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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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41/364

形骸のクライシス

「クッソォォォオオォオオ!!!」


黒垓君は白色の球体から刀を取り出すと、炎帝の元へと斬りかかる!


「おおっと、さすがに速いな!」


ボォォォォオオ!!


炎帝の周りを炎が渦を巻きながら覆い尽くし、何人たりとも寄せ付けない炎の城壁が築き上げられる!

炎は意志を持っているかのように、接近する黒垓君の方を向き、襲いかかる!


「チッ………邪魔っす、ねぇ!!」


白い球体から大剣が現れ、それが炎の壁の触れた部位を打ち消しどこかに飛ばしていく!


「んだその能力!魔力無効か物質消去?………まぁ、お前を倒せばいいってことには変わりないんだけどな!」


左右の炎から炎弾が打ち出される!


「チィッ!!」


ボンボンボンボン!!

それを黒垓君は後ろに逃げることでかわす!


「もらった!」


その隙をついて染島さんが炎帝の背後に回り込み、赤色に染まった剣を突き刺す!


「おおっと!危ない危ない!そういやお前、相手の心がなんとなくわかるんだったな!」


ドンドンドンドン!!

無数の火炎が射出され、地面を深くえぐりとるように爆発する!


「俺の一瞬の油断も分かるわけだ………対人だとマジでつえーな」


炎帝の周りの炎がより大きくなり、光がより強くなる。調子が上がってきたのだろう。炎が暴れくる。


後ろに退いた時に、黒垓君はイリナの元まで下がっていた。


「………イリナさん。貴方を送るのはもう少し後になりそうです。申し訳ないっす」


扉を出してどこか安全な場所に送りたいが、扉は剣3本分の魔力を消費してしまうのだ。扉を作って通ってもらう間、守り通すことはできないだろう。


「…………………逃げて」


「ん?なんすか?」


イリナが小声で何かを言う


「私を置いてさっさと逃げて!君達が私を守る必要なんてないんだから!」


「……………何いってんすか?」


「おお、気づかなかったがこれはこれはイリナさんじゃないですか。ご機嫌はどうですかな?はっはっはっ!!」


炎帝は高らかに笑う


「…………私はもうやなんだよ。あいつに私の仲間が殺されるなんてことが…………」


イリナの体の震えは止まらない。目は虚ろである。


「仲間…………すか」


「いつだってそうだ。なんであいつはいつも私の前に現れるの?ミフィー君と君の時だって現れて傷つけるし、あのドラゴンだって先に倒しちゃうし…………もうやなの。やってられないの!あいつに付きまとわれる人生はもうやなの!」


怒りに身を任せても、体の震えは止まらない。強く自分の腕を握りしめても、恐怖心は拭えない。

恐怖と怒りじゃ、恐怖の方が優位なのは当たり前だ。


「…………1つ大きな間違いがありますよイリナさん。」


黒垓君は刀をしまい、能力で刀をもう一本作り出す。刀身が大きく重たそうだ。それに、それはきれるのかどうかも危ういほど、切っ先が鋭くない。

踏み潰すための刀。吹き飛ばすための刀。巻き込むための刀。切れる必要はない。触れさえすれば、炎なんてものはどこかに飛んでいく。なんせ、炎は無生物だから。


「あんたが恐れてるのは仲間が死ぬことじゃない。大切な人が死ぬことだ。あんたは師匠じゃないんでしょ?あの人みたいに、すべてを愛せるわけがないんでしょ?それならば、あの人みたいに全てを愛せるような格好をしちゃいけないっすよ。自分ができることだけをさっさとやりゃいいんです。」


ぐっぐっ、

地面の硬さを確認する。


「素直になればいいじゃないすか。大切な人を失ったから悲しいんだと。泣き喚けばいいじゃないですか。それは貴方にしか出来ないことだ。生憎、オラと梅雨美はある程度の事情を知っていて泣けはしないんでね。」


ちょうどいい固さだ。熱によって水分が飛んでいるせいでちょうどいいふみ心地。この地面ならぬかるむこともないだろう


「…………あの人はあの日、貴方たちの為に泣き続けた。その後、貴方たちの為に全てを築き上げた。そして今回、貴方たちの為に…………全てを捨てるつもりっす」


「あの……日?」


「それじゃあ我慢して待っていてください!さっさと倒してくるんで!」


タタタタタン!

黒垓君は相手に向かって駆け抜ける!


