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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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39/364

エアクラッシャー飯田

「1つだけ、質問させてくれ賀川君。」


これは、放課後に俺と賀川君が準備中に交わされた会話。


「はいなんでしょうか。」


「君………本当はいつでもイジメから脱せられたんじゃないのか?」


俺は話をしながら机に紙を置く。


「明日やろうとしていることは、生徒会長の俺が言っちゃったら元も子もないけれど、胸がスカッとするような痛快なお話ではない」


俺は隣の机に紙を置く。

ここの席の人は…………うん。あっているな


「頭のいい君なら理解しているはずだ。この計画は、違法ではないが善行ということでもない。出来ることなら避けなきゃいけないやり方だ。」


そして俺たちは教室を後にする。


「人のアラを探って、手段はどうであれ悪者をやっつけることが大好きな野次馬野郎どもは確かに君に味方するだろう。だけれども、ある程度のモラルと状況判断能力がある者であれば、これはやってはいけないことだと批判をするに違いない。」


俺たちは次の教室へと向かう。廊下に夕日が差し込みオレンジ色に染まる。うーむ…………最高に綺麗だ。


「先生は君を呼び出すだろう。下手をすれば保護者からの苦情が来たりして君は停学処分を受けるかもしれない…………まぁ、そんなことになる可能性は著しく低いけれど、ならないという確証はどこにもない。」


そして俺たちは次の教室へと入る。

最近ここには生徒があまり来ないのだろう。綺麗に整っている。


「…………君は頭がいい。それもちゃんと理解できているはずだ。それなのに君は、この方法を、これ以外にもあるはずなのにあえてこの方法を選んだ。それは君には全ての批判を受け入れる度量と勇気があるという表れだ。度量と勇気は一朝一夕には身につかない。そうであったのなら全ての人間が勇者になってしまう。俺が何かを君に言っただけで、それが身につくとはとてもじゃないが思えない。君は既にこれほどのことを行える勇気を持っていたんじゃないのか?それならばなぜ、君はイジメから逃げ出さなかったのか?その理由がもし今回のことを行う上で差し障るようなことがあるのならば言っておいてもらいたいんだ。」


俺は携帯のマークされた席に紙を置いていく。うーーむ、ここのクラスは結構多いな。


「……………飯田さんは何か勘違いをしているようですね。」


俺の話を黙って聞いていた賀川君が薄い笑いを浮かべながら口を開く。


「僕に勇気があるのであれば、あんな世界に逃げ込むなんてことはありえないでしょう。あんな薄っぺらな世界、逃げ込むのには最適ですが突き進むには不十分です。」


賀川君も座席に紙を置いていく


「それに、飯田さんが言うように勇気や度量なんてものはそう簡単に得られません。1日2日程度で得られる勇気はこの世にあるべきではないですから。…………ただ、そうですね。飯田さんはまだ自覚してないようですけど、特定の人間の言葉には重みというものが存在します。辛さからなのでしょうか、苦労からなのでしょうか、努力からなのでしょうか、もしかしたらただ単純に頭がいいからだけなのでしょうか。それを経て作り上げられた経験というのは妙な重さが全てに加わります。オーラが違う人や、妙に言葉に説得力がある人とかがそうですね。」


ここのクラスにも全ての紙を置いた。よし、最後のクラスだ。他の奴らも黙々と準備をしているだろうし。


「そして、やはり飯田さんの言葉には説得力がありました。重さがありました。力がありました。飯田さんの言葉で僕は間違っていたことに気付けましたし勇気をもらうこともできました。…………あなたが思っている以上にあなたの言葉には力があるんです。だから僕は、今回のことを決断するに至る勇気を得られたのです。」


最後のクラスへと歩いていく。ふーーーん…………そりゃどうかな。思い当たる節が全然ないぞ。


「そして、貴方が今回計画したリスキーな方法をなぜ選んだか?………そんなの簡単ですよ。僕にこれほどの勇気をくれた人が考えた最良の案です。僕が考えたものよりも優れているのは当たり前じゃないですか。」


