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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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37/364

やるなら徹底的に

すいません。白状します。飽きました。

イリナハグ券の効果は凄まじく、会話が終わると土崎さんはすぐさま敵の情報を求めて去って行ってしまった…………なんてすごい効力だろうかイリナハグ券。これをもしイイダハグ券に変えたら……………ウエッ、自分で言っていて吐きそうだ。


「できれば私、彼女とはもう一生会いたくない…………」


イリナが先頭を歩きながら弱音を吐く。

俺たちはというと、打倒息吹!を掲げ、あてもなく森を彷徨い歩いている。

土崎さんというイレギュラーのおかげである程度の緊張は解けたけれど、やはり魔王様と戦うとなると緊張が半端ない。

てかさーー本当、何度でも言うよ。俺は何度でも言うよ。しつこいと言われても、それを超えてコッテリしていると言われても、「君言い過ぎ!油ダクダクじゃん!」と言われても言い続けてやる。


俺たちに頼むことではない!!!


「まぁまぁ、そう言わずにですよイリナさん。お友達が増えるのは楽しいことじゃないですか。」


「胸美…………確かにそれは楽しいけれどさ、お友達が増えるのなら楽しいけれどさ………さっきのあのモグラは友達と言うか私からすれば十分に危険因子なんだよね………」


イリナは染島さんに対していまだ[胸美]と呼んでいるけれど、会話はちゃんとできるまでにはなっていた。

うーーむ………染島さんの寛容力は凄い!


「危険分子って…………あんな面白い人はそうはいないぞ。まぁ、俺と同類のようなことを自己紹介の時に言ったのは大きく減点だけどな」


「登録人数一桁って……………私でもまだ辛うじて二桁はいってるよ。」


「辛うじてなのかよ。」


「2人とも寂しい方々ですねー。オラなんて3桁いるっすよ!」


「マジかよ!黒垓君はあれだな?小学校入学時に友達100人できたタイプの人間だな?」


「はははは!知っているからといって友達とは限らないっすよ?なんせその人達にはいつも使ってない方の携帯のメールアドレスを教えてますからね!」


うわーー性根腐ってるわ………てか携帯二台持ちか、リッチやな。


「ええ?じゃあいつも使っている方の登録人数は一桁台?」


「いんや、二桁っす。」


……………俺じゃあ対抗できないってのかよ。


「つってもあれっすよ?入ってるのは家族と親戚と学校のPTA会長と学校の固定電話とクラス委員長と担任と学年主任だけっす。」


「へーーー…………それじゃあ親友とかはどうしてるんだ?………まさか暗記?」


「うーーん暗記と言いますか………そもそも電話するぐらいなら直接会いますからね、いらないんすよ番号なんて。」


なるほどね………どうでもいいやつとは電子上(平面的)でやりとりして、大切な奴とは現実(重層的)でやりとりをすると………いいじゃないか。


うーーん。友達の話を染島さんに振りたいのだけれど、なんか地雷を踏みそうで怖い。

いや、まぁ女性の交友関係をあぶり出すのがすごく怖いというのが一番なんだけれど、染島さんは特殊というか……………

だって大学の友達に変態美男子とかいるんでしょ?私生活に踏み入ったらなにか、知ってはいけない何かを知ってしまいそうで怖い………


「あれ?その話、私にはふらないんですか?」


思ったそばからこれだよ


「…………いや、何というか聞いていいのかどうか図りあぐねていまして………」


「ああ、口を開けばエロガッパ。黙れば韓国のイケメン石焼ビビンバだけですよ?私のお友達で変な人は。だから安心して質問してください」


「石焼ビビンバは確実に料理ですよね!疑問の余地はありませんよ!」


てかまだ引っ張るのかそのネタ!


「………ごほん。それじゃあ聞きますが、染島さんの携帯の登録人数は何人でしょうか?」


「実は私、学校で買わされたPCしか持っていなくて携帯番号は知らないんです。」


「それじゃあなんで質問させたんですか!?」


くぅぅーー!!すごく騙された気分だ!それに…………もしかしてだけれど、染島さんって真面目なタイプじゃなくて結構ふざけたタイプなのか?


