モグラにいい奴はいない
えーっと、レイニーデイを書いている時には出す気はないと言っていましたが出してしまいました。
べ、別に………書くのに飽きたとかそういうんじゃないんだからね!!
人には人の得手不得手がある。
例えばイリナや宏美のように人を気絶させるのが得意な人もいれば、俺のように気絶させられるのが得意な者もいる。
宏美のように大勢の前で話すのが得意なものもいれば、俺のように人と喋るのが苦手な者もいる。
こう見てみると自分の仲間、友達というのは自分にとって足りないピースであり、なくては自分を形作れないほどの大切な物だと分かる。
それじゃあ、自分にそっくりな人間が目の前に現れたとして、そしたら人間というのは何を思うのだろうか。
自己嫌悪、同族嫌悪というマイナスの意味の言葉が表すように、きっとそのものを嫌うのであろう。
自分だからこそ否定をしたくて、自分になにも満足できていなくて…………だから嫌い続けるのだろう。
もしかしたら自分の存在を脅かす存在であると認識してしまうこともあるかもしれない。
自分というピースの代替品が現れると、自分の立場が無くなってしまいそうで…………だからその者を嫌い、排したくてたまらないのだろう。
つまりだ。今、モグラのコスプレをした方とお話をしているが俺は全然悪い気がしない。不明な嫌悪感なんてまずない。ということは俺とモグラの方は似ているところが限りなく少ないということだ。
つまり、俺の目の前でイリナをベタベタ触って頬ずりしまくっているモグラの方は俺とは全然似ていなくて、俺にはそんな性分もないってわけだ。
何を言いたいかって?目の前にいるモグラの方とは違って俺はヘンタイじゃないし、ましてや同性に対してここまで激しいスキンシップは取らないということだけさ。
「………………モグラさん。そろそろイリナを放してやってくれませんか?軽く涙目になってるんですよ」
イリナの方を見ると、全力で拒絶していた。しかもうっすらと涙が滲んでいる。
王様にやってるように容赦なく雷をバシバシ放てばいいのに………………やはりイリナは優しいんだろうな。個人の耐久度を見定めて、やっていい相手を見定めて、死なない程度に痛めつける……………やっぱり優しくないや。
「むはは……そうは言われてもですねー。このモチ肌を堪能してしまったら、これなしでは生きてはいけないような気がしてしまいますね。絶対に離れたくありません!」
イリナの顔にむぎゅーっと自分の顔を押し付けるモグラさん。
イリナは涙目で、モグラさんはマリ○ッコリみたくいやらしい目。ここまで対極な表情はお目にかかれないだろう。
「………………染島さん。こういうのは放置したほうがいいんですか?それとも全力で引き剥がした方がいいんですか?」
イリナがずっとこっちに「早く助けろや」という目線を送ってきているのだ。
でも…………この光景はなんだかんだで見ていて面白いから、俺的には成り行きを見ていきたいところなのだ。
「そうですね…………この状態のまま会話をしましょう。多分引き剥がしたら拗ねて何も言わなくなると思います」
うーーん………一理ある。
「それじゃあモグラさん。あなたの名前はなんですか?言いたくないならモグラさんと呼びますが」
染島さんの言葉に従いイリナのことは放置させていただく。イジケられて喋ってもらえないなんてことがあったら、結局またイリナを差し出さなければいけないのだ。
それなら最初っからこの状態である方が楽。ザッツ楽ですよ。時間もエネルギーも無駄にならない。
「むっふふふ。モグラ?ええモグラですよ。ですがただのモグラと勘違いされちゃあ困りますね。」
でしょうね。人間ですもの。動物柄の全身パジャマのようなものを着た女の人ですものね。
イリナを名残惜しそうに手放し立ち上がるモグラさん。
イリナを手放す時の顔が哀愁漂いまくりだ。ム○シがマス○ッパを逃すシーン並の悲しみでいっぱいの表情だ。
そもそもあれだ。ここで言うのもなんだけれど俺はポ○モンでモンスターを捨てることができない。いや、ポ○モンのみならずモン○ンでもなんでもだ。自分の仲間を捨てるというのは息苦しく感じてしまうのだ。
[モンスターが寂しそうな目で見ている!]この文章を読んだらすぐに「ごめん!嘘だから!君のこと捨てないからさ!野生に送り返して惨めな生活させたりしないからさ!」と叫んでBボタンを連打してしまう。
やっぱり可哀想なんだよねー…………一度人間社会という甘い汁を吸ったモンスターを捨てることほど酷い仕打ちはない。動物っていうのは一度覚えたものはそう簡単に忘れないものなのさ……………
おっと、無駄話はこの辺にしてそろそろ会話に戻ろう。
「1分間あたり50メートルの掘削量!案外痛いぜマイクロウ!ウール57%魔力43%の配合によって作られた全然汚れないモグラ型の寝巻!メガネ!高学歴!」
モグラさんは立ちながら声高らかにポーズをとり叫び続ける。
激しい!メガネが踊っている!
