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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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アメノイワト ヒカリノイコウト

寝ている時に目覚まし時計を聞くことほどストレスがたまるものはない。体がまだ睡眠を求めているのに、なぜか人間は起きる時間が決められているから、起きたくもない時間から活動を開始する。それは人間の3大欲求を妨げる音であり、ストレス以外のなにものでもない。やってられるか、なぜ起きなきゃいけない。ふざけんなよ俺は寝たいんだよ。気がすむまで眠り続けたいんだ。


「う、うーーん。あと3時間寝かせて……………」


だから俺が目覚ましの音に逆らって眠り続けるのも、動物的には間違っていないことなのだ。バタバタと手をばたつかせるが目当ての物が見つからない。………あれ?おかしいな。いつもはここらへんに目覚ましがあるはずなんだけれど………なんだ?硬いぞ?俺の手のひらに伝わるこのひんやりとしていて、それでいて土を思わせるザラザラ感。なぜだ、そこには木の棚があってその上に目覚ましがあるんだぞ?………これじゃあまるで土の上に寝転んでるみたいじゃないか……………


状況を確認する為、しかたなく目を開くと真上に月があった。


「わあー………お月様だー……………おかしいな、俺の家には屋根があるはずなんだけどな。」


なんてロマンチックなんだ!とはとても思えない。そこまで俺の頭はメルヘンじゃない。なぜ起きたら俺の真上に月があるのだ。………真上……………南中してますね。夜も結構ふけこんできているんじゃないのか?起き上がり辺りを見渡してみるが暗くてよく見えない。木が周りに生えていることぐらいはわかるが。あー………うん。木が周りに生えているだけで十分だわ。そうだよ。なぜかイリナにぶたれて、ぶたれて?あれを痴話喧嘩で使う言葉で表現していいのか?ぶたれるなんてもんじゃなかったけどな、雷の速さだから。幸いにも手は雷と一体化してたから硬い物がぶつかったわけではなく、頭と体が切り離されるような惨事にはならなかったけども。

右頬をさすると焼け焦げた痕もない。心なしか気分がいいようにすら思える。


「うーん………………まさか俺には超高速再生能力でもあるのか?」


まぁ、月が南中するまで寝てたのだから超高速ではないが………………まぁいいか。どうでもいい。さっき目覚ましの音を聞いたつもりだったが、あれは俺の反応が鳴らすアラームだったのか。


「多分イリナは家に帰ったろうから俺はこの暗い夜道を1人で帰らないといけないのか。」


てかなんでイリナは怒ったんだ?不快にさせないようにかなり遠回しに行ったはずなんだがな。

俺は起き上がり夜道を怯えながら歩く。

いつもはイリナがいるからモンスターは寄り付かないのだけれど、今は俺ただ1人だ。こんなクソやろーただ1人だからモンスターは来るに違いない!そりゃあもうわんさかとくるに違いない!いいねぇー、やっとアクションファンタジーみたくなってきたよ。小説にする時はこれまでの出来事を50ページぐらいでまとめて今日この部分を250ページぐらいにしよう。情報は改ざんしまくるぞ!俺は頭の中で黒い事を考えながら夜の道を歩き続けた。てかよー、魔剣ぐらい置いていってくれよなー。決定打が俺にはないんだからさぁー。水って!水ってなんですか!?液体で戦うって心許なさすぎるだろ!そういうのはさ、もっとこう、格好いいものであってほしいよね。植物を操るとか、超高速移動とかさ。なんで水なんだよ!このままじゃ小説がまじでつまらないものになってしまうぞ!


「……ん?ちょっと待てよ………てことは俺、相手を倒せないってことか?」


相手を倒せないってことはモンスターと戦闘出来ないじゃん!敵とエンカウントしたら逃げ続けなきゃいけないってことじゃん!てことは冒険ファンタジーにならないじゃん!……Oh…………まさか俺の目論見がこんなことで潰えるとは………ああ、1人は辛いな………敵と会いたくないなー、こんなことで初めてイリナの大切さを理解できた。やはり、そばにいない時にそのありがたみを、日常の素晴らしさに気づけるんだな………ん?

高さ5mはありそうな岩が道の真ん中に置いてあった。ゴツゴツとしていて大きいし、地面に埋まっているようにすら見える。まじかよ、この岩はこれ以上大きいってのか?

