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Face of the Surface  作者: 悟飯 粒
狩虎の章
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俺の話を聞いてくれ!

家に帰ると弟の光輝が居た。


「よう。ただいま。練習終わったのか?」

「ん?おお、おかえり兄ちゃん。いま帰ったばかりだけどな、それに今から自主練だわ。」


そそくさと汚れていた白いシャツを脱ぎ、青いシャツへと着替える。さっきまでサッカーの練習をしていたのだろう。光輝はサッカーをしている。10番のフォワードだ。しかも足は速いしスタミナも抜群!陸上部に来てくれと言われているぐらいだ!………なんでこうも妹と弟と俺との間でここまでの差があるんだ?おかしくないかい?ま、まぁ。俺には勉強があるから大丈夫だ……あんなに嫌なものが最後の砦なんて虚しいなぁ。


「すげーな、疲れないのかよそんなに走り回ってたら。」

「…………疲れはするよな、やっぱり。」


飲み物と軽食をバッグに入れながら光輝は答える。


「でも意味があるからさ。走ることに、練習することに。キツいことにも、上手くなることにも意味がある。そう考えると疲れるなんて理由だけでサボるわけにはいかないじゃん?自分で決めたことを放り投げたら、サッカーだけじゃない。人生の色んな場所で放り投げる癖がついちまう。」


…………これが中学生の発言かよ。


「そうか。思う存分やってこい。」

「兄貴もな。尊敬してんだぜ?こう見えて。」


コーンとボールをもって光輝は家を出て行った、いいねぇー。あいつが主人公の小説でもいつか書こおかな。「光り輝け!黄金の左足!」みたいな……………何年前のサッカーマンガよ。


いや、物思いに耽ってる場合じゃない!俺も今からイリナの家に行かなきゃならないのだ!今日こそは木をなぎ倒してやる!


「俺も、やり切らなきゃな。自分で決めたことは。」


震える体を抑え、服を着替えた後に走って家を出た。




先に表面世界に来ていたイリナの後ろ姿に向かって走り寄っていく。さっさと魔力を操れるようになって独り立ちしなくては!さぁやるぞやるぞやるぞぉ!


「………………」


ただなんと言うんでしょうか、悪戯心とでも言いましょうか?無防備で立っている知人を見るとちょっかいをかけたくなる不思議。宏美相手だといつも膝カックンしてたなぁ。今になって思い返せば最高にヤバい見た目の悪戯をしてるわけだが…………ええいっ!やってしまえ!

俺はイリナめがけて手のひらから水を出した!


「くらえっ!!」

「そんなのくらうわけないじゃん。」


水が地面につくよりも前に、イリナが俺の背後に立っていた。体は全然慣れてない。あれーー?1秒も経ってないですよ。


「私に攻撃を喰らわしたかったら、水を高速で発射できるようになるんだね。まぁそれでも私に当たるとは到底思えないけど。」

「あっ、はい。頑張ります。」


こうして俺は1人、木に向かって放水を始めた。イリナは案の定、1人でお散歩である。


30分後


むっ!またしても視線が…………間違えた。


「むっ!殺気!?」


これを言いたかった!これさえ言えればあとはこんなの無視だ。視線を無視し木へと放水を続けた。


更に30分後


「あー疲れたー…………水ばっか出すの飽きるなー。」


3日間木へと水を出し続けている…………正直飽きた!もう満足ですよ!木を見続けるのはもう満足ですよ!


「てかさー。水の魔力なんだから、出すだけじゃなく自由に操れるようになりたいよなぁ。物理法則無視する感じが堪らなくカッコいいじゃん。」


ちょっと試してみるか。

辺りには俺の練習のせいで水溜りが沢山あるのでそのうちの一個を見つめる。

動くイメージを浮かべるんだ……こう、ニョロニョロって動くイメージを………むむむっ!むーーー!!!


「おりゃぁああ!!」


手を上へと振り上げると水溜りが思いっきり上へと跳ね上がる!


