シリアスな展開?そんなのどこかに置いてきました
「俺は思った……………そろそろこの小説にもシリアスな話が必要なのではないかと」
「…………………どうしました?」
ここは生徒会室。テストも無事終わり、通常通りお仕事が待ち構えている。といっても大した仕事は来ないので大きく構える必要もないだろう。
てなわけで今後の小説の方向性について俺は思案しているというわけだ
「なんでこうも学校は平和なのだ。化学室爆発とかしないかなーー」
「生徒会室は化学室の真下ですからね、大爆発なんて起こったりしたら私達はただでは済まないでしょうね」
席に座り、黙々と作業を進める宏美。
あーーー、まだ直ってないのか…………まぁ、いつか直るだろう
「そこをなんとか、こう………丁度いい感じに爆発してだな、死傷者0人ぐらいの見せかけだけのテロでも起こして欲しいものだ」
「果たしてそんなことを起こして利益はあるのでしょうか」
席に座り仕事をしているふりをして絵を描いているイリナ。
口調が宏美と被ってしまい見分けがつかない。めっちゃくちゃ面倒だぜ!
「…………えーっとだな。テログループの名は然善極致団で、その目的は世界を元の自然の姿に戻すべく手始めに各地の化学室、実験室、多目的室を爆破して回っているのだ。………てのはどうよ」
万人直耕の自然世。それが彼らの掲げる目標だ
「それじゃあいささかパンチが足りないのでは?」
ガラガラと扉が開かれる。
そこにはボロボロの翔石君と雪さんが立っていた
「……………パンチ効いてんなー」
顔やら腕やらに絆創膏がたくさん貼られている。いたるところが少し腫れていて……………闇討ちにでもあったのか?
「いやーー、昨晩は色々とありまして…………やっぱり実験というのはトラブルがたくさんあるものですね」
「どんな実験してたの!?どう考えてもその傷、打撲じゃん!確実に人間にやられてるでしょ!!」
「そうですよ。色々と実験をしていたら支援者の反感を買い、盛大にボコられました。袋の鼠とはまさにあのことを言うのでしょうね……………袋に詰め込められて吊るされてずっと叩かれてましたから」
「支援者!?翔石君の実験は結構大規模な実験なの!?」
しかも袋の鼠の意味が違う!一昔前の折檻よりも生々しいぞ!
「んーー………大プロジェクトってことではないですね。暇を持て余した僕がざっと5〜6年かけて行っている暇つぶしといった感じです」
「………………よくもまぁそんなものに支援者がついたな」
「そうですよね、僕としては驚き以外の何物でもないんですよ。適当に作った図工の工作が受賞してしまったぐらい驚いています」
うーん…………受賞したことがないからいまいちピンとこない。
「まぁ、そんな下らないことは放って置いてですね。人が来ているみたいですよ」
翔石君と雪さんが左右によけると、その間から一人の男の子が姿をあらわす。
ん?…………みたことあるよーなないよーな。
「扉の前でモジモジしていました。きっと何かあるのでしょう」
な、なに!?
「生徒から依頼を受けるだって!?そ、そそ、そんなの初めてだ!」
まぁぁじかよ!!今回の話はいいネタになりそうだぜ…………ぐっふっふっ
というわけで、今まで昼寝用スペースとなっていた[生徒会室相談所]のソファーに、俺と宏美が男の子に向かい合うように座っている。
「…………………………」
え?こういう時って初めになんて言えばいいの?こんにちは?ありがとうございます?よくぞお越しくださいました?…………わからん
俺が無言で床を見ていると宏美が話し始める。
「えーっと、あなたの名前はなんですか?」
「は、はい………賀川恭介です」
ん?…………あれ?聞いたことあるよな…………ちょっと変な質問してみるか
「…………君の悩みはいじめかい?」
「は、はい!そうです!」
やっぱり同一人物か!
