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ハク戦 27 天変地異





 意識のあるレイダー達が目の前の絶望に逃げ惑った、叫ぶ者、

狂ったように他者を感情的に襲う者、力無く地面にへたり込む者、

様々な感情が一つの恐怖という支配から逃げるように、だがそれは

既に逃げる術を失った絶望の感情表現だ。


レイダー「こんなのリアルにある訳は無ぇ、ま、まるで映画じゃ

ねーか!クソが……異星人やら災害やら、ここに行き着くまでだっ

て殺し合いや騙し合いにようやく辿り着いたってのにヨォ、どうし

てだ、俺達ばかりこんな目に遭わなきゃならねぇんだよ!」


 大地から湧き出るような黒い砂塵を捻じ巻き上げる暴風、彼らの

感情を最大限に煽る様に不気味な風は聴覚にすら不安を焚き付けた

迫り来る目に見える人生の最後の足は早く車でも逃げきれない現実

から逃れる事は叶わない。

「終わりだ……もう何もかもが、報酬なんかいらねぇ、誰か助けて

くれよ、頼むよぉ……」

ーー拝む者

「俺は逃げるテメ!その車よこしやがれ!」

ーー奪う者

「刺しやがったな!テメェが良ければいいのかこの野郎」

ーー錯乱する者

「当たり前だろうが!くたばりやがれ」

ーー狂気に踊る者


 誰もがパニックに陥った……誰もがこんな状況を味わった事がな

かった、それは実際発生源であるまさに此処から始まる人類の終わ

りを告げていた、大気はうねり此処から連鎖反応で起こるジオス

トーム現象、地球は今、未曾有の災害の始まりを具現化したのだっ

た、それは宇宙から地球を見ても至る所に視認出来る程の渦がこの

場所から数週間かけて発生し続けるのだ……まるでそれは地球が汚

染され乱された惑星の規律を正すかの様に、そう……再生を図るか

の様に。


 突風が吹き荒ぶんでいる中で周りと違い心静かに雪丸を囲み座る

弟子達、皆が静かに目を瞑ると最後の時を待った……。

弟子「いい人生とは言えませんでした……が最後に貴方に出会って

良かった」

弟子1「僕は平和な時代でも荒らされた今でも負け犬でした……強く

あらねば生きねば残された者として最後に弱き者を助け人として生

きる為に雪丸様の弟子になりました最後の戦いに参加出来た事、平

和な時代には動けなかった体が動きました……これで向こうにいる

家族に顔向け……出来るかなぁ……」

弟子女「女だからと貴方に助けられた日に甘えるなと言いながら貴

方は私を助けてくれた、最早生きる意味を見出せなかった私に命を

燃やす生き様を見せてくれた雪丸様、貴方を見てこんな時代でも生

命力に溢れ慈悲深く気高く荘厳で居られるんだな……そう思うと全

てに諦めていた私が恥ずかしく感じました、私もせめて生きようと

思いました、こんな時代です……その時までせめて、そう決意した

私は貴方を見る度に強さは生きる事と教わった気がします、何度挫

けようと目的に向かい足掻く姿こそが美しかった……雪丸様も最後

にご自身を解き放たれて良かった、そしてありがとうございます此

処まで命を繋いで下さりこの場に私を居させて下さって……ぅぅ」


 一人一人が雪丸に助けられ集い弟子になった者達だった、足掻き

苦しむ中、彼の本質は真っ直ぐに目標にむけて行動していた証だっ

た、すぐそばに答えはあり、自身はそれに気づかぬとも盲目の中、

根っこの純粋さは彼の歩を支えていたのである、そしてその一人

一人の心もまた雪丸を絶望の崖間際で闇堕ちを止めていた『現実』

に気づかされた瞬間であった、雪丸は静かに目を閉じ彼等の言葉を

無言で聴いていた。


 そして最後の一人が感謝と別れを告げた……薄く眼を開け彼等を

見つめると口を開いたのだった。


雪丸『皆……救ってくれていたのは私の方だった」

 一人一人を思い浮かべる雪丸の中に一人一人は吹けば飛ぶような

か弱き存在の『現実』とそのちっぽけに思える力のない弱さの力に

自身が強いと思い込んだ力が支え強くしている『現実』を噛み締め

た、そして我が欲望の為にそんな存在達を巻き込んだ『現実』が彼

の胸を抉り切り刻んで行く。

雪丸『痛い……今までの苦しみよりも遥かに痛い、種が違うこの痛

みが俺を強くする苦痛だったのか……すまない、すまない」


だが何ど謝ろうと現実は変わらない……