「梅雨美ちゃん!」


テレパシーで染島さんと会話をする。


「作戦かな?ゆ………黒垓君!」


「うん!左右から挟んで相手を倒そう!私の能力で削るから梅雨美ちゃんは隙を作って」


「オッケー!久しぶりだねーこういうの!頑張ろう!」


「うん!」


染島さんと黒垓君は相手を挟むようにして走りこむ!


「まったく、芸がねーなー。もう少しまともな攻撃できねーの?」


ドンドンドンドン!!

火の玉が地面を吹き飛ばす!


「芸がない?それは貴方のことでしょ?さっきから火の玉しか使ってないじゃないですか!」


黒垓君に出しておいてもらった、染島さんの周りを漂う球体に手を突っ込む。


ズァァァァア!!

そこから黒色の太刀が引き抜かれる!


「圧倒的な魔力?それならば魔力を断ち切る刀を使えばいい。そうすればただの熱いオブジェクト。」


サササササササン!!

太刀が目にも留まらぬ速さで炎を断ち切っていく!

剣を振り抜く速さはとても魔族とは思えないほどだ。

ジュワっ

顔から落ちる汗が、火に触れた瞬間蒸発する。


「炎?…………ふふふっ、生き物以外ならオラの敵ではないっすね!」


日本の大剣が豪快に炎をえぐり、飛ばしていく!

その一振り一振りが力強く、炎を的確に削っていく!

縦や横や斜めに炎が削られては埋めてを繰り返す。無限に近しい炎の量だ…………だが、無限なわけがないんだ。たどり着けるはずなんだ!


そして2人はすぐさま炎帝の元に辿り着き、2人とも炎帝の首に斬りかかる!



……………ダメだ。全然体が動かない

イリナは染島さん達が炎の中を突き進んでいるのを膝を抱えて、震えながら見ていた。

土崎さんはその近くで口をぽかーんと開けながらこの戦いを見ている。

「なんか、場違いなところに来てしまった………」と頭の中で思いながらこのよくわからない状況を見ていた。


イリナは、頭しか動かないから考える。

なぜだろう。なぜ私は涙が出ないんだろう…………

ああ、そうか。きっと私は予測してたんだろうな。ここで生活を送ればこうなるってことがなんとなく分かっていて、なんとなく覚悟していたんだろう。

だから涙が出ない。だから怒りもわかない。とどまることしかできないんだ。

悲しみにくれない私を、私は酷く罵る。


なんで私はこんなにも弱いんだろう。なぜ私は克服できないんだろう。なんで私はまた同じ結末を送ってしまったのだろうか。

まったく同じ顔の彼を、なぜ、また、殺させてしまったのだろうか………………


私は顔を膝に埋める。ダメだ。今日で何回目だろうか………なんで私はこんなところでうじうじしてるんだろう……………あり得ない、酷すぎる。自分が自分じゃないみたいだ。

やだヤダヤダヤダヤダヤダヤダ……………ダメだ。なんで私はこんなにも弱いのだろうか…………認めたくない。あんな奴に劣っているなんて認めたくない。

でも………体が動かない。恐怖で何も動けない。

………………もう無理だ。ごめんなさい。私はどうやらここで死んでしまうようだ………ああ、でも、死にたくはないかな。こんな自分のままじゃあ死にたくない。


「そう思えるならまだマシだろうな。俺なんか道を踏み外した時、その道を選択したのが自分だと自覚していたから、自分を殺したいほど憎んだもんだ。なんで俺はクソ野郎なんだってな。それでも殺せなかった。弱かった俺は俺自身を憎むことしかできなかった。」


ジャリ


後ろから土を踏みしめる音が聞こえる。


「悪行を認めれる奴ってのは最低だ。だが、イリナみたいに否定する人間には明日があるんだろうな。どんなに失敗しても正しい道が歩けるんだろう」


え?ちょっと待って、なんで?いや、だって、火の玉をさっき食らったじゃない…………


「ミッ………!」


私は後ろを振り向こうとする


「シーー!!静かに!今からあいつにバレないように接近するからいつも通りの表情で待っててくれ。なに、かかるとしても10分以内だ。待たせる気はないからさ。」


制止を受けた私は最後まで後ろを振り向けなかった。だけれど、彼が誰かなんて簡単にわかる。こんな、持論をペチャクチャ喋る人間そうはいない。


ポロっ


あれ?おかしいな…………目から涙が………本当におかしいな。だってさっき全然出なかったじゃん。死んだ時、いや、死んではいなかったのか………とにかく、火の玉を受けた時、私は全然泣けなかったじゃないか。

それなのに、なぜ今頃私は泣くのだろうか…………おかしいな…………生きてるって知った時、なぜ私は泣いているのだろうか…………。

…………大切な人、か。


イリナは顔を膝に埋める。だが、今のは悲しみを隠すためじゃない。ただただ喜びを隠すために。悲しみ?あれ?そんなのあったかな?………………



染島さんと黒垓君の剣が、炎帝のところまで届いたその時!