ふーーん……………聞いていて歯痒いものがあるな。


「なんにせよだ。俺が言いたいのはどんな結末を迎えても受け止める覚悟が有るのかってだけだ。これは悪を粗暴で叩き潰すものだからな。…………まっ、あるんだってことは分かったから後は準備を終えて家で寝て明日に備えるだけだ。」


最後のクラスに入りケータイを見てみるが、紙を置く席は少なかった。

なんだ…………このクラスは当日ばかりなのか


「そうですね…………明日の朝は長くなりそうですね。」


最後のクラスは紙を一枚おくだけで終わった。

はぁ…………どうしたもんかねぇ。これから表面世界に行かなきゃいけないのか……………休ませてくれよ……………


俺たちは教室を出た後に生徒会室で集合し、明日のことについて確認をして家に帰った。


やるならば徹底的に。かわいそうだと思って中途半端で終えてしまうと、それからは何も相手は学べない。後腐れなく、完膚なきまでにやりきろう。そうすれば相手も反省してくれるだろう。まぁ、それがたとえどんな結末を迎えようとも…………


俺が知ったことではない


その後は彼ら自身でやってほしいものだ。全てを面倒見るつもりはないのだから




〜〜翌日〜〜視点は変わって姫咲鈴音の登校


案外、人が周りにいてくれたところで心が和やかになるってことはないらしい。

私は思う。何故人は群がり、何故人は集り、何故人は集まるくせにすぐさま人をけなすのだろうか。


私は今、いつもの取り巻きの女達と一緒に学校へと向かっている。待ち合わせなんてしなくても勝手に相手が合流してくる。一緒に帰ろう?と言わなくても勝手に彼女らはついてくる。


確かに私は人をよくイジメはするけども、こんな奴らと同格にはされたくない。

私は自分の行いが劣悪であることを自覚している。だけれどやめられない。だって楽しいから。

勉強をしなくちゃいけないことは頭では理解しているのについついマンガやゲームに手が伸びてしまう学生と同じようなものなのさ。


それに比べて私の周りに連中は自分の行いの浅ましさを理解していない。

「自分が助かるためなのだから、不本意ではあるけれどこんな野郎のコバンザメにでもなるか」という魂胆で、私のような人間につき従う。それも、そうすることがさも当然であるかのように。

そして私が行っていることが露呈したら彼女らはすぐに私の元から離れて私を罵るのだろう。

「イジメなんて最低〜」というのだろう。


全く…………イジメは主犯格よりも共犯者の方が醜悪だね。


私は周りの奴らが喋っていることを無視し続けて学校へと向かう。

この角を曲がればすぐだ。時間は…………よし、30分も早い。これならあいつをイジメる時間が十分にあるね。


ここ最近、私は香川恭介という男をイジメている。まぁ、2ヶ月ぐらい?

別に私は彼を見ているとイライラするとかそういうのではなく、単純に彼が誰ともつるまない男だから、イジメやすいと思ったから彼を選んだだけ。

私は腹立つからイジメをするのではない。楽しいからするのだ。そこを間違えないでほしい。そこ間違えられると色々と困るんだよね。「なに、まさか君彼に気があるのー?」みたいに、男子中学生のノリで言われたくないんだ。


と言ってもあれだな………彼結構根気あるからすぐには屈服しなさそうなんだよね。

…………クックックッ、それなら次はどんな手でイジメてやろうかな。本当最近は楽しい。やはり彼を標的にして正解だった。


角を曲がるとすぐ目の前に学校が見える。


私は1年5組の教室に在籍しており、一階にクラスがある。玄関入って靴履き替えれば後は道なりに歩くだけ。なんで便利なんだろう一年生とは!


