ほど走る火花 繰り返される革命
「いやーーテスト終わったねぇ〜」
モンスターを叩き斬りながらイリナは今日終わったテストのことについて笑顔で語っている
ただいま俺たちは洞窟を黙々と進んいる。無限にモンスターが出てくるけれど、そこは協力して地道に倒している…………まぁ、俺と染島さんは戦力外通告をうけたのでのんびりと歩いているんですけどね、情けないことに。
いや、よく考えると情けなくないな。人間には向き不向きっていうやつがあるんだ。戦闘は俺の歓迎するところではない。俺知将だから、猛将じゃありませんから
「テストっすか?奇遇ですねぇー。オラも今日終わったんですよ」
「へーー。黒垓君も今日終わったのか!どうだったんだ?結果はさぁ」
戦っている最中の黒垓君の肩に手を置き言い迫る
「ちょっ………戦ってるんですから邪魔しないで欲しいっす!運悪く体に剣が十数本刺さっても知らないっすよ!?」
俺の手を払いながらモンスターを切り倒す
「それって運悪くなのか?故意で俺を殺しにかかってないか?」
一本ならまだ許せるが十数本はちょっと無理だろ
「いや、運悪くですよ。オラが本気出したらここら辺一帯に隙間なく剣が突き刺さりますからね」
「………………じゃあ本気を出さないでくれ。出したら確実に体がズタボロになりそうだ」
隙間なくって…………運が良くても十数本ささるっつうの。
なんか、俺の周りって本気出したら血の雨になるやつ多いな………………
「テストですかぁ〜羨ましいですね〜。私はもう大学生ですからね。レポートやら何やらの提出で大忙しですよ」
「え!?…………染島さんって大学生だったんですか!?てっきりもう社会人だと思ってました」
しかもこんな時間に俺たちといられるってことは……………その、なんだ。失礼だとは思っていたけれど仕事してないのかなーとかね、思ってました
「いやーよく言われるんですよー。何故かは分からないですが少し大人っぽく見えるらしくて…………何故でしょうか?」
………………そ、それは胸が大きいからじゃ……………ウボゴォ!
イリナに腹を蹴飛ばされ、壁に激突する
「……………次胸美の胸を凝視してたら女にするから」
イリナはモンスターを16分割しながら俺に最終警告を言ってくる
もちろん笑顔である
「いっててて…………女にするってあれか?女性ホルモンを大量注入するとかそういうことなのか?」
壁にめり込んだ体を必死に動かし、壁から離れようとするが…………ダメだ。全然抜けない。スッポリとハマってしまった
「え?いや、そんな大層なものは必要ないよ。なんなら今からやってもいいけど?」
イリナの光剣が鎌へと姿を変える。あれ?光剣っていろんな形に変わるの?初めて知ったんだけど
「いや、それはオーバーキルだって!俺のになんの恨みがあるんだよ!!」
クッソォオ!全然抜けねぇ!!こんなところで本当のミフィーちゃんになりたくねぇ!いや、こんなところでじゃなくて一生なりたくねぇ!
「君のには全然恨みはないよ。でもまぁなくなればその性欲もなくなるんじゃないかなっと思ったんだよ」
目をぎらつかせ、鎌をぎらつかせ、口元をぎらつかせながらこちらへと歩み寄ってくるイリナ…………その姿はまさに死神!俺の男子生命を断ち切る悪魔だ!
「性欲どころか生欲すらもなくなっちまうだろうが!」
生きる希望がなくなるに等しい。希望?間違えた。生きてくための血がなくなるだよ。出血多量で死んじゃうぜ!
「ちょっと、誰か助けて!全然抜けないんだけど…………そ、染島さん!お願いしますから抜くのを手伝ってください!」
「ヌくお手伝い?こんなところでですか?……………わ、分かりました。やりましょう!」
頬を赤らめながら鎧を脱いでいく染島さん
「そういう意味で言ったんじゃねえ!なんでそっちだと思ったんですか!?どう考えても俺をこの壁から引っこぬくことでしょうが!」
きゃああああ!!イリナの方から凄まじい殺気が!うおおおお!!逃げてぇえええ!!!
「く、黒垓君!黒垓君でいいから俺を抜いてくれ!頼むから!」
黒垓君はモンスターと戦ってるから声をかけづらかったけれど…………背に腹は変えられない!今を生き抜くためにはこの方法しかないんだ!
「俺でヌいてくれ?………ご、ごめんなさい。生憎オラにはそういう趣味はないっす」
一度振り向いた顔を再度敵へと向け直す
「なんでだよ!なんで2人ともそういう思考なんだよ!意味が分からん!何故そういう展開にもってこうとする!?」
ほらぁああああ!!イリナの殺気がすごいんだけど!!イリナの方から凄まじいほどの血が吹き出てるんですけど!!モンスターをどんな殺し方してんだよ!!あれか?鎌で輪切りにでもしてるのか!?
ブチン!この光景を見て、我慢、もしくは忍耐力の限界に達したのだろうか?俺の何かが勢い良く切れた
「だーっくそぉお!!なんで俺の周りはいつもいつも変な奴らばっかりなんだよ!!」
拳を思いっきり壁に叩きつける!
