怒られたいお年頃
いつも通りの日常の為………放課後まではカット!
「俺は犯罪なんて起こさないから信用して!」
「信じたとしてもやはり男女が夜2人っきりで歩くなど危ないんですよ。どんな人だろうと何が起こるかわからないんです。だから今日は生徒会の仕事は無しにして早めに行った方がいいんじゃないですか?」
歓迎パーティーの準備のため、雪さんの家に行くことになった俺達は話し合いをしていた。たしかに翔石君の言う通りだ。俺のようなひ弱な人間じゃ、もしも何かがあったら雪さんを守ることはできない。万全を期すのならば早めに向かうべきだろう。
「そういうもんなのか?…………別に俺はいいけど雪さんはどうです?」
雪さんの方を振り向く。雪さんは右柄にある壁の釘をずっと眺めているようだ。………………話し聞いてないんだろうな…………
「………………いいですよ。」
と思いきや話は聞いていたらしい。横を向いたまま頷く。頷く時ぐらいこっちを向いてくださいよ。
「それじゃあそうしますか。」
翔石君の提案により早めに仕事を切り上げ雪さんの家へと向かう。
雪さんの家は俺の家とは逆、全くの逆!真逆ってやつだ。とにかく真逆にあるらしく学校の玄関を出てすぐに宏美たちと別れた。
「………………………」
「………………………」
いつも思うが無言だ。…………何を話せばいいんだ?好きな食べ物とかか?そういえば生徒会の会合の時はよくラーメンを食べてるよな…………ラーメンが好きなのかな?
「そ、そういえば雪さんはラーメンが好きなんですか?」
「………………?何故そう思うんです?」
頭の上に?が浮いているように見える。それ程までに不思議がっている。当てられた驚きとかそんなものは何もない。本当になんでこんなことを聞くんだ?みたいなそんな感じ。俺だってなんでこんなこと聞いてるのかわからないよ。
「いや!え、えーっと……いつも会合の時にラーメンセットを食べていましたから。」
「……………よく見てる……………好きってわけではない。ただ、ラーメン以外食べれるものがないんで。」
「え!?ら、ラーメン以外食べれないんですか!?…………え!?ら、ラーメン以外食べれないんですか!?…………え!?ら、ラーメン以外食べれないんですか!?」
「…………………何回聞くんです?」
「あ、ああ。すみません。驚きのあまり何度も聞いてしまいました。」
「…………………ラーメン以外にはマシュマロとケーキぐらい…………………それぐらいしか食べれない。」
ああ、だから歓迎会の時はケーキを頼んでいたのか………………すごい偏食だ。俺も結構な偏食だと思ってたけど雪さんと比べたらなんてことはない、普通だ。……………俺の個性がどんどん削られていく。
「そ、そうですか…………俺も嫌いなもの多いんですよ。椎茸とかイカとかタコとか…………」
「……………………そうですか。」
「…………そうです。」
「……………………………」
「……………………………」
はい会話終了!……………俺にしてはがんばった方じゃないのか?女性とこんなに喋るなんて去年の冬休み以来だ。(それも雪さんとだが)……………ふっ、どうやら俺の対女性レベルは結構上がってきているようだ。これなら生きているうちに噛まずに女性と喋れるようになるんじゃないか?
「………最近、思い詰めてる。」
俺がニヤニヤしていると雪さんから話しかけられた。なんか、俺ってニヤけてるときに話しかけられるのが多いな。
「…………誰がですか?」
「……………………」
雪さんは無言で俺を指さした。
「………俺が?まさか、美女に囲まれて幸せな俺が思い詰めるなんてありえないですよ。」
俺は笑った後一瞬だけ空を見上げた。未だに明るい空。しかし沈み始めている太陽はその赤みを増していく。
「気をつけたほうがいい。会長が思っているほど事態はゆっくりとは動いていない。」
「…………どういうこと?」
「そのまんまの意味。変わらなければ、きっと、大変な目に遭う。」
その言葉を最後に、ゆきさんは無言になった。
「…………………着きました」
それから5分後。とうとう雪さんの家に着いた。
「お、おお…………でかい!イリナさんの家並みにでかい!こ、この家にはエレベーターでもあるんですか!?」
「………………エレベーターはないです」
「そうですか」
「…………………」
「…………………」
今日何度目だろうか?いや、何度でも言おう。会話が弾まない!
