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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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丸くなるな、自分の形を見つけ出せ

「なんでもっと早くにそういうことを言わないのさ!」「ご、ごめんなさい〜!!」


敵が20体ほどになった時、胸美からミフィー君が危ないということを聞かされイリナは焦っていた。


「ちっ…………仕方ない!ちょっとそこの岩陰にでも隠れて!」


ちょっと荒いけどしょうがない!今は時間が惜しいから!胸美が岩陰に隠れたことを確認し、全力で魔力を放出する!


「乙女の一撃セカンド!!」


ズガガガガガガガ!!


洞窟の通路すべてを満たすほどの大きさの雷の龍が姿を現し、洞窟の壁面を削りながら並み居るモンスターたちを食いちぎって行く!龍が通った後の通路は壁やら何やらが全て破壊されていて、崩れないか心配なほどだ。だから使いたくなかったんだ、こんな技。野蛮だし何より建物へのダメージが多すぎる。


「さぁ、さっさと行くよ!」


元来た道を引き返す!


「くっそ、モンスター邪魔だな!」


走っていると次から次へとモンスターが湧いてくる!まぁ、こんなのは一撃もあれば十分なんだけど、今はその時間すらも惜しい!


「邪魔邪魔邪魔邪魔、邪魔だって言ってるでしょう!?!?」


向かってくるモンスター全ての体に穴が開けられていく!くそっ!胸美がいなければさっさと雷と同化して行けるのに!


「…………いいですよ。私のことは置いていってください。」

「ちょっ………はぁ?何言ってんのさ!そんなことしたらあんた化け物に囲まれちゃうでしょうが!」


弱いのだからそんなこと言うんじゃないよ本当に!囲まれたらあんたどうしようもないでしょ!!だーーっくそっ!本当、邪魔だっつってんだろうが!イリナの反感をかったモンスターが8当分にされる!


「いいんですよ。私も一応は最高幹部です。ある程度なら凌ぎきることもできますから。」

「いや、だからってさ。」

「それに…………ふふっ、貴方は飯田さんのことになると感情がすごいことになりますからね。興奮と尊敬と愛情と躊躇いと反感と疑惑。もう、感情の大洪水という感じですね。」


カーーー!

顔が赤くなるのが自分でもわかる!な、何を言ってるんだろうね胸美は!興奮?ああ、するよ。敵をバッサバッサ切り倒して興奮するさ。尊敬?勉強できるってすごーい。愛情?愛憎の間違いじゃないかな?心の中で必死に反論する。が、だけど、声に出そうとしても全く声にならなかった。くそ!なんで声にならないのさ!!


「それにほら、今も凄いですよ。焦りと緊張と恐怖が……………うわっ、これは痛いですねー。私の体にザクザクと深く突き刺さるぐらいですよ。」

「きゃぁああああ!!もうやめて!無理!それ以上そのことは言うなぁぁぁあああ!!!分かった!全速力で走っていくから!もうやめて!!!」


パチっ


イリナの体が雷となって洞窟の入り口まで駆け抜ける。


「…………………ああでもしないと行ってくれそうにもなかったですからね。」


早く会いたいと思ってるのに、嫌いな私を助けることを優先させてたなんて……………本当に、揃いも揃ってお人好しですね。


「あそこまで強いと、私も応援したくなっちゃいますよ。」


いや、あえてここでライバルとして行くっていうのも面白いのではないかな?あははっ…………彼らと関わっていくと夢がどんどん膨れ上がっていく。


「でもまぁ、それも生きてたらの話ですけどね。」


辺りからモンスターがぞろぞろと湧いてくる。はぁ、この能力でモンスターと話し合って和解するとか出来ないんでしょうかね?


「本当、後で会ったら脳科学のことについて専門用語をたくさん使用して永遠としゃべり続けてあげますか。」


腰にかけてある刀に手を添える。この言葉を言うのはいつぶりだろうか?家を出たきりだ。まぁ、それが今役になっているからなんとも言えないけど。


「我の一族に伝わる剣技は護身と献身によってのみ力を発揮し、我のためには発揮されず!」


4方向からモンスターが走ってくる!