「なんだ賀川君かー!久しぶり………じゃなくて2日ぶりだねー!」
初対面じゃないならば俺も気軽に喋れるというものだ。ましてや戦って命のやり取りをした相手ならば尚更だろう
「え?………知り合いですか?」
隣の宏美が不思議な顔で尋ねてくる。
無理もない、初見の人に対して恥ずかしがる俺が友達を作ることなど3年に一回あるかないかの頻度なのだ。不思議がらずにはいられない
「そうなんだよ。彼の攻撃で頭から血がドバドバ出てさー……………いやーーいい思い出だ!」
出血多量で気絶するぐらいだ!こんなこと忘れられるわけがない!
「あの時は本当に申し訳ありませんでした!まさか貴方様が生徒会長様でいらっしゃるとは露知らず!……………非礼をお許しください!」
「ど、どうしたのいきなり!?そんな風に頭を下げられても俺なんもしてないよ!?生徒会長の威厳ないよ!?」
いきなり机に頭を擦り付ける人を初めて見た!そもそも口調がすごい!1人だけ戦国時代からタイムスリップしてきたかのようだ!
てか賀川君こんな性格だったっけ?反抗期真っ只中みたいな性格してなかったっけ?
「何言ってるんですか!今期の生徒会長といえばルックス、知能、成績、態度、情けなさ、実績、ギャップ、天然ボケ、運動神経がまぁそこそこ、コーヒー牛乳好き、箸の使い方などなどが天下一品だと言われてるんですよ!?」
「なんでだろう…………そこまで嬉しくない」
「人々の前に立てば緊張で足が震え、1500メートル走も途中で足が震える…………しかし、一度生徒会室に入れば長期的に物事を見定めたそのやり口によりLED設置による光熱費削減から始まり屋上の解放、調理研究会の料理販売の認可、学食で50円をオマケすればコーヒー牛乳が付いてきたり、売店にコーヒー牛乳を置くなどコーヒー牛乳好きにはたまらない改革を起こした!」
「なんでだろう……………全然嬉しくない」
「そして、特筆すべきはやはりエリート学校とは名ばかりのこのいじめ、暴行、器物破損などなどが横行していたこの地の犯罪率を一桁台にまで低下させたのが大きいでしょう!これはこの学校創設以来の快挙だそうです!いやーー実に素晴らしいコーヒー牛乳大好き人間ですね!」
褒められてるんだよな?これって褒められてるんだよね?でもなんか……………罵られてる感が否めない
「あーーーありがとう?」
「いやーーどういたしまして!」
あれ?なんかおかしくない?気のせい?…………まぁ、ならいいんだけれど
「それで、今回の貴方の相談はいじめでよろしいのですね?」
隣にいる宏美がメモ用紙に何かを書きながら質問する。ふーーむ、落ち着いた宏美は本当に優秀だ。ぶっちゃければさっき賀川君が言ってたことって全部宏美に任せた結果なんだよね。案外俺は何もしてなかったりするのだけれど……………まぁ、ばれてないのならいいや。言う必要もない
「あ、はい…………そうなんです」
さっきまでの勢いはどうしたことか、急にシューンとなりはじめる賀川君。テンションの落差が大きな子だなーー
「しかし直に来るとは驚きですね…………いじめられてる側は、いじめられていることを他人に知られたくないと私は聞いていたので、てっきり目安箱を使って知らせに来ると思っていました。」
うちの目安箱は名前も学年も書かなくていい、内容さえ書けば俺らがちゃっちゃと裏付けをとってちゃっちゃと片付けるタイプなのだ。壁山先生曰く「名前とか書いたらあてにし辛いですからね。」だそうだ。
「最初は僕もそう思っていたんです。目安箱に入れて、生徒会にすべて任せてしまおうって……………ですが、2日前生徒会長に言われてから自分で解決しなきゃいけないんだなと思ったんです。」
2日前?……………なんか言ったっけか?怒りに任せて口汚く罵ってただけなんだよな…………そんな趣旨のことを言った記憶が全然ないぞ
「意味は自分で作り出せ………なぜでしょうね、その言葉がずっと引っかかっていて仕方ないんですよ。あの時の光景がずっと目に焼き付いているんです。目を閉じればすぐさま脳裏に現れるぐらいに………………」
しっかしこの男ポエマーだなーー。俺ならそんな言葉絶対に言えないね。