ビキビキビキ!
その周りの壁が吹き飛んでいく!!そのおかげで俺は壁から解放された
「いったあぁぁああ!!絶対骨折れた!手のこのなんていうのかな!掴みやすいフライドチキンみたいな部分ていうか親指の下のふくらんでる部分が折れた!」
ほらああ!!青くなっちゃってるじゃん!これ絶対折れたわぁぁぁ!!ポッキリ逝っちゃってるよ絶対ぃぃ!!
「いや、もう心も折れた!手だけじゃない、心も折れた!もう暴竜とかどうでもいい!家に帰りたい!家に帰ってゆき○たんを眺めていたい!」
コーヒー牛乳を飲みながらテレビを見ていたい!
「あーーーゆき○たんに囲まれて寝てたい!戦い?知らねーよんなもん!こんなハチャメチャなパーティーで戦えるか!抜くをそっちの意味で捉える奴らとなんていい連携取れねーよ!無理無理!いい仲間だとか昨日思ってたけどやっぱあれなし!なかったことにする!もう知らん!もう俺は知らん!知らんと言ったら知らないんだ!!」
「だまらっしゃい」
ガツン!
ギャグ漫画みたくこめかみの血管が浮きでたイリナのパンチが俺の頭に炸裂し、俺はそのまま気絶した
「さ、先ほどは失礼いたしました…………」
数十分後、意識を回復して俺は土下座をしている。なんか、気絶しすぎじゃない?なにこのイリナと俺との実力差は
「本当すいませんでした。なんかもう取り乱しちゃいました、はい。」
額を地面に擦り付ける。これぞ誠意の表れだ
「たっく本当さ。なに幼稚なキレ方してんのさ。あれだったらまだ小5の方がマシなキレ方するよ?」
壁に剣でおにぎりを描いているイリナ……………小5の方がもうちょっとマシな題材を選ぶぞ
「いや、あれは私も悪かったです。そうですよね…………飯田君はそんなトークしないですもんね。私の友達に口を開けばエロガッパ、閉じれば韓国のイケメン、トムヤムクン!みたいな人がいて、その人と間違えてしまいました」
「……………トムヤムクンって、料理だったような気がします」
どういうのかは覚えてないけど、辛そうだ
「あれ?そうでしたっけ…………それじゃあチェプチェ?」
「……………それも料理…………………」
なんだっけ?全然覚えてないけど春雨入ってそう
「違うでしょ?韓国のイケメンって言ったらあれだよ」
おっと!ここでイリナが乱入だ!一体どんなボケをかましてくれるのか!?
「ペヨンジュンだよ」
「お前は何歳だよ!アラサーか?それともアラフォーなのか!?」
ペヨンジュンって……………いつの人間だよ!最近全然見ないだろうが!
「なーに言ってるんすか。ペヨンジュンなどもうすでに昔の人間っすよ…………今はあれですよ。なんたらパン王キムタックですよ」
「なんたらつけてる時点でもうアウトだよ!全然印象ないじゃないか!それはもうイケメンとかそういうのだと言えないから!つうかキムタックって…………なんかもう色々とかすってるよ!!」
「ちなみに最高視聴率50何%っす」
「想像よりも高い!高いってか高すぎる!つうかそこも曖昧なんだな!そんなに高かったら覚えられるだろ!」
予想の斜め50°高い!そんなに面白いのかパン王は!
「……………んで、結局は韓国イケメンって誰なんですか?パン王じゃないですよね?」
「うーんと……………誰でしたっけ…………………サムゲタン?」
「それも料理!!!」
ガン!
頭を地面に叩きつける。ちょっと反応がオーバーだったかな?まぁ、いいんだ。ノンフィクションでギャグ漫画のようにするならこれぐらいのことを今のうちにしなくては!
「まぁまぁ、そう興奮しないでミフィー君。苦しゅうないから表をあげい」
イリナは俺の肩に手をポンとのっけて俺を労ってくれる…………労ってくれてるのか?
「あ、ああ……………ありがとう。……………ここどこ?」
顔を上げると、辺り一面が人工物のような真っ黒な壁で囲まれていた………………つまり俺たちは真っ黒い部屋にいるってことか
「ん?ここは暴竜の前に倒さなきゃいけない中ボス君の前に休憩させてくれる心休まる場所だよ」
「いまいちよくわからん」
「FFで言えばダンジョンのセーブポイント」
「あぁ、よくわかった」
なるほどね。ここでテントかコテージを張ると………………あれ?そういえば手が全然痛くないな。まさか折れてない?ただの内出血?
「………………え?ちょっと待ってくれよ。中ボス?これから?」
「これから」
俺の言葉に3人ともが頷く
「ちょっと待ってくれよぉー!道中ろくな戦闘してないじゃん!つうか俺気絶してたやーん!こんな状態で中ボスだって言われてもいまいちピンとこないよー!」
つうかろくな小説書けねーよ!雑談がメインになっちまう!