「力を貸し、ただ他者に行使する時にのみ我の存在は確立される!」


それでも梅雨美はうろたえることもなく、脱力しきっている。


「世の為、人の為、ただそれだけの護身刀!それが我らの存在!その名も………」


サササン

鞘から抜かれた刀は綺麗な線をひき、まるで水のように滑らかに空気を切り裂いていく。


「始水原核流」


そして染島さんが通った後、モンスター達は輪切りとなってその切り刻まれた体を地面に落下させる。後に残るのは血の海だけ。


「…………貴方達を彼らの元にやる気はありません。さぁ、退くなら今のうちですよ?」


彼女の顔にはもう、優しさはない。あるのはただ彼らを守るという使命だけだ。




「くおっんの!こっ、ほっ!はっ!…………無理無理無理無理!!!」


前方から多量のエネルギー弾が発射され、その合間を縫って無数の弓が飛んでくる!さらに追い討ちかのように金属が地面の至る所から突き出される!しかも出血大サービス!パンチ1発で深々と地面を抉る大男3人が交互に殴りかかってくるときた!へい!どうすればいいんすかね!?盾を3つ出してかつ、かわさないとこの攻撃を凌ぎきれない!

くっ………さっきとは比べものにもならないぐらい攻撃に力を入れてるっすねーー!下手に攻撃したら大ダメージをくらいそうだ!さっき1人削っておいて本当に良かった!あ、でも師匠も一緒に飛ばしてしまったっすけど………ま、まぁ、早く倒して加勢に行けばいいんだ!

だけど、こんなに攻撃の雨状態の中攻撃をするなんて出来るだろうか!?いや、無理に決まってる!

どうする!?どうやってこの絶望的状況を打破する!?


そんな絶望しきった時だった!

バチバチバチィィイ!!!

黒垓の横を一筋の稲妻が駆け抜ける!

メキィッ!

そして、その稲妻は、人の形へと姿を変え、大男の顔面に飛び蹴りをかます!!そのまま大男は洞窟の壁面を突き破り洞窟の外へと吹き飛んでいった!!


「ごめん、遅くなった。」


「本当っすよ。……………なんで顔が赤いんすか?」


ビクッ!!

なんで今そんなことを………。


「あ、あーーこれは、走ってきたからね……………うん。全速力で走ったから。」


「あれ?でもさっき雷と一体化してましたよね、それならそんなに疲れないんじゃ。」

「うるさい!雷って少し熱いんだよ!だから一体化してると顔が真っ赤になるの!!いい!?理解した!?理解してくれたかな!?」


なんでこうもこの部分を掘り下げようとするかな!?もっと面白い話題を掘り下げるべきだと私は思うんだよ。


「…………わ、わかりました。」

「よし、よく言った。………あれ?ミフィー君は?」

「そ、それが……………えーっと、オラの技に巻き込まれてしまったみたいっす!」


ビシ!Vサインが炸裂する!


「マジか。」

「おしゃべりは済んだか?」


大男が1人、飛びながら襲いかかってくる。


「……………はぁ、ちょっと黙っててくれない?」


ズドン!

イリナのパンチが大男の胸に当たり吹き飛ばされる!が、


「……………ちょっと痛いじゃねーか。」


イリナの攻撃を食らっても大男はピンピンとしていた。首をゴキゴキと鳴らしながらこちらへと歩いてくる。


「ちっ…………めんどくさいのがきたな。黒垓君、奥の遠距離攻撃のやつらを任せるよ。」


「うっす。それじゃあ筋肉の方々は任せます。」


コクんと頷き、大男どもの元へ駆け出し2対1の殴り合いが始まった。1人を殴れば片方が後ろから攻撃してきて、防御をすると両方から攻撃される。実にめんどくさい。でも、両方とも魔力を使わないってことは戦闘には役立たない?でもこの力は明らかに私と同じぐらいだから……身体強化?それなら魔法を使えば早く終わるかな。


ズバガガガガンンンン!!

イリナは一瞬で大男の背後に回ると雷を放った!だがそれを2人は紙一重でかわしイリナに向かって走り出す!

流石は私と同じ階級の力だ!あれぐらいじゃかわせちゃうよね!

私の呼吸するタイミングを奪うため、男達は交互に攻撃を続ける!

バチィン!!

たまらず私が呼吸をするために両手を下げた瞬間、大男2人が同時に殴りかかってきて私のガードが吹き飛んだ!そして私の胴体目掛けて前蹴りを放つ!

