side アイリス
「では、行きましょうか。」
それぞれが使う部屋を決めた後、私達は家を出ました。
もちろん、冒険者ギルドへ向かうためです。
「でも自分たちにできる仕事なんてあるんすかね?」
そのロットさんの疑問はもっともで、私も、そしてきっと信志さんも考えている事だと思います。
私達には、「戦う力」がありません。
ロットさんは少しあるようなのですが、あまり当てにしないで欲しい、と言われてしまいました。
それでも、そういった力の必要がない仕事もあるはずだ、とこうして向かっています。
それでも、なにか得たいの知れない不安が私に襲いかかっていました。
◇◆◇◆◇◆
「お待ちしてました。信志様と、アイリス様ですね?」
「え?……あ、はい。」
ギルドへたどり着いた私達はさっそく受付に並んだのですが、その受付にいた人にいきなり名前を呼ばれてしまいました。
「ギルド長からお話は伺っておりますので。」
「ギルド長……。あ、バルザールさんか。」
「はい。」
どうやらバルザールさんが既に話を通してくれているようです。
「まずは皆様のギルドカードをお作りします。奴隷の方もこちらでお作りしますので、お名前を伺っても?」
「あ、自分はロットっす。」
「かしこまりました、少々お待ちください。」
そう言って、一度奥に行く後ろ姿を見送って少し。
カードのようなものを手に戻ってきました。
「こちらが冒険者ギルドのギルドカードです。お二人は商人ギルドのカードもお持ちと聞いています。そちらと見た目は似ているので間違えないようにお願いします。もちろん、間違えたからと言って特に何があるわけではないのですが。」
「ありがとうございます。」
三人を代表して信志さんが受け取ると、そのまま説明を聞きます。
「基本的にギルドへのご用件は、このカウンターを通して私たち受付嬢が対応いたします。仕事の斡旋やその報酬、または依頼の受付など、御用がありましたら一先ずこちらへお越しください。」
確かに横を見ると同じ様にカウンターが並んでいて、それぞれ受付嬢さんが対応しています。
列が同じぐらいに分かれているのも、それぞれで違うことをしていないからでしょうか。
「冒険者にはランクと呼ばれるものが存在し、仕事の達成数や功績に応じてギルド側から昇格の相談をさせていただきます。ランクはD、C、B、A、Sの順に高くなっていき、B以上になると指名性の依頼が入ることがあります。」
ここまでで何か質問は?と受付嬢さんが尋ねるので、三人で顔を見合わせた後、私が口を開きました。
「あの、私たちは戦うのはあまり得意ではなくて……。魔物の討伐といったお仕事以外もあるのでしょうか?」
「もちろんです。というのも、この街では常に人手が足りないと、各店から手伝いの仕事が舞い込むことがほとんどです。ですので、そういった仕事を専門にうける方もいらっしゃいます。」
それから、と後ろの棚から瓶と。
(草、でしょうか。)
ともかく、そう見える何かを取り出してくる受付嬢さん。
「こちらの回復薬を作るための材料の薬草も日々不足している状態で、採取してもらえれば買い取らせてもらっています。ただ、誰でも達成できる仕事のため、こちらの換金は1日に10束と制限を設けさせてもらっています。」
薬草、ということで信志さんが少し緊張していましたが、受付嬢さんの言葉を聞いて不思議な表情になってしまっていました。
「ですので、安心してご自身で可能なお仕事をこなしてもらえれば、と思います。」
そう締めくくった受付嬢さん。
魔物の討伐以外も受けられる依頼があると聞いて安心した私たちは、そのまま依頼の紹介をしてもらうことになりました。
「では、こちらなどいかがですか?」
そう言って渡された紙に書かれている依頼は……。
「薬草の調査、ですか?」
「はい。先ほどお見せた薬草なんですが、現在採取できる場所が限られています。そちらも最近では取り過ぎているのか、数が減っている様なので新しく採取できる場所を探して欲しいのです。」
「でも私たちは、この街に詳しくありませんよ?」
「はい、ですのでこちらで街の周囲を探索しつつ、探ってもらえればと思います。一度調査した場所も時間が経てば群生地になる、といった事例も確認されているので、この街に来たばかりの方にオススメしている依頼なんです。調査した場所を教えていただければ、少しばかりの報奨金も用意させてもらってます。」
受付嬢さんのオススメと、群生地が見つかった場合の追加報酬があるとのことで、まずはこの依頼を受けて見ることになりました。
採取や店の手伝いといった仕事もあるとわかり、最初に感じた不安感は説明を受けて消えていたはずなのですが、私の中にある不安感が消えていないことに気がつくのは、もう少し後のことでした。
こんばんは、Whoです。
遅刻すいません。
初めて街に来た人用のチュートリアル的な依頼を受けた信志くんたち。
アイリスの不安感というか心配事は次回以降で触れていけたら、と思います。
ではでは。