「ふっふっふっ…………そう言うと思っていたよ………………だから私は今回特別にこんな企画を用意してたんだ」
ごそごそとバッグから何かを取り出そうとするイリナ………………なんだろう。嫌な予感しかしない
「今回はなんと!中ボスとの戦闘をはっきりと感じていただくためにミフィー君対中ボス。一対一のデスマッチを用意したんだよ!」
ガキン!
黒色の人工物のような床に剣が突き刺さる!
……………は?これで戦えってか?
「いや、ちょっとそういう軽いノリで中ボスと戦うのは良くないと思うな〜。DS版のルゲ○エみたいに痛い目見るかもしれないじゃん」
ジリっ……………
さっき周りを見渡している時に見つけた部屋の出口へと後ずさる
「大丈夫。ケ○ルガを覚えてたらすぐだから」
ニヤニヤしながらこちらへと近づいてくるイリナ。
「俺のレベルそんなに高くないから!15ぐらいだから!ケ○ルダすらも覚えてないから!」
くっそーー!なんてこった!こういうのは身の丈にあった相手を選ぶべきだろ!なんでこんなに色々なステップをすっ飛ばすかな!?イリナさん、スパルタすぎやしませんか!?
初めて会った時もそうだ。俺に水を出す力がなかったらどうしてたんだよ…………運良く水の魔力を授かってたからいいものの……………
なおもイリナは手をワキワキさせながらこちらへと近づいてくる。
ダメだ!これ以上こいつを近寄らせたら確実に捕まってしまう!中ボスとのデスマッチとか今の俺には無理すぎるだろ!
…………つまり!俺は今から全力でこいつから逃げる!逃げなくちゃならない!
くるっと後ろを振り返り、扉に向かって走る!
「おっとー………いけませんねぇ〜ししょおぉーー。こういう所で師匠たるゆえんをみせていただかないとぉぉ」
「やっぱりサムゲタンだったような………………いや、エースコックのスープ春雨?」
俺の行く手を阻むかのように黒垓君と染島さんが俺の目の前に立ちはだかる。
………………なんか染島さんだけセリフがおかしい気がする……ってかまだあれ考えてたの!?どんだけ気になってるんだよ!てかもはや韓国のイケメンを考える気ないだろ!
「ぐっ…………まさか君達がイリナに協力的だったとは……………大きな誤算だったぜ」
何故か俺のことを師匠と慕ってくれているからてっきり俺が逃げるのを手伝ってくれると思ったのに…………やはり人生そこまで甘くないな
「さあさあさあ、観念するんだねぇ〜ミフィーくぅん。中ボスさんに死ぬ気で突撃しないと殺されちゃうよぉ〜」
くそ!なんかすげー腹立つなその口調!強いからっていい気になりやがって!弱者の気持ちをもっと考えなさいよ!そうやって考えないから世界問題となっている経済格差は埋まらなくなっていくんだ!
「……………仕方ない。腹をくくろう。その剣借りるぞ」
床に突き刺さっている剣を引き抜く
「てかこの剣はなんだ?なんか装飾が凝ってるなー」
刀身と柄の接合部に宝石が埋まっている…………なんかすごく高そう
「実はこれ私の武器コレクションのうちのひとつでさ。魔族からかっぱらったものなんだよ」
………………普通のコレクターと集め方が違う。てかそろそろこいつを務所にぶち込んだほうがいいんじゃないのか?そうすれば世界は平和になるような気がする
「どうやらこの剣は持ったものの魔力を増強させる能力があるらしいんだよ………………どう?なんか水を強く出せるような気がしてきたりとかしない?」
なに?確かにそう言われればこの剣を持ってからというものの冷や汗が半端じゃない。てっきりこれは強敵と戦うことに対して緊張してるからだと思っていたけれど…………水の魔力が増強されて体から滲み出てきてたのか。
「こ、こいつはきっといけるんじゃないのか?ちょっと水だしてみるわ」
うおりゃ!
ブシャァぁぁあああ!!
……………いつもと変わらない勢い。やっぱりただの冷や汗だったのか。どういうことだ?俺には合わないのか?
「あっ、そうそう。確か使用者が弱すぎると効果が発揮されないらしいよ」
「……………………ちょっと手頃な木とロープを探してくるわ」
「はやまるな!今死んだ所で道は開かれないって!後悔の念しか生まれないって!」
俺を帰らせないためかコブラツイストを決めながら説得してくるイリナ。
決まってる!完璧に決まってるから!折れる折れる!
「あっそうそう。私の剣も実はそれと同じ種類なんですよ」
俺が関節を的確に決められている傍目で染島さんが剣を引き抜く。
確かに同じ装飾が施されている
「ですがそれとは違うところがあってですね。この剣は魔族のみにしか使えないんですよ」
シュッ!
染島さんが剣を振るうと剣が空を切り裂く音が直接頭に入ってくる。こいつはやかましいな
「しかもこの剣。自分の魔力をまとわせることができるんです。主な用途は剣と剣がぶつかった時の音を直接相手の頭に響き渡らせるのと、剣を通じて相手の思考を読むことです」
そう言うと俺が持っている剣に染島さんは自分の剣を叩きつける
キィーーンン!!という甲高い音が脳に直接響き渡る!
