黒と無色の開演曲
2020年12月29日編集
「おいおい狩虎ー。なんでこんなに遅くに来るのかなー?なんでこんなに遅くにイリナちゃんと一緒に来るのかなー?教えてくれよー。」
今俺は生徒会室で締め上げられている。いや、間違いだな。挟み潰されている…………が適切か。どこを?お腹をである
「痛い!痛いから!締められすぎて息出来ない!このままじゃ俺痩せちゃうから!くびれちゃうから!」
「それはですねひろみん。ミフィー君は何か悪いことがあって落ち込んでたらしいんですよ。さっきまで[ああ、死にたい]、[彼女………欲しいなぁ]という二言をずっと連呼されていましたからね。」
「そんなこと言ってないからね!?しかももし言っていたとしたら、俺が落ち込んでいる理由は彼女できないことだろうが![何か悪いこと]なんてボヤかさずに率直に言ってくれ!…………いや言ってないんだけどね!?」
「狩虎……………そこまで追い詰められてたのか…………。ごめんよ、もう少し早く気づいていれば身代わりの彼女ぐらい連れてきてやれたのに………」
宏美が結構本気で俺を哀れむ様に見ていた
「俺を哀れむなぁぁぁ!それと身代わりの彼女ってそんなのいらないから!そんな愛のない関係いらないから!」
「愛の無い関係ですか……………それじゃあ貴方にとって愛の有る関係を築ける人は誰なんですか?」
ちぃ!来やがったな恋バナ!どの学年でも、どの年でもこの恋バナというやつは大きな力を持っている。正直に言えばうざったい。宿泊学習とか修学旅行でよくこのての質問をされたけど返答に困ったものだ。
「んーーー…………そうですねぇーーー。それが実はいないんですよねー」
「!!!………嘘は良くないですよミフィー君」
イリナからまたも訝しむ目。これだよ、これがあるから恋バナは嫌いなんだ。俺は本当に好きな人なんていないのに。意中の人もいないのにこうやって嘘だと責め立てられるんだ……………そしていないからずっと何も言わなかったら「あーあ、空気壊したー。」みたいなことを言われる。俺もいたら話すさ!いないんだから仕方ないだろ!
「いやイリナちゃん。こいつまじで好きな人がいないんだよ。小学生の頃からずっと、一部からはゲイなんじゃないかとも言われてたからね。」
「いらんこと言わなくていいから宏美。まぁ、つまり俺には好きな人がいないんですよね。信じてくれるかどうかは分からないですけど。イリナさん。マジで俺のこの手の話は、これ以上発展しませんからね。」
「……………それじゃあひろみんの為に信じてあげます。」
「おお、ありがとう。それでなんだっけ話は………そうそう。別に俺は彼女とか求めてないから、全然。楽しく生きられたらそれでいいんだよ。」
「つんまんねーの。」「つんまんねーですね。」「………だからモテない。」
うるせぇうるせぇ!!モテなくても全然悲しくないもん俺!!そういう人生だって理解してるもん!!
「こんな居心地の悪い場所にいられるか!帰らせてもらうよ俺は!」
「え?逃がさないけど?」
宏美とイリナが俺の前に立ち塞がって来やがった!ちぃっ!小癪な真似を!
「私達が君に、愛とは何かを説き続けてあげるよ。さぁ早く、椅子に座るんだね。」
「いやだぁあ!!愛なんか要らないんだぁ!!」
「くっくっくっ………観念したまえ。自身のチェリーさを露呈させたのが運の尽きだ。」
こうして俺は宏美達に愛について教えられた。全然わからなかったが、頭が痛くなったのは確かだ。………ああ、これが勉強嫌いな学生が授業中によく経験していることなのか。身に染みたなぁ。
「…………………。」
放課後、俺は宏美に別れを告げると我が家ではない別の場所に向かった。建物と建物の隙間、小汚い裏道。俺はそこを眺めた後、去年のことを思い出す。
「やはり俺はどこまでも醜い。」
そして家へと戻った。