「いや、やはり1人だけ省くというのは仲間関係に大きなヒビを入れることにつながりますからね。1人に質問し忘れただけで友情崩壊なんて笑えないじゃないですか。それに私達は魔王さんを倒さなければならないんですよね?それなら一層、そんなことでチームワークを乱すのはいけないでしょう。」


「…………ごもっともです。」


ただのおふざけかと思っていたけれど、ちゃんとした理由があったのか…………


「リーダーとして必要なのは、確かに他の追随を許さない潜在能力です。が、大前提は自分の仲間をしっかりと考え、しっかりとサポートすることなんです。」


「……………あれ?おかしいですね………このチームにリーダーなんていましたっけ?」


その口ぶりだとまるで俺がリーダーみたいじゃないか


「ええ、いましたよ。飯田さんですよね?」


「ええ!?飯田さんなの!?ちょっと待ってくださいよ!!それは強いイリナとかに任せましょうよ!!最弱の俺にまかせることじゃないですよ!!」


本当、なんで俺の周りの奴らは俺の事を甚大に評価するんだ!そういうのね、プレッシャーになるのよ!?


「強いからといってリーダーシップがあるとは限りません。………ですよね?イリナさん。」


「ん………まぁ、そうだね。確かにリーダーにはなれるだろうけどうまくまとめ上げれるかは分からないね。」


ボーッと歩いていたイリナは話を急に振られて驚いたようだ。つまりながら返事をする。


「最弱はたくさんの感情とたくさんの想いとたくさんの経験を持っています。それは仲間をいたわることに必要ですし、気遣うことにも必要です。だから飯田さんはリーダーにピッタリなんですよ。」


…………やはり、ちゃんとした理由を説明した後に褒められると嬉しいな。イリナに言われるときよりも嬉しい。


「…………何よその顔。私の時は照れないで反論してくるのに」


そして、それをイリナは当然不快に思うだろう。俺を責める。


「いやいや、反論の余地があるのが悪い。お説教するなら言葉を感情じゃなくて理で包むこった。理詰めが大切ってことだな。」


「………それいっちゃったら君だって自分の意見を言う時まともな理由述べてないじゃん。」


「いいんだよ俺の場合は、あれ全部おふざけだから。」


俺が自分の意思をそう簡単に言うと思うのかい?俺が本音を言う時は目の前に大変なことが起こっている時だけだ。


「え?あれ全部おふざけだったの?」


「当たり前でしょ。友達と楽しく話している時に、真面目に己の理想を延々垂れ流す奴なんていないだろ?」


「…………いや、まぁ、うん。ありがとう。」


「何故に感謝されたんだ。………あっ、」


俺はイリナの発言に首を傾げた時、靴紐がほどけているのが見えた。


「靴紐結ぶからさ、歩いといて。すぐに合流するからさ」


俺は屈んで靴紐を二重結びで結ぶ。

俺は面倒くさがりだからね、ある程度余裕を持って靴紐をキツく結ぶんだ。そうすれば靴の脱ぎ履きが簡単になる。

…………まっ、誰でもやってるか。やっぱり知識がないと物知り顔ってできないなぁ。


俺は紐をキツく結び終えると、立ち上がった。いつもよりもキツく結んだから結構時間をかけてしまった。みんな心配してたら困るから走っていこう。


あれ?こんなに霧って濃かったっけ…………


ザッザッザッ…………


そんなことを考えていると、霧の奥から人影が現れる。俺を探しているのだろうか?辺りをキョロキョロと見渡す。

ありゃーーー、やっぱり時間をかけすぎたか………迎えに来させてしまうとは


「おーーい!こっちこっち!ごめんね!心配かけ………て………………」


スラッ!


俺は腰に付けていた魔剣を引き抜く!


それと同時に、人影は俺に向かって走り出す!


くそっ、なんでだよ!なんであいつ、真っ黒でボロボロのローブを着てるんだよ!


俺は剣を下段に構える。


相手は………素手か?それはつまり魔法が強い魔族?いや、それにしては足が速すぎる!結構な距離があったのにもうすでに目の前にまで迫られている!

こいつは…………勇者か!しかも、俺よりも階級が上?


俺は確認を終え、そして、剣を下から上へと振り上げる!

つっても相手は素手だ!リーチの差で俺が勝てる!


ガッ!