ぐおっ!?やばい!染島さんの能力を完璧に舐めきってた!こんなの終始聞かされてたら戦闘なんて満足にできないぞ!!テレパシー侮りがたし!
「け、結構便利な剣ですね…………頭が割れそうですよ」
「それがそこまで便利な能力じゃないんですよね。まずモンスター相手には全然効かないですし、魔力の発動タイミングを間違えたりなんかしたら筋肉を断ち切る音とか骨を叩き割る音とかが鮮明に脳みそに送られてくるんですよ。騒音が私にダイレクトアタックですよ」
…………………それは気持ち悪い
「あ、そうそう!オラも実は同じ剣を持ってるんすよ!」
「黒垓君も持ってるの!?何!?その剣を手に入れるのってまさか簡単!?」
まさか弱すぎる男に安物を使わせて中ボスと戦わせようってか!?どういう神経してんだよ!
「どうなの?私は敵からかっぱらってきたからよくわからないんだけど」
「そうですねー。私も隙をついて人から盗んできましたからよく分からないですねー」
「オラは買うのがめんどくさかったので武器屋の道具を全て、能力を使って万引きしてきましたから分からないっす」
くそっ…………この盗賊共め。人が真面目に汗水たらして作ったものを一体なんだと思っているんだ
「……………なんかもうね。君達に道具のことについて質問するのをやめるよ。明かされるべきではない犯罪経歴がどんどん出てくるんだもん」
なんで全員アビリティーの盗むを覚えてるんだよ。カウンターとか覚えろよ
「まぁ、雑談も終わったことだしそろそろ行こうよ。」
イリナは中ボスがいる部屋へと向かい始める
「え?いや、ちょっと待てよ。この最弱な俺になんて無茶をさせようとしてるんだよ。どう考えても勝てないだろ」
弱すぎると使えない武器が使えないんだぞ?それってつまり俺って弱すぎるってことじゃないか。そんなやつに伝説の剣を守護する中ボスを任せるなんてどうかしてるんじゃないのか?
「そこなんだけどさ。君さ、私と同じぐらいに速く動けたよね?まぁ私の方が速いんだけどさ」
「黒垓君の時の?ああそうだな。腕がバキボキになって骨が突き出てたよな」
思い出しただけで右手がゾワッとする!あーやだ!かゆい!かきたい!
「しかしあれは実に疑問ですよね。まるで能力に体が置いてけぼりくらってるみたいで、あんなの見たことないっすよ」
「そう。何故かは分からないけれど能力はあるのに体が出来上がっていない。普通なら何もせずにその力にふさわしい体を当たり前のように持っているはずなのに、ミフィー君はそんな都合のよい体を全然持っていなかった……………思うにまだ能力がちゃんと発揮されてないんじゃないかな?異常なことに。水の時もそうだよ。高威力で放出もできないなんて通常ありえないんだからさ」
「…………………ちょっと待ってくれ。まさかイリナさん。俺には第二類勇者の力は備わっているけど完璧に発揮されてないと言いたいのかな?」
「うん。そうだよ」
おいおいおいおいオーーイ!!何言ってんだかこのきめ細やかな長髪ブロンドは……………どう頑張ってでもカイと俺を結びつけたいんだな。
はぁ………………カイはイリナにどんだけ想われてるんだよ。聞いてるだけで赤面しちゃうよ
「…………………いやさ。それじゃあ俺の魔族の力はどう説明するのさ。魔剣を結構扱えちゃうんだぜ?」
「そこはまぁ、まだその力に目覚めてないとか?」
…………………矛盾していることに気づいてないのか?
「…………………なるほど、分かった。それで…………………え?ちょっと、まさかとは思うんだけどさ。今回の戦いで無理させて俺の力を引き出させようとかそういう魂胆じゃないよね?」
コクリと満面の笑みで頷くイリナ。
俺もそれを見ると満面の笑みになってしまう。もう、絶望が極限まで行くと笑っちまうんだな
「…………………………………」
「…………………………………」
俺とイリナの間に長い沈黙が訪れる。それはまるで嵐の前の静けさとでもいいますか、これから巻き起こる動乱を予期してるかのように俺たちに語ってくるのであります。
つまり何を言いたいのかというと全力で逃げ出したい。
とまぁそんなこんなで中ボスの部屋につながる扉の前まで来ちゃいましたよ。あーーやだ。こんなに乗り気じゃない中ボス戦は初めてだ。ド○クエとかFFとかロッ○マンの時とかはワクワクしながら向かったけれど今回のはちょっと………………てかイリナはスパルタ過ぎるんだよ。バスケットボールの強豪校の練習並みにスパルタだよ
「因みに今回の相手は九尾っていうやつだよ」
九尾…………だって?そんなのラスボスとして出てきてもおかしくはないだろ。てか隠しボスでもおかしくはないぞ。尾○玉とかだされたら俺には成す術がない
「ナ○トから離れてよね。妖怪の九尾だよ。狐火を操るやつ」
妖怪………………まさかこいつも西洋にかぶれてるのか?狐火じゃなくて油ランプみたいな感じになってたりとか
あーーもう分からん!やけくそだ!適当に突っ込んでやる!