……………でも後半ネタ切れたな。どちらかというとネタ切れを激しい動きでカバーした感じだ。
「そう!まるで人類の英知をかき集めたかのようなここまでハイテクなモグラは私を置いて他にはいないでしょう!」
……………まず人間なんだけどなぁ
俺の心の中でのツッコミがモグラさんに聞こえるはずはなく、ずっとしゃべり続ける。
「トップオブザモグラ!モグラの頂点に輝く女!」
女って言っちゃったよ!モグラだと言い張ってたのに女って言っちゃったよ!
「人呼んで腐女子!又の名を両刀野郎!!そして真の名は土崎愛歌!花の高校三年生やっています!」
「うおぉぉおお!!ろくなあだ名がねぇ!!ここまで負のステータスを人間が詰めこめるのかぁぁぁあ!!!」
腐りすぎダァァァ!!腐敗臭が漂いまくりダァァァ!!!
「因みにこの性格が災いしてか連絡帳の登録人数が1桁です!」
「俺にかぶせてくるんじゃねぇぇぇええ!!俺は貴方と同じ種類の人間だと思われたくないんだよ!!アブノーマルだと思われたくないんだよ!!」
きゃあああああああ!!俺がせっせと頑張って積み上げたノーマルな印象が崩れてしまいそうだぁぁ!!
「いや………もとからアブノーマルでしょ。」
土崎さんの魔手が離れた瞬間を狙って離れたのだろ、いつの間にか俺の後ろに来ていた。速すぎて全然見えなかった………
「違うわ!俺ほど普通な人間はこの世には」
「思ったんだけどさ、そろそろ君にはわからせなくてはいけないことがあると思うんだよね。」
おっと、俺の言葉を遮ってくるか。
「ほう、俺に分からせたいこと?苦しゅうない言いてみいよ。俺は理解の速さだけが取り柄だからのぉ」
近くにある木に寄りかかってみる。
「そもそも、君が思う通りに、君が普通であるとするでしょ」
またも登場黒板!黒垓君の能力は本当に便利だなー
「普通の人が、あそこまでレベルの高い生徒会をまとめ上げるなんて私には不可能に思えるんだよね」
あれ?俺に理解してもらいたいことって俺の異常性?俺は普通ですよ?
「そうかい?普通というのは難しいことなんだぞ?普通の生活を送ることほど難しいことはない」
「話を逸らさないでね。ミフィー君が話を逸らすと脱線しすぎて話が掴めなくなるの」
黒板に無駄話禁止とデカデカと書くイリナ。
ちぇーっ、俺の楽しみが1つ消えちまった
「私が思うにリーダーっていうのは人よりもずば抜けた何かを持っている者じゃないとなれないと思うんだよね」
リーダーの素質。と黒板に書かれる
「力でもいい、頭脳でもいい、カリスマでもいい、勇気でもいい…………何かしらの秀でた能力がないと誰もつき従わないし誰もそのものに惹かれない。リーダーは圧倒的じゃないといけないんだよ」
「むーーー。だからと言ってだな、俺は別に生徒会長ではあるがリーダーみたいなことはしてないぞ。俺以外の人間が優秀すぎて何もしなくても勝手に回り続けているからな」
翔石君といい雪さんといい宏美といい優秀すぎるのだ。何も言わなくても勝手にやっているし勝手に終わらせている。だから俺は今まで仕事らしい仕事をほとんどしてこなかった
「確かにあの方々は優秀だよ。だれもかれもがトップクラスの才能を持っている。でもミフィー君には劣るんだよなー………君さ、今回のテスト何点だった?」
「なんだなんだ唐突に。…………まぁ、そうだな。7教科合計680点はいってるだろうな確実に。……言っとくがこれぐらいなら努力でなんとかなるぞ。だから俺の頭脳がずば抜けて良いとかの結果にはならないからな」
「うん。そうだね。努力をし続ければそれぐらいの点数には行くかもしれないね。でもさ、君って努力してる?こんな時間に私たちと一緒に遊んでさ」
「そりゃお前、描写してないけど夜寝る前に勉強してるぜ!」
「それでも2〜3時間でしょ?それに君塾はどうしたのさ。前回も休んでるし今回の分も休んじゃってるよね?」
「む…………それは、まぁ、うん。忘れてた。」
「忘れてた………ねぇ……………。忘れるということは君は塾に対してそこまでの関心がないってことでしょ?」
「えーーー………そういうもの?そういうものなの?……そういうものなの黒垓君?」
染島さんの膝枕をありがたく頂戴している黒垓君に話を振る。
………毎度思うけれど羨ましいぜ。
「んーーわからないっすねー。オラは勉強が嫌いでかつ勉強しないのでそこんところは分かりません。」
まぁ、こんなところに来てる時点でそうなんだろうけどさ
「まぁ勉強しなくても点数が取れるんで困ってはいないですけどね!」
「おい、今のでこの世の大多数の人間を敵に回したからな黒垓君。」
「黒垓君を使って無駄話に持って行こうとするな。」
俺と黒垓君が無駄話に入ろうとした時、イリナからドスのきいた声をかけられる。
「すいやせん」「ごめんなさい」
「で、まぁ、とにかく。君は頭がいいってことで異論はないね。」
「いや、おおいに異論があるんだけど。」
勉強してる。と天才を同等に見てもらっては困る。
俺は秀才ではあるが天才ではない。そこを理解してくれ。
「頑なな………現実というのは受け止めるためにあるんだよ?」
「うるせー!俺はちゃんと受け止めてるわ!ハグしてるわ!」
ガッツリと抱きついてるわ!ありのままを受け止めているわ!