「………………そ、それでは。家も分かったことなのでさようなら。」
「………………さようならです。」
家に招き入れられることもなく俺は帰って行った。何もかもが弾まない!
「なるほどね。つまり君は雪さんに家に招き入れて欲しかったと。」
どうやらイリナの用事はすぐに終わったらしく帰っている時に電話があった。(実は初日に番号を交換している)
そのまま表面世界に来てバックドロップを決められて今に至る。
「ねぇ、バックドロップをする必要あった?あった?俺的には全く必要がないと思うんだけど。」
「これは必要な儀礼だから。鯛焼きを食べる時に泳げ鯛焼きくん!を歌うのと同じようなものだから。」
「そんな儀礼ねーよ。」
「まぁ、とにかく。私がこれから不快に思ったら君にバックドロップするから、運が良かったら雷が落ちるからね。」
「そうか。俺は今年のおみくじ凶をひいたからそんなラッキー賞は得られないだろうな。」
今年の初詣は宏美と行ったわけだが宏美は大吉だった。俺は凶で宏美は大吉だ。持ってるものは沢山持てるし持たないものは何も持てない……………まぁ、宏美は凶を持つことが出来ないだろうからその部分では俺が優ってると言っても過言ではないな…………………はてしなく悲しい。
「そう。それは残念だね。ところで私がどこを不快に思ったのか聞かないの?」
「聞かないも何も。聞いたら何されるか分からないし、会話的には[どうせ俺が招き入れられなくて悲しく思ってる]ってとこだろ?[何言ってんだこいつ、気持ち悪い………]だろ?」
「実にハズレだよ君。牛を指差してこれって何?って聞かれてパイナップルって言ってるぐらい的外れだよ」
「的外れなんてもんじゃないな!目の前に的があるのにがんばって真後ろに穴あけてそこに投げ入れてるようなもんだな!で、答えは何さ。」
「さぁね、それぐらい自分で考えてよ。じゃないと成長出来ないよ?」
「自分で聞いといて!?……………ちっ!そうっすね、それぐらいしないと成長出来ないですよねぇぇーーー!!」
「うざったいなー!雷落とすよ!」
「え!?雷落ちる確率高すぎない!?」
「運が良かったんだよ。よかったじゃん幸運の持ち主で。」
「何もかもが当たっちまうんだよなぁ、バチも含めて。」
「んじゃあ綺麗に水に流せるようにしなきゃ、不幸に覆われ続けるよ。…………よし!木に放水始めー!」
シャバババァア!!
今日も今日とてイリナは散歩だ。
30分後
「どぬりゅああああ!!!」
ばしゃしゃしゃー!!
「うーん……………威力が上がってるのだろうか?いや、前回はバシャァアアア!みたいな感じだったからな!きっと成長しているだろう!…………っ!?」
俺が独り言をしながら試行錯誤をしていると何かの視線を感じた。ま、まさか…………………とうとう俺は相手の視線を感じれる様になったのか!?ははっ!これで俺もバトルマンガらしく派手な戦闘が出来る様になるに違いない!まぁ俺じゃ何もできないから無視するんだけど!
そのまま放水を続けた。
これまた30分後
「よーし!それじゃあこれから鬼よりもほんの少し強い敵と戦ってもらうよ!」
「ふっ、まぁ。今の俺じゃあ苦戦なんてするはずがないんだけどな。」
なんてたって敵の視線を感じられるほどに成長したのだから。花華と一緒にした変なポーズをとる。
「何さそのポーズ…………とにかく今度はこいつと戦ってもらうよ!」
背中のバックからボールを取り出し投げた。地面に当たると同時に光だし、出てきたのはでかい蝶々だった。羽の模様が目に見えなくもない怪しい蝶。鱗粉とかなんかを使って混乱状態にされそうだ。
「へっどうせ状態異常とか使ってくるだけだろ?そんな奴、俺の敵じゃあないぜ。」
「分かったよ。それじゃあ戦っといてねー私はいつものように散歩してると思わして見張ってるから。」
そんなことを言ってしまっていいのだろうか?それは言わないから効果があるのではないのだろうか?
「よっしゃいくぜ!」
右手に魔剣を携え蝶へと駆け出す。ずっと地面で止まっている、逃げる気配がない。
「これはすぐに終われるんじゃないか!?」
てい!
