side 信志
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
息をするのが辛い。
体には嫌な汗が浮かび上がっている。
閉じていた目を思いっきり開く。
「大丈夫かい?信志。」
頭の上から降って来るその声に返事もできないほど、疲れ切っている。
まるで全力で運動をした後みたいだ。
さっきから、ただ座っているだけなのに。
「これ……想像以上につらい……。なにこれ……。」
「そりゃそうさ、仮にも神である僕と同等に近い力を得るためなんだから。」
軽い調子で言われて、それもそうか、と心のどこかで納得してしまう。
確かに、甘く見ていたのかもしれない。
一応勇者なんだし、修行も軽く終わる、なんて。
そんな風に考えていた。
「ふぅ……。」
「お、落ち着いたね。もう一回いっとく?」
「……いく。」
コクリと頷いて、もう一度目を閉じる。
「集中、集中……。そうそう、そんな感じ。」
「…………。」
実際、ユーグから言われた修行の内容はとても簡単に聞こえた。
自分の内面、主に操草師としての自分に集中することだけ。
座ってもいいし、目を閉じててもいい。
ただ、集中すること。
けれどそれが難しい。
そもそも……。
「ーーーそこまで!!」
「っ!!」
パァン、と景気良く打ち鳴らされた柏手にびくりとして、慌てて目を開く。
どうやら失敗したらしい。
身体中から、汗が吹き出して来る。
知らず知らずのうちに、また力んでしまっていたんだろうか。
体が痛くなって来ている。
「……やっぱり難しい?」
息を整える途中で降って来る、ユーグの言葉も、さっきまでの少しふざけたようなものと、少し毛色が違っていた。
「……難しい。ここまで熱心に集中なんてしたことなかったし。」
「それもそうか。」
ここで見栄を張っても仕方ない。
いつも通りに答えるボクに、ユーグも安心したのか、いつもの軽い口調に戻る。
しかし困った。
このままだと、ユーグの言う、「神と同等の力」ってものが何かすらわからない。
どころか、ネロともう一度対峙した時に、何もできないだろう。
それだけは避けなければいけない。
「集中……集中……。」
「…………。」
ぽつり、ぽつりと呟きながら、もう一度挑戦する。
考えるのは、自分。
それ以外のことは考えない。
集中……集中……。
「…………。」
イメージとしては、自分の中に潜って行くイメージ。
自分の意識を、心の中の一点に集めるイメージ。
「…………?」
よし、いい感じだ、と思い始めた頃。
そんなイメージの端の方で何かが瞬いた、ように見えた。
「ーーーそこまで!!」
「っ!!」
その瞬間、ユーグの声が響き渡り、ボクの意識は戻って来た。
さっきと同じ。
身体中に汗が滲み、体は痛くて。
それでも。
「……あれ?」
「どうしたの?」
「……そうか!そうだよ!!」
大事なことをつかんだ。
そんな気がした。
こんばんは、Whoです。
信志くんの修行シーン。
熱血系主人公ではないので静かです。
叫んだりしません。
何に気がついたかは次回、ということで。
ではでは。




