side ロット
「なら、こう言うのはどうっすか?」
「……何?」
「ロットさん……?」
自分の発言に、その場にいた二人の注目が集まってくる。
って、バルザールさん、めちゃくちゃ目付きするどいっすね……。
自分に向けられて、今更のようにそう思いながら、それでも自分は言葉を続けた。
「自分たちのことは信じてくれなくても大丈夫っす。けれど、いざという時のために準備だけはしておいて欲しいっす。」
「ほう……。」
すぐに気がついたのか、バルザールさんの目がさらに鋭くなる。
ともあれ、自分の言ったことは簡単。
ここで信じられるかの議論をするよりも、先に行動してしまおう、というもの。
「信用できないが、それはそれとして準備だけ始めろ、ってか。」
「その通りっす。自分たちは所詮流れ者っすからね。信用できないのも当然っす。」
隣のアイリスが何かを言おうと口を開くのが見えたので、手で制する。
幸い、アイリスにもすぐ伝わったみたいで、頷いてくれた。
そう。
どう言い繕っても、自分は人間の中では『よそ者』。
ここでは、アイリスやシンシさん達も変わらない。
ならば。
「自分たちはこれから、また調査に向かうっす。でもそれがどんな風になるか全く予想ができないっすからね。だからーーー。」
「わかった、わかったよ。俺の負けだ。」
と。
勢いのまま、言い切ろうとしたところで、バルザールさんが両手を上げた。
バルザールさんの、『負け』っすか?
「えっと、それは」
「どういうことっすか?」
思わず、二人で尋ねてしまったところ、バルザールさんが手を上げたまま、ニヤリと笑った。
「すこし、意地が悪いと思ったがな。試したんだ、お前さんらを。」
「試した」
「っすか。」
ああ、と頷いてから、バルザールさんは説明してくれる。
そもそも、バルザールさんは自分たちを疑ってなんかいなかった、らしい。
「俺はお前さん達の事情を、大まかにでも知ってる。」
「はぁ。」
「だが周りの連中はそうじゃねぇ。いまだに信用していないどころか、存在を知りもしない連中だっているだろう。」
だから、自分たちの気持ちをもう一度確かめたかったのだ、と。
「だが、お前さん達は俺の予想した通りに、強い気持ちを見せてくれた。『信用しなくてもいい』なんて、誰にでも言えることじゃないんだぜ?特に俺たち商人にはな。」
言って、もう一度ニヤリと笑うと、バルザールさんは立ち上がる。
そのまま自分たちの前にやって来て、立ち上がらせてくれる。
「信じるとも、お前さん達のことを。そして安心しろ。ギルドは、全面的にお前さん達を支援する。できることがあれば、どんどん言ってくれ。……その代わり、頼んだぜ?」
「はい!」
「っす!」
◇◆◇◆◇◆
「「ふぅ……。」」
準備があるからと、そのままギルドに残ったバルザールさんと別れ、ギルドを出た自分たちは、同時に息を吐き出した。
「ふふ。」
「へへ。」
それがなんだかおかしくて、アイリスと二人、今度は同時に吹き出してしまった。
それぐらい、二人して緊張していたのだ。
「ありがとうございます、ロットさん。おかげでなんとかなりました。」
「まぁ、一緒に行くって約束したっすからね。これくらいは当然っすよ。」
「ふふ。」
「へへ。」
もう一度笑いあってから、気持ちを切り替える。
大変なのはこれから。
この街で起ころうとしていること。
魔族が起こそうとしていること。
そして、信志さんのこと。
やらなければいけないことはまだまだ山積みになっている。
それでも。
「では、急ぎましょう、ロットさん。」
「了解っす!」
自分にも仲間ができた。
それを守るために、自分もできることをするっす!
こんばんは、Whoです。
久々のロット視点。
もっと紆余曲折を経ても良かったかもしれませんが、あれもこれもとしすぎてしまうので、再確認、程度で。
やっぱり、周りと違うと疎外感とか感じてしまいますよね。
ではでは。