剣を蝶へと振りかざすがすり抜けた。いや、当たってはいるんだけどすり抜けた。まるで実像がないような。残像を切らされたような……………あっ!幻術か!?いつの間にかけられたんだ!?
辺りを見渡すとあのでかい蝶が何匹も、全員地面に止まっいる。イリナは俺の後ろで立っている。いや、散歩に行くふりして見るって言ってるんだから隠れて見ておけよ。
それよりなぜ蝶なのに飛ばないんだ?普通なら空を飛んでるはずだろうに。それに、一切攻撃をしてくる気配がない。まるで蛹のようだ。飛ぶことも出来ないし動くことも出来ない。敵をなんとかうまくやり過ごして蝶へと姿を変える……………蛹の様な蝶。とにかく、今は感想を抱いてる場合じゃない。この前の鬼みたく瞬間移動が出来るのかもしれないしいきなり攻撃してくるのかもしれない。どうして幻覚が見えているのかはこの際考えても意味がない。きっと自ずから答えは導き出されるだろう。俺は沢山いる蝶へと向かい、走り、攻撃して、走り攻撃してを繰り返した。もちろん全てに手応えがないわけだけど。
そして最後の一体となった時だった。辺りが一瞬歪んだ。そう思った瞬間俺の目の前にイリナがいた。辺りはうっそうと木々が生い茂るジャングル。その小さな一角でイリナは身を隠すように木にぶら下がって見ていた。どうやら散歩してるふりして隠れてみているというのは本当だったらしい。
「……………はい?なぜここに?」
「それはこっちのセリフだよ。なにか黒色のドームに入ったかと思ったらこんなとこに来てさ。」
ニヤニヤと笑っている。くそー!理由を知ってるくせに!
どうやら俺はずっと黒色のドームに入っていた様だ。だけど景色はずっと変わってなかったわけだし……………つまり外面が黒色のドームの内面はいろいろな景色を投影、映すことが出来るのだろう。
「ふぅーん。でも、それじゃあ、なんで解いたんだ?」
後ろを向くと蛹がひび割れていた。ちっ!どうやら現れた瞬間から幻覚を見せられていたわけか!それに、解いたのはもう蛹じゃないからか。戦えるからか!
上を見ると目玉模様の羽が生えている青色の女性が飛んでいた。でも女性と呼んでいいのだろうか?いや、そりゃ女性は女性なのだけど。人間の女性のようだけどツノは生えてるし鉤爪はあるし、おまけに牙もある。どちらかといえばメスの方がいいんじゃないか?
とにかく、幻覚で見せられたようなただでかいだけの蝶ではない。ひどく好戦的そうなやつが誕生していた。水当たるか?
シュババババ!
サッ!
案の定躱された。
「プシャァァアア!!」
そしてそいつはそのまま雄叫びをあげながら突っ込んで来た!くそっ!剣を使って切ってやる!剣を振るうが蝶はさっと躱して通過するとまた攻撃してきた。くそっ!休む暇がない!とにかく剣を振らないと!剣を振るうが軽々と躱されすぐに攻撃してくる。好きあらばと左手から水を出すがさっぱりと当たらない。
サッ!サッ!シュ!シュシュシュ!シュババババ!!キンキンキンキンキン!
そしてたまに蝶から鉤爪の連続攻撃をくらい、その都度俺は防御に徹しなければらなかった。…………ん?そういえばイリナは光剣を伸ばしてたよな…………いや、あれは光剣だからなのか?でも魔剣は光剣と同格の剣なんだから魔剣も伸ばせるんじゃないのか?短くできたわけだし…………………試すか。
剣を一線に薙ぎ払い相手を牽制し、俺は剣へと力を集中させた。すると剣の周りに青色の何かが揺らめきだす。
……………伸びねーな…………やはりこれも力の差とかなんかなのか?
「プシャァァアア!」
蝶は雄叫びをあげて飛んでくる!くそ!考察をする時間もないか!
サッ!
剣を振った瞬間青く光っていた剣は黒色に光った。長さは変わらない。
「プシャァァアア!アッアァァァア」
だが蝶の右翼は切られていた。よく見ると蝶の後ろの木が倒れていく……………見えない斬撃?いや、飛ぶ斬撃?なんだこりゃ…………
「まぁ、それはさておき蝶の羽根はもいだ。もう飛べないから楽勝だな。」
「プシャァァアア!!!!」
最大限の威嚇をする蝶へと俺は歩みを進める。飛べないからと言って牙はあるし鉤爪はあるのだ、楽勝とは言ったが油断は出来ない。
キン!