というわけで私は校門をくぐり、靴を履き替え教室へと向かう。


ガヤガヤガヤガヤ………………


しかし廊下が騒がしいな。人が沢山いすぎて前に進むのが億劫そうだ。誰か嘔吐でもしたのかな?まぁいい。さっさと教室に行って今日やることを考えなくちゃ。考えるのはもちろん香川恭介に対するイジメ方なのだが


テクテクテクテク………………


……………あれ?この人混み、私と同じ方向に向かってる?

この混雑さからは考えつかないほど快適に私の教室へと進んでいく。


本当になんだろうか…………1年生のクラスでなんかあったのかな


私も早足となる。

この行列がどこに行くのか少し気になったのだ。早く行って、見て、早く教室に入ろう。うん、そうしよう。


私は流れに沿うように早歩きで進み続けると、たどり着いた場所は私のクラスだった。


人達が私のクラスの前で携帯を持ちながら待っている。

あれ?私のクラスに超有名な転校生が来たとか?…………それは少し気になるな。


私はすぐにその人だかりができた理由を確かめるために教室へ行こうとして、扉に手をかけた瞬間


ガシ!


ひいっ!?なになになに!?なんなの!?


「ああ、驚いちゃった?それはごめん。」


男の人が私の肩に手を掛けていた。

体つきが良いからきっと3年生だろう。でもこんな時期に学校に来ているってことは推薦組なのかな?


「聞きたいことがあるんだけど」


「………?はぁ、なんでしょうか?」


男の人は手に持っている紙を見て、そして私の目を見てこう言った。


「姫崎鈴音って、どの席に座ってるの?」


……………!?!?それは一体どういう意味?


「……………姫崎鈴音は私ですけど」


「え!?本当か!?よし、みんな!こいつが姫崎鈴音だ!!」


そして、私が姫崎鈴音だと分かった男は、大声を出して私が姫崎鈴音であるということを周りの人達に教える。


そうすると人達は私の周りに集まりだして


パシャパシャ!!と一斉に携帯のフラッシュをたいた!


なに!?なんなの!?一体全体なにが起こっているっていうの!?


「[私、香川恭介は1年5組の姫咲鈴音にイジメられています。]」


な!?…………


私の肩に手を掛けた男が、紙を見ながら声を発する。


「俺たちの机にそう書かれた紙が置かれていた。………まったく、イジメというのは本当にゲスだよな。そういうことをしているってことはお前、逆のことされても文句は言わないよな?」


え?え?ちょっ、理解が追いつかない…………待って。ちょっと待って。………なにがどうなってるんだ?


「今からこの学校中の生徒とSNS上にお前の顔写真と紙を同時に送信する。」


そ、そんなことしたら!!


「ああ、お前の人生は辛いことになるだろうな。最近は情報がすべてだから、こんなものが世の中とこの学校で広がったらお前への風当たりも強くなるだろうし、学校全体からイジメを受けるかもしれないな…………まぁ、いい気味だ」


私はそれを聞いた瞬間、腕を振り払いその場から走って逃げた!

とにかく、人がいない場所に逃げたかった!

…………でもどこに?学校に人がいない場所なんてあるのだろうか?私に、そもそも逃げ場所などあるのだろうか?



「どこいったんだろうなーあいつ。」「さぁな。まぁ、あいつのこの学校での人生は終わったろうな。」


私を探しながら廊下を駆けずり回る男たちの声…………


私は女子トイレの個室に逃げ込んでいた。でもどうせすぐにバレるだろう。はやく、次の候補地を考えて逃げ出さなくては。


「くそ!まさかあいつがこんな手を使ってくるとは……………」


香川恭介舐めきっていた。まさか、これほどまで危険な行為に及んでくるとは思いもしなかった。

あいつは私の人生が終わっても良いとでも思っているのだろうか?こんな、学校すべてを敵に回させるような大規模な行為を躊躇うことなくやるなんて…………これ、見方変えたら学校規模での私へのイジメでしょ?

