ああ、御察しの通り今日も休みだ。宏美はプリントとか届けに行ったからくるの遅いぞ。」
「なるほどですね。つまり今日は珍しく男女比が2:1なわけですね」
「そんな事あるんだな。俺たち男の方が女子よりも多いなんて事。俺絶対そんな事起きないと思ってたもん」
「本当ですよね。多分この回は伝説となりますよ。[男女比1:2の奇跡!]って感じで。」
「しょっぱい伝説だなー。…………あれだな、やる事ないな。」
「そうですね。口下手な3人が集まっても何も生まれませんね。文殊の知恵は出てくるんですがあいにく会話が弾むネタは、ねぇ?」
「ないよねぇ…………どうしたもんかな、仕事しちゃう?」
「仕方ないですね。これといったやる事もないですし仕事に没頭しますか」
「と言っても仕事尽きてるんだよねー。君たち優秀すぎてさ」
「なーるほど。天才ゆえの悩みってやつですね。…………どうです?勉強の教えっこでもしますか?」
「いや、君とやったら難関国公立大学入試レベルになりそうだから遠慮しとくよ」
「ああ、確かにそうですね。それはさすがにめんどくさい…………あーーないですね。暇をつぶすアイディアが」
2人でウノって言うのもさすがにないよな………あっ、3人か。
しかし、個性が被った人間同士の会話というのはつまらないな。斬新なアイディアが出てこない。
「あれだよ。もはや暇をつぶすという考えが間違いなんだよ。こう考えるんだ[そもそも暇という概念は存在していなくて、今俺たちが享受しているこの時間は休憩するためだけのリラクゼーションタイム!]と。」
「高校生が何言ってるんですか。高校生というのは寝るだけで十分な休憩を得られるんですよ。それに勉強、好きな事、遊び、これらに没頭し始めたら休む時間なんてもったいない。ひたすら時間を食いつぶす。休憩などありえない。ぶっ倒れるまで前進する。そうまさに高校生活は戦争ですよ」
「いや、君こそ何言ってるんだよ。高校生っていうのはだな、努力よりも感情の方が大切なんだよ。筆頭がまず愛だし感動だし楽しいだ。次が楽。最後にどうでもいい。これが俺たちの感情の全てだ。勉強?おいおいおい、そんな面倒くさいものガリ勉共にやってもらおう。どうせ社会に出たら使わないんだ、勉強なんて無意味さ……………とか言っちゃうもんなんだよ」
高校生なんてそんなもんだ。己の欲望に純粋だ。いや、貪欲と言った方がいいか。純粋なのは小学生までだな、高校生はドス黒い。
中学生はなんだろうな………あっさり?塩味?みたいな感じなんだよ。いや、ちょっと待てよ、どちらかというとミルク濃いめのコーヒー牛乳?…………難しいところだ。
「聞き捨てならないですね。社会に出たら勉強は使わない?それは間違ってますよ。汚れ落としは化学反応ですしプログラミングなんて漸化式と数列ばっかりじゃないですか。多少のjava言語とかC言語とかはありますけど、それに場合の数も使いますし洋服の繋ぎ目も計算してるんですよ。パソコンを使ってるだけで手記ではないですが。それなのに使わないって考えるのは間違いじゃないですか?」
「いいんだよ別に。パソコンでポチッとボタン押せば全てが勝手に出てくるんだ。知らなくても使える。[パソコンってやっぱり便利だなー]で終わればいいんだよ。知ったところで彼らにはなんの足しにもならない」
てか知る必要がない。知ったところで[へーーっ]てなるだけだし、そんな事にうつつを抜かすぐらいなら仕事をすればいいんだ。
「ああ、あれですか。知らなくても生きていけるって奴ですね。確かに生きてはいけますよ。食って寝て出せば動物は生きていけますからね。ただそれならそれ相応の覚悟をしないといけませんよ」
勉強中の手を止め、俺の目をしっかりと見る翔石君。
「[なんで勉強なんてしなくちゃいけないんだ?大人になったら絶対に必要ないだろ。……仕事に勤め始めたら勉強したことなんて使わないんだ。………そうだ、社会勉強のためにもバイトをしよう!勉強なんてしてられるか!]と高校生の時に思い立ったI君は勉学をほっぽり出してバイトに明け暮れました。」
イニシャルに悪意を感じる。
