side 信志
「え?きゃ、きゃぁぁぁああ!!」
地下水路の暗い景色の中で、眩いばかりの光の中から出てきたのは裸だった。
「え!?え!?なになに!?何に驚いてるの!?」
「きゃあああぁぁああぁ!!」
驚くアイリスと、その驚くアイリスアイリスを見て驚く裸の男。
その男が近づくもんだから、さらにアイリスの声は大きくなった。
◇◆◇◆◇◆
少しして。
「落ち着いた?」
「は、はい……。ありがとうございます、信志さん。」
座り込んでしまったアイリスを宥めながら、ちらりと男の方を見る。
男はちょうど、いそいそと服を着ているところだった。
「……まったく、なんで僕がこんなものを……。」
ぶつぶつと小さい声で言いながらも、服を身につけていく。
(……って、あれ?)
どこから服を取り出したんだろうか。
裸だから、どこにも持てる場所がなかったと思うんだけど……。
「ふぅ、ひとまずこれでいい?」
くるりと振り返った男は、どこにでもいるような顔立ちをして、どこにでもあるような服を着ていた。
「はい、すいません。取り乱してしまって。」
「うん。では、ゴホン……。久しぶりだね、椿信志、それにアイリスも。」
「……えっと。まず始めに、どうしてボク達の名前を?」
「あちゃー、そうか、そこからか。」
自分たちの名前が知られていることに、思わず警戒心のある言葉を出してしまう。
が、それに対して、男はなんとも気さくに額を一つ叩くと、笑顔になった。
「僕の声、どこかで聞いたことない?」
「んん?」
「えっ!?ああ!!」
言われて記憶を探って見る。
同時に、アイリスは何か思い当たったみたいで、すぐに声をあげた。
そのあとにボクもすぐに思い出した。
「「メラーシュで聞こえた声!!」」
「せいかい〜。」
二人で同時に指をさして答える。
そうだ、さっきも聞こえていたはずだったのに。
その声はメラーシュで、そしてさっきまでの街の中で聞こえてきた声と同じものだった。
「僕はユーグ。この世界に存在する、あらゆる植物を象徴する、いわば神様みたいなものでね。ずっと見ていたんだ、君たち二人のことを。」
「神、さま。……ええと、本当に?」
「ははは。まぁいきなり言われても信じられないよね。そうだな……、今は植物に詳しいおにーさん、とでも思っておけばいいよ。」
手のひらをひらひらとさせながら、その男改めユーグは気楽に笑っていた。
「さて、僕のことはこの辺にして、と。本当はこうやって君たちに会うことはないと思っていたんだけどね。状況が状況だ。そんなことを言っていられる場合じゃなくなってしまったんだ。」
一転。
顔から笑みを消してそんなことをいう。
って、ちょっと待って。
いきなりそんなことを言われても。
「…………何が、起こっているんですか?」
「うん、簡単に言うと、この街に何かが仕掛けられているみたいなんだ。」
「何か……?」
「具体的にはわからない。なにせこの街には、あまり植物が多くないからね。僕の力も十全じゃないのさ。」
言われて、周りを見渡すと、なるほど。
街の地下を流れているのは水だし、その通路は石でできている。
街の中の道もほとんどが、石で舗装されているかんじだった。
「でも確かに、この街で嫌な気配がしている。なにより、魔力のようなものがこう、どんよりと淀んでいるみたいなんだ。」
だからこうして、ボクらを呼んで話をしたんだ、と言ってユーグは口を閉じた。
その話は突拍子も無いものだけど、話すユーグの目は真剣そのもので、咄嗟に否定することができなかった。
「あの、ユーグ、さん。」
「ん?なに?」
「……メラーシュで私たちを助けてくれたのはどうしてだったんですか?それと、それからはどうして私たちに、話しかけては来なかったんですか?」
「あー、それか。僕らは基本的に生きてる人たちに干渉しないようにしているんだ。誰かに肩入れしちゃうと、世界のバランスが崩れてしまいかねないからね。けれど君たち、特に信志、君は僕らと近い能力を持っている。それもあってつい手を出してしまったんだ。」
特別だよ、特別。と付け加えてユーグは悪戯っぽく笑う。
その顔に裏は見えなくて、本当につい助けてしまったのだと言うことがよくわかった。
「それからは、君たちのすぐそばにいたんだ。だけど僕らはやっぱり不干渉を貫きたいからね。基本的に話しかけることはしないし、そもそもできない。唯一それが可能になるのは、君たちがしている腕輪。それがつながっている時だけ、僕の声は君たちに届くんだ。」
ユーグの言葉に合わせて、ボクらがしている腕輪は静かに明滅した。
こんばんは、Whoです。
裸の男の正体はなんと、自称神。
どうも信志と近い能力らしいですがさて。
次回はもうちょっと話が動く予定です。
ではでは。