「………ふん、調子にのるなよ?」


ドゴォォォォオオオンン!!

炎帝の体周辺で巨大な爆発が起こる!


「ぐうっ!」「キャア!?」


黒垓君と染島さんは吹き飛ばされる!

しかし、黒垓君は大剣で防ぐことによってある程度の爆風は防げた。しかし………


染島さんはもろに爆発を食らったようだ。一向に起き上がる気配がない。魔力無効でも、体全体を防げるわけではないのだ。


「梅雨美!!」


黒垓君は染島さんの元に駆け寄る。

爆心地に木とか鉄がなかったからいいものの…………体の数箇所から血が出ている。傷が血で覆い尽くされているので、素人目にはどれだけ深いのかはわからない。ただ、日常生活でこんな傷は出来ないってことぐらいはわかる。


「ふっはっはっはっはっ!弱い!弱いなー貴様らは!やはりイリナの仲間だけはある!弱すぎる!」


ちょんちょん


笑っていると、肩を叩かれる感触


「っ!?」ブン!


後ろを振り向きざまに、腕を振り回す!


「おおっ、いいパンチだ。流石は炎帝だって名乗ることはあるな」


バキッ!!


「ぐっ………」


炎帝のあばらにパンチが決まり、炎帝はある程度横に吹き飛ばされる!


「誰だてめー!!…………あ?お前、さっき俺が倒したはずだ」


「あ?脈とったのか?とってねーだろ?それなのに死亡宣告されるのはたまったもんじゃねーな」


俺は腰につけている魔剣を引き抜く。剣は真っ黒で、しかしところどころが赤色に染まっている。

誰?俺が誰でどれで何かだって?それはこっちの質問だ。


「いや、だがお前は俺の炎を」


「はぁーーー…………分かってない。わかってないぜ炎帝君。顔を水で覆ってたんだよ。炎は水に弱い。ポ○モンやってたら常識だな」


俺の周りを水が覆う


「はぁ!?んなもん、出来るわけがねーだろうが!」


ドドドドドド!!


火の玉が無数に吐き出され、爆発が俺の元まで迫り来る。


「出来るわけがない?おいおい、人間の可能性を否定しちゃいけないなぁ」


俺は水を集めて壁を作り出す!

ボシュ!

しかし、炎の玉が水の壁に触れた瞬間水の壁が蒸発した!そして、炎はそのままの速さで俺の元まで飛んでくる!

触れる前から蒸発したのではなく触れて蒸発したのか…………これなら……………


「ははは!やっぱりな!俺の炎がお前の水に負けるわけが……………」


パン!ボゴォォンン!!


俺は炎弾の側面を素早く叩くと、炎弾の軌道がずれ、俺の後ろの地面を吹き飛ばす。


「え、ええ?ちょっ、なんなんだよそれ……………」


炎帝の炎が焦りから不調和になり、大きくなったり小さくなったりを繰り返す。


「水だ。水なんだ。水としか言いようのないほどに水だ。水で手を覆えば火炎弾に一瞬触れる。その一瞬に軌道をずらしただけだ」


「無理に決まってんだろ!俺は炎帝だぞ?てめーごときのか細い魔力で止められるほど、弱かねーんだよ!!」


炎帝の周りの炎が1つに集まり、球形となり、放たれる!それはまさしく太陽。周りを紅炎が跳ね回り、地面にぶつかり岩を溶かしていく。


でけーーー。この球形の半径って俺の身長と同じぐらいか?さすがにこれは直撃したらやべーよなー。…………まっ、たまには食らってみるのも乙なものかな?いや、やめとこう。蛮行は身を滅ぼすだけだ。


シュシュシュシュシュ!!