報復なんてもんじゃない。完璧にこれは、私を潰しにかかってきている。言い方変えたらこれは殺人だ。社会的立場を抹殺する恐ろしい作戦だ。


それに、これはあいつにも実害は生まれてくるはずだ。まず、これは確実に私への大っぴらなイジメだ。報復とか仕返しとかじゃなくて、完璧にイジメだ。先生に呼ばれるのは確実だろうし、下手すれば停学からの退学にもなりかねない。


これは、諸刃の剣だ。あいつはそこまでして私を潰しにかかっている。相打ちしても良いいっていうの?


………………でも、さすがにやりすぎでしょうよ。私はクラス規模でやってたのにあいつ学校規模よ?倍返し以上よ?人学年9クラスだから27倍返しよ?

それはさすがに酷すぎる……………このままじゃ私、本当にこの学校にいられないんじゃ……………


私は膝に顔を埋める。


くそーーー、泣けてくるぅ…………何でこんなに酷いことをするのよ…………私のなんてまだ遊び程度だったじゃん…………なにもそこまで怒らなくても、ここまでしなくても………………


ぽろっと目から液体が


ああ、目からなんかよくわかんないのが流れてきた。今朝飲んだカルピス?まぁいいよ、そんなこと考えてらんない。

酷すぎる、酷すぎるよあんまりにも………

あいつには血も涙も無いの?


「うっ、うぐぅぅぅうう………………」


ああもう。口を塞いでも声が漏れちゃう。噛み締めてるのに、なぜか想いは閉じ込められない。

何で目と口から出続けるんだろう………瞼も唇もあるのになぜ止めることができないんだろう………………


どうせ今クラスでは女子達が私の行いを誇張して話しているのだろう。イジメへの加担は知らん顔をしてのうのうと喋っているのだろう。

分かっていたこととはいえ、そう思うと余計に悔しい。


イジメた罰にしてはあまりにも重すぎる…………私は、そこまで酷いことをしたの?したっていうの?


チャーンチャチャチャーーーン


そう思っていると携帯が鳴り始めた。

これはメールが届いた時の音楽だ。


誰よ、こんな状況で…………

私はケータイをポケットから取り出す。

書かれていたメールアドレスは私が知っているものではなかったが、文面を見たときにこいつだとすぐに分かった。


[屋上で待っている]


ただそれだけが書いていた。


………………なんでこいつは、


私は目元をこすり上げて、トイレから出る。直接問いたださなくちゃ。それに1発、いや、50発ぐらい殴りたい。

いくらなんでもこれは、さすがにこれは、やりすぎだ!!!


こうして私は廊下をビクビクしながら、隠れるようにして渡り、屋上へと向かった。時折目からカルピスが溢れそうになったけれど、それを私は我慢した。もったいない。カルピスは出すものじゃなくて飲むもの、だからこばしたくない。

そして不思議なことに廊下を歩いている生徒はほとんどいなかった。きっと生徒会が治安維持の為に動き出したのだろう。彼ら優秀すぎるんだよね。特に副生徒会長が。



ようやく屋上まで来た…………いつもなら1分で着くのに3分もかけてしまったよ……………


私はドアノブに手をかける。

あいつめ…………こんな騒ぎを起こしやがってぇ!


バン!


私は勢いよく扉を開けた。そうすると風が勢いよく私の顔に吹き付ける。


………………あの野郎………


香川恭介は屋上の真ん中で悠然と立っていた。眉を寄せて、空を見上げていた。


「……………どうでしたか?僕の2ヶ月間の思いわ」


香川恭介は私を見ずに言葉を紡ぐ。


「最低ね……………貴方が。いや、今回のことも最低だけれど、貴方が一番最低よ。私はあそこまでやらなかった。ちゃんとモラルも守っていたし、やりすぎないように注意していた。でもこれは……………酷すぎる。あからさまに異常よ」


