表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
つぼみひらくまで  作者: 真山咲
第二章
69/74

ベッドルーム(二)

純が伸ばしてきた両腕を、敏は自分の肩に導く。

敏は、そのままベッドにうつ伏せて、純の隣に身体を滑り込ませた。

そして熱のせいでうつらうつらしている純の頭を支えるように、両方の手のひらで包んだ。

『・・・せつない・・・人を好きになるのって、こんなにせつない気持ちだったの?』

敏は、胸がいっぱいになる。

「どこにも行かない。純のそばにいるよ。ずっと・・・」

純がすすり泣き、敏の胸にしがみついて来た。

敏は左手を、純の背中に滑らせる。華奢な背中。熱い身体。

敏の頬に、純の熱い熱い吐息がかかる。

『もう、何も考えられない。ただ、純のすべてを包みたいだけ・・・純のすべてを・・・』

右手で、純の濡れた頬をぬぐう。そして、その頬に唇を押し当てた。

純は、ピクッとして潤んだ目を少しだけ開いた。

「好きだよ。愛してる・・・」

胸からあふれる想いを口にしてみる敏。

「私も・・・私も・・・愛してる・・・好き」

震える声で、そうつぶやくと、純は再び目を閉じて、深いため息をついた。

敏は、熱く甘い吐息を感じた唇に、そっと自分の唇を重ねた。

熱を持った甘い唇・・・涙がこぼれそうなほど、柔らかい。

純は、されるがまま。

柔らかさのとりこになってしまったように、敏はさらに唇を重ねた。

純の唇は、敏の理性を吹き飛ばす。そして、なぜかとても物足りない気持ちにさせる。

『・・・もっともっと、純を知りたい・・・』

もどかしさに、純の身体をきつく抱きしめ、身をよじった。

『・・・もっともっと、純を愛したい・・・」

純の唇の隙間から、自分の舌先を差し込んでみる。

彼女の熱い舌とぶつかる。

その熱い舌を絡め取り、敏は自分の中に導いた・・・。


長い時間をかけた、深い深いくちづけのあと、抱きしまたまま、再び純の両頬に、かわるがわるキスをする。

「うれしい・・・」

敏の胸の中で、純がかすれた小さな声でつぶやく。

ひと筋の涙が左の頬から落ちて、柔らかな巻き髪の中に消えて行く。

涙にぬれた純の濃いまつ毛が綺麗だ、と敏は見惚れていた。


「・・・寒い・・・」

急に純が身震いをする。

敏は、ハッとして現実に引き戻された。

『いけない・・・これ以上はダメだ』

純を求める欲は押さえがたいものがあったけれど、なにより純の身体が前より熱くなっている。

純を興奮させてしまったからなのか、病気が悪化したからなのか・・・。

『このままじゃいけない。身体を冷やさなければ・・・』

「純ちゃん、水、飲める?持ってくるから待ってて」

純の返事が無い。

敏が身体を離そうとすると、純がしがみ付いて来た。

「どこにも行かないから。大丈夫だから。ちょっとまってて」

敏は、純の腕をはずして、ベッドから離れた。


キッチンでグラス二つに水を注ぎ、両手に持ってベッドルームに戻る。

「水を飲んで。飲まなきゃ」

ぬいぐるみの並んだベッド脇のテーブルにグラスを置き、純を抱き起した。

純は敏に抱きつこうとする。

「水、飲んでからね」

純にグラスを押し付けるように手渡す。

「いっぱい飲んで」

ほおばるように水を含むと、純の滑らかな喉がゴクリと音をたてた。

「もう、いらない」

「もう少ししたら、また飲んでよ」

「うん」

「一緒にいるから・・・そばにいるから」

「うん」

テーブルにグラスを置くと、純を抱きしめた。

『・・・熱よ、下がってくれ・・・』

巻き毛の前髪の上から、額に唇をあてる。

熱い額。敏の首筋にかかる、純の熱い吐息。

抱いたまま、純をベッドに寝かせた。


純がうとうとしている。眠りについたようだ。

規則正しい熱い寝息が敏の胸にかかる。

敏の背中にまわした純の腕の感触が心地いい。

純の巻き髪をゆっくり撫でる。

「・・・ママ・・・」

はっと、暗闇の中の純の顔をのぞき込んだ。

おそらく、夢の中で母親に会っているのだろう。

小学生で母親を亡くして、中学生で頼っていた祖母を亡くして。

『ずっと独りを耐えて来たのか・・・』

そう感じると、敏は純のすべてに応えたいと、強く思った。


『外は嵐でも、腕の中で眠る純に、安寧を与えたい・・・』


闇の中で、長い時間、敏は熱のある純を抱き締め、荒れる雨風の音を聞きながら、ただ『これから』を考えていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