そして俺は周りを見渡した。

それに来るときにはこんなのなかったぞ。まさかイリナのいたずらか?どんだけ俺に腹立ててるんだよ……俺は最善の対応をとったはずなんだがな。まぁ、俺は常日頃ジーパンパーカーの男だからな。草の中に入ってもへっちゃらだ。

岩を回避する為、獣道から逸れて草が生い茂る道無き道を歩く。岩との距離は8mぐらいだ。岩の上を歩いているときに、その岩は実はモンスターでいきなり動き出して食われる。なんてことは避けなくてはならない。まぁ、ないとは思うが用心に越したことはないだろう。

ふっふっふっ、頭の良い者は物事を事前に考え危険を回避することが出来るのだ………小説的にはつまらなくなってしまうが危険は避けたい。俺って小心者だから。


「あー、草原の中を歩くなんて久しぶりだなー。中学2年のキャンプ以来だ。」


ザッザッザッザッ!


膝ぐらいまである草の道を分け進む。虫いたらどうしようか………………殺虫剤持ってないからどうしようもないぞ。あっ、水でどっかに流せばいいんだ!まさか俺の天敵である虫たちをどこかに吹き飛ばす力を得れるとは嬉しい限りだ。いままでの奴らとの戦いは苛烈を極めたからな、

火と水が踊り剣線弾ける闘技場 (台所)、猛者が集う憩いの場 (居間)、

日が照りつける世界の境界線(シャインラインワールドライン) (庭先の壁の隅っこ)で繰り広げられた血しぶきが上がるほどの肉弾戦! (いきなりこっちに飛んできて驚いて転んで擦りむいた)だが俺はとうとう奴らに近づかずに戦うことが出来る遠距離攻撃を得たのだ!もはや俺に怖いものはない!


ズゴゴゴゴゴゴゴ!!


岩の横を通り過ぎた時だった。あの巨大な岩が動き始めたのだ!

はっはっはっ!やはり警戒していて正解だったぜ!

モンスターが現れた!パクッ!テレッテ、テレーレレーみたいな出落ちパターンにならなくてよかった!

だがその岩が地中に埋まっていた真の姿を表していくにつれて、地面が盛り上がりその面積を増していく。岩がどんどんこちらへと向かってきた。


あれ?ちょっと待てよ……………でかすぎない?


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!


俺の足元から巨大な岩が出てきた拍子で俺は尻餅をついてしまった!

木の2倍はありそうな身体と、一振りで辺りを一瞬で綺麗に出来てしまいそうな程に太い腕と、ゴツゴツしていて俺10人分以上はありそうな太さの脚を持ったゴーレムが土から出てきた。そしてゴーレムが手を上げると周りから鬼やら蝶やら蜘蛛やら見慣れない魔物がたくさん出て来た!俺を包囲し、今か今かと襲うタイミングを待っている!


まじか…………こいつはここら辺の親玉なのか?こんなにもモンスターを引き連れて来やがって……軽く100体はいる。


「☆÷|%:\%0|<]<6〒0°5〆<*6〒:$」


ゴーレム語か何かは知らないがよく分からない言語を発している。きっと周りのモンスターにでも指令を出しているのだろう。


「%4々<×:=3→<*☆÷+〆………………%・%:」


ズゴォオオォンン!!


会話が終わったのかいきなりゴーレムは自分の腕と腕を叩き合わせこちらへと向かってきた!一歩は遅いがそのたった一歩で周りの地面が揺れ続ける!や、やばい!どうにかしないと!


バシャァァァァアァア………………


水を脚に当てるがどうしようもない。やはりただ濡らしただけだった。そして、たった一歩でほぼ俺の目の前まで到達したゴーレムは拳をふるった!確かに拳は大きいが動きがすっトロいので全力で走ればかわせそうだ!


ダッ!ダッ!ダッ!ダダダダダ!!


一歩一歩を確実に踏み込みながら走る!


ズドゴォォオオオォオンンッッッ!!


ゴーレムの拳が当たった場所が景気良く弾け飛ぶ!さながら爆弾だ!飛んできた岩が俺の体に当たりそうになるのを水で止め、ひたすらに走る!精々俺が出来る抵抗はこれぐらいだ。そしてゴーレムはまた俺に向かって拳を振るう!


ズドゴオォォオオオオオンンンンンッ!!

ズッゴォォオオォオンンンンッッッ!!!!

バゴオオオォォォォオオオオンンンン!!!!!


爆弾と同じような衝撃のパンチは続けて投下され、地面が弾け飛ぶ弾け飛ぶ弾け飛ぶ!!