タンッ

私はそれを見越していて既に後ろに飛んでいた。なんなら2人同時に攻撃させたのも私が仕組んだものだ。この一瞬を拾うために、ただその為だけに攻撃させた。


「光剣羽衣 第三の舞 二人羽織。」


光剣が双剣へと姿を変える!


「悲しいかな、もう終わりだよ。」


私を追ってもう一歩踏み込んだ大男の一撃は空を殴り、袈裟に斬られた身体はバランスを失い地面に崩れ落ちる。そして最後、返す刀が2人目を切り裂いた。この二連撃は1秒にも満たなかった。




〜一方狩虎サイド〜


辺りは土埃ではっきりとよく見えない。ただ、少しの赤色が氷の壁に付着している。


「……………血が少ないな。」

「当たり前だろ?全く当たってないんだからな。」


ブワッ!氷の男の背後から水が押し寄せ飲み込み正方形を形成し男を閉じ込める!黒垓君の時に使った水の檻だ、彼なら水を消すこともできないだろうから簡単に気絶させれるはずだ………多分!

パキン!

だがその目論見はすぐさま裏切られてしまう。彼を囲んでいた水が一瞬で冷え固まり氷となる。

ピシピシピシ………………パァン!

そしてすぐさま氷は弾けとび、水の檻は跡形もなく消し飛ばされてしまった!

まじかよ。俺の最強必殺技が一瞬で打破されてしまったんですけど。てかさ、使える技が溺死か至近距離で水を放出するだけとか…もうダメだ、もう無理だよ。これが小説になるときの希望は幾分もないよ。かっこいいシーンが一個も無いって時点でもうアウトだろ。溺死をさせることがメインなんていう英雄が好かれるわけがない。顔面に手を押し当ててその状態で水をあらん限りに放出する男がメインヒーローになっていいはずがない。絶望だ………二重の意味で!


「………………なるほどな。お前の力は水か。」


俺はすいーっと横方向へと足を運ぶ


「舐めきっていたよお前のことを。あれぐらいの攻撃はかわせないと思ってたからな。」


クソッ…………円形てところが気に食わない。正方形とかならまだ逃げ方もあったが、円形だとどう頑張っても無理だ。中心に近い方は俺を追うのが簡単だからな。


「………………なぁ、なんで力を追い求めるんだ?今のままでも君は十分に強いじゃないか。」


あれほどの弾幕、相当強くないとできないはずだ。


「うるせーなーー。黙ってろよ。」


巨大な氷の塊が放たれる!

ズゴォォンン!!

だがそれを紙一重でかわし、俺は右へと走り出す!


「なんでだ!それほどの力があるっていうのになぜそれ以上を求めるんだ!?強くなったところで周りに誰もいなかったらただ虚しいだけだろうが!!」


同士討ちをし続けて力を得たところで、その時にはもはや周りには誰もいない。信用を得ることなどまず不可能だ。だって仲間を殺し続けたのだから。


「…………別に仲間なんていらねーよ。力があればそれだけで十分だ。」


中ぐらいの大きさの氷の刃が無数に放たれる!

くそ!こんなの防ぎきれねーよ!……………少し無理をするか!俺の体がより速さを増す!ぐっ!?足が少し痛いが……………大丈夫だ!まだ行ける!


俺が通過した地面と壁に氷の刃が突き刺さり、氷の轍が出来上がる!


「力なんてな!あっても虚しいだけなんだよ!分からないのか!?思い出を共有できる仲間がいない辛さを!お前にだって友達の1人や2人ぐらいいるだろ!」


ピクンと体が反応する


「……………いねーよそんなもん!くだらないあんな馬鹿どもと付き合うぐらいなら1人の方がまだマシだ!」


巨大な氷の塊が5個ほど飛んでくる!クソがアァァァ!!もっと速く!体がどんなにぶっ壊れようと構わない!

ブチィ!

筋繊維が切れる音がする!くそっ、これは俺には速すぎるんだよ!!

ズガァァアァン!!!!

辺りに氷が飛び散る!


「あいつら全員低脳なくせに俺のことを見下しやがって………………バカはバカらしくのうのうと生きてればいいんだよ!!」


ズァァァァアァアアア!!!

男の周りの地面から氷の刃が無数に発生し、俺の元まで迫ってくる!!


「…………いじめられてたのか?お前。」


パンン!!

