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つぼみひらくまで  作者: 真山咲
第一章
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夏の終わり

夏休み最後の土曜日。純がピアノのレッスンに行くと、いつも遅く来る翔が、珍しく早くにレッスンをつけてもらっていた。

レッスン室から出て来た翔が、入れ違いにレッスン室に入ろうとした純を呼び止める。

「早くレッスン受けて来い。面白い情報がある」

思わせぶりな言葉。

「じゃ、あとで聞くね」

純がレッスンをしている間に、憲人も渡も来た。


純はレッスンが早く終わることは考えず、発表会の課題曲に思いのほか手こずっていたから、出来るだけ集中して練習する。

『今までは、夏休みのうちに課題曲を仕上げていたのに・・・。今年の夏は色んなことがあり過ぎた・・・』


レッスンを終えて、次の順番の憲人とすれ違う。表情からすると、憲人は翔から話しを聞いたようだ。

「何があったの?」

純が翔にたずねる。答えたのは渡だ。

「貴さんと優奈ちゃん、別れたんだって」

「え?」

「正確に言うと、貴が優奈ちゃんに振られた、かな」

翔が訂正する。

「どうして?」

「優奈ちゃんが『翔さんたちと貴久君の中には入れない』って言ったんだって」

純は優奈の言葉に納得がいかない。

「なんか、イマイチ意味がわからないんだけど」

「僕たち、仲が良すぎて、他の人が入る余地が無いってことかな」

と、渡。

「純と貴の仲も疑っていらしいし・・・」

翔は純の気持ちを探るような眼差しで純を見る。

貴久とのハグを思い出し、純は落ち着かない。

「貴さんが、純ちゃんの卵焼きが食べたいなんてこと言うからですよ」

渡の発言で、純は翔の視線から逃れた。

「ああ、あれは確かにマズかった。女の子は傷づくよな。それに、貴も優奈ちゃんの扱いが雑だったし」

翔はため息混じりだ。

「私が悪かったのかな」

「純のせいじゃないよ。それに二、三回会っただけで、振られるんなら、もともとうまく行かないってことじゃん」

翔にとっては、もうどうでもいいことのようだ。

「ニ、三回会っただけじゃ、貴兄さんのこと、何にも分からないと思うんだけど」

純は、自分で言った言葉にハッとする。

『真理さんに、同じセリフ言った・・・』

「貴のヤツ、分かりづらい性格だからなぁ。ズバッとものを言わないし、こっちから聞き出さないとハッキリしないし。ああ見えて、甘えたがりのとこあるし・・・けっこう面倒くさいヤツだぜ」

翔の言葉に渡も純もうなずいた。

「振られたのに、貴のヤツ、なんかサッパリした顔してんの」

そう言って、翔は遠くを見る目をした。

「貴さんが、優奈ちゃんを僕たちに会わせなかったら、振られなかったかな・・・」

渡がつぶやく。

翔も純もそれを肯定できなかった。


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