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【20万PV突破・毎日更新中】転生したら錬金術が得意な貴族家の女の子でした  作者: 双葉アリア
第三章 水面下の綻び編

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168話 調査への意欲、陛下の苦悩

ーー王城・執務室


ここ最近は、大きな問題も起きることなく、執務室には比較的穏やかな時間が流れていた。


ーーつい先程までは。


「この後はエレノア嬢がやって来るのか......」


国王は書類から顔を上げながら呟く。


「エレノア嬢が自ら王城へ来られるとは珍しいですね」


宰相も同意するように頷いた。


「普段であれば必要な書類だけ送ってくるからな」


「それだけでも十分異常なのですが......」


「今更だ」


国王は即答する。


「それもそうでしたな」


宰相も即座に納得した。


「用件は何なんでしょうかね?」


そう言うと無言で陛下が一枚の紙を差し出す。


そこに書かれていたのはーー


『精神異常を引き起こす魔物の調査許可願い』


「却下で!!!!」


即答だった。


「まだ何も言っておらんぞ」


陛下が呆れたように言う。


「言う必要ありますか!?」


宰相は紙を指差した。


「精神異常を引き起こす魔物ですよ!?」


「そうだな」


「調査ですよ!?」


「そうだな」


「エレノア嬢ですよ!?」


「そうだな」


一拍。


「却下で!!!!」


二回目だった。


「しかしだな......」


陛下はこめかみを押さえる。


「エレノア嬢の言い分も正しいのだ」


「聞きたくありませんな」


「聞け」


即答だった。


「エレノア嬢曰く精神異常といっても様々な症状があるようでな......」


「??」


宰相は、わけのわからないとでも言いたそうな表情を浮かべている。


「精神異常は精神異常じゃないですか?」


「それはそうなんだが......」


陛下はどこか疲れたように額を押さえる。


「エレノア嬢曰く、それは『怪我は怪我だから全て同じ薬で治せと言っているようなもの』らしい」


「......は?」


宰相は思わず間の抜けた声を漏らした。


「例えば腕を切った者と骨を折った者がおるとする」


「はい」


「どちらも怪我だな?」


「そうですな」


「では同じ治療で治るか?」


「それは......違いますな」


陛下は静かに頷く。


「精神異常も同じらしい」


一拍。


「恐怖で正常な判断ができなくなる者」


「怒りで理性を失う者」


「幻覚を見る者」


「自我を失う者」


「魅了される者」


「眠れなくなる者」


「逆に眠り続ける者」


「全て症状が違うそうだ」


宰相は眉をひそめた。


「......確かに同じではありませんな」


「だからエレノア嬢は言うのだ」


陛下は手元の書類を読み上げる。


「正しく治療するには、『精神異常を引き起こす魔物を調査する必要がある』と」


「......」


その言葉を聞いて宰相は陛下とエレノアが言っている意味を嫌でもわかってしまった。


だが陛下は続ける。


「治療する場所は肉体ではなく精神だ」


一拍。


「より一層慎重に治療しなければならないとも書かれている」


宰相は静かに目を閉じた。


「......確かに間違ってはおりませんな」


「そうだろう?」


「ええ」


即答だった。


だが。


「だからといって許可する気にはなれませんが」


こちらも即答だった。


陛下は深々とため息を吐く。


「余も同じ気持ちだ」


「でしたら却下でよろしいのでは?」


「そう簡単な話でもない」


陛下は一枚の紙を取り出す。


そこにはエレノア直筆の文字が並んでいた。


『現地調査を行わない場合』


『有効なポーションの開発成功率は大幅に低下します』


『症状によっては逆効果となる可能性があります』


『最悪の場合、命に関わる可能性があります。』


沈黙。


「......」