「そして高校三年生に差し掛かると彼はこう思い始めました。[でもあれだよな、高卒よりも大卒の方が給料いいよな。でも国公立なんて行けそうにもないし…………そうだ、短大と専門学校に行こう!手に職をつけるんだ!]と、そして彼は専門学校に行くのですがそれでもバイトに明け暮れる毎日。周りのものよりもお金を持っていることが彼に拍車をかけたのでしょう。そして単位が取れず専門学校中退、もしくは退学ですね。中退ならまだ学歴に残るのですが退学だと残りません。そうですね、退学にしときましょうか。こうしてI君は高卒の学歴のまま職探しに赴きます。ですが彼の学歴じゃ雇ってくれるところなんてありません。大企業なんて書類を出しただけで突き返され、中堅企業も面接で落とされます。[はぁ、どうしよう…………]彼は毎日ため息をして就職活動をしていました。しかしある日とうとうI君は仕事に就くことができました!会社名は全然有名じゃないよくわからないところで、仕事はというと何かよくわからない部品を運ぶ仕事。しかしそれでも彼は食っていけると思い大喜びです。こうして仕事につき始めたI君は過酷な労働の日々を送ることになります。8時間労働なんて幻想で、家に帰るのはいつも12時以降。給料なんて最低賃金を超えるか超えないかです。[おかしいな、パンフレットには8時間労働でしかも給料はいいって書いてたのに…………]彼は働き始めてそう考え始めました。要はブラック企業ってやつですね。だけれど彼に転職なんて選択肢はありません。本来なら誰も拾ってくれないような人間なわけですからねぇ…………[もう食っていければいいや]と諦めて安月給、ハードワークな生活を送るわけですね。それでも彼はそんな状況でも生活しなきゃいけない。衣食住を巻かなわなければいけない。だから彼が借りたのは1Lの四畳半のアパートの1室。他の人から見ればちっちゃな個室ですが彼からすればこれが家なわけです。そしてお金を食費にかけられないのでジャンクフードの毎日。そのせいで若くしてお腹が出てくる。なので仕方なく服を買い換えなくちゃいけなくなる。そしてリサイクルショップで糸がほつれた買うんですね。」
やばい、すごく重い。なんでこんな話になったんだ?
「女性というのは身なりに敏感です。糸がほつれた服なんて着てたら寄り付かないですからね、多分彼は生涯孤独でしょう。そういう生活を送って40数年。彼は定年で退職するわけですね。ですが若い頃に年金の積立なんかにまわすお金の余裕があったわけじゃないですから、ちょくちょく貯めた貯金を切り崩す老後生活。そして乱れた食生活によってかは分かりませんがガンが発覚。末期で全身に転移していたわけです。しかし入院するお金なんてないわけなので通院を選ぶことにしました。そしてある日、心臓が急に痛み始めた。こいつはいけないとI君は救急車を呼ぶためにポケットをまさぐる。が、彼はすぐに思い出した。[そう言えば薬を買うために携帯を解約していたのだ。携帯本体はブックオフで売ってしまって手元にはないんだった]彼はそう思いながら床に倒れ息を引き取った。死因心臓麻痺による心肺停止。しかし親族がいなく、そして人との社会的関係もない彼の死を気づく人はいなく1週間後に隣人が異臭によって通報する。警察が入ってきたときには死体の腐敗が進行していて体の穴という穴から血と体液が流れているわけですね。床には鉄の錆びを濃くしたような液体で満たされていて、口元を覆わないと入れないぐらいだ。腐った液体に沈む腐った死体。多分彼は人々に憎まれながら死体処理場まで運ばれて処理されるのでしょう。親族もいない彼の遺骨をもらう人はなく、地面にサラサラと帰っていくわけです。[ああ、俺は71年間も生きていられた。俺は幸せ者だなぁ〜]確かにこれなら彼は天国でそう思えるかもしれないですね。あっそうそう、彼の死後、部屋がどれだけ安くなったか言います?」
「いや、もうやめてくれ………現実を見たくなくなってきた。…………なんでだろうな、今無性にチョコレートを食べたくなった」
「もちろんハイミルクですよね?まさか、ビターなものなんて今は食べたくないでしょう。ほろ苦い現実よりも甘ったるい幻想の方が誰だって好きですからね」
ああダメだ、逃げれない。翔石君の暗い雰囲気から逃げ切れない!
「別にいいんですよ?本当、現実見ないのは勝手ですし僕が何かを言う権利はないんですから。ただ現実を見ないっていうのはそれ相応のリスクが付いてくるものです」
「それ相応ってかハイリスクな気もすれけれどな、ってかほろ苦じゃねーし!あんなの少しだけ苦いってレベルじゃないぞ、カカオ96%じゃねーか!」
俺は立ち上がり大声を出すが、すぐにやるせなさを感じて席に座った。
ダメだ、憂鬱すぎる。………あれ?目頭が少し熱く感じるな……
「……………咳をしても一人」
ぐほおっ!!