俺のところまで来た氷を蹴り飛ばす!ぐっ……足いてー!俺は痛む足を無視して敵に視線を向ける。


「………………俺には生まれてきた意味がないんだ。現実やこんな世界で、俺が何をやったところで全部裏目にでる。俺は天才だってのに世界は俺を望んでいないんだ。」


さっきまでの激情とは打って変わってまるで悟ったかのように敵は言葉を繋いでいった。………は?何言ってんだこいつ。


「そうだ、世界は俺を必要としていない。俺が生まれてきたことには意味がないんだ。だってそうだろ?俺がいじめられたのだって、きっと、誰も俺を求めてないからだ。お前は幸せだろうな、きっと生まれてきたことに意味があるんだろうな。どうせ友達に囲まれてワイワイ楽しく遊んでんだろ?………………俺を必要してない世界なのだから俺はこの世界を破壊する。そのためには力をつけなくちゃいけねーんだよ。」


俺は、あいつの言葉の途中で走っていた。もう、なんかイライラしていたのだ。


「何言ってんだこの馬鹿野郎。」


俺は敵の頭を軽く小突いた!


「いってーな!何すんだよ!」

「うるさい黙ってろ。今度また同じことを言ったらはったおすぞ。」

「な、なんだと!お前も俺を責めるのか!?」


また頭を殴る!


「生まれたことに意味がない?はっ、当たり前だろ。逆に聞くが、生まれたことに意味がある奴なんてこの世にいるのか?あ?」


「偉くないとか凄くないとか俺には相応しくないとか、適当にほざいて自分の可能性を狭めるぐらいならいっぺん死んでこいよ」宏美の一言が頭をよぎる…………ああ、そうだ。俺はこの言葉に救われた。この乱暴で乱雑で荒々しい、人をけなすような言葉のおかげで今の俺はある。どうしようもなく落ち込んでいて、死ぬ勇気すらもなかったこの俺をあの言葉はどれだけ奮い立たせてくれたことだろうか……………

宏美の与えてくれた勇気や優しさを俺もこいつに与えたい………なんてことは思ってはいない。ミリもカスもチリも思っていない。できるのならばさっさと家に帰って寝たいぐらいだ。でも、ダメだ。イラついてしまう。あいつの言葉が俺にはひどく耳障りでついつい言葉を出して突っかかってしまう。気に入らないのだ彼の言葉が。


「え、いや…………ほら、よく言うだろうが。君には生まれてきた意味があるって!!」

「あんなの犯人を説得するためのでまかせだ。あなたにはきっと生まれてきたことに意味がある?……………くだらねーな。ああ、実にくだらない。目玉焼きと卵焼き、どっちの方が良いかを討論すること並みに下らない。」


生まれたことに意味があるのなら、殺人なんて起こす必要はない。何千万個の精子の競争を勝ち抜いた俺たちなんだ、だから生まれたことに意味がある?おいおい、冗談は休み休みいえよ。そんなの選民思想となんら違いはないじゃあないか。関係ないんだよ、確率の先に生があろうとなかろうと。


「生まれたことに意味がある奴なんてキリストぐらいだろ。なんだ?お前の周りは神様だらけなのか?それなら少しお前の学校に興味があるが……………とにかく、生まれたことに意味がある奴なんてこの世にはいないんだよ。」


なんだろうな、私立神様学園とか?ははっ、ゼウス学園長とかになって実につまらなそうだ。


「意味は自分で創りだせ。何もせずにのうのうと生きてるやつはバカだ。…………確かに、お前が言った通りのうのうと生きてるやつはバカだ。でもな、そんなバカ達にいじめられても何もせずに、終いには自分を取り繕っている奴は哀れだ。」


バカを通り越して哀れだ。バカは自分の生き方を見出している。自分の好きなように、楽しいように生きている。自分の出来ないことを見つめ、理解し、自分にとって正しい選択をしようと日々必死だ。………俺だって自分の選択が正しいなんてこれっぽっちも思っていない。常に正しい選択を追い求めている。でも実際は自分の選択は間違いだらけで、俺は正しい道を歩めていないのかもしれない。振り返ればバカな間違いだらけだ。

だけど、俺はもう躊躇わない。自分が正しいと思った選択なんだ。どんなにひどい結末になろうと俺は甘んじて受け入れよう。それが俺の罪滅ぼし。もう俺は、あいつの泣き顔を見たくないのだから。