すると、俺の手首あたりに、何か物体がぶつかったのだろうか?剣の振り上げが途中で止まる。


なっ、…………なんだよこれ。

俺は手首に視線を落とし、俺の腕を止めた物体が何かを確認した瞬間。


ゴリンンン!!!!


俺の顎に衝撃が走る!


拳だ。拳が、俺の顎に綺麗なアッパーを決めたのだ。

これは………よく見たことがある。いや、よく食らったことがあるあのパンチによく似ている…………そう、ボクシングだ。


ドサリ


そこまで考えた俺の頭は、しかし、顎に決められたアッパーの衝撃が凄まじく思考、加えて意識までをも吹き飛ばされた。俺は地面に倒れる。


「………………」


クル


黒ローブを着た男は元来た道へと引き返す。


ザッザッザッ………ガシッ


「……………」


俺は、辛うじて残っていた意識を無理やり手繰り寄せ、男の脚にしがみつく。


「…………はぁ。雑魚に執拗以上に関わるつもりは無かったんだがな…………」


男は俺を持ち上げると空中に放り投げる。そして、


ズッッガン!!


「うごおっっ!!」


俺の腹に見えない何かがぶつかり、俺は吹き飛ばされ岩に激突する!


なんなんだ。全然見えなかった…………まさか、あいつは見えない物体でも作れるっていうのか……………


グググッ…………


ああ、ダメだ。全然体が動かない。指先すらも動かせない。


ダメだ…………意識が保てない。このままじゃあイリナたちが危ない……………


あいつは、俺を視認するや否や迷う事なく攻撃を仕掛けてきた。

これは………明らかに計画的だ。しかも奴は俺に興味がない。強者を狙っている。


俺は…………ただ、邪魔だったから分断されたのか


ガクリ。


俺はそこで意識を手放した



「おーーーい。ミフィー君ーーー!どこにいるのーー!?」


狩虎がいないとイリナが気付いたのは狩虎が襲撃された1分後であった。


「うーーーん………そこまで時間は経ってないはずなんだけどなぁ」


黒垓君と胸美も声を出してミフィー君の名前を呼ぶ。


5分ぐらいしか歩いてないはず。

…………いや、よく考えると靴紐を結ぶのに5分も普通はかかるだろうか?そんなの、2分もあれば余裕ありありで出来るはずだし


ズアァァァッ!!


「うおっ!?」


すると、いきなり黒垓君の周りを土が覆い尽くす!

それはまるで牢屋のようで、いや、牢屋の方がまだマシだろう。あの岩で作られた空間には光を通す穴がなく真っ暗なのだ。


「黒垓君大丈夫!?」


「だっ、大丈夫っす!今すぐ脱出を試みます!」


岩室の中から高い声が響く。

よかったーー。それに相手も馬鹿だ。黒垓君の能力を使えばあんな空間すぐさま抜け出せてしまうのだよ!


「…………あれ?魔力が発動しない…………」


「な、なんだってー!?」


ガンガンガンガン!!


中から壁を叩く音が聞こえる。しかし、外側から見る限りでは壊れるとか欠けるなんてことはなかった。ヒビすらも入っていないようだ。


私の力でなんとかなる?…………魔法無効で黒垓君の力じゃどうする事もできない空間。多分私じゃ壊せないだろう。


私は剣を引き抜く。これは絶対に、私たちの周りに敵がいる。

黒垓君を隔離した。何故かミフィー君が見当たらない。もう私の近くには胸美しかいない……………狙いは私?それとも胸美?


「どっちもですよ。」


周りに声が響き渡るのと、周りの茂みに隠れていた敵が全員襲いかかってくるのとは同時だった


「くっ……」


カンカンカキン!ガキン!!


3本の刃が私に降り注ぐ!

相手の数は………9人といったところか。相手はリズムよく攻撃してくる。私が相手の攻撃を防ぎ、攻撃しようとするとすぐさま後ろから攻撃してくるのだ。

どうやら私に攻撃する隙を与えるつもりはないらしい。

それに、胸美の方にも敵は行っているようだ。剣がぶつかり合う音が聞こえる。


私は7人の攻撃を捌き続ける。


くそっ……防ぐ事ならなんとかなるんだけれど、やはり攻撃を加える隙がない。


「どうですか?私たちのチームの連携は?」


また、どこからともなく声が聞こえてくる。私と今退治している奴らは全員歯を食いしばっているから喋れないだろうし…………遠くから誰か喋っているのかな?