「......」


宰相は無言で天井を見上げた。


「何故あのお方は毎回正論で殴ってくるのですかな......」


「私に聞くな!!」


珍しく陛下が即座にツッコむ。


「そんなの私だって知りたいわ!!」


一拍。


「普通は多少無茶なことを言うものだろう!?」


「ええ」


「説得する余地があるものだろう!?」


「ええ」


「だがエレノア嬢は違う!」


陛下は机を叩いた。


「危険だから駄目ですと言う!」


「正論が返ってくる!」


「ならば護衛を増やそうと言う!」


「正論が返ってくる!」


「代わりの者を送ると言う!」


「正論が返ってくる!」


一拍。


「どうしろと言うのだ!!」


「......」


「......」


執務室は静まり返る。


そして。


「諦めるしかないのでは?」


宰相が静かに告げた。


「それを言うな」


陛下は頭を抱えた。


「......とりあえずどのように説得するかを考えましょう」


「そうだな......」


陛下は深いため息を吐く。


「まず危険だから駄目だと言う」


「正論で返されますな」


「護衛を増やす」


「正論で返されますな」


「調査隊だけ派遣する」


「正論で返されますな」


一拍。


「......」


「......」


「詰んでおりませんか?」


宰相が静かに告げる。


「それを言うな」


本日二度目だった。


「しかし、エレノア嬢も無茶を言っているわけではありません」


「それが問題なのだ」


陛下は即答する。


「無茶なら却下できる」


「理不尽なら却下できる」


「危険だからと言い切れるなら却下できる」


一拍。


「だが今回は全て正しい」


「ですな......」


宰相も否定できなかった。


その後も二人は様々な案を出した。


危険だから駄目だ。


護衛を増やす。


別の調査隊を派遣する。


調査範囲を制限する。


だがーー


どの案も最終的にはエレノアの正論によって崩壊する未来しか見えなかった。


「......」


「......」


執務室には重苦しい沈黙が流れる。


そして。


結局最後まで有効な説得材料は見つからなかった。


「時間だな......」


陛下は諦めたように呟く。


「そうですな......」


宰相もまた諦めたように頷いた。


そしてーー


エレノアとの面会が始まった。


ーー王城・応接室


アトリエでの調合が長引いてしまい、予定していた時間よりもかなりギリギリになってしまった。


普段であれば面会開始の十分前には到着するよう心掛けている。


だが今日は違った。


応接室へ入った時には、既に面会開始まで残り三分となっていた。


「少し遅れてしまいましたね......」


私は小さく呟く。


幸いなことに、応接室にはまだ誰も来ていない。


失礼に当たらなかったことに安堵しながら席へ腰を下ろした。


もっともーー


その時の私は知らなかった。


隣の部屋で陛下と宰相が、


『どうすればエレノア嬢を止められるか』


という極めて不毛な会議を行っていたことを。


そして約束の時間になった。


だがーー


陛下は珍しく時間になっても来なかった。


「忙しいのかな......」


そんなことを考えていると扉が開く。


そして。


陛下と宰相に加え、お父様もやって来た。


「??」


私は思わず首を傾げる。


お父様が面会に出席するということは、よっぽどの案件でない限りあり得ないからだ


「お父様?」


「......」


何故かお父様は視線を逸らした。


「?」


嫌な予感がする。


すると。


「まず先に言っておく」


陛下が真面目な表情で口を開いた。


「今日は私と宰相だけではない」


「はい」


「レーヴェン子爵にも協力を依頼した」


「???」


ますます意味がわからない。


一拍。


「何故でしょう?」


私は素直に尋ねた。


すると。


「エレノア嬢を説得するためだ」


陛下が即答した。


「はい?」


今度は私が間の抜けた声を出す番だった。


説得?


