side 信志
「出て来ちゃってよかったんですか?」
三人で、地下にいた女の子を家に運び込んでから、ボクとアイリスは外に出た。
ロットに女の子の様子を見ておくようにお願いしたし、多分滅多なことは起きないだろう。
「大丈夫、だとは思うんだけど……。」
「けど?」
言葉を濁した返事に、アイリスがもう一度聞いてくる。
それにボクは少し考えてから、ゆっくりと歩きながら話し始めた。
「うーん。……実はさっき、少しだけ考えたことがあって、さ。」
「考えたこと、ですか?」
「うん。例えばアイリスは、どうして出て来てよかったか聞いたの?」
え、と一瞬面食らうアイリス。
それでも、ボクの言いたいことは何となくわかったのか、返事をしてくれる。
「……ごめんなさい。私は、やっぱりまだ怖いんです。」
ボクの言うことも信じている、ロットも悪いひとじゃなかった。
それを踏まえてもなお、自分はまだ魔族を信じられない。
アイリスは俯きながらも、そう言ってくれる。
だからこそ。
「そりゃそうだよね。」
「え……!?」
「え!?」
ボクはそんなアイリスに頷いた。
びっくりされてしまったけれど。
「ええと、でも。信志さんは魔族とも、って。」
「うん、でもそれはボクの考えで、まだほとんどの人が分かってくれない。」
「それは……。」
違う、と言おうとしたのだろうか。
それでもアイリスは、途中で口を閉じる。
ボクらはまさしく、そのことでアイリスの故郷から追われたのだから。
「ごめん。ボクの考えがまだ甘かった。」
「い、いいえ!私は信志さんを信じてます!だからきっと大丈夫です。」
「ありがとう。」
お礼を言って少し黙ってから、話を元に戻した。
「だからそれは多分、魔族も一緒なんだと思う。」
「……はい。」
「起きた時、周りに自分と敵対するような種族がいたら怖いんじゃないかな、と。」
多分。
いや、絶対と言ってもいいかもしれない。
ボクはそんなこと考える人間じゃなかった。
この世界に来て、きっとアイリスと会って、少しずつ変わっているのかもしれない、と思うのは思い上がりだろうか。
「…………やっぱり、信志さんは優しいですよ。」
「そうかな。そうだといいな。」
もうそろそろ酒場に着く。
持ち帰りには何を包んでもらおうかと考え始めると、二人のお腹が同時に鳴った。
「「…………。」」
二人で笑いあって、酒場に入った。
大丈夫、きっとうまく行く。
ボクは一応、勇者らしいから。
◇◆◇◆◇◆
家にたどり着いてから数分後。
ボクとアイリスは、再び家の外にいた。
「信志さんの言う通りになっちゃいましたね。」
「なってたね。」
帰り着いて、魔族の女性の様子を見に行った。
ロットもついていてくれたし、そこまで心配はしていなかったのだけれど。
悪い予想は当たってしまうもので。
ボクらを見つけた魔族の女性が、もうすぐで暴れてしまいそうだった。
「ごめん、アイリス。もう少しだけ付き合って。」
「わかりました。……ふふ。夜のお散歩ですね。」
楽しそうに笑うアイリスに、こちらも少し嬉しくなってしまう。
ロットには悪いけれど、せっかくだし少し回り道してみようか。
そんなことまで考えながら歩き始める。
途中でするのは他愛のない話。
いろんな好きや苦手。
これまでの思い出。
それから、これからのこと。
「信志さんは、これからどうするつもりなんですか?」
「うん。ここでできることをしながら、魔族となんとかコンタクトが取りたい。」
「……それは、もし|魔族の土地(あちら側)に行くことになったとしても、ですか?」
真剣な、それでいてどこか楽しそうに聞いてくるアイリス。
それにボクは。
「もちろん。」
頷く。
今度こそ、ちゃんと自分の手を届かせるためにも。
「わかりました。私も、ついて行きます。」
心なしか嬉しそうにアイリスも頷く。
腕輪を指でなぞって、その手でボクの腕輪にも触れて。
『……けた。し……、ひさ……り。』
「?」
アイリスの指が触れた瞬間、その音は聞こえて来た。
(いや、音というよりもこれは……?)
聞き覚えのあるようなないようなそんな音。
いや……声?
「アイリス、何か聞こえない?」
「え?何かってなんですか?」
アイリスには聞こえていないのだろうか。
とにかく。
「ちょっと気になるんだ。こっちに来て。」
「え!信志さん!?」
アイリスの腕を、そのまま握って歩き始める。
だんだんと思い出せて来た。
それは。
その声は。
(あの町で聞いたはずの声!)
忘れていた。
思い出せなかった。
メラーシュで、ボクは確かにその声を聞いたことがあった。
こんばんは、Whoです。
アイリスと夜の散歩二連発。
夜の、とついてますが本当にただ散歩するだけです、ええ。
メラーシュでちょっと触れた声の正体が次回ついにわかる、かもしれない。
ではでは。




