side 信志
「……なるほど、街の東側はまた採取できる様になっていたんですね。」
受付嬢さんは、街の地図を広げて東端に印をつけた。
他にもいくつか同じ様な印と、注意書きの文字が見える。
「では、こちらが報酬です。」
「ありがとうございます。」
そう言って差し出される小袋を受け取ると、受付を離れる。
昨日は探索しても群生地を見つけられなかったけど、今日は無事に見つかった。
受付嬢さんの言う通り、街の様子もわかってきたし、そろそろ別の仕事も見てみてもいいかもしれない。
「あ、おかえりなさいっす。」
「どうでしたか?」
「うん、無事にもらえたよ。」
ギルドの中に併設されている居酒屋で、アイリスたちと合流する。
何気に今回初めて群生地が見つかったので、その報告をするのも初めてだったから、ちゃんと報酬がもらえるのかと不安だったりもした。
「せっかくなので今日はここでご飯にしましょうか。」
「いいっすね、きょうはもう疲れたっすよ。」
机に突っ伏して疲れたアピールをするロットに笑いながら、ボクも席に着く。
やってきた店員さんに適当に注文をした後、ドット疲労感が湧き上がる。
意識していなかったけど、やっぱりボクも少し疲れているみたいだ。
「……で、明日からはもう少し別の仕事もしてみようと思うんだけど、どうかな?」
「自分はいいっすよ。確かにあの仕事だけでは収入も少ないっすし。」
「私も賛成です。もう少し体力もつけておかなきゃですから。」
そう言って頷いてくれる二人に、ボクは少し声のトーンを落として本題を切り出した。
「それと……。実は、二人にお願いしたいことがあるんだ。」
「お願い?」
「したいことっすか?」
「お待たせしました!!」
それについて話そうとしたところで、料理がやってきた。
目の前に料理を並べられてしまえば、空腹は増す。
本題はまたあとで、と言って三人で料理に取り掛かった。
◇◆◇◆◇◆
食事を終えた後は、ここで話すことでもないとギルドを出る。
よく考えなくても、家で話せば声のトーンを落とす必要もないのだ。
「ひぁ……!」
家までもう少し、と言うところで突然そんな可愛らしい悲鳴が聞こえてくる。
誰かと問うまでもない。
振り返ると、少し恥ずかしげにしているアイリスがいた。
「どうしたの?」
「いえ……ええと。」
聞いてみると、自分でもよくわからないのか首を傾げている。
「なにか、冷気、でしょうか。それを感じた気がするんです。」
「冷気?」
言われて集中してみても、寒い、と思えるほどの感覚はない。
せいぜいが涼しい夜、と言った感じだ。
「でも、それも一瞬で……。今はなんともないんですけど。」
「なら早いうちに帰るっすよー。」
「はい。そう、ですよね。」
首を傾げながらも、もう冷気は感じないみたいで、少し足早に家に帰る。
帰りつく頃には、少し体も温まった。
「今日の当番は自分っすね。少し待ってるっすよ。」
言ってロットは台所に向かう。
お茶の当番は交代で行う様にしていて、今日はロットの番だった。
しばらくしてロットが戻ってくる。
手にしているお盆の上には、湯気が登るお茶があった。
「で、さっき言いかけてたお願いってなんっすか?」
お茶を片手に、早速切り出してきた。
アイリスも両手でコップを持ったまま、コクコクと頷いて聞いてくれる。
「えーと実は、ボクの役割のことなんだけど。」
『スプラウション』と、庭のあまり外からは目立たないところに小さな雑草を生やす。
あれぐらいなら、時間も遅いし見つかって騒ぎになることもないはずだ。
ちゃんと生えたことを確認して視線を二人の方に戻す。
「本物の草が生えるんすよね?それはこの前も聞いたっすよ?」
ボクが生やす草、植物は全て本物。
それはアイリスはもちろん、すでにロットも知っていた。
「うん、でも。」
もう一度『スプラウション』を唱えて庭に植物を生やそうとする。
しかし、さっきと違って今度はなにも生えなかった。
「ボクのいた場所の植物は、見た目や名前を思い浮かべるだけで生やすことができる。でも、こっちの植物はいまだに一度も生やせたことがないんだ。」
こんばんは、Whoです。
街の様子もわかってきて、これからどうしようかというお話。
当然ながら、なんでもかんでも生やせる訳ではないのです。
ではでは。




