side ロット
「えぇっと……、二人と、奴隷が一人か。」
シン・ドルムと呼ばれる街に入る時、自分はシンシさんの奴隷、という形を取ったっす。
指の先で首元を撫でると、そこには革でできた首輪の感触がある。
人間の奴隷という立場は、奴隷の証である首輪がつけられ、基本的に主人には逆らえないようになっている。
首輪には二つの役割があり、一つは装着した者の力を抑えること。
つまり、主人の許可なく魔法や能力を使ったりすることができなくなるのだ。
そしてもう一つの理由。
それは『奴隷である』ということの証明をすること。
人間は、自分と同じ種族以外を忌避することが多い。
亜人種と呼ばれる、人間と他種族の間のような見た目の者たちや、魔族。
それらが人間と同じ場所にいると、必ずと言っていいほどトラブルが起きる。
それを回避するために、『奴隷という立場』はとても便利なのだ。
(無理な命令はしないらしいっすけど、まぁ要は体のいい『物』扱いっすからね。)
人間の奴隷という話を初めて聞いた時は驚いた。
今まで『奴隷』というのは主人に何もかも、それこそ自由や意志すら奪われ、ただただ盲従する物だと思っていたから。
でも、それがこちらでは違う。
自由はあまりないものの、しっかりと一人として保証されるし、もちろん手を出せば罰せられる。
そのため、トラブルも起きにくくなる。
「よし、話は聞いている。通っていいぞ。……あぁ、それから、まず初めに冒険者ギルドに行ってくれ。そこのギルド長が話があるらしい。」
「?わかりました。」
少し待ったとはいえ、それほどかからずに門を抜ける。
そうして自分たちは、やっとシン・ドルムへたどり着いたっす。
◇◆◇◆◇◆
「ところでなんで、ぎるどちょう?が呼んでるんすかね?」
「多分、ナルメア姉様が話を通してくれてるんだと思います。とりあえず行ってみましょうか。」
「ナルメアさんが?本当に追放は形だけなんだね。」
ギルドの場所は門を通る時にいた人に教えてもらった。
まずは、言われた通りそこを目指して歩いていくっす。
「やっぱり街の中はぜんぜん違うんすね。」
キョロキョロと思わず見回してしまう。
それぐらい、歩いている通りには当然のようにたくさんの店、店、店。
商売の街らしく、とても活気がある。
「あ、あれ。美味しそうっすね。」
「ほんとだ。あっちも気になる……。」
あっちにふらふら、こっちにふらふら。
店を覗き込みながら進むから、一向にギルドにたどり着かない。
ふと、アイリスを見ると、そわそわとしている。
何も言わないだけで、アイリスも自分たちと同じだった。
「よぉ、にいちゃん。珍しいの連れてるな。」
店を覗いていると、不意に後ろから声をかけられる。
振り替えると、やたらとガタイのいい大男が立っていた。
「どうも、初めまして。」
ぺこり、とシンシさんが頭を下げると、その人はガハハハ!と大声で笑った。
「おう、挨拶は大事だな。それで、にぃちゃん……。」
「そいつ、魔族だろ?」
身を屈めて、小声でそう言った。
ぴくり、とシンシさんの肩が揺れる。
「そいつを言い値で買いたい。いくらだ?」
それを肯定と取ったのか、そのまま交渉を持ち出してくる。
自分にもチラリ、と視線が向けられる。
「すいません、彼女は売り物じゃないんです。」
大男が視線をシンシさんに戻した時、そのシンシさんが言った。
そんなシンシさんの言葉に、大男は口に手を当て。
考えて。
「ハハハ!そうかそうか。嫌、すまねぇ。あまりに珍しかったもんでな。つい交渉しちまった!」
笑った。
それも大きな、それこそどこまでも響きそうな声で。
周りを歩いていた人もギョッとして、振り向く。
でも、不思議なことに、その大男を見た途端に納得したのか、何事もなく歩いていく。
「さて、と。おまえさんら、ユーステスから来た三人だろ?聞いてるぜ。」
突然に、なんでもないように言い当てられる。
「大事な挨拶が遅れちまったな。俺がこのシン・ドルム冒険者ギルド長のバルザールだ。」
そんなことをポンポンと言われ、自分たちは呆気に取られてしまった。
こんばんは、Whoです。
武闘派のギルド長は、デカイ斧振り回してるイメージ。
もちろんこの人も……。
感想などお待ちしてます。
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ではでは。