染島さんほどではないにしろ、俺は魔剣を高速で操り、斬撃を飛ばして特大の火球を切断する。


ドシュウゥゥゥウウ!!!火球の様々な欠片の側面に水の束がぶつかり、蒸発しながらも軌道をずらす。


ドドドドドンンん!!!

そして背後でいくつもの火の玉が木や地面を吹き飛ばしていく。こりゃ火の玉というか爆弾だな。


「嘘だろ…………そんなバカな…………」


俺が火球を切り崩し、攻撃を凌ぎ切ったのを見て炎帝は狼狽える。炎が小さくなった。

まったく…………俺は何もしてねーぞ?切って水でずらしただけだ。特別なことは何1つとしてしていない。


「…………黒垓君!女性陣の搬送終わったかな!?」


せっかく時間を作っておいたんだ。この内に全てを終えておいてもらいたい。


「それが…………イリナさんだけ動こうとしてくれなくて……………」


俺はイリナたちの方を見ると、黒垓君がうずくまっているイリナの方腕を引っ張っている姿があった。

だがしかしイリナは全然動こうとしない。頑なである。

なんでだよぉぉお!!せっかく時間稼いだのにお前、これじゃあ巻き込まれちまうだろうが!!ああ、もうこれどうすんだよ!!これどうすりゃいいんだよ!!


「〜〜〜!!黒垓君!!イリナは放っておいてこっちに力を貸してくれ!すぐにこいつを倒すぞ!」


「うっす!!」


「…………俺を倒すだって?」


ボウッッ!!!

小さくなっていた炎がまるで油を注がれたように勢いと大きさが増す。結構離れているのに、真正面から相当な熱気を感じる


「俺は炎帝だ。何人にも劣らない力そのものであって、何人をも溶かす篝火だ。フレイムじゃない、フレアだ。お前らごときに負けるわけがないんだ!!」


ボッボボボボ!!

炎が弾け、周りの木に飛び移り燃やし尽くす。いや、周りの木というのは少しおかしいか。ここは荒野だ。しかも中心だ。周りにはそこまで木がない。ということは、近くにない木が燃えているということだ。いったいどれほどの熱なのだろうか?普通の人間ならとうに死んでいるレベルだ。


「…………ちっ、炎帝炎帝ってさ……………お前は肩書きに拘るのか……つまんねぇな。」

俺と黒垓君は同時に両方向から走り出す


「うるせぇ!!ようやく手に入れた称号だ!これを好き放題利用しないわけにはいかないだろうが!!」


ボオォォオアア!!炎の壁が作られ、それが俺たちを燃やし尽くそうとこちらへと迫ってくる!


「そうだろうな!!炎帝って言っただけで誰もが逃げるだろうな!!なんてったってあのイリナの相棒を殺したんだからな!!恐れられないわけがない!!」



ボオォォオアア!!

俺はその炎に突撃し、炎に飲み込まれる!


「ああ、そうさ!!俺は奴を殺った!!炎で焼き尽くしてやったんだ!!それの何が悪い!!この世界は力が全てだ!弱いものは淘汰される!!」


ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!!!!


今までのとは比べ物にならないほど巨大で大量の火炎弾が、炎ごと狩虎をふきとばす!!


