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つぼみひらくまで  作者: 真山咲
第二章
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祭りのあと

バスに乗ってすぐ、純はスマホにメッセージや電話の着信があったことに気付いた。それも何件も・・・。

電話の着信は翔から三件。貴久からは一件。

渡からはメッセージが入っていた。

渡のメッセージの内容からすると、貴久の家に行くというウソがバレて、翔が怒っているらしい。

みんな、純がどこに行っているのか、どうしているのか、心配しているという。


須川駅前のバス停で降りてすぐに、歩きながら渡に電話を掛ける。

小雨が降り出した。

渡はコール音と同時くらいに電話に出た。

「もしもし。純ちゃん、今どこにいるの?」

「いま、須川駅の前」

「何で、貴さんちで食事だなんて言ったんですか?」

「え、それは・・・」

「今日、翔さんがレッスン前に貴さんと会っていたそうです。それで、翔さんが『純が貴んちに食事に行くなんて聞いてない』って言って・・・」

「・・・」

「純ちゃん、聞いてますか?」

「あ、うん」

「とにかく、翔さんはレッスンのあと、純ちゃんの家に向かうって言ってましたよ」

「ほんとに?」

レッスンの終わり時間からは、すでに二時間以上も過ぎている。

「早く翔さんに連絡を入れてください」

「わかった・・・」


そうこうしているうちに、純の家が見えて来た。

家の前の車の入っていないガレージで、しゃがんでゲームらしきものをしている翔の姿が目に入る。

レッスンバッグは、車止めの上に放り出してある。

すぐに、翔が純の姿に気付いた。

「ヤー!どこに行ってたんだよ」

立ち上がりながら、翔は大声を出した。

「ごめんなさい」

「どこに行ってたんだよ。不良!夜遊びなんかしやがって」

「お友達と日越銀座商店街の七夕祭りを見に行ってた・・・」

「心配したぞ。ウソついたろ、お前」

「うん。ごめんなさい」

「さっきから、何回ごめんなさいって言ってるかわかってんの?七夕祭りって、ウソをつかなきゃ行けないような場所なのか?」

「ううん・・・」

「友達って誰だよ」

「学校の・・・クラスメイトと・・・」

「男と?女と?」

「え?」

「男と二人でか?」

「う、うん・・・ううん・・・全部で四人」

純はとっさに、再びウソをついた。

「やっと女の友達が出来たのか?」

「ううん・・・私以外は男の子」

「なんだ、男か・・・」

「いけない?」

「ダメって言ってるんじゃない。お前は女の友達がほとんどいないから・・・心配・・・いや、何でもない」

「心配?」

「何でもないってば」

純はウソをついた心苦しさはあったけれど、翔の優しさが嬉しかった。

「小父様はまだ帰って来ないんだな」

翔は、純の家の暗い窓を見上げる。

「今日は出張で、帰って来ないはずだもの」

「それで、夜遊びしてたのか」

「そういうわけじゃ・・・」

二人で傘をさして門扉の前に行く。

「ちゃんと鍵、閉めろよ。それと、たかと渡に連絡入れろよ」

「渡とは、さっき電話で話した。貴兄さんにも電話入れるから」

「憲人には黙っておいてやるからさ・・・。アイツが知ったら、もっと大騒ぎになるからな。分かってるだろ?」

「うん・・・」

純はうなずく代りにうつむいた。

「それに、今、憲人も忙しいだろうし。憲人の母さん、具合が悪いの知ってる?」

「え?なにそれ?知らない・・・」

驚いて顔をあげる。

「膝の手術を勤めている大学が休みになったらするんだって・・・」

「え?本当?」

「憲人に聞いてみろ。俺は詳しいことは分かんないから」

「うん」

翔は純が門を閉めるのを確認すると、帰って行った。


純が玄関に入ると同時に、スマホが鳴った。貴久からだった。

「貴兄さん。ごめんなさい。心配かけて」

「うん。どこ行ってた?」

「日越銀座商店街の七夕祭り」

「そっか。誰と?」

「村上君と、東君と新井君・・・」

本当のことでもあり、ウソでもあり・・・。

「ウソなんかつくなよ」

ドキリとする。

「俺んちで食事だなんて、ウソをつくようなことじゃないだろ?」

そのことだ。

「ごめんなさい」

「誰も、純が友達と出かけるのを嫌がっているわけじゃないだろ?」

「うん。ごめんなさい」

「みんな、純のことが心配なんだ」

「うん、分かってる・・・」

「七夕祭りに一緒に出掛けるような友達が出来てよかったな」

貴久は優しい言葉の残して電話を切った。

純は、仲間たちにウソをついたことにひどく後悔を覚えた。

そして、楽しかった敏との時間を忘れてしまうくらい、落ち込んで行った

『今まで隠し事やウソなど、皆との間にはなかったのに・・・』





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