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【20万PV突破・毎日更新中】転生したら錬金術が得意な貴族家の女の子でした  作者: 双葉アリア
第三章 水面下の綻び編

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閑話 陛下の悪巧み、一日目

ーーセレディア王城・第一会議室


「あー……びっくりした」


陛下の声が会議室内に広がる。


「と言っても、あれは何かを察した表情でしたが……」


一人の重鎮が苦笑を浮かべる。


「やはりそう見えたか?」


「ええ。明らかに『何か隠しているでしょう?』という顔でしたね」


「…………」


陛下は額に手を当てる。


ほんの少し前。


何の前触れもなくミストルティン様がこの場へ姿を現した。


ただそれだけなら、ここまで慌てることもなかった。


問題は――


この会議の内容だった。


「まさかこのタイミングでミストルティン様がお戻りになるとは……」


「本当に心臓に悪い」


「陛下でもそういうことを気になさるんですね」


「当たり前だ!」


一拍。


「もしエレノアに知られてみろ!」


陛下は机を軽く叩く。


「絶対に『聞いてません!!』と言って戻ってくるぞ!」


「……否定できませんな」


「むしろユグアッシュ王国から転移してきそうですね」


「やめろ。想像させるな」


会議室に何とも言えない沈黙が流れる。


「ですが、ミストルティン様は何も仰らなかったのでしょう?」


「ああ。ただ――」


陛下は眉間に皺を寄せる。


「最後にこちらを見た時、妙に笑っていた」


「…………」


「…………」


「バレてません?」


「言うな!!」


再び会議室に陛下の声が響く。


「と、とにかくだ!」


陛下は強引に話を切り替えるように、机の上に広げられた資料へ視線を落とした。


「本人が帰国する前に、可能な限り進めるぞ」


「本当に続けるんですか?」


「ここまで来て止められるか」


「ですが、エレノア伯爵には一切許可を――」


「完成してから報告すればよい」


「それを世間では事後報告と言うのですが」


「…………」


「陛下?」


「では、食堂建設計画の続きを始める」


「誤魔化しましたね?」


「とりあえず人員の確保は?」


「「「無理やり話を変えましたね」」」


「オホン!!」


陛下はわざとらしく咳払いをする。


「それで、人員の確保はどうなっている?」


「……話を戻す気はないようですね」


「ない」


「開き直りましたね……」


重鎮の一人が呆れたようにため息を吐く。


「一応、料理人については候補を何人か選定しています」


「一応?」


「そもそも本人に無断で進めている計画ですからね?」


「そこはもういい」


「よくありません」


「それで?」


「…………」


もはや何を言っても無駄だと悟ったのか、重鎮は手元の資料を捲る。


「現在、王都内の料理人を中心に候補者を二十七名まで絞っています」


「多くないか?」


「陛下が二十四時間営業にすると仰ったからでしょう!!」


「…………」


「普通の食堂ならここまで必要ありません!!」


「だがエレノアならやりかねないだろう?」


「本人が言ってないことを先回りして実現しないでください!!」


「どうせ後から言い出す」


「…………」


「…………」


「否定できないのが腹立たしいですね」


「だろう?」


何故か陛下が得意げな表情を浮かべる。


「それに、パンと弁当だけでも既にかなりの客が訪れている。食堂を併設すれば今以上になるのは目に見えている」


「それについては同意しますが……」


「なら問題ない」


「本人の許可という最大の問題が残っています」


「…………」


「陛下?」


「次。建物の進捗は?」


「また逃げましたね?」


「いつもエレノア嬢に翻弄されているんだから、こういう時くらい協力してくれたって良いではないか!!」


陛下がとうとう机を叩いた。


「突然とんでもない物を作ったと思えば王城に持ち込んでくる!」


一拍。


「気付けば新しい薬が増えている!」


「まあ……」


「気付けばアトリエでサンドイッチと弁当を売っている!」