「うおぉお!!なんかできちゃったんだけど!?」


手首を右、左へと動かすと水の束は右、左へと動く。くるくる回すと水の束は輪っかになってくるくると回った……………これは、水を操れるということは水を高威力で木にぶつけるのも出来るんじゃないか?


「いけーい!水ー!!」


バシャァアァァアア!!


水の束を木にぶつけるも木は濡れるだけだった。


「むむむ…………やはり水を高威力で出すのと操るのは別物なのか……………」


ほんの少ししか回らない蛇口にホースをつなげている様なものか……………蛇口を少ししか回せないから勢いよく水を出せない。でもホースで限られた水を操ることは出来るって感じ。そして、今俺はやっとホースを付けることができたのだろう。そして、力のない俺では錆び付いた蛇口をこじ開けるのは無理なのだ。


「おお!水を操ってるね!」


散歩から帰ってきたイリナから驚きの声が漏れる。


「ああ、なんか出来てしまった………ふぅ、自分の才能が怖いよ……………」

「私は全て1日で出来たけどね。」

「自分の才能は怖いけどお前の才能はなによりも恐ろしいよ。」


もはや恐怖でしかない。俺の個性と存在を食い荒らされてしまうかもしれないという恐怖……………なんだこの完璧野郎が。


「でも、確か高威力で出す方が操るよりも簡単なはずなんだけどな……………おかしいな。」

「いやいやいや、だからイリナ。これは俺の才能なんだよ。簡単なものは出来なくて難しいものは出来る…………きっと俺はそういうタイプなのさ」


「難しいものしか出来ない奴って土台がないから崩れるのがあっという間なんだよねー。」

「俺もそう思う。確かにそういうのは強いんだろうけどちょっとしたくだらないことで一気に崩れ去るからね。」


全部が全部必殺技だったら躱されたときの隙は大きいし、近づかれたときには対処が出来ない。序盤で全てを決めなくてはならない。そんなこと言っても強いことには代わりはないのだけどね。


「まぁね、それじゃあとりあえずモンスターと戦おうか、今回の相手はちょっとだけ強いよ。」

「ほー………果たして俺が勝てるかどうか。」


勝てるかどうかなんて言ってるけどもう俺は水を操れるからね。負けるわけがない!

今回もイリナから魔剣を貰い、魔物が入っているボールが投げられた。出てきたのは巨大な蜘蛛に乗った赤い鬼だ。オールバックによりツノが見えず、トラ柄の短パンを履き、両手には西洋刀(今頃だがサーベルの方があってる気がする)を持っている。そして蜘蛛はと言うと、でかい!としか言いようがない。いや、だって蜘蛛をでかくしただけだからな!


「あのー、イリナさん?グレードが一気に上がってる気がするんですけど気のせいですよね?」

「うん。気のせいだよ。昨日の蝶の3倍ぐらい強いけどグレードはそこまで上がってないからね。」

「3倍か…………まぁ、0にどんだけかけても0だもんな。かわりはないさ。」


正直に言おう。あまりにも桁外れすぎて自分をごまかす為にあんなことを言った。いや、もう。強すぎだろって言ったらなぜかは分からないが勝てなくなるような気がしたのだ。てかあいつバカなんじゃないのか?どんなゲームだって徐々にモンスターのレベルが上がって行くというのにこいつ3段階すっ飛ばしたんだぞ?絶対勝てないべ。


「ふっ…………やってやらぁぁあぁああ!」


魔剣に力を込めて下から上へと思いっきり振るう!そう、こいつは風で直線上の相手を切ることが出来るのさ!


ガガガガガガ!!


地面が切りながら相手の方へと風が飛んで行く!


サッ!


だが流石は蜘蛛だ。体毛により風の動きを感知し右へと逃げる。だがここはさっきまで俺が水を木に当てて練習していた場所だぞ?水はそこらかしこにあるんだ!