ガチャリと扉を開けて中を確認すると西洋の鎧に身を包み、毛皮のマントをつけた騎士が立っていた
バターン!
扉を閉めて元の部屋に戻ってくる
えーっと、近くにいるのは………お、黒垓君か
「…………………もう一回言ってくれ。九尾だっけ中にいるの?」
「そうらしいっすね」
「九尾って二足歩行だっけ?」
「当たり前じゃないっすかー」
「鎧ってきてる?」
「勿論!」
「剣術の達人?」
「九尾といったら刀っすよ!」
「……………………黒垓君、誰かに洗脳されてるの?」
九尾って9本の尻尾を持った狐だよね?なんか鎧着た人間みたいなのがいたんだけれど……………やばい、自分の知識が不安になってきた
「いやーー、あれ九尾らしいんだよ。ほら、なんか毛皮ついてたでしょ?」
「毛皮はついてたけどマントだったから!マントに毛皮ついてたから!どう考えても九尾はあいつに狩られたでしょ!!」
ハンティングされて剥ぎ取られたに違いない!そして狐の毛をふんだんに使ったマントにされたのだろう…………………
「まぁあいつが九尾だろうとなかろうとどうでもいいんだよ。肝心なのはミフィー君があいつを倒さなきゃいけないってことなんだから」
………………人間の形よりも動物の方がまだ勝てるような感じがするんだよなぁ……………
「………………俺じゃないとダメ?」
「師匠じゃないとダメですね」
……………………腹をくくろうか自分よ
「仕方ない………………ちょっと頑張ってみましょうか」
扉を開き、中へと入る
中には大剣を携え、毛皮のマントをつけた鎧騎士が立っている。ずっと天井を見て、何を考えているのだろうか?顔が兜によって隠されているため表情がわからない
大剣だからそこまで速くはないはずだ。うざったいほどちょこまかと動き続ければ勝機はあるだろ
俺が作戦を練っていると九尾はこちらへと顔を向ける
ギシッギシッ……………
九尾はその名には似合わない音を出しながら体をこちらへと向ける
やっぱり遅いな……………これならギリギリ耐えれる速さで動き続ければなんとか………………
タン!
九尾は一歩を踏み込むと一瞬で大剣の間合いにまで到達した
……………なんとかなるわけがないんだよ。そうさ、中ボスだぜ?7大聖剣を守る中ボスだぜ?俺ごときでなんとかなったらその中ボスは解雇されるべきだ。リク○ートで自分に合った仕事を探してこいって話よ
ガッキイィィイインンン!!!
薙ぎ払われた大剣を剣で受け止めるが、威力が高すぎてそのまま吹き飛ばされる!
ガッガッガッッ!ゴロゴロゴロゴロダン!
吹き飛ばされ、地面を転がり続け勢いが弱まったところで横へと猛ダッシュで移動する!
ほらもぉ、俺のレベルに合ってないって!速くて一発が重すぎんだよ!レベル1でレベル50のサ○チョに挑んでいる気分だ!先制すらもとられて防御しても殺されるっていうガチでどうしようもない状態!
あまりにもどうしようもない状態だったのでイリナ達の方をチラッと見ると3人で大富豪をしていた
「君たち何やってんの!?なんでこんな状態で大富豪できるの!?っぐ!?」
ガキィィン!!
また九尾の一撃で吹き飛ばされる!!
「分かってないなーミフィー君。こういう時だからこそだよ」
3を出すイリナ。ま、まぁ小手調みたいなね?俺も最初によく3を出すよ
「大富豪というのは本来は遊びではなく賭け事としてやっていたんすよ?つまり、極度の緊張状態で大富豪をやっていたんす」
10を出す黒垓君。こいつ手札強いな?どんだけ飛ばすんだよ
「そして今この状況……………気を抜けばいつ殺されるかもわからないこの状況はまさに大富豪にぴったりじゃないですか。……………しかしながら私はモンスターの気配も敏感に感じ取れるので緊張というほどの緊張ではないんですけどね」
11を出す染島さん。イレブンバックってやつね…………いや、それ言っちゃイリナ達が築き上げたものが一瞬で崩れちゃうでしょ
「まぁつまり何を言いたいのかというと大富豪を楽しんでいるから1人で頑張ってってことさ」
3を出し、きるイリナ。また3かよ!手札弱いな!
「いや、そもそもだな!っぐお!!……………………大富豪は4人でやるものだろ!」
会話中に敵に攻撃されるとイラっとくるな。舌噛んだらどうすんだよ、責任とってくれるのか?
「はぁーー……………固定観念に縛られた懐古がここにいるよ………………」
9で革命を起こすイリナ。な!?なんだって!?革命だと!?手札弱い時に革命とは…………お主やりよるな?
「今やオセロを3人でやる時代なんすよ?貞操観念など崩壊した、まるで世紀末のような時代なんすよ?だったら大富豪の一つや二つ変わっていてもおかしくはないじゃないっすかね」
7を4枚出して革命をする黒垓君。革命返し!?今までそんなの見たことないんだけど!!
