予告は想像を超えれない
「そうだな………昨日の夜考えたんだが土曜日にしないか?昼ぐらいから集まってワイワイしようよ。」
今日は塾があるから尚余裕がない。
「昨日やり忘れたイリナさんの歓迎パーティーは土曜日にやることになったんですが…………ここでひとつの問題が浮上してきました。」
今俺たちは食堂にいる。食堂に集まる時は前にもあったように何かを決める時だ。
「問題ですか………………予算が足りないとかですか?」
「予算は足りてるんですよ。俺がマンガを買わなければいいわけですから。そんなことよりもより重大なことがあるわけですよ。」
「…………あれですか。イケメン要因が少ないといった所ですか?」
「ああ、確かにそうだな。それを忘れていた。宏美だけじゃ心もとない。」
「私を男とカウントしているだけで十分な問題だと思わないかい?」
「そうだな。確かには○な愛を男だとみなすのは難しいな。」
「そういうことをいってるんじゃない。私は生まれた時からずっと女だって言ってるんだよ」
「知るか。俺から言わせれば今まで男だった奴が急に性転換した気分なんだよ。」
「性転換って…………どんだけ私は男だと思われていたんだ。」
「いや、まず。ずっとジャージだったし、制服もスラックスだったし、何よりもお前自分のことを僕って言ってたろ。」
できるイケメンってなんか自分のことを僕って言うんだよな。なぜかは分からないが………そしてそのできるイケメンである宏美はその条件に漏れることなく自分のことを僕と言っていたのだ。まぁ、いまだに一人称が僕の翔石君はできるイケメンというよりかはガリ勉の天才という感じだけど。別にブサイクとか言うわけではないが身長が168センチと、なんと言うかイケメンではないのだ。
「むぐっ…………あれは……………その…………………んっと………」
「はいはい!無駄話はそこらへんでさっさと話を進めますよ!」
「ああ、そうだな。問題点を言うんだったな。簡単に言えばどの家でやるかが問題なんだ」
「え?そんな簡単なことですか?それなら私の家でやればいいじゃないですか。」
イリナからの嬉しい提案。だが今のこの状況じゃその提案は却下だ。
「いや、それはダメなんだ。なんで歓迎パーティーを歓迎する人の家でやるんだって言うお話ですよ。まぁ、気分の問題ですね。」
「うーん………そうですか。そういうものですか………………」
「そして俺の家はダメだ。妹と弟がいるし何よりも狭いし、妹と弟がこの機を逃すわけがない。絶対君たちに焼き鮭を20匹食べさせようとしてくるぞ。」
「どういうことですか!?言ってる意味がよく分からないんですけど……………」
「ああ、知らない方がいいですよ。これを知ってしまったが最後、きっと俺の妹と弟が君たちの家に押しかけて焼き鮭を毎晩渡しに来ることになりますから……………」
「な、なんですかその怖い話みたいな喋り方は!怖いというかどちらかというと毎日お裾分けをしてくれるいいお隣さんのイメージしかわきませんよ?」
「最初は誰もがそう思うんだ。だけど毎日ですよ?毎日毎日鮭が増えていくこの恐怖がわかりますか?食べ続けないと冷凍庫が鮭に侵食されるこの恐怖が……」
現に今それを俺は味わっているわけだが。
「はい!つまり会長の家は無理ですね!僕の家はマンションなのでバカ騒ぎすることは出来ませんし、宏美先輩もどうせ無理なんですよね?だからこんな話になっているのですから。」
「うん。そうなんだ。私の家でやりたいけど土曜日は両親が家にいてね。両親がいる時は私の家に人を入れることが出来ないのさ。疲れてるんだとよ。」
「そういうわけで後は雪さんだけなんですが…………」
雪さんの方を向く。正直雪さんは謎多き美人と言っても過言ではない。どこに家があるかも、両親の名前も、誕生日もよく分からない。分からないというか自分のことをとにかく隠しているような印象がある。だからきっと彼女の家でパーティーを開くなど彼女は許可してくれないだろう。
「…………………いいですよ。」
「え?いいんですか?」
「いいですよ。それじゃあ明日か明後日にでも下見として私について来てください。家に来てください。………来れる人は。」
まさか雪さんの家が大丈夫だなんて思いもしなかった。これは…………今まで謎だった雪さんの秘密を知るチャンスなんじゃないか!?うおおおぉぉぉおお!楽しみが増えたぞ!