私は無視する。こんな状況だし、何より相手に返事をしたくない。


「まぁ、無視ですよね。こんな状況で相手に返事をする奴なんてバカですよ。」


…………ミフィー君なら返事をしてそうだけどね。


バチチチチチチ!!


私は光剣に雷を纏わせる。

光と雷は相性がよく、雷の光がより増大し、辺りを眩しく照らす。


さっさと周りにいる奴らを消さなきゃ


あまりの眩しさに相手がひるみ、その隙をつき、そいつらをまとめて倒すために剣を横に振るおうとした瞬間!


グニャン


私から見て左側の空間がいびつに歪み始める。そして、そこから釘の形をした物体が飛び出してきた!


なんだこれ!?


私は剣を振り抜いていた体を無理矢理ひねり、釘のようなものを何とかしてかわす。


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!!!


かわしたせいでずれた剣の軌道は敵がいない場所へと向かってしまい、敵がいない場所に極太の雷が飛来する!


ちっ………攻撃を外しちゃった。それにしてもさっきの釘みたいな攻撃はなんだったんだ?簡単にかわせてしまったし…………


私は釘が飛んで行った方向を見る。すると、


ある一本の木にぽっかりと穴が空いていた。釘が貫通してもここまでの穴は出来ないだろうというほどの大穴。拳一個分よりも大きい。

その穴のせいか、木は今にも倒れそうだ。あの、釘の攻撃によって作り出された穴がまるで致命傷であるかのように。


「あの釘は私の能力で作ったものでね。能力は触れた相手に致命的な穴を開けること。致命的といっても即死ではなく、体力差によりますが平均的には5分間は死なないんだがね。まぁ、見たとおり遅いんで頑張ればかわせるだろう。」


またもどこからともなく声が聞こえる。

腹立つ声だ………姿が見えれば誰よりも先に切るのに。しかし姿が見えない。遠くからこの戦況を見ているのだろう。

だから私はこいつらを倒して、早くあのムカつく声の主をやらなくては


「…………頑張るしかないか」




キンキンキンキンキン!!


「ぐあぁあっ!!」


私の目の前の男が縦に切り裂かれる。

よし、あと3人。


時間にして5分ほど、イリナと黒ローブの男達の戦いは行われた。

周りの木々が燃え上がり、切り倒されている。4体の死体もイリナの周りに倒れている。

染島さんの方はまだ敵2人と戦っているが染島さんは少し攻撃を食らってしまったようだ。腕から血が滴っている。


イリナは敵の攻撃をかわし続け、剣を弾き続け、電撃で辺りを焼き焦がした。


ズウゥゥンン!

木が崩れ落ちる。どうやら本当に寿命は5分のようだ。


「噂通りの化け物だ………だが、これならどうだ?」


ガサガサガサ!


姿が見えない男がそう言った途端、森の奥から5人の男達が出現する!


「まだいるの!?」


くそ!あの4人は囮だったのか!私を疲れさせる為だけに、あの人達は私に殺されたのか!


「まったく、強くなるためだけに仲間を何人犠牲にするつもりなのさ…………」


「犠牲?…………ふっはっはっはっはっ!犠牲、犠牲か!確かに犠牲だ!これを犠牲と言わずに一体何を犠牲と言うのだろうか!………いままで私は名前もつけずにこの行いを当然のように行ってきたせいだな、そんな言葉は1つとして思いつくことはなかった!………慣れというのは怖いものだ。………そう思うだろ?」


「ゲス野郎…………」


「ゲスだと?私がゲスだと言ったのか?それはあり得ない。私はもっとも効率が良く、かつ最も成功の可能性が高いもの、最小量の死体しか出ないものしか実行しない。それによって人が死んだところで私からすれば運が悪かったとしか感じない。[私が思っていた以上に弱かったせいで、不釣り合いな戦いに呼ばれてしまった。]………なんと運が悪い人だろうか」


…………絶対にあいつは斬り殺す


ブシュウゥウ!!


両脇から糸が放出され、私の方に伸びてくる!


くそっ、さっきまではこんな能力の奴はいなかったのに!


ザクザクザク!

光剣を双剣へと形を変え、糸を切り刻む。


カンカン……カン!カン!!


