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ブラックアンタッチャブル  作者: 巾着きのこ


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第3話『部屋を開けたらSランク』

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X→@kinchakukinoko_


「ふぅー、美味しかった! エルさん、今日はご馳走様でした!」


「喜んでもらえてよかったよ。じゃあ、また店でね」


王都一番のケーキ屋を出て、夕暮れの街でコレットと別れたエル。私服の余韻と甘い香りを思い返しつつ、一人で宿路を歩く。


(はぁ〜、私服のコレットちゃん可愛かったなぁ。このまま宿にお持ち帰りして甘い夜……なんて妄想もしたけど、まぁ今日じゃないな。焦らずじっくり落とすのが男の嗜みってやつよ)


そんなスケベな妄想をしながら自分の宿の部屋前まで到着したエルだったが、鍵穴に鍵を差し込もうとした瞬間、ピタリと手が止まった。


(……ん? 鍵穴の周り、なんか微妙にひん曲がってねぇか……?)


手応えのないドアノブ。明らかに「外から強引に解錠された」ような異変を感じつつ、警戒しながらゆっくりとドアを押し開けた——その瞬間。


「……お帰りなさいませ、エル殿」


「ぶはッ!?!?」


部屋の奥、床の上にピンと背筋を伸ばして正座していたのは——ドレス風の勝負服に身を包んだSランク冒険者、シオンだった。 胸元が大きく開いた勝負ドレスから、豊満で綺麗な爆乳の谷間が惜しげもなく露わになっている。しかも部屋の灯りは落とされ、ムード満点の薄暗さだ。


    挿絵(By みてみん)


「な、ななななんでシオン様が俺の部屋に!? っていったい鍵は!?」


「言ったでしょう、宿は把握していると。鍵など私の剣技(物理)にかかれば造作もありません」


(不法侵入&器物破損じゃねぇか!!)


シオンは耳まで真っ赤にしながらも、意を決したようにすっと立ち上がり、床の上からエルを潤んだ瞳で見つめた。


「明日の約束……ステーキ店も考えたのですが、人目のある場所よりも……貴方と『二人きり』になれる場所が良いと思い、先回りさせていただきました」


(あの勢いならもしかしたらと思ったけどやっぱり押しかけてきたか……そして勝負服で俺の部屋にいるってことは、それなりの覚悟決めてきたってことだよな。女に恥をかかすなってじぃちゃんの教えだ)


エルは一瞬で「本気の男の顔」へと切り替えると、ニッと口元を緩めてゆっくりと歩み寄った。


「シオン様、俺も男です。ここでシオン様のように素敵な女性を不法侵入だと追い返すほど失礼な教養は持ち合わせておりません。2人で熱い時間をすごしてよろしいですか?」


「〜〜〜っっ///!? あ、あ、あ……あ、熱い時間……ッ!?」


エルの妙に気取った、けれど覚悟と情熱の籠もった言葉に、シオンは顔を爆発しそうなほど真っ赤に染め上げた。しかし、逃げるどころか潤んだ瞳で必死にエルを凝視する。


「し、失礼だなんてとんでもありませんッ! むしろ……光栄です! 先ほどの森で、貴方は私の防壁どころか……私の『心(不可侵領域)』まで強引にこじ開けて抱きしめてくださった……! 能力の謎を解き明かす前に、私のすべてを受け止めていただくのが、剣士としての……いえ、女としての筋というものです……っ!!」


(いや、筋って何だよ!? 相変わらず理屈は意味不明だけど、オッケーってことだな!!)


エルの視線が、勝負ドレスから溢れ出そうな極上の爆乳に吸い寄せられる。だがその瞳には、単なるスケベ心だけでなく、覚悟を決めた男の熱が宿っていた。


「俺、シオン様みたいな超カッコよくて爆乳な女の子、大好物だから。途中で『やっぱナシ』とか言われても、もう止まれませんよ?」


「と、止まらなくて結構です……ッ! むしろ、加減などなさらないでください……! 貴方の……その『神級の波動(愛)』で、私を壊す勢いで満たしてください……ッ///!」


(神級の波動……? また変な単語出てきたけど、まあ気合い入れて激しくいけってことか!)


「言ったなシオン様……後悔しないでくださいよ!」


エルはシオンのしなやかで柔らかい肩を掴み、そのままベッドの上へと押し倒した。


    挿絵(By みてみん)


「あっ……ッ///!? 破、破廉恥な……いや、これが試練……ッ!」


「試練とか言ってる割りには、顔真っ赤で可愛すぎです……ッ」


勝負ドレスの複雑な紐に指をかけ、エルがその豊満な身体を抱き寄せると、シオンは熱い吐息を漏らしながら固く目を閉じる。

そのまま、二人の熱い夜は更けていき——。


「……んあぁ〜……」


翌朝。窓から差し込む眩しい朝光に目を覚ましたエルは、大きなあくびをしながら体を起こした。


(はぁ〜……マジで最高の夜だった……。Sランク様、体柔らかすぎだろ……)


極上の余韻に浸りながら横を振り返るエル。 しかし——隣にいるはずのシオンの姿はどこにもなかった。

ベッドの上にはシオンの温もりすら残っておらず、シーツにはシワひとつない。まるで昨夜の出来事が夢だったかのように静まり返っている。


「……あれ? シオン様……?」


首をかしげながらベッドを抜け出し、部屋を見回すエル。 脱ぎ散らかされていたはずの服も綺麗に片付けられており、テーブルの上にぽつんと一枚の紙切れ(羊皮紙)が置かれているのに気づいた。

エルは嫌な予感を抱きつつ、その手紙を拾い上げて目を通す。


『エル殿へ。 昨夜は貴方の底知れぬ深淵(愛)に触れ、剣士として、そして女として至上の刻(とき)を過ごさせていただきました。貴方の「神級の波動」の前に、私は何度も自我を失いかけました……。 ですが、今の私の器では、まだ貴方のすべてを受け止めるにはあまりに未熟。このまま貴方の愛に甘えていては、私は剣士として破滅してしまいます。 ゆえに私は、さらなる高みを目指し、修行の旅(武者修行)へ出ます。貴方にふさわしい真の伴侶となるべく、必ずや強くなって戻ってまいります。私の体を刻んだ男として、首を長くして待っていてください。 追伸:破壊した宿の鍵は私の剣技(錬成)で修繕しておきました。 ——シオンより』


「……は???」


手紙を読み終えたエルは、素で固まった。


「いやいやいや!! なんであのノリで一晩過ごして朝起きたら修行に出てんだよ!! 意味が分かんねぇよ!!」


さらに手紙の追伸に視線を落とし、綺麗に元通りになっているドアの鍵穴を見つめる。


「あと剣技で鍵を破壊して侵入しておいて、剣技で完璧に元通り直して去っていくんじゃねぇよ!! 無駄に技術が高すぎるだろ!!」


朝の静かな宿屋に、エルのツッコミと絶叫が虚しく響き渡るのだった。





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