「うるせぇ!黙ってろよ!俺は天才なんだ!あんな奴らにいちいち構ってらんねーんだよ!」


氷の礫が俺に向かって発射される!だが俺は、それをかわすのがめんどくさくて、その攻撃を甘んじて受けた。下らない。八つ当たりごときじゃ俺はなんとも思わない。


ポタポタ……………頭から血が滴り落ちる。だが俺はそれでも言葉を紡ぐ。俺はこいつが見てられないのだ。自分の殻に閉じこもって、それなのに外の世界を否定する。俺もそうだが、お前はもっと世界を見ろ。


「頭が良いのなら世界を見つめろ。お前にしかできないものを考えろ。生まれてきた意味は自分で作り出せ。なんで学校なんていう所で狭苦しい思いをしなくちゃいけないんだよ、ほんの少しなんだ、ほんの少し。ほんの少し足を踏み出すだけでいいんだ。」


人生は、生きるということは、思ったよりもシンプルだ。踏み出さなきゃいけない。自分のために。でも本当に薄い膜がその一歩を邪魔する。ほんの薄い氷の膜が自分の可能性を塞ぐ。自分だけが悪いのではない。自分の殻に閉じこもって、その膜を、氷を溶かしきれない周りが悪いのだ。


「何かをすれば確実に何かは生まれる。何もしなければ何も生まれない。何か行動を起こしてみろ、その為の体だ。何かを考えてみろ、その為の頭だ。それでも自分の意味を見出すことが出来なかったのなら、もっと考えろ。もっと体を動かせ。いつかは何かが見つかるのだから。」


この世界は美しい。全てに法則がある。アインシュタインがそういうのならそうなのだろう。俺なんかと頭脳は比べものにならないのだから。ああ、俺もそう思うさ。でも、だからと言ってそれじゃあ世界はつまらないじゃないか。すべて決まりきったことだというのなら、俺たちの存在意義がない。可変的なこの世界だからこそ、人間は美しくなれる。より良いものを求め続けられる。シンメトリーよりアンシンメトリー。地球はほんの少し傾いている。全ての軌道は楕円形。宇宙はなぜか扇形。まん丸も真四角も何もないのだ。だから世界は美しい。俺たちは自分を磨き続けられる。


「それと、もし、それでも上手くいかなくって、世界にうんざりして、力を欲すと言うのなら染島さんじゃなくて俺を襲え。」


俺の話を呆然と聞いていた男が答える。


「……………は?お前、勇者だろ!?」


今日一番大きな氷の礫が発射される!


シュワッ

だが、俺が手をかざすとその氷はみるみる小さくなっていき、俺の手の近くに来る頃にはこぶしほどの大きさになっていた。そしてそれを………


バキン!

俺は握り潰した。


「さぁ、なぜそう思うんだ?」


へたっと男はその場に座り込む。


「……………あっ、そうそう。君の名前って何?ただの男じゃしまらないでしょ。」


小説でただの男じゃ可哀想だ。


「し、しまらない?…………賀川恭介だ。」

「そうか、ありがとうな。…………俺の名前は飯田狩虎だ。」


顔を上げると、その先には白い扉が見えた。


「また会えるのを楽しみにしているよ。」


俺はそのまま扉の元まで歩いていく。


「えっ?ちょ、まてよ……………」


後ろから声がするが無視だ無視。別れ際にカッコつけたんだから声を出すわけにはいかないだろう?


「よっ、お疲れさん。」


扉の方から3人が走ってくる。


「ち、血が!…………いいの?彼、殺さないで。」


「ああ、これ?ただの血だ。安心しろ。それと当たり前だろ。前途有望な少年を殺すのは世界にとって大きな損失だ。」

「何言ってんの君は。」


呆れた顔で答える。


「本当、何言ってんだろうな…………まぁ、取り敢えずハイタッチを。」


人生初のハイタッチだ。


「ああ、いいよ。」「それじゃあオラも。」「それじゃあ私も。」


………………本当、いい仲間だ。改めてそれを感じさせてくれる。


「それじゃあ、ありがと…………な………………」


4人の手はぶつかることはなかった。そのまま俺は倒れるように4人にもたれかかった。いや、倒れた。意識は遥か彼方へと飛んでいた。やっぱり攻撃はかわすに限るな……………


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