ダメだ!敵が多すぎるし、いやらしい魔力の持ち主まで現れた!これはさすがに骨が折れる!


ボシュシュシュシュ!!!


さらにいままでは1、2本しか出て来なかった釘が、数を増し6本ごとになり、全方向から射出される


「くっそ………!!」


やっぱりだ!やっぱり相手は今ここで私を倒すつもりだ!


私はとにかく、相手の攻撃をさばくことに全神経を集中させる!


ああ、もうダメだ!釘を全てかわさなきゃいけないから体勢が変な風になってしまう!

〜〜〜〜!逃げる!今は全力で逃げて体勢を変えよう!!


ダッ!!


私は攻撃の荒波を何とかかいくぐって、その場から全力で逃げる!


「逃がすか!!」


ブン!


「くそ!逃してよ!」


振り抜かれた剣を私はかわし、人と人の間を抜ける!


グニャリ


そうすると、私を逃さないためか私の周りの空間が歪み釘が射出される!


1.2.3………10本!今までで一番多い!多分きっとあの男のマックスだろう!つまりこれさえ逃げ切れれば…………!!


釘と釘との間を見極める。少し狭いけど、無理矢理体を捻れば……………


私は間をすり抜ける為に全力で加速する。

よーーし、いけるね!釘の速さがあの程度なら余裕で抜けられる!


ガクン!


「え?手が………」


私が釘の間を抜けようとした瞬間、私の右手が私を引っ張り動きを止める。

な!?ちょっ、どういう……………


ブスッ


肉に釘が突き刺さる音が森中にこだまする。




「……………ぐっ、はらいてーー。」


がらがらがら…………

ボロボロで痛む体を何とかして起こす。


顎を強く殴られたせいか未だ目のピントが合わない。

くそっ………やってくれやがったなあの野郎。


木によしかかり、フラつきながらも前へと進む。

急がないと………イリナが負けるなんてことはないだろうけど、万が一があるから急がないと。


ズルズル…………


たっく、なんで俺を先に狙ったかなぁ。………弱かったから狙い目だったとか?

はははっ、やっぱりそんなところかな。


ピタッ


「おいおい、嘘だろ」


俺の足が自然と止まる。

目の前に現れたのはピンク色で、見ただけで有害だと理解できるような霧であった。


なんだこれは………まるで何かを囲むように霧は森を覆い尽くしている。

これは………吸っちゃいけないでしょ。あからさまに毒だもんね。避けて通ろう。

いや、まぁイリナがピンチだとかならここを無理してでも突き進むんだけれど、よくよく考えるとイリナがピンチになるはずがないもんな。雷の速さで走れるし攻撃力はズバ抜けて高いし7大聖剣持ってるんでしょ?

…………負けねーって。負けるわけがないって。俺なら確実にピンチになるけどイリナがピンチとかないないない。

大勢に囲まれてもイリナならなんとかしちゃいそうだし、巨大な穴を開けられるような攻撃をされても全部かわせちゃうもんな!


よーし、迂回して合流しよう!


こうして狩虎は毒霧に沿うように移動するのであった。




「なぁ、リーダー。」


「なんだ?」


ここはイリナ達が戦っている場所よりも少し離れた森の中。

そこに隠れるように1人は椅子に座り、1人は立って周りを見渡していた。


「もうそろそろイリナは死ぬじゃん?」


「そうだろうな。作戦通りに、体に穴を開けることができたからな。まぁ、染島がかばって戦っているせいでトドメはさせてないが…………時間の問題だろう。」


「だよなーー。でもよ、1人だけ完璧に戦闘不能にしたわけじゃないよな?」


「ん?…………ああ、イリナ達にリーダーって言われてたやつか?まぁ、あいつは大丈夫だろう。一応は指揮系統を破壊する為に最初に攻撃させたが、あいつがいなくてもあのチームはうまく回っていた。きっと名ばかりのリーダーだったんだろうな。」