何の話だろうか。


私はまだ何も言っていない。


そもそも今日の面会は調査許可願いについて話し合うためのものだ。


一拍。


「陛下」


「なんだ」


「まだ何もお話ししていませんよね?」


「しておらんな」


「では何を説得するのでしょうか?」


当然の疑問だった。


すると。


「精神異常を引き起こす魔物の調査だ」


陛下は迷うことなく答える。


「それなら必要ですよ?」


私も即答した。


沈黙。


「......」


「......」


「......」


陛下。


宰相。


お父様。


三人が同時に頭を抱えた。


「何故だ」


陛下が呟く。


「何故まだ何も説明していないのに結論に辿り着く」


「申請書に書きましたので」


私は首を傾げた。


すると。


三人同時に深いため息を吐いた。


「エレノア」


今度はお父様が口を開く。


「はい」


「まず危険だという認識はあるのか?」


「ありますよ?」


即答だった。


「......」


「......」


「......」


三人は顔を見合わせる。


「危険だと理解した上で行こうとしているのか?」


「はい」


「何故だ」


「必要だからです」


即答だった。


そして再び。


三人は頭を抱えた。


「あのな......」


お父様が静かに言う。


「ダンジョンに行くということは、その道中ですら命を危険に晒すことになるのだぞ?」


一拍。


「いくらなんでもエレノアを守りながらダンジョンに行くのは無謀に近いぞ?」


「......?」


私は少し考える。


そして。


「ですが、お父様」


「なんだ」


「それを言うのであれば冒険者の皆さんも同じではありませんか?」


沈黙。


「......」


「......」


「......」


誰もすぐには答えなかった。


「それに私、魔法使えますし足手まといにはならないと思います」


一拍。


「エレノア」


お父様が静かに口を開く。


「はい」


「お前、自分が何を言っているかわかっているか?」


「?」


私は首を傾げた。


何かおかしなことを言っただろうか。


「魔法が使えることと安全かどうかは別問題だ」


「そうでしょうか?」


「そうだ」


即答だった。


「大体な」


お父様は額を押さえる。


「お前を狙う連中がどれだけいると思っている」


「知りません」


「知ろうとしろ」


これまた即答だった。


「エレノア嬢」


今度は宰相が口を開く。


「はい」


「貴女はご自身の価値を少々過小評価されております」


「そうでしょうか?」


「そうです」


こちらも即答だった。


「貴女が怪我をしただけで王都の市場が荒れる可能性があります」


「そんな大袈裟な」


「大袈裟ではありません」


今度は陛下だった。


「私としてはな」


陛下は深いため息を吐く。


「魔物よりも貴女を狙う人間の方が心配なのだ」


「心配していただけるのは嬉しいですが、精神異常を治す薬を作るにはどうしても直接確認しないとダメなんです。」


一拍。


「精神に直接作用する薬は、症状や個人の状態によって微妙に調整しないと文字通り廃人となってしまう可能性があるのでこれだけは譲れません。」


応接室に沈黙が流れる。


「......」


「......」


「......」


先に口を開いたのは陛下だった。


「エレノア嬢」


「はい」


「それほど危険なのか?」


私は迷うことなく頷く。


「物凄く危険です。」


即答だった。


「肉体の治療であれば多少量を間違えても回復魔法や治癒ポーションで対処できます。」


一拍。


「ですが精神は違います。」


「......」


「......」


「......」


「壊してしまった場合、元に戻せる保証がありません。」


その言葉に空気が重くなる。


「例えば」


私は言葉を続ける。


「恐怖を抑える薬を作ったとします。」


「うむ」


「ですが効きすぎれば恐怖を感じなくなります。」


「......」


「恐怖を感じなければ危険を危険だと認識できません。」


一拍。


「結果として死にます。」


「魅了耐性の薬を作ったとします。」


「はい」


「ですが精神への刺激が強過ぎれば人格そのものに影響する可能性があります。」


「睡眠薬も同じです。」


「眠らせるだけなら簡単です。」


「ですが量を間違えれば二度と目を覚まさない可能性があります。」


沈黙。


「......」


「......」


「......」


「なるほどな......」


陛下は静かに目を閉じた。