「ふん!!」


その隙をついて黒垓君が炎帝に剣を振るう。しかし、かわされてしまい肩を少し斬っただけだった。

ジュウウウゥゥウ

肩から出た血は炎により蒸発する


「てめっ、仲間がやられてんのになんで攻撃してくんだよ!!あいつはどうでもいいのか!?つってももう骨も残ってねぇだろうがな!」


炎帝の側に炎で出来た刀が作り出され、それを炎帝は取り、黒垓君へと向ける。


「どうでもいい?それは違うっすね。強いて言ってあげるなら…………まぁ、あんたの攻撃ごときじゃ師匠は倒せないから心配する必要がないってだけです」


「んだと?現にあいつはもう…………」


「案外生きてたりして」


「!!」


メシッッッ


俺のパンチが炎帝の顔面を捉える。

振り向いた瞬間に殴ったせいで鼻にジャストミートだ。鼻の骨が折れる感覚が腕に響く。

まったく………鎧を着てればこうはならないのにね


ズザザザー

そして、炎帝は地面を滑る


「弱いものは淘汰される?おいおい、それじゃあお前も今から俺の手で淘汰されることになるぞ?」


拳を重ね、指の骨を鳴らそうと試みるが全然ならない。おかしいな…………俺結構勉強しててこってるはずなんだけど。


「て、てめ………なんで生きてんだ」


ジュウウウゥゥウ

炎帝の鼻から出でいる血が蒸発していく。


「さぁなぁー。水で体を覆ったら生きてましたーー」


「てめー!いい加減に……」


「さーてここで俺からの質問ターイム。俺を見て何か思うことない?」


「…………ぶっ殺したいとは思うな」


「ああ、そうかいそうかい。そいつは残念だ。雑魚役のセリフとしては正しいが、炎帝としてのセリフとは間違っている」


俺は剣を鞘に戻す。


「俺の顔は何故かお前に殺されたイリナの仲間の顔と同じなんだよな。それに魔力も同じなんだ…………炎帝ならさ、普通。俺がカイなんじゃないのかって疑うんじゃないのか?一度殺した相手が生き返ったと思ってしまうんじゃないのか?」


「………!!」


黒垓君にも剣を収めるように言う。


「お前は炎帝失格だ。鎧もつけない、殺した相手の顔すらも覚えていない。残虐非道なだけ。そんなチンケな野郎が炎帝名乗るなんて100年早い。本当はイリナを怖がらせた罪としてある程度苦しんでもらうんだが…………お前は運がいい。見逃してやるからもう二度と俺たちの前に現れるな」


そして俺たちはイリナの元に戻る。さっさとここから離れて心を休ませなくては。イリナの心はもうきっとボロボロだろうから


「…………っざけんな」


「…………あ?」


ゴォォォオォォオオ!!!


俺と炎帝を包み込むように炎がドーム状に形成される!!


「ふざけてんじゃねえぞ!!炎帝失格?笑わせんじゃねーよ!!俺が炎帝だ!俺以外に炎帝はいねーんだよ!!」


炎が俺を焼き焦がそうと俺を包み込み、燃やし尽くす。


「殺したヤツの顔を覚えてなかったのはな、いちいち殺した相手の顔は覚えてらんねーからだよ!俺は沢山殺した!そんな、相手の顔なんていちいち…………」


ボッ!!

炎帝の顔を何かが掠め、その何かは炎のドームを突き破り森の奥に消えていった。


「沢山殺した?ふざけてんじゃねえぞ。命の重みがなんなのかもわかってねーよーな奴が力を語ってんじゃねーぞ。」


俺の後ろにイリナ達がいるわけだ(そうなるように移動した。)。これならある程度までは派手なことができるな……………


「お前は一体何に囚われているんだ。力か?肩書きか?………お前から肩書きを取ったら何が残るんだ?」


「肩書きを取る?何言ってんだ。俺は炎帝だ。俺こそ力の……」


「お前の肩書きの話をしたいんじゃねぇ。お前から肩書きを取れば何が残る?お前は一体何が誇れる?何を自慢できる?どういう人間なんだ?」


俺の顔から出た汗は炎によって蒸発する。ああ、くそっ。熱い。熱すぎる……………


「……………お、俺は炎帝だ!誰がなんと言おうと俺は魔族の長であり力の象徴であり、すべてを破壊するものだ!炎帝(これ)は肩書きじゃねぇ!俺そのものなんだ!」


ふーーーん………………そうかい。


「お前はさっき自分の力がフレアだと言ったな。太陽爆発によって生まれた力。それは一瞬であり、しかしながら大量のエネルギーを生み出す力だ。」


しかし、ダメだ。ダメなんだ。この空間はだめなんだ…………


「……………だがダメなんだ。お前の炎じゃ俺に汗をかかせるぐらいが限界なんだわ」


「な、なん……それはどういうえ?なんえ?」

炎帝は俺の言葉に混乱する。


俺は手のひらを相手に向ける。

別に俺は、今回のことに関してこいつには全然きれていない。だが、イリナを怖がらせるというのならば俺はお前に鉄槌を下さなければならない。」


「イリナはいずれカイのことについて踏ん切りがつくだろう。その時に殺されるのはお前じゃダメなんだ。俺じゃなければいけない。俺が殺されるべきなんだ。いや、俺を殺さなければならない。そのために今日まで積み上げてきた。そのために俺は今日まで生きてきた。」


…………ダメだ。手のひらじゃこいつが死んじまうな。二本指に変えよう。

俺は人差し指と中指を立て、ピストルに見立てる。


「………そ、それじゃあてめえはまさか!!」


「フレア?そんなのただの爆発だろ?俺は太陽だ。太陽そのものなんだよ。フレアをも燃やし尽くす太陽なんだ。偽物君」


カッ!!!