「それはそうですが……」


「農場を作らせれば、いつの間にか規模が大きくなっている!」


「いくつか陛下がノリノリでやったものも混じってますね?」


「というか農場に関してはガッツリ……」


「もうこの国終わりだよ……」


「待て!!」


陛下が勢いよく立ち上がる。


「何故そうなる!!」


「だって陛下、エレノア嬢に振り回されていると仰いますが……」


一人の重鎮が指を折りながら数え始める。


「農場建設を許可したのは陛下」


「うむ」


「護衛隊を百人規模まで増員したのも陛下」


「必要だったからな」


「アトリエの増築にも前向き」


「利用者が増えているから当然だ」


「そして今度は本人に無断で食堂を建設」


「…………」


「しかも二十四時間営業を提案」


「…………」


「料理人の確保まで王城主導」


「…………」


「陛下?」


「……何が言いたい」


「エレノア嬢に一番ノリノリで乗っかっているの、陛下では?」


「…………」


「…………」


「…………」


「次の議題に移るぞ!!」


「図星だ!!」


「図星ですね」


「陛下も大概ですよ……」


「うるさい!!」


一拍。


「不敬罪で投獄してもいいんだぞ!?」


「職権濫用という言葉が見事に似合う言動なんですが!?」


「国王だぞ!?」


「だから駄目なんですよ!!」


「ぐっ……」


「というより、我々全員を投獄したら誰がこの計画を進めるんですか?」


「…………」


「料理人の選定」


「…………」


「建物の建設管理」


「…………」


「食材の仕入れ先との調整」


「…………」


「それからエレノア嬢にバレないようにする工作」


「最後のは言うな!!」


「一番面倒なんですが!?」


「それについては私も申し訳ないと思っている!」


「自覚あったんですか!?」


「当然だ!」


「だったら本人に許可を取ってください!!」


「それでは驚かせられないだろう!!」


「やっぱりそこが目的じゃないですか!!」


「違う! 国民の利便性向上が第一だ!」


「ではエレノア嬢に伝えても?」


「それは駄目だ」


「もうこの国終わりだよ……」


「二回目だぞ!!」


「まぁ……そういう陛下なのに陛下らしくないとこがいいんですけどね」


「で! 建物の進捗は!?」


「はいはい……」


重鎮の一人が手元の資料を捲る。


「建物については、基礎工事が完了しています」


「うむ」


「一階部分の外壁もほぼ完成。厨房についても予定していた区画の施工が始まっています」


「…………」


「給排水設備については、アトリエ側の設備を参考にしつつ別系統で整備中。食材保管庫についても――」


「待て」


「はい?」


陛下が資料を見る。


「早くないか?」


「急げと言ったのは陛下ですよ?」


「言ったが……」


「エレノア嬢が帰国するまでに、可能な限り完成させろと」


「言った」


「予算についても必要なら追加すると」


「……言ったな」


「王都南門周辺の職人を優先的に確保しても構わないと」


「…………言った」


「なので急ぎました」


「急ぎすぎではないか!?」


「どっちなんですか!!」


別の重鎮が机を叩く。


「しかも途中で陛下が『どうせなら二階建てにしよう』とか言い出したせいで設計変更までしてるんですよ!?」


「客席は多い方がいいだろう?」


「それだけならまだしも!」


資料が一枚、陛下の前へ叩きつけられる。


「個室!」


「必要だろう」


「宴会場!」


「需要はある」


「従業員用の休憩室!」


「必要だ」


「大型厨房!」


「当然だ」


「地下食材庫!!」


「保存性を考えれば――」


「これもう『アトリエに併設する小さな食堂』じゃないですよね!?」


「…………」


「陛下?」


「……少し大きくなっただけだ」


「農場の時も同じこと言ってませんでした?」


「…………」


「やっぱり陛下とエレノア嬢、似てません?」


「一緒にするな!!」


陛下の叫びが会議室内に響くのだった。


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