右手を左へと振るうと俺から見て蜘蛛の右方向にあった水溜りから水の束が出てきて相手を襲う。だが蜘蛛はそれジャンプして空中に逃げることによってまたもかわした。


くそっ!なんでこんなにかわせるんだよ!…………これなら!


両手を上へと向ける。2方向から水の柱が飛び出し、空中の蜘蛛へと襲いかかる!が、糸を近くの木へと噴出してくっつけていたらしくターザンのようにブラーんとかわしていってしまった………………


どんだけ身軽なんだよ!てかその時に鬼が背中から落ちてますけどそれでいいの!?いいのか!?鬼単体でも俺には結構強く感じるのでさっさと倒しておこう。

剣を振るい、空中の鬼へと斬撃を飛ばす。スパッと鬼は空中で切られた。あ、ごめん。やっぱ前言撤回、鬼そこまで強くない。鬼の半分になった体はそのまま地面へと落ちていった。

さて、問題は蜘蛛だよ。攻撃を全て躱されてしまった……これは想定外だ。あんなにでかい体だから攻撃の1発2発ぐらい当たると思ってたんだけどな…………そして、接近戦だけはしたくない。あんな俺の身長よりでかい蜘蛛と力勝負をするなんて狂気の沙汰だ。絶対に勝てるわけがない。どうにかして近づかずに勝たなくちゃ…………しかも、水自体に力はそこまでないんだよな……………だから水は斬撃を食らわす為の囮、簡単に言えば水はハッタリで、ハッタリで相手を追い詰めて斬撃を食らわせなくちゃならない。もし相手に水に威力がないとばれてしまったら確実に俺は不利になってしまう。どうしたものか…………………


「キシャアァァアァアア!!!」


俺が作戦を張り巡らせている時、蜘蛛はこちらへと走ってきた!くそっ!やはりそんなに待ってはくれないか!まずはこれをどうにかして対処しないと!

蜘蛛との距離は残り15m。大丈夫。水はそこかしこにあるんだ!なんとかなるさ!


ぶしゃあぁあぁあ!!


蜘蛛の目の前の水溜りから水全てを使って水柱を作る。なんとかしてこれで防ぎきる!


サッ!


蜘蛛はそれを後ろに飛ぶことでギリギリで躱した……………流石の体毛だ、あの攻撃をギリギリでかわすとは。おかげで水の秘密がばれずに済んだ。そして相手を後退させることが出来た。これならなんとかなるかもしれない。と思っていると蜘蛛はいきなりけつをこちらに向け、糸を放出してきた!ってか何とかなるかもって思ったらいつも攻撃されるな!今度からは自重しよう!じゃなくて躱さないと!右の方にある水溜りから水の束を作り出し、糸の側面へとぶつける!


ぶしゃあぁあぁあ!!


ヒュン!


あっぶねぇ!顔面の左隣近くを糸は通過していった!糸を切っておかないとあとあと邪魔だな。


ブシャぁあぁぁあああああ!!


蜘蛛の左右から水の束を作り上げ上から襲う!前からは斬撃が、上からは水が、果たしてどうする?


サッ!


「ギェェエエェ!!!」


どうやら蜘蛛は斬撃をかわし、水の方を食らうことを選んだようだ…………や、やばい。水にそこまでの威力がないことがばれてしまったか?


「キシュキシュ、キシュルアァァアアァア!!!」


ばれてしまったのか蜘蛛は雄叫びをあげながらこちらへと突っ込んでくる!やっべー!これ絶対ばれてるだろ!確認の為に水を出して攻撃してみよう!


ぶしゅあぁぁあぁぁああああ!!!


両方向から水を出して蜘蛛を攻撃するが蜘蛛は全く躱さずに、攻撃を食らいながらこちらへと走ってくる!


「キシュア!キュルキュルキュル!!キュルァァアァア!!!」


くそ!やっぱりばれてる!どうする!?どうする!?考えている間にも蜘蛛は段々と近づいてくる。俺と蜘蛛との距離は残り11m。……………あーもーやけくそだ!


ダッ!