ガッッッッッッ!!バゴバゴバゴバゴ!!!ズバァァアアアアアアアンンンン!!!!


ゴーレムが両腕をまとめて一気に地面に叩きつけた!その衝撃が地中を伝い、ゴーレムの周りの地面がひび割れていき俺の元まで到達!地面が一斉に吹き飛んだ!!


バシャバシャバシャァァァ!!


自分の周りに水を纏い、飛んでくる岩全てを防ごうとするが、そもそも水だけで衝撃の全てを殺し切れるわけがない!岩石は水を貫通し、俺の身体を傷つけていく!

くそっ!なんて質量弾だ!辺りの地面が全てえぐれている!なんとかして投げ切らないと殺される!イリナがいてくれたらなぁ!こんなやつ一撃で倒してくれるのになぁ!


「はぁー………仕方ねーな。」


俺は立ち止まった。


メシメシメシッビキッメシッビキィィィッ!


外見に変化はないが俺の身体の中で何かが変わる音がした。そんな立ち止まった俺は絶好の的だ、ゴーレムのパンチが飛んでくる!


ゴパァァァンッッッ!!


だが、俺はそのパンチを下から殴りあげた。ゴーレムの腕が宙を舞う。何が起こったのかよく分からないらしくゴーレムは吹き飛ばされた腕をずっと見続けていた。


「んじゃ行くか、バレないようにな。」


パァン!

踏み込んだ地面が弾け飛んだ!

メシャァコォォ!!!!

ゴーレムの右足が吹き飛び、そのまま体勢を崩したゴーレムは左手を地面につけることでなんとか倒れないように体を支える!

パァァァアアンン!!

しかしゴーレムの左手が一撃で吹き飛ばされ支えを失い崩れ落ち…………

メッッッコォォォオ!!

俺の蹴りが炸裂しゴーレムの頭が吹き飛ぶ!木々を粉砕し、着地してからもその運動エネルギーは失うことなく地面を掘り進んでいき、1キロメートル進んだ所で停止した。

ゴーレムを倒した俺は周りを見渡すが他のモンスターは何処かに走って逃げて行くところだ。……………まぁ、親玉が倒されてしまったのだから当然だろう。俺もこれ以上は戦いたくなかったしな。


「ふぅ…………今回は楽勝ではなかったな。またいつも通り苦戦してしまった。」


そのまま俺は扉まで歩き続けた。道中、モンスターに襲われることはなかった




今俺は扉の目の前にいる。現実の世界へと戻る為の扉だ。うーんとまぁ、そのなんだ……男が夜に女性の部屋に勝手に入るってのはいかがなものかとね、思ったわけですよ俺は。なので扉の前でずっと立っているのだけども………いや、でも入らないと家に帰れないわけであってね?それにイリナにはなぜ俺を一人ぼっちにしたのだと問いただしたいのだ!そのせいで俺は危険な目にあったわけだし、ウサギは寂しいと死んじゃうんだぞこのやろう!なぜかは分からないけど俺が怒らせてしまったらしいが、俺にはそんなの知らん!自覚もないから謝りようもないんだ!


うおぉぉおおお!!なんか怒りが湧いて来たぞ!なぜ俺がイリナの部屋に入るのをためらう必要があるだろうか!?いままでに何回も入っているんだぞ!? (5回です)

そして俺があいつの部屋に1人で夜に入るようになってしまったのは全部あいつのせいなんだぞ!? いや、もう入らない手はない!逆にここで入らなかったらイリナに申し訳ない気がする!うん!申し訳ない!…………よく分からないがとにかく入るぞ!


ガチャ!バタン!


うおおおおおおお!!!イリナの部屋まで全速力で駆け抜ける!!!!!



〜〜4時間前〜〜


「あーもう!腹立つなぁぁ!!」


部屋にあるウサギのぬいぐるみをボコボコにぶん殴る。

イリナは昔からぬいぐるみを集めるのが大好きで色々な種類のぬいぐるみを持っている。そして、イラついた時にはいつも沢山のぬいぐるみを抱きながら寝るのだが今はそんなことは思いつかない。今はただウサギを殴りたくて仕方がないのだ


