side 信志
ガタガタと揺れる馬車の中。
ユーステスを出てからすでに丸一日が経過した。
馬車の中にはボクの他にアイリスとロット。
三人共、そのユーステスから追放された身だ。
とはいえ、アイリスが王女、それにボク自身が勇者ということもあって、言葉ほどひどいことにはなっていない。
なにせ今現在、拘束の「こ」の字もなく、比較的ゆったりとした馬車にこうして三人で座っている。
「……って、聞いてますか?信志さん。」
「そうっすよ、自分だけ考え事でごまかすなんてずるいっすよ!」
ぎくり、と竦む体を抑えて二人の方を向く。
「も、もちろん聞いてるよ。……で、えーとなんの話だっけ?」
「「はー……。」」
聞いてると言ったものの、直前まで思考は別の場所へ飛んでいた。
そのことを小声で付け足すと、二人からため息をもらってしまった。
「なんの話?って、シンシさんが言い出したことじゃないっすか。お金の話っすよ。」
言われて、ああ、と思い出す。
お金。
日本にもあった文化で、その存在自体は知っている。
店を開くにあたっては当然少し勉強もした。
それでも結局、ユーステスにいる間にお金に詳しくなることはなかった。
なぜかというと。
(みんなお釣りが出ないように払って行くんだもんなぁ……。)
お釣りがいらないということは計算も特にする必要がなく、加えて買い物をするときはいつもアイリスが一緒だったので困ることがなかった。
なので、せっかくだからロットも一緒にアイリスの教えを乞おうと、そういう話だった。
「では、話を聞いていなかった不真面目な信志さんのために、もう一度言いますね。」
若干棘がある言い方でアイリスがもう一度説明してくれるのを、今度はちゃんと聞く。
アイリスが手元にある、銅貨を指差して。
「まずこれがセリ銅貨です。一番小さな貨幣で、ユーステスのお店でもこれを使うことがほとんどでしたね。」
ついで、隣に持っている銀貨、金貨にも説明を加える。
「それでこちらがルール銀貨に、レガス金貨です。銅貨10枚で1ルール銀貨、銀貨100枚で1レガス金貨と同じ価値になってます。」
お金に貨幣を使うのは日本と同じでも、それ以上の紙幣はない。
初めて教わった時に聞いたら、紙に価値はないですよ?と言われてしまった。
「ここまでがユーステスで使われているお金ですね。」
「なるほど……。ユーステス『で』?」
「どうしたっすか?」
アイリスの言葉に引っかかる場所があった。
もしかして。
「はい。もちろんユーステス以外の場所では別のお金も存在します。」
予想的中。
でもよく考えれば当然のことだ。
元いた場所でも、基本的に日本のお金は日本でしか使えない。
こちらでもそれがある、というわけだ。
「もちろんユーステスはこの大陸の首都ですから、ユーステスで使えるお金は大陸内ならどこでも使えます。」
「そうなの?」
「はい。ですが、今向かっているシン・ドルムは商売の街でもありますから、いろいろな場所のお金が使われているんですよ。」
私も全部見たことがあるわけではないんですけどね、と付け足してアイリスの説明が終わる。
「はぁー、人間のお金は色々あるんすねぇ。」
「魔族はそうでもないの?」
「そうっすね。もちろんお金の存在自体はあるっすけど、基本的に商売なんてしないんすよ。商売、なんて言葉もなかったぐらいっすから。あ、ただ、魔王様はそういうことに詳しいってのは聞いたことあるっす。」
パン、と音がしそうな調子で手を叩いたロットが付け足す。
と、ちょうどその時。
ふわり、と開いている窓から風が入ってきた。
「ん、これは……、潮の香り?」
「あ、もう着いたんですね。」
不意に鼻に入った風から匂いがした。
窓の外に顔を出すと、遠くの方に海。
その方角からくる風は、しっかりとした潮の香りがしている。
そして海の近くには大きな城壁。
「あれが、シン・ドルムです。」
指差すアイリスの声がそのまま、新しい街に到着したことを教えてくれた。
こんばんは&お久しぶりです、Whoです。
色々と片付いたと思ったらまた積み重なってきましたが、
とりあえず書き始めている分です。
またゆっくりとやっていきますので
気長にお付き合いください。
あ、感想なんかもどんどん送ってくだされば励みにしますので
感じたこと、教えてくださいね。
ではでは。