俺は昼間、宏美から卒業アルバムを取り返そうとした時のチーター顔負けの走りだしをする!さっきはこれを使ったら瞬殺されたがそれは相手が宏美だったからだ!蜘蛛にだったら負けるわけがない!


「うおぉぉおおぉお!!!」


残り7m


「うぉぉおぉおおおおあぁぁあぁあぁ!!」


残り3m


今だ!


サッ!!ザパーーーン!!


俺は右手を振るとその後を水がついてくる。水の壁。だが所詮は水。防御力なんて全くない。相手の攻撃を少しだけ遅らせることしか出来ないだろう。

でも俺は防御の為に使ったんじゃない。相手の8つある目を全て潰したかったんだ!

……………8つもの目を同時に封じるにはどうすればいいだろうか?遠くから水を出しても確実に躱されてしまう。近づくか?…………無理だろう。さっきも言った通り力では太刀打ち出来ないのだ。それなら相手を油断させて、捨て身で突っ込んでくると思わせればいいんだ!

その為にわざと全てを躱すことの出来ない攻撃をして水だけを食らわせた。そして相手に、水が弱いことに気づかせて油断させる。そうすれば俺が蜘蛛に突撃するのはもう剣しか攻撃手段がなくて捨て身だからだと思うだろう。そこで相手が最も警戒していない水を、全く期待していないが防御兼、相手の視界を遮る為に使わせていただいた。

相手の目の前に水がある間に俺は蜘蛛の横へと移動する。そして蜘蛛が水の壁にぶつかった瞬間に俺は蜘蛛を両断した。下から上へと一直線に。

蜘蛛の体は大きすぎるから上から切る為には剣を結構上段に構えなくてはならない。それじゃあ力が入らないし何より上まで持っていくのに時間がかかる。それなら下から上へと切り上げた方が切りやすいのだ。位置エネルギーが邪魔になるけどね!


「キショルォォォアアア!!…………アアァァアァ!!………………ギョオアァアァアァァア!!」


蜘蛛が断末魔の叫びを上げる。

仕方ない、こればっかりはどうしようもない。無力な俺じゃあ倒さずにやり過ごすという方法がないのだから。


「ふぅ……………やっぱり生き物を殺すのは辛いな。」

「へー………あんなに簡単に鬼を殺したのにそんなこと言うの?」


俺の後ろの木の影からイリナが出てくる。


「鬼は自分の思考で敵に立ち向かってるように感じた。そうなるともう敵でしかない。でも蜘蛛は敵というか虫と同じで目の前に生き物がいる!そして、俺が生きる為には殺さないと!みたいなものを感じた。」

「ふーん……………もしさ、私たちと同じような人達と戦うことになったら君は殺すの?」

「………多分殺さないと思う。でも、俺の周りの誰かを殺されたりしたらそいつを殺すと思う。………いや、どうだろうか。殺さないかもしれないな………殺せないかもしれない。人殺しはしたくないからね。」

「………………周りの人ね、大切な人じゃなくて?」

「大切な人なんて俺の周りにいる全てだ。宏美も翔石君も雪さんも妹も弟も家族も、学校の人も、そしてイリナ。お前もだよ。」


あー言っててすごく照れ臭い。なんで人間ってのは思いついた時はそこまで恥ずかしいと思わないのに言った後に恥ずかしいと思ってしまうのだろうか?これじゃあ後悔しか生まれないじゃないか。


「…………」


イリナはむすっとして黙り込んでしまった


「どうしたのさイリナ。むすっとしちゃってよ……あ、最後に言われたのが腹立った?そんなことないぞー、俺の周りの人は差別なく、誰もが俺にとって最も大切な人なんだからな。」


しかも言われた順が大切な人ランキングになってしまうのなら宏美が1位でその次は翔石君だぞ?ないとかじゃなくてなんで出会って半年の人間を2位にするんだ。それなら遼鋭が一番の適任者だろ。