「財閥解体が行われたのが戦後間もなく…………そして、外国にある大富豪によく似た[闘地主]というものがあるのですが、それはどうやら1人親を決めて、その方を他の全員が倒すというものだそうです。それにならって今の日本を見てください。財閥解体があってからというもの、ある程度のし上がっていく環境が整ったわけです。ライバルはできるだけ削って減らすのが当たり前なのです。ですからこの[闘地主]に酷似した大富豪というものにおいても、ライバルを削るというのは当然のことではないでしょうか?」
2を4枚出して革命返しを返す染島さん。
重い!重いです言ってることが!それと革命返し返しって…………生きてる間に見れるとは思っていなかった!
「つまり何を言いたいのかという参加したかったらそいつを倒してからにしてっていうことさ」
4を4枚出して革命返し返しを返すイリナ………………開いた口が塞がらないとはこのことだ。なんかレベルが高い大富豪をしてるなー
ガキン!!
会話中、九尾は無神経にも俺をずっと攻撃してくる。……………はぁ、空気の読めない奴め
「つうか喋ってる時に攻撃してきたら………………」
大剣で薙ぎ払われた瞬間に俺は目の前に分厚い水の壁を作り出す。
目では追えるんだけど体が間に合わないのよ。というわけで水でほんの少しでも大剣の動きを遅くする!あとついでに水を大剣の側面に当てて少し軌道をずらす!
「舌噛むでしょうが!!」
ガキィン!!!
下から上へと大剣を切り上げ、軌道をずらす!あとは突っ込んで攻撃をしてみればなんとかなるだろ!なんとかならなかったらその時に考えればいいんだし!
切り上げた直後に俺は相手の懐に入ろうと動き出す。その時だった
ぽっと俺の目の前に赤色の玉が一つ出てきた。と思ったらたちまち俺の周りに赤色の玉が無数に出現する
あっ……………これはやばいんじゃ………………
危機を感じ水を体に纏わせた瞬間、周りにある赤色の玉は膨張し一つが爆発した。それを合図に周りの赤い玉も連鎖的に巨大な爆発を引き起こす!
ボウアアァァア!!
炎が急速に辺りを飲み込み、焼き尽くそうと暴れ狂う。炎の大爆発のせいか床が少し溶けている
「あっちちちち!!服が!服に火がついてしまった!」
くそ!あれが狐火なのか?あの炎、俺の水を貫いてきやがった!俺の水じゃああいつに対抗できないってのかよ!
「だがしかし!ここで頑張らなければ死んでしまう!」
どうする?無理をするか?……………いや、これから暴竜との戦いが控えているんだ。こんなところで無理をしていたら先が思いやられる。最悪でも今の実力、できることすべてをぶつけて倒すこと。そして、最善はここで俺のレベルアップをしてかつ倒すことだ!
ブアァァアああ!!
四方八方から水を出し、九尾を取り囲む
窒息させて殺すなんてことが出来るのかどうかは全然わからない。だったらやっぱり隙をついて斬りつけるのが最も安定しているのだろう。まぁ、もし窒息死するのなら水で囲むことも狙うってことでね
水が九尾に襲いかかる!
そして、九尾は無数の水のを束を軽快な身のこなしで斬りつけ弾きとばし吹き飛ばす!
ギャリン!
俺の剣が九尾の鎧を捉える。
ダメだ、ほんの少し鎧に亀裂が入っただけか……………いや、ここでめげちゃいけない。一撃で亀裂が入るってことは何発か加えれば砕けるということだ。なんだよ、とても良いじゃないか。俺は最初100発ぐらいだと思っていたから、それに比べたら良すぎるぐらいだ
ブシュッ…………
攻撃をしたは良いものの、相手はノーダメージだったのですぐさま斬りつけられる
ほんの少しお腹を切られたか……………ぐっ、少し無理をしちまったな。足が少し痛む
……………こう、攻撃されたというのに仲間から何も心配されないっていうのは身に堪える。
信用の表れなのか、はたまた無関心なのか………………虚しいなぁ
剣の周りを水がまとわりついていく
別にこれで攻撃力が上がるってわけじゃないけど、見た目がかっこいいからやってみた。
うん、やっぱり良いねぇ。こういうのがあるからバトルシーンは好きなんだ
グググッ…………メキィッッ!
九尾へと突撃する
カンっ…………カンっ………………カンンっっ!!
一撃ごとに吹き飛ばされるがすぐさま体勢を立て直し、再度九尾へと突撃する!
何度吹き飛ばされようが何度でも斬りかかる!
ギャリン!!!
何度目かの突撃で、ようやくヒビが入ったところに攻撃をする事が出来た
あと1発!あと1発で鎧に穴があく!
「染島さん!ちょっと剣を貸してくれないですか!?」
「………………あと1分待って下さい。次に出すカードを考えていますので」
「まだ大富豪やってるんですか!?飽きないんですか!?」
「何言ってるんですか。これまだ1回目ですよ」
「長えぇぇぇえええ!!!!さすがに長すぎるでしょ!!………………じゃなくて!剣を!今すぐに剣を貸してください!急いでるんです!お願いしますから!」
「………………分かりました。受け取ってください」
そう言うと染島さんは剥き身の剣を投げてよこす!