剣と鉤爪が交差する。どちらも片方を殺す為に刃を振るい合う。くそっ!はええ!!右!左!下!うお!左右同時かよ!
キン!キン!キン!キーン!!!
相手の足払い攻撃は剣を相手のふくらはぎに刺し止め、ついでに地面へと刺す。それを踏み台として空へと逃げ、両側からの攻撃を躱した。
「プシュアァァア!!アッアッアウウウウア!!!」
蝶が悲痛な声をあげる。くそっ人にしか見えない……………人殺しはしたくない。俺は剣を抜き蝶に逃げるように言い、その場を去った。蝶は後ろから攻撃してこなかった。
「いよ、イリナ。終わったよ。」
イリナの元へ歩いて行ってみたが眉間にシワを寄せて何かを考えていた。
「どうした?明日のお前の歓迎パーティーのことでも緊張してるのか?」
「確かにそれは緊張してるよ。ヘマをやらかさないか不安でね。でも私が考えてたのはそうじゃない。なんで君はあんなに魔剣を使えるの?」
「ああ、なんか斬撃が飛んだ?それとも伸びたのが見えなかったのか?どっちかは分からないけどなんか起こったな。」
「魔剣の能力は飛ぶ斬撃らしい。斬撃が飛ぶというかカマイタチみたいに風で切るみたいなものなんだって…………いや、そんなことよりなんでそれを操れるのさ、あれは魔族の幹部以上の実力じゃないと操れないんだよ?」
「え?そうなのか?……………そう言われても使えるんだからどうしようもないでしょ…………ちなみに光剣の能力は?」
「ふーん……………光剣の能力は伸縮と光と一体化。要するに超高速の一撃を相手に叩き込めるってやつさ…………知ってるでしょ?」
「ああ、知らない。夢に出てこなかったんだ剣の能力は。ったく俺の夢との情報の誤差が半端ない。一体どうなってるんだ!?それともう二つ!この世界にはモンスター以外の生物はいないのか!?そして俺はいつまで学校の制服のまま戦わなくちゃいけないんだ!?」
なぜかイリナは制服のままこの世界に来ると鎧に身を包んでいる。対象的に俺はどう頑張っても制服のままなのだ。
「一つ目の質問に関して人はいるよ。勇者領で市場を開いている。二つ目の質問は分からない。私はいつの間にか鎧を着てるんだよね。どうやらあれは真の勇者であるものにしか現れないし着れないらしいよ。」
「ほーへー。つまり俺は真の勇者ではないから勇者領に行って鎧を買う必要があるってことだな!」
「そうなんだけどここから距離があるんだよね…………それこそワープ出来る人間が必要であるほどに、」
「ああ!確かに!結構離れてるよな!」
勇者領に人がいることは知らないし服を売っていることも知らなかったがどこら辺にあるかだけは知っている。本当、俺の記憶はあやふやだ、きっと昨日の晩御飯を聞かれても思い出せないだろう………思い出せてしまった………いや!一昨日の晩御飯なら思い出せないだろう………思い出せてしまった!!!くそ!どうなってやがる!記憶力がなくなったとかそういうのはないのか!?全く分からん………なんだこれ?なぜカイの記憶は間違いだらけなんだ?いや、なぜカイの記憶を俺は持っているんだ?おかしすぎるだろ。
「とにかく!君は装備以前に悲劇的なほどに弱っちいんだからまずは鍛錬をしないと!」
「……そうっすね…………」
何も言えない、正論だ。正論すぎて何も言えない………泣きそうだ。
「悲しんでないで放水始めるよ。」
「へーい!」
そしていつも通り1時間の放水は終わりイリナの家を出てご飯を食べて風呂に入って寝た。
明日の歓迎パーティーが楽しみだ…………ケーキを買ってなんかを買って、色々買って。とにかく楽しくなるようにしなくちゃいけない!とにかく楽しく!……………雪さんの家の中はいったいどうなっているんだろうか?外見的にはイリナの家と同じ大きさだからな………さぞかし豪邸なのだろう。
楽しみだなぁ………ちゃんと盛り上げないと。




