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つぼみひらくまで  作者: 真山咲
第二章
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デニムのスカート

敏が熱を出してから、三日が過ぎた。

暑さのせいもあって、体が思うように回復せず、寝たり起きたりの生活をせざるえなかった。

同じように、純も体調がすぐれないのかと思うと、敏はいたたまれない。

広い家に一人でいる純を心配して、メッセージを送っても、

『私は大丈夫。心配しないで。敏君こそ、早く元気になってね」

と、敏を思っての言葉が返って来る。

母親が言ったように、敏よりも純の方がずっと大人なのだ、と思わされる。

そんな純が、自分には甘えてくれたことを思い出し、愛しさがつのる。

『夏休みなのになぁ』

ベッドの中で、スマホの中の写真を見つめた。

遠足に行ったときの純の写真だ。

「会いたいなぁ」

思わず声が出てしまった。


階段を駆けあがって来る音がする。母親だ。

店に出ているはずなのに。

「敏、開けるわよ」

「はい?」

ドアが開いて、母親が顔を見せた。

「純ちゃんが、お店に来てるわよ」

「えっ?」

「家に来てもらっていいの?『会えないなら帰ります』って言ってるけど」

「来てもらって!」

「急に元気になったわね」

母親は笑って、また小走りで去って行った。

敏はベッドから起き上がって、着ていたスウェットを脱ぎ、ジーンズとTシャツに着替えた。

くしゃくしゃになっていた髪をなんとか整える。

純が母親と一緒に家に入って来る声が聞こえた。

敏は部屋のドアから顔を出した。

「純ちゃん!」

純は、バイオリンケースを抱き締めるように抱えレッスンバッグを肩に掛けて、母親と共に二階への階段を上がって来るところだ。

出て来なくてもいいのに、敦までもがリビングから二階へ上がって来た。

「勝手に訪ねて来ちゃって、ごめんね」

「ううん。いいんだ。嬉しいよ」

「敏君、体調はどう?」

「純ちゃんこそ、もう大丈夫なの?」

ドアの前に立ったまま、お互いを心配し合い、見つめ合う。

純の夢中の敏を見て、母親と敦は自分たちの方が恥ずかしくなってしまい、リビングに消えた。

敏はそれに気付いて、部屋へと純を招き入れた。

散らかった部屋が恥ずかしい。

「来るって分かってたら、少し片づけたのに」

純はその言葉に微笑む。

「本当は、まだ体調がイマイチで、レッスンのあと、ここまで来れるかどうか分からなかったの・・・だから・・・」

純は、敏の部屋を見渡し、抱えていたバイオリンケースをギュッと抱きしめてつぶやく。

「会えてよかった・・・」

「うん、ほんとに・・・」

敏は、机の前の椅子を示した。

純が椅子に腰かける。

デニムの短いスカートから見える膝小僧がまぶしい。

敏は、純の白い脚を見ないようにして、ベッドに座る。

顔の高さが一緒になり、お互いを見つめ合う形になった。

純の顔がやつれて見えて、純に対して何も出来ない自分に、敏は焦燥感を覚えた。

思わず、バイオリンケースを抱いた純の細い右腕に手を掛ける。

純の身体がぴくっと固まる。

「会いたかった。ごめんね何にもしてあげられなくて・・・」

「ううん・・・」

純は敏から目をそらした。

「敏君。ちゃんと私のところに来てくれたもの・・・。それなのに、敏君が体調悪いのに、私こそ何もしてあげられなくて・・・ごめんね」

そして、はにかんだ笑顔を見せると、敏の手がかかってない左手だけで、バッグをバイオリンケースを机に立てかけた。

空いた左手を敏の手に重ね合わせる。

花のプリントのある水色のTシャツとデニムのスカートの純が、可愛らしい。

敏が一番最初に純の存在を知ったとき、男の子と間違えたのがウソみたいだ。

「・・・何か、変?」

黙って見つめていた敏に純が問いかけた。

「ううん・・・スカート、可愛いね」

「そう?」

「でも・・・」

「なあに?」

「スカートは、僕と二人きりの時だけにして。純ちゃんを独り占めしたいから」

敏の独占欲に、純は黙ってうつむいた。

「ごめん、悪いこと言ったかな?」

「ううん。うれしい・・・」

敏の手の甲に、涙がポタリと落ちた。

「泣かないでよ」

敏が困ったような笑顔を浮かべ、重ねていた左手をはずして、純の涙をぬぐおうとした。

そっと純がまぶたを閉じる。

涙をぬぐって、そのままその手を純のうなじへと回した。

柔らかな巻き髪をなでる。

もっと近づいて、そっと唇を寄せる。

やわらかな身体の感触と香り。

寄せ合った唇は、お互いを求め合う。

心が溶けてしまうような、甘い時間が過ぎる・・・。


突然、純が敏から身体を離した。





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