「理屈はわかった。」


一拍。


「だが、それを聞いたうえで許可はできないな」


「何故ですか?」


私は素直に尋ねる。


「理由は主に二つある」


陛下は指を一本立てた。


「まず一つ目だが、関係者との調整が必要だからだ」


「関係者......ですか?」


「ああ」


陛下は頷く。


「エレノア嬢は自覚しておらんかもしれんが、貴女が動けば多くの者が動く」


一拍。


「護衛」


「冒険者ギルド」


「騎士団」


陛下は静かに続ける。


「故に私だけでは判断することはできない」


「そして二つ目」


陛下の表情が真剣になる。


「単純に危険すぎる」


その言葉に応接室内へ静寂が訪れた。


「我が国はエレノア嬢によって支えられていると言っても過言ではない」


一拍。


「そのエレノア嬢に有事の出来事が起きた日には、王国経済そのものを揺るがしかねない」


「ポーション産業」


「錬金術産業」


「エレノアのアトリエにおける税収」


陛下は指を折りながら数えていく。


「どれ一つとして軽視できるものではない」


一拍。


「それら全てが、エレノア嬢を中心として成り立っている」


その言葉に再び静寂が落ちる。


その静寂を破るように私は静かに言う。


「では、精神異常を治す薬はどうするんですか?」


一拍。


「先程も言いましたが、細かい調整が必要な分誰でも作れるというわけではありませんよ?」


「......」


「......」


「......」


誰も答えない。


答えられない。


それは先程まで話していた内容と全く別の問題だからだ。


「エレノア嬢」


陛下が静かに口を開く。


「それは代替手段が存在しないという意味か?」


「少なくとも私は知りません」


即答だった。


「研究実績としては精神異常を治す薬が出来たという話は、何度か聞いてきました。」


「それは、私も知っている」


陛下や宰相に加えお父様も頷く。


「では、何故実用化に至ってないと思いますか?」


応接室に静寂が流れる。


「......」


「......」


「......」


先に口を開いたのは宰相だった。


「安全性......ですかな?」


「半分正解です」


私は静かに頷く。


「確かに安全性も大きな問題として挙げられます。」


一拍。


「ですが、それが最大の理由ではありません。」


「では何なのだ?」


陛下が尋ねる。


私は迷うことなく答えた。


「精神異常は一つの症状だけで判断することが一番難しいという点です。」


「......どういうことだ?」


宰相が首を傾げる。


「例えば錯乱状態になっている人がいるとします。」


一拍。


「ですがその原因が恐怖によるものなのか。」


「魅了によるものなのか。」


「精神攻撃によるものなのか。」


「あるいは別の原因なのか。」


私は静かに続ける。


「外から見ただけでは判断できない場合が多いんです。」


「なるほど......」


陛下が頷く。


「場合によっては、肉体にも症状が出る場合があります。」


「肉体にも?」


宰相が驚いたように眉をひそめる。


「はい」


私は頷く。


「例えば強い恐怖による精神異常であれば睡眠障害。」


「食欲不振。」


「慢性的な疲労。」


「体が鉛のように重くなり動けないということだってあります。」


一拍。


「それらの症状が人によって違うんです。」


「......」


「......」


「......」


応接室の空気が重くなる。


先に口を開いたのはお父様だった。


「つまり同じ魔法を受けたとしても症状が変わる可能性があるということか?」


「はい」


私は頷く。


「全く同じ症状になるとは限りません。」


「軽症で済む方もいれば重症化する方もいます。」


「場合によっては複数の症状が同時に現れることもあります。」


一拍。


「だから精神異常用の万能薬というものは非常に難しいんです。」


「なるほどな......」


陛下は深く息を吐く。


「ようやく理解できた。」


「精神異常を治療する薬が存在しないのではない。」


「実用化できない理由があるのだな。」


「その通りです。」


私は静かに頷いた。


「仮に万能薬を作れたとしても副作用が大き過ぎます。」


「効くかもしれません。」


一拍。


「ですが別の症状を引き起こす可能性もあります。」


「......」


「......」


「......」


再び沈黙が落ちる。


そして陛下は額を押さえた。


「聞けば聞くほどエレノア嬢が現地へ行かなければならない理由は理解できる。」


一拍。


「だが同時に行かせたくなくなるな......」