私は香川恭介に歩み寄る。一歩近づくごとに拳が握られていく。


「確かに異常かもしれない。だけれどこれは君が僕に行ってきた2ヶ月分を1日で返しただけだ。ベクトルで言えば同じ値を示すはずだ」


「何言ってんのよあんた。同じなわけがないじゃない。あんたは私の27倍の事を行った。それのせいで私は学校での立場を失った。あんたはどう?私のせいで学校にいられないなんてことあった?クラスにいることも出来たし、危害は加えてないよね。ただ無視し続けただけなんだから」


私は早足になる


「確かに、僕は立場を失うことはなかった。だけれどね、もう1つの世界に逃げ込んだんだ。辛くて辛くて、喋れないってのは地獄だね。自分の存在を否定されているようだった。」


「それはあんたが勝手に逃げ込んだんでしょ?立ち向かえばいいでしょうよ私に!なんで逃げるの?根気のあるやつだから多少は評価してたのに……………」


「だから、僕は今回立ち向かったんだ!君にやり返す為に、ここまで用意したんだ!」


「これは立ち向かったなんて言えない!あんたは私に正面から挑んでない!人を使って、自分は高みの見物で、勝ったように錯覚してただけ!あんたの行いは勇気でも臆病でもない、卑怯よ!」


私の目からカルピスが溢れる。

ああ、くそ!腹立ってきた!むしゃくしゃしてきた!50発と言わず100発ぐらいぶん殴りたい!


「ふん、いくらでも言えばいい!どんなことを言ったところで僕の方が正しいことは明白なんだ!僕を殴ってみろ!君はよりこの学校からいられなくなるぞ!」


ああ、いいさ!上等だ!こんな男と同じ空気なんて吸いたくないね!


私は腕を振り上げ、腰にスナップを入れて、思いっきり頬をビンタする!


ベシン!


屋上に気持ちのいい音が響く。

ああ、胸がすーっとした。でもまだだ。こんなものじゃないよ私の怒りは!


倒れた恭介の胸倉を掴んで腕を振り上げる!


「ひぃ!?」


「ちょーーっとまったーー!!!」


バシーーン!!


扉が勢いよく開かれる。


胸倉を掴んだまま、そちらを向くとそこには生徒会長が立っていた。


ちっ、やっぱり生徒会が今回の事を収めに来たのか…………あーあ、こんなところ見られちゃ私退学かな………


「悪逆非道の行いの一部始終、確かに見させていただいた。」


生徒会長は早歩きでこちらへとくる


「恐喝、イジメ。これはまさにすぐさま処罰されるべきだろう。」


生徒会長はこちらまで近寄ると


ベシ!


と頭を叩いた。


…………恭介の


「い、いたい!何するんですか!」


「姫咲鈴音さん。こちらの不手際で大変な目に合わせてしまい誠に申し訳ありませんでした。」


生徒会長は頭を下げた。…………フェンスに


「あの…………こちらを向かないんですか?」


「はい、向きません。女性と面と向かうと喋れなくなるのでフェンスと喋らせていただきます。」


…………ズレてるなぁ


「それと、もう1つ貴方に顔向けできないというのは今回の計画を立てたのは僕であるからです。」


「………え?生徒会長が?」


「はい、申し訳ありません!許されることではないですが、重ね重ね言わせていただきます。誠に申し訳ありませんでした!」


生徒会長は土下座をする。………フェンスに


「あ、あの………いったいどういうことですか?」


私はイマイチ状況が掴めていないため質問する


「言い訳させていただけるのですか!?ありがとうございます!私目に反論の権利を与えていただけるなんて!」


生徒会長すごく下手だな……………


「実はぼ、私は昨晩香川恭介君から相談を受け、貴方にいじめられているという旨を聞きました」


なにーーー!こいつ、チクってたの!?