「………………」


むすっとしていたイリナの顔が段々苛立ちへと姿を変えてきた………………なぜ?悪いことは何もいってないぞ?もしかしたら嫌だと思ってるところも直したわけだし………………俺に落ち度はないはずなんだがな


「…………君の間違ってるかもしれないところを直すというのはいい行いなんだけど直す場所が間違っているよ。」

「ほぅ…………一体どこだ?可能なら訂正するけど」

「多分不可能だから言わないよ。それじゃあ今日はお開きね。君も今日は疲れたでしょ?」


不可能って…………俺の辞書に不可能という文字はないぞ。無理はあるがな。なんといったって理が無いのだからやりようがない


「いや、疲れてないぞ。今から木に放水をしようと思ってたんだけどな…………」

「いや、しなくていいよ。本当疲れてると思うからさ。」


後ろを向きながら話続けるイリナ。


「だから疲れてないっていってるだろ…………」

「…………わかった、それじゃあ木に向かって放水してて。私はそこらへんを散歩してるからさ。」

「OKだ。」


返事を聞くとすぐにイリナは雷と一体化して一瞬で森の奥へと消えていった。


「速いなー………………あっ、あいつまさかトイレでも我慢してたのか?道理でこの世界からでたがってたわけだ。」


誰だって外では抵抗あるよな。仕方ない。こればっかりは仕方ない。きっとイリナは今頃勇者領についているとこだろう。そしてトイレを借りていることだろう。

…………あれ?すぐに着くのなら別に現実世界にいかなくてよくない?…………あっ!きっと自分の家のトイレじゃないと抵抗があるんだな………………きっとそうに違いない!うんうん!納得した!


俺は上機嫌のまま木への放水を始めた。


一方イリナ


狩虎の予想に反してイリナは森でうずくまっていた。膝に顔を埋めて体育座りをしていた。


「ふぅーーーー………………腹立つなーあいつ!大切な人は全員とかおかしいでしょ!」


全員に分け隔てなく平等に、しかも最も大切に接することなんて出来るの?おかしくない?


「何あのよく浮気をする人の発言は[俺は全員に愛をあげてるんだ。キラッ]みたいな。あれ腹立つなー!」


最もって言ってるんだから1人を選びなよ!優柔不断?優柔不断だよあいつ!

決定力がなさすぎるんだよ!決定打も!……………なんで水を強く放出することが出来ないんだろう。それが出来たら蜘蛛もそこまで苦戦せずに倒せたはずだし……傷つけるのを怖がっている?傷つけたくない?……前日みたいにモンスターは大丈夫だけど人を殺すのは無理?……そういうことなのだろうか。そういう優しい考えをしているのかなー。

それじゃあ優しいから誰も選べない?だから誰もが1番となっているのか………優先順位をつけることは優しさではないの?

平等に愛を与えることが優しさなの?神じゃあるまいしそんなの無理だよ………不可能だ。……まぁ、これが一番しっくりくるからそれでいいかな。

イリナはこの考えを早々に切り上げた。考えること自体は好きだが集中力がもたないのだ。チョコレートが傍らにあれば長時間考え続けられるがあいにくこんな世界にはそんなものはない。あったとしても無糖のチョコレートを溶かしたやつに香辛料を入れて飲むというインディアンな物しかない。甘くないから大っ嫌いなのだ。


「んーー!考えはまとまらなかったけど目星はついたね。さて、全力で散歩をするかな!」


一歩一歩地面を踏みしめながらイリナは辺りを歩き始めた。




一方狩虎


「むむむむむ!!なぜだ!なんでこんなにも出来ないんだ!」


水を強く放出することが出来ない!なんでさ!この俺に不可能という文字は無いというのに!

このまんまじゃいけない。誰も守れない。ハッピーエンドにはなりえない…………いや、やっぱりなること自体がおかしいんだろうな。こんな俺が、無個性な俺がそんな都合のいい終わりを迎えれるわけがない。

でもやる!出来るまでやる!弟の光輝もそうしているんだ、兄がやらずにどんな背中を見るって言うんだ!