「……………とにかく、僕はそろそろこのいじめに挑まなければいけないと思ったんです。自分の力で…………ですが相手の力はあまりにも強力なので生徒会の力を借りようと思ったのです」
……………本当に賀川君はいじめられていたのか?見る限りでは全然そんなものは感じられない。
2日前のあの時は確かに不安定だった、自分を確立していなった。でも今の彼は自信に満ち溢れているようだ。………自信?いや、違うな。自信というよりかは向かう先を発見できたというのか…………何かが定まったかのようだ。
頭がいいやつというのはやはり、何かきっかけがあるとすぐさま変われてしまうのだろう。
「……………まぁ、そうだね。それが一番いいことなんだろうね」
凄い奴だ賀川恭介。俺と同じヘタレ野郎だと思っていたがそれは勘違いだったようだ。確実に自分の行く末を見つけている。殻になんて全然閉じこもっていないじゃないか……………俺とは大違いだな
「それで、いじめの加害者の名前はなんですか?それを聞いておかないと私たちは何もしようがないので」
俺が感慨深く思慮しているなか、宏美は仕事を全うする。……………なんて有能な幼馴染だ。
「は、はい。…………姫崎鈴音、1年生です。」
な………………んだ、と?
「もう一回言ってくれ………」
ちょっと待ってくれよ…………その名前はまずい………この部屋の空気がピリピリし始めてきやがった…………
「分かりました。………………姫崎鈴音です」
さっきよりも大きな声でその名を口にする賀川君。こいつは信じたくないな
「……………メドゥーサが復活しやがったか」
あいつには2ヶ月前に最終勧告を言い渡し、次はないときつく言い渡したはずだ。それなのに……………もう活動を始めやがったのか
「メド…………なんですって?」
賀川君は姫崎鈴音の別名を知らないようだ。それはまぁ当然だろう、この言葉は生徒会でしか使われない、世に出回らない別名なのだから
「メドゥーサ。標的を石のように扱い、クラスから徹底的に隔離するタイプのいじめの常習犯です。彼女は頭が良い、それに加えて男子を言いなりにしてしまうその美貌が一番の武器とも言えるでしょうね。」
翔石君が自分の机から説明をする。
頭が良くて顔も良い。そういうやつは大抵クラスのリーダー格となるし男子たちは言いなりになる。高校生にまでなると男女の運動能力の差が出てきてしまうから、男子を従えたメドゥーサは女子に対しても強い支配力を持つことになる。
「そういう奴にはやり返すのが一番効果があるんだが……………あいつにそんなことが通用すると俺は全然思えない。確実にあいつはクラスを掌握しているだろうし、それを覆そうとすれば多大な力が必要になるだろうからな」
ジャ○アンには拳で倒すのが一番効果的でス○夫には財力で懲らしめるのが一番良いということだ。ただ、相手にする者の力が強すぎると力を蓄えるのに時間が多くかかってしまう。
「嫌な相手だよ全く…………」
天井を見上げる。うーーん……………どうしたものか………
「やっぱり、闇討ち以外手がないんですかね?」
「賀川君…………闇討ちっていうのは犯罪だ。合法に違法で立ち向かえば、あるのはほんの少しの優越感と罪に苛まれる毎日だけだ。」
「そ、それじゃあ…………どうしようもないってわけですか?」
なぜそうなる?合法でダーティーな行いなんてこの世に五万とあるじゃないか
「どうしようもない?おいおい冗談はよしてくれよ。とびっきりに汚くてとびっきりにどぎつい方法があるじゃないか。正義の名を掲げた生徒会が最もやってはいけないことで、最も忌むべき方法が」
だからこれは君1人がやったことにするんだ。俺が付け加えた一言は、賀川君を怖がらせてしまったのだろう。顔がヒクヒクと引きつっていた。
最終勧告は出していた。それを無視したお前が悪い。
俺は心の中で自分と鈴音に軽蔑していた。
というわけで明日の準備を終えた俺は表面世界に来ていた。でも、ちょっとおかしいな。目の前が緑でいっぱいだ。
あれ?入り口には確か街が広がってたよな?ん?ジャングルになってない?