「それじゃあ明日俺は是が非でも行きますね。」
「私は明日は用事があるからなぁー明後日は土曜日だし。ってことで案内してくれ。」
「僕も明日は図書館に本を返さなきゃいけないんですよ。だから案内してください。」
「水曜日は予定が入っていますので明後日は案内してください。」
え?俺一人?女性の家に俺一人で行くの?そ、そんなぁ…………恥ずかしいじゃないか!
「翔石君!本の返却なんて今日行けよ今日!俺一人で女性の家に行くなんて荷が重すぎるんだよ!一緒に来てくれ!お願いだ!」
「まだ読み終わってないんですよこの本。」
翔石君が傍から本を出す。
「分厚いな!なんだそれ!?本当に本なのか!?辞書じゃなくて?あっ………あれだろ?僕は広辞苑を小説のように読みます。みたいなあれでしょ?」
「違いますよ。内容は物理と数式との関係性とそれに関する考察。それを現代社会ではどう生かされているか、大雑把に掻い摘んで言えばそんな感じですかね」
「ああ、うん。参考書みたいなやつだね…………読書の時ぐらいは脳を使いたくないな。」
「よく言うじゃないですか。人間、考えることをやめたら終わりだって、パスカルは[人間は考える葦]だとも言ってますし。多分、人間の強みは投擲能力でも、器用な手先でも、二足歩行でもなくて考え続けることが出来ることなんじゃないですかね。」
「それはどうかな。俺から言わせれば器用な手先があったからこそ。できることが多かったからこそ脳が発達して考えることが出来る様になったんだと思いますけどね。」
人類の祖とも言われてる猿人の脳の容積は450ccである。(中学の時の社会の歴史の教科書に載っていた)それから段々と脳が発達していったのできっと俺の考えることは正しいのではないだろうか。
「確かにそうかもしれませんね。ま、歴史なんて僕から言わせれば目で見ることが出来ない酷く不確かなものなので全くもってどうでもいいんですがね。」
「んっ、そうだな。どうでもいいな。てことで明日は俺と一緒に雪さんの家に行こうよ、な?」
「だあーかあーらあー無理ですって!本は読み終わってませんし返却期限は明日なんですから!絶対に無理ですよ!」
今にも本を投げつけようとするほどの剣幕でそう言われると俺的には折れることしか出来ない。
「分かったよ…………一人で行くよ……………」
「…………………そんなに私と2人っきりは嫌ですか?」
いつもと同じ無表情な顔で言う雪さん。無表情だからだろうか、なぜか悲しそうに見えた。無表情なのに、そんな表情が見えた。
「いやっ!そう言うことではなくてっあっあ、あ、あ、あっと女性と2人っきりでその……女性の家に行くってことがなくて………その…………」
「おいおい何言ってんだよ狩虎。私とよく私の家で遊ぶ為に一緒に2人っきりで帰ることが良くあったろうが。」
「俺はお前のことを女性と思ったことはない。男としか思ったことがない。」
「はははっ!おい狩虎。そろそろ私、泣くぞ?」
笑顔でそう言われてもなんの説得力もないぞ宏美よ。
「ああ、うん。思わないように努力する。」
「私とも2人っきりで私の家に来たことがありますよね?」
「ん?ああ、俺はイリナさんを気軽に話せる男友達と見なしてますから。」
「えええ!?2人っきりで帰ったことがあるんですか!?いや、そんなことより、イリナさんを女性と思っていないなんて…………会長の理想像は高いですね!いっぺん死んでその価値観変えた方がいいんじゃないですか?」
「違うんだ!顔面偏差値が足りないとかそういうことじゃないんだ!そんなこといったら俺の戦闘力は5のゴミですよ?そうじゃなくてだな…………んーっと!なんて言えばいいんだ!」
表面世界のことについて言いたいけどそれは俺とイリナの秘密だし、何よりイリナは素の自分を隠してるなんて知られたくもないだろう…………あーめんどくさい。
「とにかく!可愛くないからとかじゃなくて色々とあるんですよ!」
「へー………そうですかぁ。」
翔石君と宏美から疑いの眼差し。雪さんはと言うと食べていた味噌ラーメンのスープに浮いている油を1箇所に集めてでかい油にし、それを眺めながら満面の笑みを浮かべていた。
うーん…………やはり謎が多いな雪さん。
「んじゃあまとめると。雪さんの家でパーティーを土曜日に開くけど、皆雪さんの家を知らないので明日俺が場所を憶え、明後日は俺が皆を雪さんの家に案内するってのでいいんだな!」
皆が頷くと予鈴がなる。そろそろ戻らなくては。
皆で塊になって教室に戻り授業を受け、放課後となった。