「うーーん…………だけどさ、もしあいつが起き上がって俺たちの邪魔をしたらもしかしたら失敗するかもしれないだろ?」


「失敗ね…………まぁ、念を入れて毒霧でここら辺を覆ってはいるから大丈夫だろう。リーダーって言われてたんだ、毒霧に突っ込むほどバカじゃないだろ。」


「なるほどなーー。利口だと迂回してくるってわけなのね。」


「そうだ。バカなら毒霧を突っ込んでくるだろうが、賢ければ遠回りをしてくる。仲間の命よりも自分の命の方が大切だからな」


「なら今回の作戦は成功だな!あっはっはっはっはっ!!」


高らかな笑いが下品に響く。




「イリナさん!大丈夫ですか!?気を張り続けてください!」


イリナの体を抱えて敵と対峙する染島さん。

イリナの体は下腹部に穴が空いていて、血が流れ続けている。これで本当に5分保つの?いや、もう4分しか無いのだろうか?今すぐにでも死んでしまいそうで、顔が真っ青だ。

ハァハァ………とイリナから苦しそうな声が漏れる。


「ん………大丈夫じゃ……な、い」


「そんなことは知ってます!しゃべらないでください!!」


「む……ちゃく、ちゃ…………だよ。」


男達がにじり寄ってくる。


最初に黒垓君を封じられたのが痛すぎる!飯田さんが封じられたのは………まぁ、うん。痛いっちゃあ痛い?どちらかといえば痒い?

まぁとにかく仲間を何人か最初に削られたのはどう考えても辛い!


「くっ………絶体絶命ですね」


集団の先頭にいる剣を持たない男が近寄ってくる。

トドメを刺すつもりなのか…………しかし、素手でトドメをさすなんて酷すぎる。


「さぁ、早く俺に殺させろ。どうせもうそいつの命は風前のとも、と、灯火なんだ。それならいっそ早く殺された方がいいんじゃないか?」


パンパン


拳を打ち付けながら近づいてくる。


「…………生きますよ。私達は何があろうと生き残ります。たとえ5分の命だろうと、仲間が削られようと私達は常に可能性を模索します。私達は命の重さというものを知っていますからね。……………それに、貴方達は重大なミスを犯した。」


ゴウッッッ!!


染島さんの後ろから風が吹き付ける


「最弱だろうとなんだろうと、やるなら徹底的にするべきでしたね。」


「…………何が言いたい?」


ザッ


素手の男は、染島さんに腕が届くところまできていた。


ニィッ


「[天災(天才)はいつも突然に]…………いいや、これはもう必然か。貴方は、最も怒らせてはいけない相手を怒らせたってことですよ。」


「…………意味がわからん。」


シュッ!


素手の男が空を切るパンチを放つ!


プシュッつつ!!


しかし、男の腕が飛んできた斬撃により斬られる!


「ぐっああああああ!!!」


「意味がわからない?…………ああ、わからなくて結構だ。この世には知ったところでどうにもならないことがある。例え、俺の素性を知ったところでお前らの対応は変わらないし結果は変わらない。」


ザッザッザッ


森の奥から1人の男が出てくる。片手には剣を持っている。制服に身を包み、ワイシャツのボタンを一番上までしめている。

黒色で丁度いい長さの髪。目は細く、まるで見据える先を射殺さんとしているようだ。


「お前ら全員が地面に這いつくばって、苦しみながら死んでいくことには変わりない。」


剣が紫色に怪しく光り出す。

その光は、まるで次の獲物を求めているかのように輝きを引き延ばし探り続けている。


「き、君は…………」


イリナから微かに声が漏れる。


俺はイリナにいつもの顔を向ける。優しく、誰も殺せないような抜けている顔を。


「ああ、イリナ。ちょっと休んでいてくれ。少しきついかもしれないけれど、目を閉じて眠ることを俺はオススメする。まっ、次に目が覚めたらここじゃなくてお城の中になっているんだろうけどな。」


俺は笑う。イリナに安らぎを与えるために。イリナに心配をかけないために。


「うん…………そうするよミフィー君。」


そしてイリナは目を閉じた。微かな吐息が聞こえてくる。


「……………さぁ、始めようかお前ら。ちゃんと覚悟は出来てるな?覚悟がないならすぐさま立ち去れ。」


紫色に光り輝く剣を敵の集団に向ける。


「俺は今からただ単なる快楽殺人鬼だ。食われたくはないだろ?」


ニィヤァッ


そして、鬼の顔は醜く歪んだ。

レイニーデイの続きはもう少し先になりそうです。


重要関連作品

カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/

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