「それで、前回私達は貴方にもうイジメをするなという警告をしていたので、今回こそは全力で叩き潰して性根を直そうと思ったのです!」


いやいや、生徒会長の口から出てはいけない言葉が出てるよ。


「ですが、まさか貴方の性根が元から真っ直ぐだったなんて思ってもみなくて………もう少し香川恭介君から事情を聴き出すべきでした!完全に早とちりでした!申し訳ありません!」


額を擦り付ける生徒会長………フェンスに向かって


「まさか香川恭介君が私以上にねじ曲がった人間だったなんて……………本当に、深く反省しております!」


「い、いや。頭をあげてくださいよ。なにも悪いのは貴方ばかりじゃないですから。私だって確かにもうするなと念を押されていたのに破ってしまったわけですし」


「いや、ですがやはり!今回のことは完全に我々の落ち度です!心の優しい貴方様の気遣いは嬉しいですが、こればかりは譲れません!」


「いや、私が悪かったんですよ。楽しいからって人を無視するのはいけないことですもんね。」


「いやいや!楽しいことは誰でもしてしまいますよ!それと違って私達は故意で、陥れるために貴方をイジメに嵌めたわけですから!完全にこちらが悪いんです!」


「ですからぁ、私が悪いんですよ!イジメの元凶は私ですよ!?私がイジメていなかったらこんなこと起こらなかったんですから!」


なんて面白い人なんだろうかこの人!いままで見たことない人だ!


「いいや!それはないですね!仮にもし今回の事件が貴方のせいだとしましょう。なのに貴方はイジメられたんです。今回のイジメの元凶がそのイジメにあう…………どう考えてもおかしいじゃないですか!背理法的に言えば貴方の言葉は間違っている!私なんですよ!私が、悪いんです!!」


この人は、この私にどストレートでぶつかってくる。あの、私の取り巻きの奴らのようじゃなくて、真剣にぶつかってきている(ぶつかっている内容がおかしいけれど、まぁ、気にしない!)


「背理法なんてものはこの世に存在しない!あんな理屈ごねたもので、私の意見を踏みにじることなどできません!私が悪いんです!」


「あーー!理屈で返せてない〜〜!口論で負けそうな人間ていうのは言い返せなかったら自分の尺度で物事を決めるんだよねー!もう言い返せないでしょ?言い返せませんよね?」


生徒会長はフェンスに向かって意地悪い顔をする。


「ぐぬぬぬぬ……………」


「あれ?どうしたんですか?少しぐらいは返事をしてくださいよーー。会話っていうのはキャッチボールですよ?ラリーですよ?相手が打ってきた球はなんとしてでも拾わないとぉ!!」


「あのーーーすいません…………僕は悪くないのですか?」


私と生徒会長が口論している途中に香川恭介が横から入ってくる。

お前ってやつは………こんな楽しいときに邪魔してきやがって…………


「「お前は悪いの前提だよ!」」


「す、すみません!」


「だいたいなー香川君!君の情報少なすぎ!………いや、まぁ決めつけた俺らも悪いっちゃ悪いのよ?大いに悪いのよ?だからってお前、もうちょっと気を利かせてくれてもいいじゃないかよ![僕は立ち向かわずにとことん逃げてました!]ぐらい言ってくれよー!」


どうやら生徒会長の対象は香川恭介に移行したようだ。愚痴が溢れる。


「いや、さすがにそれは恥ずかしいというか…………」


「お前の悪いところはそこだ!逃げ続けてんだよ!立ち向かうって言ってんのに逃げてるんだよ!それに知り合いが生徒会長だってわかった途端に訪れるってところもずるい!もう少し男らしくあれよ!」


うわーーーすごく言われてる。依頼主がすごく言われてる


「だいたいお前、今回俺たちも悪者になるんだから俺たちの正当性を語ろうとするんじゃねーよ!正当性ないから!正当性ありませんから!イジメに正当性なんて欠片もないから!」


「クックックッ…………」


私は彼らのやりとりを見て笑っていた。というか生徒会長の言動を見て笑っていた。

面白すぎる!カミカミの生徒会長がまさかここまで雄弁な男だったなんて!しかもこんなに面白いなんて!