「さっきのはいったいなんなんだよ![幸せな時間を提供してやれなくて]ってどんだけ上から目線なのさ!誰がお前なんか好きになると思ってるのよ!!」


ポスポスポスポス


ウサギを殴り続ける


「はぁー……………ダメだ。今日は怒りすぎた……………私としたことがこんなにも怒ってしまうなんて」


イリナは転校初日のようにいままで男が群がって来て常に告白され続けていた。そのせいで彼女は告白と言うものをどうでもよく感じていて、どんな男に告白されてもなんとも思わないようになっていた。どんなイケメンだろうと、どんな天才だろうと、どんな面白い男でも、何か一つでも秀でている奴らから何かを言われたところで何も感じなかった。精々思っても「またか、めんどくさいなぁー」ぐらいである。そして、今日狩虎に告白されたわけだがいつもと違い動揺してしまった。そして思いっきり彼の頬を平手打ちしてしまった。ただ、まだ理性は残っていたらしく雷で平手打ちをすることが出来た。

もし手のままで狩虎の頬をあの勢いで叩いていたら顔がどっかに飛んでいっていただろう。


まさか、あんなに心を乱されるとは……………なんだろうこの気持ち………………キュワーンってなるこの感じ、いや、キュイーンかな?いやいや、ギュオーンかな?いや……………ドッドッド!だね。

………………何を言ってるんだ私は。これはきっとあれだね、あっちの世界で全速力で走りすぎちゃったからだね。ほら、これは全速力で走った後の心臓がキューンとなるあれなんだよきっと。うん。そうにちがいないね!


「そうと決まればテレビでも見て身体を休めないと。」


部屋でゴロゴロしてたら帰ってきたあいつに私のゴロゴロしている恥態を見られてしまう。立ち上がるときにふとウサギに目がいったのだが耳の上部に値札が付いていた。このうさぎは最近おもちゃ屋さんで買って来たものなのだが、うっかり値札を切りそびれていたようだ。うさぎを抱えながらリビングへと向かい、リビングでハサミを使い値札を切る。


チョキン!


「きゃあぁあああああ!?耳を切っちゃった!?わ、私としたことが!」


手元が狂ってしまったのだろうか?耳をバッサリと切ってしまった。ああ、やはり今日は調子が悪いなー、ミフィー君に告白されてからと言うもの本当に調子が悪い。あーもー!全部あいつのせいだ!あいつのせいで疲れたしウサギの耳を間違って切っちゃったし!くそぉー、せっかく今日は午前は良いことがあったのに台なしだよ!


「気分転換に何かテレビを見よう!」


寝転がりながらテレビを見ると言うのはなかなかに贅沢なものだよね。


ピッ


何かテレビをつけてみるも面白いものが何もない………もう少し夜がふければアニメがやってるんだけど、あいにくこの時間帯じゃなー。


「…………………つまらないなぁ。」


何か考えよう。時間を潰すのだ。まず、あいつは本当にカイなの?あんなに弱いのが、私と同じ階級なわけがない。あいつじゃあここら辺のボスですら倒せそうにない。それに力だけじゃなくて性格も全く違う。あんな軽々しく人に告白するような男ではないし、それに、カイの一人称は「僕」なのだ。……そういえば翔石君も僕って言うなー、しかも[かけいし]でカイって言葉が入ってる。でも、確かあの世界では外見は現実そのままのはずだから翔石君がカイってことはないのだろう。あと、外見だけじゃなくて性別も変わらないらしい。ま、外見が変わらないということは性別も変わらないのは当たり前なんだけどね………


うーん………やっぱり分からないよ………いや、もうこんなの考えるのがめんどくさい。他のことを考えよう!

そうだ!今日は私だけが辛い目にあったんだから明日あいつに何かしてもらおう!……………何か奢ってもらおうかなーー。さすがに高いのは可哀想だからそこそこの、でも低すぎたら私への償いにはならないから………うーん……


そのままイリナは眠り込んでしまった。




〜現在〜


部屋を探索するがイリナはいない!ということはリビングだな!?リビングですな!?今すぐ向かってやらぁ!

しかしさすがにさっきのように廊下を走ることは出来ない。現実の人の家の廊下をしかも真夜中に走るなんて非常識にも程がある。俺は常識の中を生きる平凡な男なのだ!

そろーりそろーりと足音を立てないようにゆっくり歩く!今からイリナを怒るのだ、身構えられた状態で怒ってもそこまで効果が出ないだろう。


ふふっ……驚かせてやるぜ。間違えた怒ってやるぜ。

お、リビングから光が漏れてるな。やはりイリナはリビングにいるのだろう……………ぐはははは!!怒鳴り散らしてやるぜ!