あーーー…………どうなってんだ?
「……………………」
口がカクカクしてしまう。だって………え?森っていうのは1日で出来るわけないだろ?でも出来ちゃってるんだけど……………
隣にいるイリナに話しかけようと思ったが、昨日思いっきり抱きついてしまった為ちょっと声をかけ辛い。
うーーん……………困ったものだ。俺のメンタルが鋼なら良かったのだが生憎豆腐だからな……………ほんの少しの衝撃に耐えられないのだ。
「ねぇミフィー君…………」
だがしかし俺とは違いイリナは鋼のメンタルなのであった。
普通に話しかけてくれた。いやーよかった。おかげで会話が出来そうだ
「なんだイリナ」
俺は森を見続ける。
「………………これって王様に言ったほうがいいよね」
「だろうな…………………」
急速に森が出来るなんて異常だ。どう考えても魔力が働いている。しかも、一夜で街一個がすっぽりと覆い尽くされるほどの量だ。魔族の…………しかも上位のやつの仕業だろう……………ん?ちょっとまてよ………………
ズズズズ……………
俺たちの目の前に白色の扉が形成されていく。
「オーッス、こんにちはーっす」
ドアも開けずに中から黒垓君が出てくる。しっかしいまだ慣れないなー、ドアは開けないと入れないという常識が全然通用してないもんな。
「黒垓君……………すぐさま勇者領に行こう。こいつはきっと大変なことが起きてるぞ」
さて勇者領の謁見の間である。
「はい、いっちょあがりー」
昨日倒した(倒された?)暴竜の爪を渡し魔剣を修復してもらった。
「おおっ…………こんな簡単に直っちゃうのか」
素材と剣を両手に持って合わせただけで剣は修復されていた。
何というか…………終わり方が呆気ないな
「ガッはっはっ!わしの腕が凄すぎるからからな!どんなにすごいことでも簡単にやっちまえるんだわ」
ガッはっはっ!と笑い飛ばすクソじ……王様。
「さぁ約束だイリナちゃん。わしと一緒に熱い夜を………」
「してないよね?約束」
バチバチバチバチバチ!!!
ギャアアアアア!!