 暗く沈み皆が最後の想いを遂げていた最中、1人の男がその空気

を台無しにする。


ヒロ「やっぱ嫌じゃあ!彼女も居ないうちに嫌なんじゃああ」

ヌク「ハハハそうか、そりゃそうだわな」

ヒロ「だまれジジイ!その年なる間に色々イチャイチャした時代も

あったんだろがぁあああっ!ねーんだよぉおお!女性とは空気の振

動という言葉で意思疎通した位しか無いんじゃ!俺の気持ちがわ

かってたまるかってんだ!コンチクショ!」

武丸「落ち着けって……大人だろ」

ヒロ「大人なんか関係あるかーい!うわわぁあん!」

武丸「……こいつもある意味空気読めるタイプじゃ無かったか……師

匠に似るとは言うが……言ってることはヌクそっくり」

ヌク「聴こえとるぞ……だが反論はせん、その通りじゃ、ヒロの叫

びを聞いとったら胸がキュ~と締め付けられるわい……」

ヒロ「せめて女性の側で!って思ったら1人いたけど貴方隣に座っ

てる男の彼女ですよねー!そうですよねー!もう誰も居ねーし!」

雪丸「……す、すまない」

雪丸『思わず口に出てしまった……だが何だ、思った事を口に出す

のはこんな簡単な事だったのか?」

ヒロ「元はと言えばテメェが粘るからだよ!こんちくしょー!」

ヌク「おお、雪丸相手に喧嘩売っとる……最後に肝が座ったな」

ヒロ「……あ」


そんな会話が最後の時にふさわしく無い故に周りが和んだ。

 皆が一堂に笑った……最後の時だったからこそかも知れないが会

心の葛藤を笑いで癒したのだった。

ハク「盛り上がってますねぇ、じゃそろそろ行きましょうか」

リュックサックを背負い出したハクに周りのものも不思議がった。

ヒロ「……ハクさん何処へ?」

ハク「何処って皆と合流しようよ」

ヌク「……?はて」

雪丸「何を……」

武丸「今更……」

来栖「馬鹿……かてめぇ」

ヒロ「師匠、まさか……まさか、まさかーっ!」


ーーその時であるーー

 雲の上空から再び敵の戦艦が現れ台風の中心に向かい巨大なレー

ザーは夜空に蠢く曇天の雲を瞬時に切り裂き台風を直撃する光景が

凄まじいエネルギーの放射が自然エネルギーとが凄まじい音を出し

ぶつかり合う、稲妻の光さえもレーザーの中で吸収されるような光

の柱が今まさに一瞬で台風を吹き飛ばした。


ヌク「は?」

雪丸「ほ?」

武丸「へ?」

ヒロ「ブホッ!」

顔に手を当て首を振る来栖。

「もう驚かん……好きにしろ」


ヌク「まさか……お主、そうか!まさかそうなのか!」

ハク「にゃはは、第二弾ってね」

武丸「どういう事だ?」

ヌク「お前は知っておらぬか……ワシもまさか先程のやり方で台風

を吹き飛ばす等思いつかんかった……何故だか分かるか、上空は空

気が少なく温度も低い、ドローンが飛ぶには不安定過ぎるのだ、思

い込んでおった、そういえば2025年迄に既に非公認ではあったが

最高高度はロシアの10200メートルとされておる、対し台風は1万

から1万5千だ、ひと昔前にこれだぞ、確かに今なら台風の高度を

越えるドローン性能は本来はあるのだ……駄目だ無理だ、と思い込

む常識という檻が発想を鈍らせていたか、と言うか台風そのものを

消そうと思うか普通」


「そして風が強くなる前に既に待機させていたのだなハク!全ては

計算ずくか……」


 レーザーが消えたかと思うと視界範囲から次々と放射される光の

柱は複数の台風を悉く消し去って姿を消した……皆がその光景に目

を見張った、まるで天から放たれた光が闇の絶望を消し去るかの様

な光景は天からの救いの光に見えたのだった……地球にとって本来

闇の光である異星人の光は今地球にとって救いの光と変わった。


ヌク「綺麗じゃのう……破滅の光が救いの光となろうとは、物事も

そうじゃが放たれる兵器という現実は変わらんが捉えよう使い様、

人の考えや思考、行動によりどうとでも解釈は変わるという事じゃ

な……今はただこの光景を美しく感じていようではないか……」


 まるで創世記の絵画を思わせる姿に美と命を感じ、兵器とはいえ

現実にはそれによって滅ぼされかけ、それによって救われた今の現

実に彼等の矛盾に対する答えは要らなかった。


ヌク「昔から爆破で台風を下部から消し去る案はあった……が実用

には至らなかった、進路が読みにくく緊急で台風を消し去る程の爆

薬を用意する事ができなかったからだ、それでも不安はある、台風