「いや、君はちゃんと抱きつけていない。抱きついていると見せかけて右手に忍ばせた短刀を現実の背中に突き刺している。」
「現実に背中なんてねーよ!前しかないんだよ!現実は前しか向いてないんだよ!」
「いやぁ!?現実だって後ろを向きたい時はあるもん!現実にだってね、見たくないこととか苦手な相手とかいるんだからね!……全く、これだから理想主義者は………」
「お前が現実の何を知っている!?俺はあいつと毎晩酌み交わしているんだ!だけどな、あいつはいつも酒を飲まないんだよ。[いや、俺はウーロン茶でいいよ。酒で何かを忘れるっていうのは趣味じゃないんだ。でも、俺はお前と語り合いたい。だから、お前の誘いを俺は受けるんだ。ウーロン茶を片手に、お前とあれこれ夢を語るために…………]って、あいつは真っ直ぐな目で話すんだ!………俺は、あいつほど実直な男を見たことがない……………」
「君いったい今何歳!?お酒なんて飲めないでしょう!?」
「ああ、間違えた。これは俺の親父が語っていた話だった。」
「君のお父さんかっこいいな!?」
「あのーー…………私はどうすれば?」
俺とイリナが立ってガミガミ口論していると、横から声が聞こえた。
どうやら土崎さんが困惑しているようだった。
「土崎さん。初めてだからしょうがないっすけど、師匠が一度無駄口を叩き始めたら最低5分は止まらないと思ったほうがいいっすよ。」
膝枕されている黒垓君が説明する。
「え?いやいや、俺はそこまで口は達者じゃないぜ?クラスメイトからお前は大仏かい?って言われるぐらいだからな。」
「それはただシャイなだけじゃ……………」
そこにすかさずイリナのツッコミ。
「…………まぁ、とにかく。土崎さん。貴方がモグラだということは十分にわかりました。」
「あっ、話逸らした。」
うるさい!シャイだってことが恥ずかしいんだよ!
「やっと私に注目が向けられましたね。クラスにいる時みたいにまた無視されるのかとヒヤヒヤしました。」
…………それはお気の毒に。
「それで、土崎さん。カースクルセイド、もしくは息吹について何か知っていることはありませんか?」
これから俺達は息吹と戦わなくてはならない。だから、息吹の情報はなんでもいいから欲しいのだ。それにカースクルセイド達の動向も知っておきたい。……炎帝のことも。
「んーー息吹さんについてはよく知りませんがカラスクルセイドの事については弱点となりうることを知っていますよ。」
「土崎さん。それは違うよ、くるクルセイドだよ。」
「なーに言ってるんすか。カスクルセイドっすよ。」
「違うぞ。カースクルセイドだ。」
いつも思うが恥ずかしい。
「とにかく、え?弱点を知っているんですか!?」
「はい。地中で休憩している時にたまたま聞こえてしまったんですよ。」
なんだってえぇぇえ!?!?それは大大、大情報じゃないか!
「お、教えてください!」
俺はすごい勢いで頭をさげる。
「いやーー、教えてあげたいのは山々ですけど、タダというわけには…………」
「イリナ抱き締め券5枚でどうだ!」
俺は懐から細長い紙を取り出す。
「分かりました!教えましょう!」
それを土崎さんは素早く掠め取る!
「ちょ、君なんてもの作ってるの!?」
そのチケットを見て怒ったイリナが俺の頭を鷲掴みにする。
ふっふっふっ、この地にはイリナファンが多いだろうと推測しておいて良かったぜ!交渉を進めていく上で切り札になるだろうと思い作っておいたのだが…………いやはや、役に立ってしまったぜ!