「言ったよね?これやっちゃいけない行為だって。言ったよね?粗暴な行いだって。それなのにお前、鼻高くしちゃうって…………やっぱ君どこかズレてるわ。優越感浸る時点で君なんかもうアウトー!!」


ぐっと親指を立てて野球の審判のように大きくポーズをとる


「あっはっはっはっはっはっ!!!」


私はもう腹を抱えて爆笑した!やばい!これはやばい!こんな形でこんな最高な人間と出会えるなんて!


「ど、どうかしましたか?」


私が笑い出したことに生徒会長は心配したのだろう。声をかけてくれる


しかもすこぶる優しい!うわ、もうダメ!もう無理!優しくて面白くて頭良くて悪を正すって…………完璧すぎるでしょ!惚れない奴なんているの!?いるわけないよね!


「くっふふふ………いや、もうなんかおかしくって……あっはっはっ!あーーっはっはっはっはっ!くそーー!私はなんてもったいないことをしたんだろう!」


生徒会に入ればよかった!こんな人と一緒に居られるなんて最高の場所じゃないか!


こうして私は5分間ほど腹を抱えて笑っていた。



「それで、どうするつもりだったんですか?この後」


私はお腹を抱えながら生徒会長に質問する


「いや、まぁ、本当は、私の計画では私が来た時に喧嘩両成敗ってことで貴方達2人をカップルだということにして、今回のことは痴話喧嘩だったと終わらせるつもりだったんですよ。」


しかし、予想とは反して香川恭介も結構な悪人だったからそうはならなかったと


「…………そんなことであの人々は信じてくれますか?」


「んーー…………半数は信じてくれないでしょうね。まぁ、そこが私の狙いだったわけですが」


「と言いますと?」


フェンスの方を向いている生徒会長の方を向く。


「いや、信じてくれないと疑いの目が強くなるわけですよね?それはつまり貴方達2人は全校生徒の監視状態におかれるってわけで、イジメをさせずにすむじゃないですか。」


やっば、ますます惚れる。


「ですがまぁ………答えは分かっていますが敢えて聞きます。その方法で行きたいですか?」


「絶対に嫌です」


「ですよねーー。私も貴方の立場ならやりたくないですもん」


くくくく…………香川恭介の顔が面白すぎる。


「なのでどうしましょうかねーー。香川くんに謝らせるとか?」


「ああ、いいかもしれないですね、それ。」


「いや、さすがにそれは勘弁したいんですけど」


「君は言ったはずだ。どんな結末をも受け入れると……………」


ブホッ!心の中で吹き出す!

まじか!香川恭介はそんな約束してたのか…………こうなるなんて思わなかったんだろうなぁ


「いや、でもさすがにこれは僕だけが酷い目見るというか、納得いかないというか」


「どんなに努力したってな、結果が報われるとは限らない。どんなに納得いかなくても俺たちは受け止めて、次に向かって走り出すべきなんじゃないのか?」


あはははははは!!側から見てたら最高に面白い!何これ、私なら絶対に[そうですね。]って言っちゃうよこれは!


「いや、そうなんですけど…………さすがにそうなると僕がこの学校で生き辛いですし…………」


「大丈夫だ。そうなったら生徒会に来い。俺は基本暇人だから相手できるし、メンバーも手荒な真似はしないだろうからね」


推測なところが興味深い


「はいはい!そうなったら私も来ていいんですか?」


「……………いや、まぁ良いですけど。もうイジメはしないって誓ってくださいね。ああ、でも生き辛くて、イジメを辞めたいのに辞めれないって時には率先してきてください。うちのメンバーの暴力食らったら大抵の人はもう受けたくないと思えて止めるようになるはずですから。」


「あ、あははは…………わかりました。ありがとうございます…………」


怖い…単純に怖い……


「どうするんだい?香川君。他にいい案があるのなら言ってくれ。行うのは俺じゃない、君だ。だから最終判断は君が下すんだ。」


生徒会長の言葉に香川恭介は考える。彼は何を言うのだろうか?私はきっと、嫌だ。と言うと思う。

今まで逃げ続けたやつは、今になってそう簡単に立ち向かえるほどの勇気を得れる奴はいない。


「……………わかりました。僕はその案を受け入れましょう」


………おや?私の予想が外れたか?