指の先から放たれた強大なエネルギーは、その直線上にあるもの全てを吹き飛ばし、貫き、巻き込み燃やし尽くした。

炎のドームにはぽっかりと穴が開けられ、木々が木炭………いや、もはや灰へと姿を変え直線上には何もなくなる。

炎帝君はどこかに飛ばされたのだろう。俺から見える限りでは姿形は見えない。

…………まさか溶かしちまったか?………まぁ、大丈夫だろう。


すううーー

炎のドームが消えていく


あっやべぇ。火傷付けとかないと。

俺はドームがまだある間に自ら火傷をつける。


「………………よし、終わった。イリナーーーもう大丈夫だぞーー。」


俺はイリナの元に走り寄る。

イリナはいまだうずくまったままだ。


「おい、イリナ。イリナーーー、起きてる?起きてます?」


俺はイリナに顔を近づける


「…………うん、大丈夫。私は元気だよ。」


イリナは顔を上げると満面の笑みを返してくれた。いままで、こんな笑顔をくれたことはなかったのに…………いったい何があったんだ?


「あああ、ミフィー君。火傷してるじゃん。今すぐベットで寝ないと」


そして、俺の火傷を見て慌てるイリナ。本当に、何があったんだ?


「うーーん、さすがは炎帝と名乗るだけはあるな。火傷を負わされてしまった。」


「名乗る?…………偽物だったの?」


「偽物だよあんなやつ。俺が勝てるんだ、偽物以外の何物でもない。」


俺はイリナの顔を見れなくて、黒垓君の方を向く。


「だよな?黒垓君」


「そうっすねーー。あんな相手、オラが2人いたら簡単に倒せるっすよ」


「結果2対1なのかよ…………」


「とにかく、私は大丈夫だからさ、早く勇者領に行こう。ミフィー君のケガが心配だよ」


…………おいおい、真面目にどうしたんだ?なんか妙に優しくなって………


イリナは立ち上がろうとするが、腰が抜けているのかすぐさま尻餅をつく。


「あ、あれ?おかしいな………平気なはずなのに……………」


平気ねぇ……………今すぐには無理だろう。そんな簡単にトラウマを克服できたら、人間に闇の部分なんて生まれないからな。あと何年後だろうか……………それまでいくらでも待ってやる。俺が、殺されるためにも…………


「………ん」


俺は手を差し出す。さっさと勇者領に行くために。


「…………ありがとう。」


イリナは笑いながら俺の手を掴む。

ああ、なんでだ。なんで俺とイリナの距離が短くなってるんだ。これじゃあ俺の計画が……………


ヒュン!ボゴン!!


俺がイリナに肩を貸し、立った瞬間俺の顔を火炎弾が掠め、地面を吹き飛ばす!

…………あ?


「まだだ!まだ、まだ俺は負けてない…………てめーを殺して、階級を上げて、そして、そして………」


俺たちの後ろに、血塗れの炎帝君がいた。足を引きずりこちらへと近づいてくる。

……………しぶといやつだ。3本にしとくべきだったか…………


「え?階級を上げる?」


そして、炎帝君の言葉に反応してイリナが首をかしげる。

………………ダメだ。俺の階級がそれ相応に高いことがばれてしまう……………


「それはいったいどういう………」「強くなってカネ………え?」


ドドドドドドドドドド!!!

言葉を言い終わる前に異変は起きた。

突然地響きが起きた。と思った瞬間、炎帝君は、押し寄せる森そのものに飲み込まれた。

森が………根が、蔦が、木が、更地を飲み込もうとまるで津波のように押し寄せ、進む先にある全てを飲み込み押しつぶしていく。

目の前に巨大な岩があったら粉砕され小石へと生まれ変わった。川があったら全てを飲み干した。生物がいたら…………死んでしまった。

森が全てを平らげているのだ。まさしく森は生き物のようだ。生物を食い漁り、水を飲み干し、邪魔者は砕く。

暴力的で、しかし、それを実現させるほどの力を有した森は全てを覆い尽くす。


くそっ!やっぱり俺はついていない!

イリナが動けなくて、黒垓君と俺しか動けない時に、本物の魔王と対峙しなくちゃいけないのだから!!


俺は心で、自分自身の不運をのろった

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

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