「良いじゃないかイリナ。体は売っても魂は売らなければ良いんだからさ」
「そういうこと!?いや、違うって!なに人に無許可で恐ろしいもの作ってんのさ!消されたいの!?」
イリナの手に力が入る。
あ、頭からトマトジュースが搾り出されそう………
「い、イリナよ落ち着け。いいか?これによって相手の弱点が分かるんだぞ?そう考えれば安いもんだろ。」
「私の貞操が危険に晒されるよりも大事なことだと思ってんの!?」
あばばばばば!!頭からスイカの果実が飛び出るぅぅう!!
「大丈夫だ!ハグ程度じゃそんなことにはならない!だから落ち着け!落ち着いて!Take it easy!」
5分ほどかけて、ようやくイリナが落ち着いてくれた。
「はい。これは私が地中でスカッシュをしていた時のお話です。」
………1人でか。虚しいな。
「クラスであった出来事を叫びながらボールを打ち付けていました。」
やばい、想像しただけで涙が出そう。
「すると上の方から声が聞こえてきたわけですね。[なぁ、お前。カシスクルセイドの服装があんな厨二くさい服装か知ってる?][お前、カシスクルセイドじゃねーよ。カスクルセイドだよ。]」
カースクルセイドな
「[え?それってお前、リーダーが決めたんじゃねーのか?][いや、確かにリーダーが決めたんだけどさ、決めた理由がすごいんだよ。][ほーー。そういうファッションセンスだったってわけじゃないんだな。][いや、そういうファッションセンスなんだよ。][はぁ?それじゃどういう意味だよ。][ああ、それを今から言うって言ってんだよ。]」
え?ちょっと待って?もしかしてこの流れは…………
「[いいか?まず最初にカスクルセイド結成時のメンバーが3人だったことから始まる。彼らは後々大きくなることを予想して、大きな1部隊ではなく、彼らが隊長の3部隊を作るつもりだったんだ。]」
へーーー。結成時のメンバーは3人か。
「[それで、3部隊を分けるために部隊ごとの制服を作らなくちゃいけない。だから彼らは次の日に着てきた服をその部隊の制服にしようとしてたんだ。][ほーーーなんとなく話が見えてきた。][だろ?それで次の日、彼らは各々のセンスで決めてきた服を着てきたわけだ。するとなんと!3人ともあの厨二くさいボロボロのフード付きの黒マントを着てきたわけだ!][ヒャーー恥ずかしいな!厨二くさい服装が被っちゃったんだなー][ああ、全員恥ずかしかったんだろうな。ある1人が、「そ、そうだった!部隊ごとに制服を分けるんじゃなくて統一するんだった!」って言い始めて、他の2人も同調して今に至るんだよ。]と言っていたわけですよ。つまり、カスクルセイドの制服は彼らの恥ずかしさをごまかすための羽衣というわけですね!」
「……………それだけですか?」
「それだけですよ?」
おいおい、まじかよ。弱点ってそれ………相手を怯ませることすら難しそうだぞ。
「……………ごめんイリナ。」
「謝っても許さないよ。」
ミチミチミチっと俺の関節が悲鳴をあげる!
「ごめんなさい!今度からは情報を確認してからあのチケットを渡しますから!許してください!」
「許さない!骨が折れるまで許さない!」
「あぁあ!本当にごめんなさい!まさかあんなクソ情報だとは思ってもみなくてテテテテテテテテ!!!」
イリナの腕にさらに力が入る!
なんであの人はあんなクソ情報を出したんだよぉぉお!!恨むぞこのヤロォォオォ!!
「あれ?まさかその情報じゃ満足してませんか?」
俺とイリナのやりとりを見て土崎さんは困った顔をする。
「うーんそうっすねぇ。確かにこれじゃあ不釣り合いっすよね。イリナさんの体に触るなんてカネを肘の高さまで積まないと普通は無理ですもんね。」
そこまで高いの!?
「それではこういうのはどうでしょうか?」
染島さんが提案をする。
「土崎さんにはカースクルセイドと息吹について調べてもらい、イリナさんハグ券5枚分の働きをすれば、それ以降は働きに応じてハグ券を渡す。というのは?」
「うおぉぉお!!それだ!それですよ染島さん!それで俺の体も救われる!」
「いや。私の体を安く売った償いは果たしてもらうよ。」
イリナが鬼気迫る顔で、それでいて恐怖を具現化したみたいな声で吐きすてる。
「ちょっ、まっ、そりゃダメだっでぇあああああああああ!!!!!」
こうして森中に俺の悲鳴が響き渡る。
本当なんで俺の周りには変な奴が集まるのだろうか………………
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/




