side 信志
「こっちの方からっす!」
「わかった!」
「はい!」
地下通路に入ってから少し。
辺りには植物の残骸が散らばっていた。
少し前までは生えていなかったものは、ユーグが生やしたのだろうか。
ともかく、それが残骸となっているということは間違い無くユーグが誰かと戦っている。
聞こえてくる音を頼りに走るロットの後ろをついていくと、ようやく灯のようなものが見えてきた。
「信志さん。」
「わかった。」
アイリスの呼ぶ声に頷いてお互い手を握る。
動きづらいこともあって、走っている間は離していたけど、それももう直ぐ終わる。
ユーグからの声を聞くためにも、しっかりと手を繋ぎあった。
『信志!アイリス!こっちだ!!』
「……!今!」
「聞こえてきたね。」
「え?なにがっすか?」
ロットには聞こえなかった声。
けれどもボクらには確かに聞こえた声。
間違いない、ユーグはこの先にいる。
「この先にボクらの知り合いがいるみたいなんだ。」
「この先、っすか?まさか!?」
「そのまさかだよ。」
「了解っす。ならこのまま向かうっすよ!!」
今は詳しい説明をしている暇はない。
ロットも、深く聞かずにスピードを上げる。
ボクらはまっすぐに灯のもとへたどり着いた。
そしてーー。
「…………っ!!」
「そんな……。」
そこにいたのは、ユーグと。
見覚えのある顔、ネロの姿だった。
◇◆◇◆◇◆
「……驚いた。」
最初に口を開いたのはネロ。
その口調は以前聞いたものと変わらない。
「……二人ともどうしてここに?」
「ネロこそ。こんなところで何やってるの?」
「…………。」
「…………。」
お互いに聞いて、お互いに黙る。
ネロもボクも、アイリスやロットやユーグまでもが口を閉じるので、辺りはびっくりするぐらい静かになった。
「どうしてですか、ネロさん!」
「……?」
「どうして、こんなことを……!?」
本当は分かっている。
ボクらは今この時点において、敵対してしまっているのだと。
それでも聞かずにいられなかった。
きっとアイリスが聞かなければボクが聞いていただろう。
その答えとして。
「……どうしてって。……私は魔族だから?」
首を傾げながらその答えが、その一言が降ってきた。
ネロが、魔族。
ロットに振り返ってみると、静かに頷いている。
間違いないらしい。
「自分にはわかるっす。あの人は、強いっす。」
「……そういうそっちも魔族?」
「そ、そうっす。」
「……そう。」
ネロは聞いた後には興味をなくしたように、そっけない返事でロットから目線を切る。
やっぱり魔族同士だとお互いに分かったりするものなんだろうか。
「……魔族と仲良くするなんて、信志は争いを止めるつもり?」
「そ、そうです!!だからネロさんも、っ!」
アイリスの言葉が最後で突然切れる。
冷たい視線をネロから投げられたからだ。
「……信志ならそういう発想に行き着くだろうと、私も思った。……でも、ダメ。」
「そんな!どうして!?」
そんな、アイリスの説得にも耳を貸さず、ネロは指を伸ばす。
パチン、と軽い音がしてーーー。
「きゃあ!」
「うわ、っす!!」
「くっ!!」
「ぐっ……。」
指先から光が溢れたかと思うと、その場所を覆い尽くした。
そのあまりの光に、目をおおってしまう。
光が収まった頃、おそるおそる目を開けると、そこにネロの姿はもうなかった。
◇◆◇◆◇◆
「……と、いうわけ。」
どうやらネロが去ってしまった後。
追いかけるにしてもなんの手がかりもないので、一度ユーグに何があったのかを聞くことになった。
「でも、ビックリっすよ。シンシさんたち、いつのまにこんな人と知り合いになってたっすか?」
「あー、えっと、それが……。」
「私たちも、ちゃんと話したのはつい最近なんです。」
「え、え?どういうことっすか?」
歯切れ悪く答えるボクに代わって、アイリスが説明してくれる。
ユーグとは確かにメラーシュで会っている、というか声を聞いている。
けれどその時は、姿も見えなかったしそれ以降会うこともなかった。
つまり、つい最近まではほとんど忘れていたに近い。
我ながら、よくここまで走ってこれたものだ。
「んん?つまり、シンシさんたちは、さっきの魔族の方ともお知り合いなんすか?」
「……そう、ですね。私たちも少し前まで幻だと思っていたのですが。」
「それがそうじゃなかった、っすか。」
「はい。」
なるほど、とうなずくロット。
それに代わって、今度はユーグが前に出てきた。
「説明は終わった?ならここからが本題だ。」
「本題?」
思わずそのまま聞き返してしまったボクに、ユーグはにやりと笑ってーーー。
「椿信志。僕と同じ力を受け継いでみない?」
「……?」
まるで今日のご飯の相談のように軽く。
ユーグはさらりとそう口にした。
こんばんは、Whoです。
ネロとの再会、なにやら力をくれるらしいユーグ。
いろいろと思惑が交差していく予定なので、ご期待ください。
ではでは。