「やはり、飯田さんの言葉には力がありますね…………貴方の言葉が正しいと絶対に思ってしまう。それに、勇気をも貰えてしまう。……貴方は本当に何なんですか?超人すぎて、僕には遠くにありすぎて、よく分からないです。」


「貴方は何ですかって……………ははっ、正しい人間ではないね。間違ってばっかりで、失敗してばっかりで、虚構を嘘で作ったような男さ。」


「…………謙虚なんですね。」


「謙虚?それは違うね。僕はちゃんと勉強に関しては自信を持っているし、優越感を抱くときだってある。だから謙虚ではないよ」


…………自分のことになると途端に否定ばっかりなのか。そういえばさっきも自分のせいにしようと必死だったし…………


「まぁ、人よりもたくさん間違ってきたから、これをやったらいけないとかはよく分かってるんですよ。それですかね?皆さんに過大評価される所以は…………」


ふーーん……………


「まっ、とにかく。謝るのであれば早いに越した事はないですね。さっさと行ってさっさと謝りましょうか。」


生徒会長はそう言い立ち上がると携帯を取り出して誰かにメールをうつ。


「よし、皆んな屋上に来させることにしました。時間にして2分後。香川君は大勢の人に囲まれているでしょう。」


ああ、生徒会の方々にメールしたのか


「覚悟を決めろよ。今回使った3年生の方々はマスコミ意識が非常に高いからな。相応の覚悟じゃ足りねーぞ。生きるか死ぬかの瀬戸際だと思って、全力で謝らないとな」


生徒会長は香川君の肩をポンと叩く。


「は、はい………緊張しますね」


「なに、俺よりも酷いスピーチになる訳がないんだ。全力でやれば、ある程度は彼らに伝わるはずだからな。」


「……………はい!!」


「よし、よく言った。それじゃあ俺は隠れてるんで頑張れよ。さすがに生徒会長が共犯でしたって知られたらなに起こるかわからないからな」


そう言うと生徒会長は屋上の物陰に隠れた。


そうすると、廊下の方が騒がしくなってきた。

人が、集まりだしたか…………


頑張ろう私。ここが正念場だ…………


スウゥゥゥゥっっ

私は深呼吸する。やりきる。お膳立てはしてくれた。あとは私達がどう頑張るかだ…………


横から見ていると香川恭介はガタガタ震えていた。

まったく………主役だというのに


「震えるな。覚悟決めて、やるって決めて、いや、昨日から覚悟を決めていたんでしょ?それなのに、なぜ君は震えているの?覚悟がないから震えている。だから私からのイジメも長引いた。君はいつも逃げてばっかりなんだよ…………たまには立ち向かうぐらいしようよ。」


ギリッ

香川恭介の口がきつく結ばれる


「分かってる!わかってるよそんな事は!これはあれだ、事行う前に膝が勝手に前夜祭始めちゃってるだけなんだ!これは楽しみの表れだ!」


…………くくくっ。こいつも少しは変わってきたね。



こうして私達は(特に香川恭介が)全力で謝った。

幸い生徒会がある程度の事情を説明してくれていたようで、そこまで怒られるような事はなかったけれど…………SNSに出回った写真はどうすることもできない。ある程度の期間は私も覚悟して生活しなくちゃいけないだろう。


だけれど、今回は大きな収穫があった。

あんな面白い人の存在を知ることができるなんてね………たまにはイジメられるってのも悪くはないかな………


私は廊下をニヤけながら歩いて行った。


カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

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