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つぼみひらくまで  作者: 真山咲
第二章
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笑顔花咲く

慌てた様子の純に、敏も現実に引き戻された。

階段を駆けあがる足音が聞こえて来る。

ドアの外で母親の声。

「良太君と神山君が来たわよ」

敏と純は、顔を見合わせると、あわてて距離を取った。

「わかったぁ」

敏は母親に、普段ありえないほどの明るい返事をする。

『何で来るの?何で今なの?アイツら・・・』

敏はドアを開け、廊下に出た。

階段にはすでに神山明和の大きな姿が。

新井良太はそれに続いて上がって来た。

「お邪魔でしたね・・・住吉さん、来てるんだって?」

明和はニヤニヤしながら、敏のそばに来た。

「分かっているんなら、帰る?」

「心配して来た友達を追い返すんだ?」

良太も黒い笑いを浮かべる。

「そんなことはしないよな~」

明和は腕を敏の肩から回して首を絞める。

「苦しい・・・」

明和の腕の中でもがく敏。

「部活の代表で来たんだよ。皆心配してるんだから」

良太はそう言って一瞬真面目な顔になった。

そして、明和に抑え込まれている敏より先に、部屋に入って行った。

「純ちゃん、ひさしぶり~」

教室の女の子たちにするように、気安く声を掛けている。

敏が明和から解放され、良太の後を追いかけると、良太の前で、純は立ったまま固まっていた。

「お母さんに聞いたぞ。本当に熱を出してたんだって」

明和が、敏の顔をのぞき込む。

「ウソだと思ってたの?」

敏が心外だという顔をする。

良太は、

「『体調が悪いから休む』ってメッセージ貰ってたけど、てっきり・・・」

と、純の方をチラリと見た。

「え?」

「敏。夏休みに入ったころから病んでたじゃん・・・それかと思って」

「皆そうだと思ってるよ」

明和も良太に同意する。

「もう、大丈夫みたいだね」

良太も明和も、敏と純を交互に見て安心した表情だ。

「よくなったんなら、部活、出て来いよ」

明和が敏の肩を叩いた。

「うん」


そこへ、敦が階下からジュースを運んできた。

ジュースを飲みながら、話題は純のことになる。

「純ちゃん、今日も敏のためにスカート穿いて来たの?」

にやにや笑いながらの良太。

図星をさされて赤くなる純。

そんな純を驚きの表情で明和は見つめる。

「天才住吉純も、フツウの女の子ってこと?」

中学の同級生だった明和には、信じられない光景なのかもしれない。

「二人、付き合ってんの?」

「付き合うって?」

明和のダイレクトな質問に、敏は疑問形で返してしまった。

さっきのキスを思い出してしまって、敏は自分で顔が熱くなるのを感じた。

良太が敏のうろたえぶりにニヤリとした。

「まさか、『だだのクラスメイトです』な~んて、言わないよね?」

敏と純は、キョトンと顔を見合わせた。

「え~っ。自覚がないわけ?彼氏と彼女じゃないの?」

良太がうるさく騒ぐ。

「敏から『付き合ってください』とか『好きです』とか、そんなの無いの?」

明和は純に静かに聞いた。

「なかったわけじゃないけど・・・」

純が顔を赤くした。

『普段、無口なくせに、そんなこと、何でここで言うかな・・・』

敏は、真っ赤になって一人で焦っている。

「いつ?どこで?」

良太がさらに大きな声で騒ぐ。

敏も純も、どの場面か思い出し、ますます顔を赤くする。

二人とも、やっと体調が良くなったばかりなのに、また熱が出そうだ。

「内緒だよ、僕たちだけの秘密だよ」

敏がやけっぱちになって叫んだ。

「おお~っ」「わぁ」

明和と良太が声をあげる。

「『僕たちの秘密』だってぇ」

「やってられねぇ」

自分たちで聞いておきながら、大騒ぎだ。

良太は、手にしていたジュースのグラスを飲み干すと、

「帰ろうか?ジュースも飲んだし、お邪魔だし」

と、帰り支度を始めた。

「住吉さんがいれば、元気みたいだし、な」

明和が笑う。

再び、「部活に出て来いよ」と明和が言って、

二人はニヤニヤしたまま、帰って行った。


残された二人は顔を見合わせる。

「あの・・・」

純は、顔を伏せ、言葉を探す。

「ん?なに?」

「私って・・・」

純はうつむいたままだ。

「彼女?」

敏は微笑む。

「そうじゃなければ、何?・・・僕は純・・・の・・・ただのクラスメイト?」

「ううん・・・私の・・・『彼』・・・」

言葉の最後が消えそうになった。

『『私の彼』・・・いい言葉・・・』

「純は、『僕の彼女』だよ・・・」

敏は純の巻き髪を撫でた。

純がゆっくり顔を上げる。


純の笑顔は、花が咲いたように可愛くて、美しい。

『・・・そう・・・僕が見たかった笑顔は、これなんだ・・・』

敏は緩いカーブを描いた純の唇に、想いを込めて、そっと唇を重ねた。









『つぼみひらくまで』これにて、終了です。


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