うおおぉお!!馬鹿やろぉぉ!確かに急いでるって言ったけど、鞘から出す手間を惜しむ程ではない!
無理やり体をひねり、剣をかわしそして柄の部分を掴る
二刀流……………一度やってみたかったんだよな。左手全然使えないけど、それはもう囮ということで
「それじゃあラスト。ゴリ押しと行きましょう…………」
走り出そうとした瞬間、相手の方が先に動き出していたようで俺の前へとたどり着く
「んなっ……………」
ガガガがガガガががが!!
今までの力任せの攻撃ではなく、威力が小さいながらも連続攻撃を仕掛けてくる
ぐぅっ…………ダメだ!全然手を出せそうにない!てか大剣でそんなことやっちゃっていいの!?
ああダメだダメだ!耐えられない!
ダダダダだたんンンンン!!!!
大剣による連続攻撃に耐えれなくなった俺は体勢を崩す。そして、それを九尾は見逃さず、上から叩きつけるような攻撃を高威力ながら目にも留まらぬ早業で繰り出す!しかも狐火までもが発動する!その攻撃で床は吹き飛び、辺りに黒色の欠片が飛び散る。砂塵が巻き起こり九尾の周りを埋め尽くす。
「………………………」
ギシィっ
九尾はイリナ達の方を振り向く
「あれ?ミフィー君やられちゃったの?……………それじゃあ早めに倒して城のベットに寝かせなきゃ」
手札のカードを床に置き、重い腰をあげるイリナ
「ああ、大丈夫ですよ。彼、[俺のことは心配するな]って言ってますから。だから大富豪を続けましょう」
「か、彼?…………そ、そんなこと言ったってあそこまでボロクソにやられたら………」
ズボゴォオオン!!
九尾の目の前の床が吹き飛ぶ!
パリん!
そして、剣が九尾の鎧に突き刺さり大きめの穴があき、そのまま九尾は吹き飛び壁に激突する
「やっぱり無理はするもんだな!左手が痛すぎて発狂しそうだ!」
左手犠牲にして地面を掘ったのはいいけど……………痛い!中途半端に無理をしたおかげで動かせるけど前回のとは比べ物にならないほどに痛い!やっぱり無理は中途半端じゃなくてやり切るに限るな!
「おいイリナ!お前は俺の心配なんてせずに大富豪でもしてろ!そっちの方が有意義だ!」
俺なんかを助けるよりも大富豪の経験を積む方が今後の糧になる。
ギシギシギシ……………
倒れていた九尾は起き上がり、何故かはわからないが大剣の二刀流になっていた
「くそっ………俺のパクリやがって!」
九尾に向かって駆け出す!
カンカンカンカンカン!!!
右手一本で大剣二本をさばききる
ブァアアア!!
そして水を床一面に満たし、相手の動くスピードを封じる
俺と九尾が激しく剣を打ち付けあうと、その動きに合わせて水が辺りに散りばめられ、俺が下から上へと剣を振り上げると水はすくい上げられるかのように水の線が作り出される
ラチがあかない!このままじゃずっとやけくそに剣を振ってるだけだ!何か体勢を崩せる方法ないかな……………
ツルッ
一度後ろに退き、体勢を崩す方法を考えていると九尾の足がもつれたのか、はたまたスリップしたのかは分からないが転びそうになる
え!?な、なんか勝手に転びそうになってるんだけど!
「う………うおおおおおおお!!!」
このチャンスを逃しちゃいけない!全力であの穴に叩き込まなくては!
剣を前に構え、鎧の穴めがけて突撃する!
あと1メートル!あと1メートル行けばこの剣の間合いだ!勝てる!俺も頑張れば勝てるんだな!
ポッポポポポポポポポ!!!!
勝利を確信した瞬間。俺と剣の切っ先の間を始めに巨大な無数の赤色の玉が俺を囲むようにして現れる
き、狐火……………なるほど。これはやられたな。こんな所に狐火があったら剣で切れないし俺の水の威力じゃ打ち消すこともできない。[相手が勝利を確信した時が最も油断する時]…………相手も実践してくるとはやってくれるぜ。
俺の感覚がまるでスローモーションかのように今の現状がありありと俺の目に映る
ああ、ほら。赤色の玉がもうそろそろ破裂しそうだ。あと一歩かな?あと一歩踏み出したら爆発するような気がする。
俺の命は風前の灯…………いや、長さ1ミリの導火線の大砲が目の前にある気分だ
ああ、無理。どうしようもない。火がついた瞬間終わりだよ。俺の体は跡形も無く吹き飛ぶに違いない。
いやーー本当やられた。何も言うことはない………………いや、最後に一言言わせて欲しい。なに、6文字で終わるような短い言葉だ
「冗談_____」
剣を左手に持ち替える
「じゃ________」
彼女ができるまで死ねないなんて安いことを言うつもりはない。一つの夢の為なら俺は幾らでも死んでやる。無限に殺されてでも果たしてやる。
だがそれは今じゃない。今死んだら目標も夢も果たせないで終わる。そんなこと俺は望んでいない
左手の剣が青白く光り出す。
「ねえ!!!!」
ダン!
カッ……ボゴオォォオンン!!!