部屋中に悲鳴がこだまする…………王様が関わるとシリアスな空気がお笑いムードになってしまうから怖いものだ。
王様の最も恐ろしい所は強さでも速さでも能力でもない。すべての雰囲気を自分のものに変えてしまうところだろう(小説を書く身としては真面目に恐怖だ)
「さて、君たち知ってはいると思うが森が増殖している」
「森が増殖って、何ていうのか生きてるみたいですね」
「ああ、マジでキモい。だがそうなってしまっているのだ。これは早急に対処しなくては世界が森で覆い尽くされてしまうぞ」
………………別段脅威に感じないのは俺だけだろうか。
どちらかといえば俺よりも5回りぐらい年上の人がマジでキモいと言っていることの方が俺は脅威に感じる。
「でもさ、王様。辺りが一面森になったところでそこまで害はないんじゃないの?たかだか木の塊だし」
イリナもそこまで危険視してないのか。
「まぁ、森だけならそこまで危険はないんだが、問題はこれを作り出しているのがどうも魔王の1人らしくてな。」
三王の1人か………………
「何て名前なんだ?俺全然知らないんだけど」
夢の中では炎帝という肩書きしか出てこなかったのだ。
「…………炎帝、息吹、土石竜。3つとも肩書きだけど、これが三王の名前だよ。」
「大層な名前だな…………んで、森を作り出しているのが[息吹]なのか?」
「だと思うよ。そもそもこいつらはそこまでこの世界に現れないんだよ1ヶ月に一度くればいい方だったからね、いままで。だから能力もそこまで知られていないんだ。たまーに出てきてはこの世界に大きな爪痕を残す。簡単に言えば災害そのものだよ」
災害とまできたか
「ここ最近三王の動きが活発化している。息吹の領地拡大、炎帝のカイ殺し、そしてカスクルセイドの結成とかな」
「カースクルセイドですよ」
なぜ俺はこんな言っていて恥ずかしい言葉の為にツッコまなきゃいけないのだ。
「まぁとにかくそのカーーースクルセイドなどから推測するに、魔族側も本格的に戦力拡大と勇者側の戦力縮小を始めたようだ」
……………いや、そうか?本当にそうか?あのグループは魔族も勇者もどちらも殺す。もし炎帝が勇者側の人間を殺すためにあの組織を作り出したのならば無駄とリスクが多すぎる。
ここでは魔族と勇者とカースクルセイドという三竦みの勢力として考えるべきなのではないだろうか?勇者にも魔族にも属さない。カースクルセイドという集団に……………あれ?おかしいな…………それじゃあカースクルセイド側の勝利条件はなんだ?魔神を殺すことか?それとも王様を殺すことか?………………もしかして、他の勝利条件があるんじゃないのか?…………わからなすぎる。
「まぁ、分かりました。それで俺たちはどうすればいいんですか?森を消していけばいいんですか?」
イリナの雷と黒垓君のワープの力があればすぐに森を消せるだろう
「いや、[息吹]を直接叩いて欲しい」
た、たた………たったた?叩くって言ったのか?
「………………俺たち4人で?」
「オフコース」
グッ!
うーん!この親指を立てる仕草が腹立たしい!
「…………………染島さん。あいつバカなんじゃねーの。って王様以外の人に伝えてください」
テレパシーの能力って便利だなー!人の前で堂々と陰口ができる!
「わかりましたー!」
「………………王様、俺たちを行かせるってことは勝算があるってことですよね?」
これでないって言ったらさすがの俺でも怒ってしまうぞ
「オフコースナット!」
「うおおおぉぉぉおお!!叩き斬る!塵すら残ると思うなよ!?ピコ単位で分解してやっからな!!」
黒垓君離せ!今俺たちの前にいるのは人間を犬死させる害悪細菌だ!ここでこいつを殺菌しなくては今後さらなる犠牲者ガァァァア!!
