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ネットが繋がらないだけだと思って一か月引きこもってたら、文明が崩壊していました  作者: オオマンティス


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スキルが進化したようです

 目が覚めると、ヨツバがまた土の山にもぐっていた。



 昨日あれだけ空き缶に夢中だったくせに、寝るときはちゃんと土がいいらしい。ベッドから手を伸ばして花をつつくと、赤い花びらが面倒くさそうに一回だけ揺れる。



「おはよう、ヨツバ。今日は工房づくりだから手伝ってね。管理所に昨日のこと話しに行くのは……まあ午後でいいよね、ファンネルができてからのほうが私もちゃんと話せる気がするし」



 朝ごはんはナンもどきの残りを温め直して、立ったまま済ませることにする。お行儀は悪いけど、今日はやることが多いのである。



 炉を置く場所の条件は三つ。蔓の家から離れていること、地面がむき出しであること、それから焼き入れに使う水が近いこと。



 全部そろっているのは、家から少し歩いたところにある小川の岸辺くらいだ。下は砂利まじりの硬い土で、草もまばら。ここなら火の粉が飛んでも、ヨツバが燃える心配はない。



 アイテムボックスから図書館の炉を出して、岸辺に置いてみる。



 明るいところで見ると、これはひどい。レンガの継ぎ目はがたがたで、全体が右に傾いていて、作った本人にもどこが正面なのか分からない。しかも運んでくるあいだに、角のレンガが一個欠けているじゃないか。



「これ、前より傾いてない? このまま鉄を溶かしたら途中で崩れてきそうだし……せっかく場所も決めたんだから、この際ちゃんと作り直そう」



 中からゴーレム・コアだけを取り出して、古い炉はばらしてしまうことにする。



 とはいえ、新しいレンガは手元にない。代わりに目をつけたのが、川原にごろごろ転がっている丸い石と、岸の泥。泥をすくうと、指のあいだから粘土まじりの砂がぼとりとこぼれ落ちる。これを石と石のあいだに詰めれば、レンガの代わりになるはずだ。



 ヨツバに平たい石を運んでもらって、私はひたすら泥をこねる。石を一段積んでは泥を塗り、また一段積んでは泥を塗る。図書館のときは本とにらめっこしながら丸一日かかったけど、今回は手が勝手に次の石を選んでくれる。工作スキルのおかげだろう。



 三段目を積み終えたところで、ふと思い当たる。前の炉は風の通り道を作っていなかったから、火がこもって不安定だったんじゃないか。今度は底に空気の通る穴を開けて、上のほうを少しすぼめてみよう。



 そうやって形を整えている最中のことである。



【工作の熟練度が一定に達しました。スキルレベルがLv.2になりました】



「お、上がった」



 喜ぶ間もなく、アナウンスが続く。



【条件を満たしました。スキル『工作』が『武器作成』に進化します】

【『工作』の機能は、すべて『武器作成』に引き継がれます】



「え、進化? 工作が?」



 慌ててスキル一覧を開いてみる。上から順に目で追っていくと、『工作』の名前がどこにもない。その代わり、一覧の下のほうに見慣れない名前がひとつ増えている。



【武器作成 Lv.1】

【効果:素材とMPを消費し、武器を生成する。生成時、幸運値に応じて付属効果が抽選される。手作業による加工の補助も可能】



 素材とMPを消費して、武器を生成する。



 どこかで見たことのある書き方だと思ったら、『防具製作』とほとんど同じじゃないか。素材を置いてスキルを使うだけで、ローブが勝手に編み上がっていったあれである。



「えっと……つまり、鋳型も焼き入れもいらないってこと? じゃあ、今作ってるこの炉は……」



 手元を見ると、泥だらけの手と、半分できあがった石積みの炉。



 作っていたおかげでスキルが進化したんだから、無駄ではない。そう自分に言い聞かせてみても、石を積む手はさっきより明らかに遅くなっていく。



「……いいや、炉は炉で最後まで作っとこう。鉄を溶かしたくなる日だってそのうち来るかもしれないし」



 そんな日が来るとは思えないのだが、中途半端にしておくのも気持ちがよくない。

 残りの石を積んで、てっぺんにゴーレム・コアを収める台座を作る。カセットコンロで火を入れると、ごう、と青白い炎が上がった。今度は傾いていないし、炎もまっすぐ立っている。



 炉の熱でぬくもった岸辺に、昨日の素材を並べていく。



 鉄蓄えの球根と、雌株の根核。核のほうはまだ心臓みたいにとくとく脈打っていて、正直ちょっと怖い。



 根核の鑑定には、金属を溜め込む素材と合わせるとしか書いていない。合わせ方の説明はなし。いつものことである。



 炉に二つまとめて放りこむ案は却下。根核は植物の塊だから、合わさる前に炭になるだろう。予備もないのに一発勝負で炭を作る度胸は、私にはない。



「じゃあ『武具合成』かな……でもこれ、武器に何かを混ぜるスキルなんだよね。肝心の武器がまだないんだけど」



 ダメもとで、両手に一つずつ持ってスキルを使ってみる。



【合成先を指定してください】



「あれ、断られない」



 てっきり「武具がありません」と冷たく突き返されると思っていたのに。サラマンダー戦のときはファンネルが一本だけ手元にあったから、勝手にそっちが選ばれていたんだろう。つまり合成先は、自分で選べるということだ。



 だったら、武器じゃないものを選んだらどうなるのか。



 いきなり本番は怖いので、まずは練習台から。サラマンダーの鋼鉄の鱗を一枚と、リクにあげずに残しておいた鉄の花弁を一枚出す。鱗は何枚もあるから、一枚くらいダメにしても泣かない。



 鱗を合成先に選んで、花弁を混ぜる。花弁はさらさらと銀色の粉になって、鱗の表面に吸いこまれていく。



【名称:鋼鉄の鱗(鉄花弁を合成)】

【等級:アンコモン】

【備考:鉄花弁の金属成分を取り込み、硬度がわずかに上昇している】



「あ、できた。素材どうしでもいけるんだ……これ、もっと早く気づいてればよかったな」



 指で弾くと、さっきより澄んだ音が返ってくる。これなら本番もいけそうだ。


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― 新着の感想 ―
サバイバルに優しい仕様でありがたいですね。本人の才能が違えば正統派な鍛冶に進化したのかな?。コレで強力な武器が作れますね。
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