side ロット
ドサッ!
「!!」
「今の音は!?」
「こっちっす!」
自分がリシューの花を持って、シンシさんに説明していたところで、通路の奥から物音。
とっさに、花を持ったまま駆け出してしまった。
角を一つ曲がると、すぐにそれは見つかったっす。
「ぅ、あ……。」
「人が……!あ。」
追いついてきたシンシさんとアイリスも驚く。
もちろん自分も驚いてしまった。
けれど、その理由は倒れているのが、魔族だと一目で分かってしまったから。
今は目立たない黒い肌。
頭には小さくても確かにある、ツノ。
遅れてアイリスも気がついたみたいっすね。
「よし、まだ息はあるみたいだ。すぐに……って二人ともどうしたの?」
もちろん、シンシさんはそんなことお構いなく、助けようとする。
「なんでもないっすよ。」
そう言って、少し嬉しくなったのを隠す。
続いてアイリスも、仕方ない、という顔をしながらも自分の後からやって来た。
この場合、シンシさんに何を言っても無駄っすからね。
自分の時も、そうだったっすからね。
アイリスが応急処置をするのを待って、自分もシンシさんと倒れているヒトを抱える。
ふにょん。
抱えると、柔らかい感触が。
身につけていたマントで分からなかったけど、どうやら女性のようっすね。
(う……負けてるっす。)
なにが、とは言えないが負けていたっす。
いや、自分はまだこれからっすからね。
いやいや、こんな時に何を考えてるっすか。
頭をふるふると振って、考えを追い出す。
「ツノ、は流石に見られたらまずいよな……。」
黒い肌は、ぎりぎり南の出身だと言えば誤魔化せても、頭のツノだけは人間には生えていない。
それを見られるのは確かにまずい。
「では、こうして……。」
「よし、じゃあ行こう。」
最後に頭を隠すように布を巻いてから、元来た道を戻り始めた。
◇◆◇◆◇◆
幸い、誰にも見られることなく家までたどり着くことができたっす。
ギルドへの報告は明日にして、ひとまず彼女を部屋まで運び込んだ。
「ふぅ……。」
「お疲れ様です。」
彼女をひとまず自分のベットに寝かせた後、みんなで部屋に集まった。
とりあえず、ここなら人目を気にすることもないはずっすからね。
あとは、目が覚めてくれるのを待つだけっすけど……。
「さて、と。ごめんロット、少しの間見ていてもらってもいい?」
「自分がっすか?大丈夫っすけど。」
「あんまりたくさんでいて、怯えられても困るし、少し外に出てるね。ついでに夕飯もなにか買ってくるよ。」
「すいません、お願いします。」
「なるほど、了解っすよ。」
そう言って、シンシさんたちは席をはずす。
自分も、ここでずっと待っているのは正直暇なので、本でも読んでいようかと立ち上がる。
その時だった。
「……ない、で。」
「ん?」
確かに声がした。
シンシさんのでもない、アイリスのでもない。
もちろん自分の声でもない。
ということは。
「気がついたっすか?」
もしやと思って近づいて見ても、反応はなし。
寝言っすかね?
そう思いつつ、また一歩ベッドを離れる。
「……ぃか、ないで。」
今度はもう少しはっきり聞こえた。
いかないで、っすか。
ちらりと振り返ると、ベッドの中の表情は少し辛そうにも見える。
彼女は一人だったのだろうか。
いつからあそこにいたのだろうか。
「あぁー、もう。しょうがないっすね!」
今の自分にはシンシさんやアイリスがいる。
いてくれる。
それでも、少し前までは自分も一人だった。
その寂しさはよくわっているつもりだ。
(今は。今だけは離れるわけにはいかないっすね。)
近くに移動させた椅子に座りなおし、手も握ってみる。
長いこと水路にいたからか、その手は冷たかったけど。
(大丈夫。自分、手の温度は高い方っすから。)
その冷たさを払うように、両手で包み込んだ。
こんばんは、Whoです。
知らないうちに魔族だとバレている彼女。
起きた時の反応が楽しみです。
ではでは。