「ミフィー君…………こういう人なんだよ」
イリナは呆れた顔を手で覆いため息を吐く。
「てなわけでな[息吹]を倒してきてねー。森の中に入られたら正直わしも生きて帰れるかどうかわからんが…………まぁ大丈夫だろ!報酬は弾むから頑張ってね!」
城を出るときに王様……いや、クソジジイの言葉が思い出される。
無責任な期待と自信は何故こうも腹立たしいのだろう。出来るのならば城に火をつけて城ごとあいつを燃やしたい
「はぁー………何故こうなった」
展開があまりにも早すぎて理解ができない。頭が追いつかない。
なんでいきなり魔王と戦わなきゃいかんのだ。色々と順序をすっ飛ばしすぎだ
「あっ、そうか…………いく先々に森ばっかりしかなかったのは[息吹]が森をしこたまこしらえている途中だったからか…………」
作者の力量不足のせいにしちゃって少し後ろめたい気持ちになる。まぁ、力量不足は本当なのだが………………
「……………魔王討伐とか正直俺たちには危険すぎない?と思う人挙手」
すっ
4人が手を挙げる
「……………でもここでやらないと俺たちの身に危険が及ぶよなー。やらなきゃなんねーよなー。と思う人挙手」
すっ
4人が手を挙げる
「ホットミルクと冷たい牛乳。どっちかというとホットミルクの方が好きな人挙手」
すっ
3人が手を挙げる
「醤油か味噌。どっちのラーメンが好きかと尋ねて[俺はどっちかというと塩派かなー]という奴に苛立ちを覚える人挙手」
すっ
4人が手を挙げる
「……………なにこれ」
この俺たちの不可解な行動を見かねたイリナは言葉を漏らす
「これから大事を成そうとしているんだ。だから4人の結束を深めて素晴らしいコンビネーションを身につけて少しぐらいは足掻きたいじゃないか」
そもそもだ。何故こうなった?魔剣を直して目障りなカースクルセイドを蹴散らして、その期間中に俺のレベルアップを図って、いい感じになったところで炎帝と戦うというシナリオがもろく崩れ去った………………。なんかもうね、色々と算段すっ飛ばしすぎてるんだよ。いきなり暴竜と戦うわ、その前に実力差がある九尾と一騎打ちさせるわでなんかもうおかしいよ。
いや、まぁイリナクラスの人間がカースクルセイドに流れて戦力不足なのは仕方ない。うん。実に仕方ない。俺がとやかく言えることではない。
だからってさー魔王の1人を正体不明の雑魚野郎と第一、二類勇者1人ずつとそもそも魔族の人間。計4人に任せるのはどうかしている。
しかもなんだっけ………勝算がないんだっけ?…………バッカじゃねーの?
「飯田君…………あなたの心は今複雑すぎてまるでピカソのゲルニカを見ているようです」
染島さんが難しい顔で俺のことを心配してくれる。
「うーん………いまいちピンとこないですね」
壮絶なほどに複雑だということはわかった
「ちょっ、何すかこの空気は!?気合上げていかないと勝てるものも勝てないっすよ!?」
そして、黒垓君は立ち上がりみんなを鼓舞しようと大声を上げる。
「ワアーーーークロガイクンハポジティブダナーーー」
「やる気がなさすぎる!ほらーー頑張りましょうよ!こういうときに頑張ってこそ主人公というのは光り輝くんですよ!?」
「それはイリナの役目だ…………雷使えてキャラの濃さも俺なんかより5万倍濃いんだ…………そういうのはイリナに言ってくれ…………」
ダメだ…………全力で戦いたくない。命を無駄にしに行くようなものだ。
「俺なんか地面を芋虫みたく這いずり回っている方がお似合いなのさ………ははっ、あっはっはっはっ!」
宣言通り俺は地面にうつ伏せになりダラける。はぁーーーー幸せ。この、世界と1つになれたかのような一体感。いつまでもこうしていたい…………………
モコッ
ぐうたらしているとおれの目の前の土が盛り上がり、女の人の顔が現れる。
「………………どうも。」
「こ、こんにちは…………………」
挨拶を交えると、その人は元来た道に引き返そ……………
「って、ちょっと待てーい!!」
ガッ!
女の人の頭を掴む!