「......同感ですな」


宰相も頷く。


「正直なところ」


宰相は深いため息を吐いた。


「最初はいつものように無茶を言っているだけかと思っておりました。」


「おい」


陛下が小さくツッコむ。


「ですが」


宰相は気にすることなく続けた。


「話を聞けば聞くほど必要性は理解できますな......」


「そうなのだ」


陛下も額を押さえる。


「そこが問題なのだ」


一拍。


「私としては危険だから駄目だと言いたい。」


「はい」


「だがエレノア嬢の話を聞く限り、それでは解決しない。」


「そうですね」


私は頷く。


「解決しません。」


即答だった。


「即答するな......」


陛下は頭を抱える。


「そもそも」


私は首を傾げる。


「許可されないと調査できませんし。」


「そうだな」


「調査できないと薬が作れません。」


「そうだな......」


「薬が作れないと精神異常に苦しむ方を助けられません。」


「......」


「......」


「......」


誰も反論しなかった。


「何故だろうな」


陛下が遠い目をする。


「エレノア嬢が正しいことしか言っておらん。」


「ですな」


宰相も頷く。


「ですが許可したくありませんな」


「その通りだ」


即答だった。


「とりあえず、この話は一度私が預かってもいいか?」


「構いませんよ?」


私は頷く。


そもそも。


最初から即決されるとは思っていない。


むしろ王国側としては即決できない話だろう。


「助かる」


陛下は僅かに安堵した表情を浮かべた。


「正直なところ、この場で結論を出せる話ではない」


「そうですか?」


「そうだ」


即答だった。


「さっきも言ったが、関係各所との調整を要する案件だ」


一拍。


「この場で私が許可できる案件ではない」


「そういうものでしょうか?」


私は首を傾げる。


「そういうものだ」


陛下は即答した。


「護衛の選定」


「騎士団との調整」


「冒険者ギルドとの調整」


「その他諸々」


一拍。


「何よりエレノア嬢自身の安全確保もある」


「......」


「正直なところ」


陛下は深いため息を吐く。


「私はまだ許可したくない」


「まだ、ですか?」


「まだだ」


即答だった。


「つまり将来的には許可される可能性があると?」


「そういう話ではない」


これまた即答だった。


「何故そうなる」


陛下が頭を抱える。


「許可しない方向で考えているのに何故許可される前提で話が進むのだ」


「必要だからです」


私も即答した。


「......」


「......」


「......」


応接室が静まり返る。


「お父様」


「何だ」


「私、何かおかしなことを言いましたか?」


「言っていない」


お父様は即答した。


一拍。


「だが、それが一番困るのだ」


「?」


意味がわからず首を傾げる。


すると――


「エレノア嬢」


陛下が疲れたような声で口を開いた。


「はい」


「私はな」


一拍。


「エレノア嬢が間違っているのなら、即座に却下できるのだ」


「はい?」


「だが今回は違う」


陛下は深いため息を吐く。


「言っていることが全て正しい」


「ですな」


宰相も頷く。


「反論できる部分がありませんな」


「そうだろう?」


陛下が宰相を見る。


「その通りです」


今度はお父様も頷いた。


「親としては反対だ」


一拍。


「だが錬金術師としての判断は正しい」


「ですよね?」


私は思わず頷く。


すると――


「だから困っているのだ!!」


陛下が机を叩いた。


応接室が静まり返る。


「......」


「......」


「......」


「......」


数秒後。


陛下は力なく椅子へ腰を下ろした。


「とりあえず今日はここまでだ」


「はい」


「少し時間をくれ」


「わかりました」


私は素直に頷く。


そして応接室を出ようとした、その時だった。


「宰相」


「何でしょう」


「胃薬を持ってきてくれ」


「私も欲しいですな」


「私もだ」


お父様まで続いた。


私は首を傾げる。


「皆さん、体調でも悪いんですか?」


「......」


「......」


「......」


三人は無言で私を見た。


そして――


「原因は目の前にいる」


陛下が遠い目をしながら呟いたのだった。

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