「へい!イリナ!俺を1人に………………むごっ。」


リビングに入って大声を出したがイリナはソファで寝ていたから急いで俺は口を閉じる。な、なんだと!俺を1人残して家で寝ていたというのか!恐ろしい子!

片方の耳が欠けたウサギのぬいぐるみを抱きかかえたままソファーで眠っている!耳がボロボロになるまで一緒いるってことはきっと大切なぬいぐるみなのだろう。あれ?でも心なしか断片が何か鋭利なもので切られたかのように綺麗なんだけど………ま、まぁ気のせいだよね。


イリナは美しく、整った可愛らしい顔でスースーと寝息を立てていた。うーん、ここだけ見ると本当可愛らしいのに。意識があると俺を理不尽にぶん殴るようなやつだからな。はっ!このまま永遠と眠らせればいいんじゃないか!?………………なんて猟奇的な発想だろう!こんなのを今一瞬自分が考えたのかと思うと身震いする!!ずっとイリナを見続けていると、どうやらイリナは寒いらしく身体を縮めた。そりゃもう9月だからな、寒いよな。毛布も無しで寝るのは辛いよね。うーんと、イリナの部屋から毛布でも取ってきてかけてあげたらいいのかな?女性との関わりが少なかったからそこらへんのことはよく分からないが……………………まぁ、俺はそうやった方がいいと思うからやるか。

俺はリビングに来た時よりも静かにイリナの部屋へと向かい毛布を取りイリナに毛布をかけてあげた。無論、毛布を持つ時は息を止めておいた。俺は謝ってるのに思いっきりぶん殴られるような男だ。きっと嫌われているのだろう。もし嫌っている男に自分の使ってる布団の匂いを嗅がれたとわかれば彼女はきっと不快に思い俺をより嫌うだろう。そんなことは俺は嫌だし、イリナにも嫌な気分を味合わせてしまう。

まぁ俺が女性に嫌われるのはいい。そんなこと日常茶飯事だ。ただ、イリナを不快に思わせてしまうのは、それは避けなきゃいけないのだ。

毛布をかけるとイリナはそれをぎゅっと掴み自分の体にかける。よっぽど寒かったのだろう。やはり毛布をかけてあげて正解だったな。


帰ろうと思い顔を上げると、ふとテレビの画面が目に入った。どうやら音量を低くしていたから気づかなかったようだ。内容は最近巷で人気の[死と悦楽]というアニメだ。その、なんだ。これは主人公が拷問大好きで1話ごとに人を攫っては拷問するというものだ。この連続誘拐殺人事件を止める為に立ち上がった名刑事と拷問マニアの駆け引きが面白いのだとかなんだとか。そういう無意味な残虐性って好きじゃないから俺はよく見ないんだけど、へぇー、イリナってこういうのを見るんだ。

電気の無駄だなテレビ消すか。リモコンを探して辺りを見渡すとテーブルの上にあった。そして俺がリモコンへと手を伸ばした時、俺は、とんでもないものを見てしまった。耳だ。ウサギの耳。傍らにはハサミ。

ちょ、ちょっと待ってくれ。え?拷問のアニメを見ながらウサギの耳を切った?ちょ、え?ええ!?待て!待つんだ!きっとこれはミスだ!ほら、耳のところに値札がある!きっと値札を切ろうとして耳を間違って切ってしまったんだ!いやー、イリナったらおっちょこちょいなんだからー!あっはっはっはっはっ!


ちらっとウサギのぬいぐるみを見る。や、やばい。ウサギのぬいぐるみ?ウサギだと?それは俺を指してるのかな?いや、でも俺は虎だし!狩虎ですから!キュートなウサギじゃないですから!!!だ、断じて認めないぞ!イリナが俺をなぜか恨んで拷問アニメを見ながら俺の代わりにウサギに拷問かけたなんて絶対に認めないぞ!!俺は知っている!イリナが優しい淑女だと!!だってズッコケ三人組を借りてくるような………あっ、拷問集も借りてたね、そういえば。


「それではさよなら。」


俺はコソコソとイリナの家を出て走って逃げ出した!


「な、なんでこうなるんだ!?」


おかしいぞ!俺の対応は完璧だったはずなのに!どの分岐点で間違えたんだ!?くそっ、ロードしてやり直したい!


現実は甘く、苦く、刺激的で錯覚で、思い込みと勘違いがはびこる幻想的な世界であると思い知らされた。そんな1日だった。

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