「きゃああああ!!誰か助けてー!痴漢!この人痴漢です!私の頭を鷲掴みにしてきます!」
「そんな痴漢聞いたことねーわ!なんだ貴方は、敵か!?敵なのか!?それならおれの獰猛な仲間たちに餌として放つぞ!」
「ヒイイィィいい!!お止めください!私のようなか弱き人間をいたぶってもなにも出ませんよ!血しか出ませんよ!」
終始泣きながら懇願する女性…………敵じゃなさそうだな
「あ、あのーー手を離していただけないですか?そんなにジロジロ見られたら恥ずかしくて燃えそうです」
んーーーこれといった特徴はないよな……………まぁ顔だけだからなんとも言えないが可愛いの部類には入るレベルではなかろうか?イリナと染島さんに聞いてもそう返してくるに違いない………………しっかしどういうことだ?地面を掘る能力なのか?これまたどうしようもない能力だなー
「あのーーいい加減手を離していただけませんか?私、地面の方が落ち着くんですよ。早く戻らせてください」
おれの手を引き離そうとするが全然力が入っていない。むーーー魔族だな?なるほどねーーーそういう能力もあるのかーー実に興味深…………
「いい加減離してあげなよ」
ガツン!
後ろからイリナに殴られる。
「いったーー!出来た!今ので絶対たんこぶ出来た!イリナー!よくもやっ………」
「おっほ!?なんと可愛らしい娘さんですかねぇ!?なんだなんだむさ苦しいぐうたら野郎だけかと思っていましたが、こんな娘がいるなら早く出してくださいよー。このいけず!焦らし虫!」
さっきまで逃げようとしていた女性はイリナを視認した瞬間身体を地面から出しイリナにベタベタと触り始める。
なにこの変異………………
いや、それよりもこの女の人はコスプレが趣味なのか?茶色い服を着ているぞ。これじゃあまるでモグラじゃないか
「ひい!?ミフィー君助けて!!なんかこの人すごく怖いんだけど!!」
「ムッハァー!たまりませんなぁたまりませんなぁ!女子高生の肌というのはやはり張りが違いますなー!あーん、一生触っていたい!ずっと頬ずりしていたい!出来るのならばあんなことやこんなことまで…………」
「ひい!?」
イリナは女の人の言葉に怯える
「したいですねー!」
がば!
モグラの格好をした女の人は目を輝かせながらイリナに飛びつく!
「ちょっと上まで飛んでいようか」
ポーン!
モグラの女性の真下から水が出現し、そのまま高く水は吹き上がりモグラの女の人は空高くまで跳ね上がる。
「ひゃああぁぁああ!?!?」
バタつきながら落ちくる女の人…………受け止めてあげるべきだろうか、それとも顔面から地面に落ちるのをただ傍観するべきだろうか?
正直この女の人は今後脅威となるだろう。戦闘の方ではなく女性陣の恐怖となるだろう。
…………………まぁ、それを見たいという気持ちが実は少しあっちゃったりするので助けてあげよう
水で渦状の滑り台を作り、女の人を滑らせる
「きゃあぁぁあキャァァアア!!!!」
女の人は尚も叫び続ける。絶叫系のアトラクションは苦手なのかな?俺と気が合いそうだ。
しかしこのままじゃあ速度を殺しきれないな……………仕方ない。俺が身体を張って受け止めるか
しゃああああぁぁあ!!!
うおおお!!なんという速度だ!これを俺は受け止めれるのか!?受け止められちゃうのか!?……………やっぱり辞めようかな……………いや、やらなくては!俺が見たいもののために頑張らなくては!
女の人はありえない速度で俺の元まで滑り落ちてくる!
うおおおぉぉおおお!!耐えろ俺!!!
ドン!!!!
時速何十キロの女の人の体が俺の胴体に体当たりをする!
オボッ…………なんか飛び出そう……………
そして、威力を殺しきれなかった俺はそのまま十何メートルか一緒に飛ばされてしまった。
俺は地面に大の字となって寝転がっていた。俺の上にはモグラの服を着た女の人がうつ伏せとなってノビている………………俺の周りはなんでいつもこう、個性が強すぎるんだよ。
俺の真上にある日差しが眩しすぎるから、俺は目を閉じた。そうするとなんだか意識が朦朧として…………そのまま俺は眠りについた
カイが死んだあの事件とそれ以降をイリナの視点で追っていた作品。全4話約94000文字→https://ncode.syosetu.com/n6173dd/