は上部と下部の温度差で発生するのは知っておるな、つまり下部を

爆破し消そうが再び渦巻いたエネルギーは再構築される可能性は

あったからじゃ、だがレーザーとなれば話は別だ、レーザーの攻撃

性は基本熱じゃ上部から下部にかけ膨大な熱を瞬時に加えた事で周

りの空気が温められ冷えた空気が満べなく均等的に霧散することで

渦の再構築を防いだという訳だな……」


ハク「恐らく数時間後には使える手じゃ無いだろうけどね……早く

て1発目の放射で異星人も異変に気づいた可能性も高い、今後この

やり方で色々利用するって虫のいい話は流石にないだろうけど敵も

プログラムを再構築するには時間は要するだろうから、出来るだけ

全ての発動までの時間の間は空けられなかったからこのタイミング

まで粘る必要があったけど」

ヌク「……お前の頭に固定観念というものは無いのか」

ヒロ「見たか!コンニャロ共!我が師匠の素晴らしさを!」

ヌク「ぬはははは、おいヒロ、これでムフフも可能性が出たな」

ヒロ「そ、そうだ!お師匠おおおお!全てに感謝いたします」

土下座で崇めるヒロを見た武丸だった。

「ヌクジジイといいコイツといいこんな大人にゃなりたく無ぇ……」

ヒロ「なんだと!孝雄さんに謝れ!」

武丸「……」

「いや、とりあえずお前だよ……なりたく無ぇのは」



ドロア談ーー

異星人の光を分析してみたが……幾つかわからない事はあるが断片

的にわかった事がある、それは一本の線に見えるレーザー状態には

見えるが幾つかの層になっておるようだった、外壁部分は熱源であ

る赤外線、そして中心部には重粒子を放射しているようだった、そ

れだけでは無い、本来は熱源は線先に集中しておる、内部で赤外線

を乱反射させている事もわかった。

光や赤外線、紫外線、波長で放たれる物であっても宇宙では速度は

同じだが大気中では微妙に阻害するもので変わるとしてもどの金属

どの物質にも破壊可能な万能な兵器として扱うにはこういった複合

いや、正確に言うと層で放射が効率が良いだろう、あらゆる物には

反射や阻害するものがあるとしても対応できる方法として開発した

のだろう、だが電磁波というものはわかってはいてもまだ人類が発

見していないものが幾つかあるのも分かっている……科学の差がこ

こにきてどんな開きがあるかと痛感する、だがあの時の光の連続照

射で分析結果が出れば糸口も見つかるやもしれない、アジアの方面

で起こった災害時の事だった、本当はあのジオストームでただでさ

え少なくなった人類の更に大半は命を落とすだろうと予測していた

アジアから発生しその渦はやがて地球上の全ての地域で連鎖反応を

起こし地下や海底などに拠点を置く異星人には被害は及ばず、まと

もなシェルターすら殆ど残されていない人類は壊滅と言って良い程

の被害は想定されていた……。


だが誰がジオストーム現象を止めたのか……当時は驚いた、秘密結

社の同志である発生源である日本の同志、ヌク、菱川の連絡により

事の真相はわかった、信じられなかったが全てにおいて劣っている

人類には彼のような発想の転換に長けた者が今の地球の命を握って

るやも知れない、物資もなく兵器もままならない状況で玩具を利用

した事、そのミサイルよりも脆弱過ぎる物がまさに世界滅亡の発端

になろうとしたジオストームを止めるなどと誰が想像しただろう

か……アジアを発生源になった事、プレートの密集地である日本と

いう国は何かしらの中心になっているかも知れない、それは科学と

いうものだけでは無い、過去不思議な現象や予言は何故か日本とい

う国に集中している事……人に運命という定められた物があるとす

るならば彼のいる場所で起こり得る事は全て偶然であり必然である

ようにも感じる、故に今は全てが賭けである、私はこのハクという

人物にヌクを通じ連絡をとる事を決めた、1人の人間が及ぼす影響

など何もありはしないと思う反面、それに縋るしかない現場だとい

う事かも知れないが、かつて私が経験した研究所内での出来事のよ

うに破滅は戦い続け残った誰か、そのたかが人間1人がどの時代も

きっかけを作り成し得てきた歴史に嘘はない……このような事を

「藁をもすがる」日本の言葉にあると聞く、まさに今がそれかも知

れない。


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