心の中で吐血する
「ゆ、雪さん…………本当にやめてください。今そんなこと言われたら涙が…………」
「まぁ会長なら大丈夫でしょう。勉強する必要ないとか言っておきながらちゃんと勉強はしてますからね」
「ああ、やっぱり?やっぱり俺は大丈夫だよね。勉強しまくってるもんな」
「おーはーよー……………」
ガラガラがらと扉を開けて落ち込んだ顔をして入ってくる。
なるほど、確かに目が細い。俺ほどではないにしろ目が細い。例えるなら起こった時の魔○ブウだ。ちなみに俺の目の細さは普通の時の魔○ブウ
「おう宏美、お疲れさん。イリナさんの家に行ってきたんだろ?様子どうだった?」
「…………!え、えーっとそうだな。げ、げ、げげ元気だったぞ………」
俺の声に反応して宏美は速歩となり自分の席に着く。
あれ以来宏美は全然俺の顔を見て話そうとしない。まぁ、俺も初対面の人の顔は見ないようにしているから(てか恥ずかしくて見れないだけなのだが)分からなくもないが
「イリナさん元気なんですか。それなら学校に来れると思うんですけど」
「いや、まち、間違えた。全然元気じゃなかった。てか姿を見てない。ポストに入れてきたんだ」
「まじか、お前たちが行っても顔を出さないのか…………こいつは重症だな」
どうしたもんかねー。やはり今の俺には打つ手なしだな
「な、なぁ狩虎?ちょっと話しがあるんだが………」
「話し?なんだよそんな改まっちゃって、俺たちの仲だろ?別にここでいいじゃないか」
「いや、ちょっと人に聞かれたくないっていうのかな……………ちょっと、前の話しを訂正しようかなとか」
…………ああ、あのことね
「前の話し?そんなのあったっけかな…………全然記憶にないな。
「み、3日前の奴だよ…………」
「3日前?…………ああ、あの時ね。痛々しいことにあの時俺鼓膜焼け落ちてたんだわ。だから全然お前が何言ってたかわからなかった」
「はぁ?そ、そんなことはないだろ狩虎!お前だってあの時ちゃんと私と会話してたし………」
「しちゃいねーよ。意識混濁の混乱状態の人間と言葉交わしたところでそれを会話とは言わない。あれがお前の言葉だとは思っていない。…………混乱状態の人間の言葉はノーカンだ。ほらあれだ、ド○クエとかでメダパニされて仲間攻撃しちゃっても誰も責めないだろ?あれと同じで混乱してる奴の言葉になんて誰も耳は貸さねーし、言葉だとはみなさないんだよ。」
「いや、でもだからって………」
「いいんだよんなもん。俺はお前の言葉は聞いていない。以上!終わり!これ以上お前の話は聞かない!意味わかんないことを弁解されても困るんだよ!いいな!」
「…………ありがとうな」
「感謝するなよ気持ち悪い。お前らしくもない。いつも通りバシバシ俺の体でも殴ってりゃいいんだよ」
「はは、確かにそうかもな。私はどうやらお前を殴る方が適しているのかもな」
宏美は豪快に笑い飛ばし、気分をスッキリさせたのだろう。目がパッチリと開いている。
「…………思ってたんですがやっぱり会長ってマゾですよね?」
翔石君が俺の近くに来てヒソヒソと語りかける。
「マゾじゃないさ。別に殴られるのは好きじゃない。ただ、そんなことで宏美が救われるんなら俺はいくらでも殴られてやるよ。こんな凄くて素敵な人間に殴られるんだ、光栄だね」
「ふーん………やっぱり変人ですよあなたは」
だろうな。俺は普通じゃないと思う。こんなにのうのうと生きていけるんだ、普通なわけがない。正しいわけがない。こんなの確実に異常だ。
人はホワイトペーパー(タブララサ)だとルソーは言うが、それなら一体俺はどこでこの異常性を手に入れてしまったのだろうか?
これだから俺は自分が嫌いなんだ。自分の罪に対して何の感情も示さないこのクソみたいな神経が………………
重要関連作品
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/
カイが死んだあの事件とそれ以降を狩虎視点で追っていった作品。全15話約60000文字→https://ncode.syosetu.com/n1982dm/