俺が地面を踏みつけ右手を出すのと爆発が起きるのは同時だった
さっきの狐火とは比較にならないほどの大規模な爆発が発生する!……………が!
ギュオオオオオ!!!
その爆発を一本の水の柱が貫く!
そして、それは九尾へと向かい、巻き込み、九尾もろとも壁へと激突する
サササン!
俺を取り囲む爆発に青色の円が描かれ爆発が切られる
そこから服が焼けただれ、火傷をした俺が現れる。なに、少し火傷をしただけだ。水で冷やせばなんとかなる
「……………それじゃあ行こうか」
タタタタタタン!
床から起き上がろうとしている九尾へと走り寄る。
あれ?なんか体が軽いな……………走るのが楽だ
走って向かっている途中に剣が床に転がっているのが見えた。
あーーー………………染島さんの剣か。使いたいんだけど左手が痛いからなぁ……………あっ、そうだ。
剣を通過した時に刀身をいい感じに踏みつけるとそれにより剣は浮き上がり俺の前へと飛んでくる。そしてこれまた丁度いい感じに俺の蹴りやすい場所にきてしまった
来てしまったのなら仕方がない。これは蹴ってあげないとこの剣に悪いよな
思いっきり振りかぶり、剣の柄の部分を蹴り抜く。
剣は九尾の所まで飛んで行くが
ガキン!
と上へと簡単に弾かれてしまった
このワンモーションが命取りってやつだな。
蹴った時の振りぬく力をそのまま利用して前へと走り出し、九尾との最後の剣戟が始まる。
青色の線が幾度にも描かれ、剣と剣がぶつかり合うと黄色の火花が飛び交う。九尾は俺の周りに幾重にも爆発を引き起こすが俺はそれを水で壁や束を作り出し爆発の威力を受け止め相殺させる。そして、おれは九尾がいる床一面を満たしている水を動かし束を作り出し攻撃する。後ろから、前から、右から下から上から……………他方向から攻撃をし続ける。だが九尾はそれを大剣で弾き飛ばし、体をひねり、時にはわざと食らいながら全てを対処しきっている。九尾の足元の水は跳ね飛び美しい景色を作り出す。
この黄色い火花と爆発と青色の軌跡が織りなす光景はまるで……………電撃殺虫機のようだ。表現が悪いけど本当にそんな感じなのだ。青白い光に誘われた蚊が罠にかかり黄色い火花に焼き尽くされる。焼かれるのが俺なのか九尾なのかは全然わからない。なぜなら俺と九尾の力は互角といってもいいぐらい釣り合っているからだ。攻撃の手はおれの方が多いのに互角なのだ。いったい俺と九尾とではどれほどの力の差があるのだろうか?それなのに挑んでいるとは……………俺はいったい何をしているんだろうな
………………どれほどの時間が経ったのだろうか。1分?2分?はたまた飛んで5分?それほどの長い時間、俺と九尾は剣を交え続けているような気がする……………いや、気がするだけなんだけどね。実際はそんな時間はかかってないだろうけれども。
とにかく疲れた………………剣を振り続け頭を使い続けて、足を使い続けることなどインドア派の俺には酷なことなのだ。
その疲れの所為なのか俺の脚が少しもつれる
そして九尾がその隙を見逃さない訳がなく、九尾の一撃により俺の剣が弾き飛ばされる!
「くっっっそ!!!」
痛む左手を無理矢理九尾へと突き出す!いってぇぇ!!だがこれしかもう攻撃手段がないんだよ!
それに反応して九尾が防御態勢をとる。俺が作った穴を守るようにだ。
それを見て俺はただ単純に笑っていた
「………………はっ、左手はただの囮ってな」
右手を上に掲げるとさっき蹴り飛ばした剣が俺の手に収まり、赤色を帯びる
サササササササン!!!
そして、赤色の軌跡は九尾の鎧ごと肉を絶ち切る。
まさに計算通り。剣の真下であえて隙を作るというこの戦法…………名付けて電撃殺虫機戦法と名付けよう
ガシャシャン………
手から大剣がこぼれ落ち、両腕がダランとなる。きっと筋肉を切られて力が入らないのだろう
トン
そして、鎧の穴が空いた部分に握りしめた拳をおく。
これで………………
「スゥーー………………」
思いっきり空気を吸い込みー
「フンッ!」
終わりにしたい!!
ブシュッアアァァア!!
拳から勢いよく弾け出し、九尾を吹き飛ばす!
ダン!
そして、九尾は壁に叩きつけられるとそのまま床に倒れる。
胸の部分から血が溢れ出し赤色の池が形成されていく。
起きてくる気配は一向にない。……………あれ?もしかしてこれ………
「…………………倒せちゃった」
大富豪をしているイリナ達の方を向く
「…………………倒せちゃった」
そして、イリナ達もまた俺の方を見て驚いていた。
イリナの手からトランプが落ちる。それはスペードの10、11、12、13、1だった。
大富豪なのにポーカーのロイヤルスレートフラッシュやろうとしてるよ…………存外エンジョイしてたな。
それを見て俺は安心し、床にぶっ倒れた