さらに30分後


うおおお!なんか水を一定の形に固定することが出来た!

狩虎の目の前には大きな水の柱がそびえ立っていた。


「いいねぇー、さながらバロック彫刻だ!イギリスとかフランスとかローマあたりの噴水を思い出される。」


そんなとこに行ったことはないが言ってみた。まぁ、気分だ。


「むむ?なんだこれは!?なんで水を固定出来るようになってるのさ!」


イリナが戻ってきたようだ。


「ふふっ…………どうやら俺には陶芸家のセンスがあるようだ。バロック彫刻の飯田と言ってくれてもいいんだぜ?」

「それを適用したら君が彫刻であるかのように聞こえるよ…………………」

「確かにな。この俺のたくましい体が彫刻になっているのかと思えば。いやはや。壮大だね。」

「腕立てもままならない奴が何言ってるのさ………」


なんだろう。イリナがさっきからずっと呆れてる気がするな………………きっと気のせいだろう!うん!俺に落ち度はないさ!あ、でもトイレを嫌なとこでさせたのは悪かったな…………謝らないと。


「イリナ。さっきはごめんよ…………不快な思いをさせてしまって。」

「…………まぁ、腹はたったね。」


えぇ!?腹立ててたの!?ま、まさかトイレにそこまでこだわる人だったとは………………見かけによらず几帳面なのだな(いや、見かけは几帳面なのだ。内面が全く違う)


「………ええーっとぉー。」


え?どうすればいいの?これはどうすればいいの?何をすれば許してもらえるの?


「………何すれば許してもらえます?」


ポカーンとするイリナ。あれ?話が噛み合ってない?おかしいな……腹を立ててたんだから何かをして償わなきゃいけないはずなんだけどな………


「え?何言ってるの?」

「………………え?いや、俺が配慮に行き届いてなかったからその、あの…………貴方にとって最も適した環境に出来なかったので反省をしているのです。」


さすがに「家でトイレさせれなくてごめんねー!」なんて言えない!俺のメンタルじゃそんなこと言ったら舌を噛み切って死んでしまうかもしれない


「え?……え?………適した環境?……はぁ?(何を言ってるんだこいつは…まさか私が狩虎を好きでそれで俺がなんかその言わなかったせいで私の望んだ通りにならなかったから可哀想だとか言いたいの?…………いや!ないから!そんなのないから!)……………いや、別に私に変に気遣って言って欲しかったわけじゃないんだけど…………」


別に私どうでもいいし………そんな言葉が小声で言われる。


「ああ、そうだ。俺にもっと周囲を気遣う能力があれば貴方に妥協などさせる必要などなかった。そしてイリナ………貴方に幸せなひと時を提供出来たのに!」


「な、な、何言ってんの!?!?」


バチスパコーン!


雷と一体化した平手がほぼ光速で俺の頬を捉える!


ぐるぐるぐるぐるぐるぐる!!


ドゴォォオオン!!


そのまま俺は空中で何回転もしながら地面へと落ちていく…………………


ああ、イリナの平手でほ、ほっぺが落ちそうだ……………。


「何言ってるのこいつはぁあぁあ!?!?」


イリナはそのままこの世界の出口まで走って行ってしまった。


「ま、まっ、待ってく……れ………………」


くそっ!起き上がれない!てか目の前が霞む……………なぜだ、なぜ俺は叩かれるんだ。俺の対応は完璧だったはずなのに………………


俺はそのまま意識を失った。



「ふっふっふっ……………ここはオラの出番だな…………………」


物陰から1人の男が姿を現し、狩虎の元へと近づいていく


「これを使えば……………………」


辺りはもう暗い。一体こいつは何をしているのだろうか?………………いずれわかるだろう。いや、この出会いはイレギュラー。こんなはずではなかった。こんなやついるはずがないのだ……………でもいてしまう。

いままではただ単なる予定調和だったが、これは確実にこの世界では起こり得ない事実。どこか矛盾しているのだろうか?…………きっとしているのだろう。

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