side アイリス
「よぉ、お前さんたちか。急に走って行っちまったから、何事かと思ったぜ。」
私たちがギルドへ戻ってくると、相変わらずギルドの中はいろんな人が走り回っています。
そんな中、戻ってくる私たちに気がついて、バルザールさんが声をかけて来てくれました。
「…………ん?シンシはどうした?」
「えっと。」
「それは、っすね。」
そして、私たちが信志さんと一緒ではなく、二人だけだと言うことにもすぐに気がつきました。
口ごもる私たちに、バルザールさんは。
「……なるほど、訳ありってか。」
「はい。」
声音を落として訪ねてくれます。
私が頷くと、ぽりぽりと頭をかいてから。
「わかった。聞いてやる。……おい!俺は少し外す!何かわかったら一報入れてくれ!」
ちょいちょいと手招きをすると、そのまま奥の部屋へ案内してくれました。
案内された部屋は殺風景で、初めて来た部屋とはまた別の場所でしたが、扉もしっかりとしていて、外の話し声は聞こえなくなりました。
「一応、外の連中に聴かせられるかわからないからな。ここで我慢してくれ。」
「いえ、ありがとうございます。」
扉を閉めながら、バルザールさんが目で促しているので、私も早速口を開くことにしました。
と言っても、私に話せるのは聞いたことだけ。
今この瞬間、信志さんがどうしているかは、私にもわかりません。
◇◆◇◆◇◆
「椿信志。僕と同じ力を受け継いでみない?」
そう言ってユーグ様は、信志さんをつれてどこかへ去ってしまいました。
後に残った私とロットさんに、街の代表であるバルザールさんへの伝言を頼んで。
「まったく……、神様ってのも勝手っすね!」
二人が消えた後、ロットさんの口からはその言葉が溢れました。
もちろん、私も突然のことでびっくりしましたが。
「でも、本当にあのことが起きようとしているなら大変です。」
「……っすね。」
言葉をこぼしながらも、ロットさんと頷いて、ギルドへの道を急ぎます。
ユーグ様が教えてくれたこと。
ネロさんがいた目的。
それは。
特殊な術を仕掛け、この街を死者の街に変える、と言うものでした。
その証拠に、ユーグ様の持つ、信志さんと同じ力で生やした植物はことごとくが枯れていました。
しかもただ枯れたのではなく、腐るように、生気を吸い取られるように枯れていました。
死者の魂が現世に集まると、その影響で周りの生者が弱って行くという、昔ナルメア姉様に教えていただいた知識と合致します。
「でも、なんでこの場所なんすかね?墓場とか、もっとやりやすい場所もあると思うんすけど……。」
「そうですね……。」
ロットさんの言う通り、ここは私たち人間が暮らしています。
そんな場所は自然と、死者の魂は寄り付かなくなるはずなのですが。
ユーグ様もそのことについてはわからなかったようで、ただ流れがおかしいから見に来たら見つけた、と言う話でした。
私にも、同じ魔族であるロットさんにも、理由は謎です。
けれど。
そんな中で、このままではいけない、そう言った感情だけが不思議と私たちの中にありました。
◇◆◇◆◇◆
「……なるほどな、そんなことがあったのか。」
信志さんが走ってギルドを飛び出してからのことを、一息に話し終えました。
最後まで無言で聞いてくれたバルザールさんは、私が目の前の水を飲み終わるのを待ってから口を開きました。
けれど。
そこから出て来たのは、少し予想していなかった言葉でした。
「……だがそんな話をおいそれと信じられねぇ。」
「え……!」
「そんな……!」
「聞いたこともない神様。街にいるはずのない死者の魂。加えて、それを企む魔族がいた。いくらなんでも不信な要素が多すぎる。……俺たちは信用が命なんだ。どんな時でもそいつは譲れねぇ。」
言われて、ハッとしてしまいました。
思えば、私は今まで王女で、正面から疑われることはほとんどありません。
それに慣れてしまって、今回のことも話せばわかる、わかってもらえると、心の中で思ってしまっていました。
確かに、はたから見れば信じられないのも無理ありません。
(なにか……。なにか言わないと……!!)
焦りそうになる心を抑えながら口を開いても、出てくるのは呼吸だけ。
自分でも信じられないほど取り乱した私を。
隣で開いた口が、助けてくれました。
「なら、こう言うのはどうっすか?」
こんばんは、Whoです。
遅刻しました、ごめんなさい。
さて、情報を伝える回です。ですがまぁ、「ユーグ」なんて聞いたこともない神の話をされても困るのが本音です。
果たして「隣で開いた口」は何を提案するのか。
アイリスが取り乱した理由も次回書けたらと思います。
ではでは。




