NO・32
涙は、止まらなかった。
どうあがいても、目から零れ落ちる生暖かい雫が後から後からあふれ出て・・・私は、泣きつづけていた。
泣きつづけることしか、できることも無くて、私はその場に崩れ落ちる。
どうしてよ・・・どうしてなの?人殺し・・・人殺し・・・人殺し!
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私は絶叫して、天を仰ぐ。悲しげに鳥が飛んでいく。
雲が青いはずの空を塞いでいた。
そのときだった。
「・・・?!」
後から口をふさがれた。
思い切り引っ張られる。
「んー!」
水を使う暇もなく、私はスプレーを吹きかけられ、深い眠りについた。
「仍!」
斗鬼は叫んで森を探しつづけた。
仍が見つからないことに、苛立ちが増す。
彼の周りを火が飛び回る。それほど、彼は困惑していた。
力を制御できないほど、彼は苛立っていた。
飛び散った火が近くの木を焼く。
不意に、彼は足元に引きずられたような不自然な跡が残っていることに気付いた。
「仍・・・」
「よぅ、斗鬼」
「・・・!」
驚いて振り返る。
そこには羽織が仁王立ちしていた。
「久しぶりだな」
斗鬼は、そういう羽織を驚いて見つめる。
「仲良く語り合おうじゃないか、わが友よ」
「お前は、友なんかじゃない!」
思わず言い返す斗鬼。
にやりと笑い返す羽織。
二人が見つめあい、その間の空気が凍ったようだった。
「なぁ、斗鬼も仍も、どうしたんだろう?」
日向が隣にいる日和に向かってつぶやいた。
もう、ナイトと呼ぶことをあきらめている様子だ。
それを「ナイトだ」と訂正して、日和が続ける。
「いないって・・・何があったんだろう?」
「斗鬼のあの驚き方も、尋常じゃないだろう」
二人は顔を見合わせた。
「・・・調べてみる?」
日和の言葉に、日向がうなずく。
二人は瞬間的に、市場に走っていた。
比較的楽観的な日和に比べ、日向は心底不安を感じていた。
何か、嫌な予感がする。
当たらないことを祈って、情報をかき集めた。




