side extra(行く道)
「あぁ、来たね?待ってたよ?」
遠くにユーステスを望む高台の上で、飛んで来た鳥を肩に乗せた男がいた。
「どうだった?」
「ーーー。ーー。」
「なるほど、ついに始まったんだね。」
全体的に緑色で、とんがり帽子をかぶり、釣竿のようなものを持つその姿はおとぎ話に出てくる妖精のようで。
それでいてどこか、不思議な胡散臭さを持つ少年だった。
「みんながみんな、世界を前に進めようとしている。……でも『前』とはどっちだい?」
独り言のように、誰かに尋ねているように。
その少年は言葉を作る。
「みんなが同じ考えではいられない。誰かにとっての『前』はきっと、誰かにとっての『後ろ』でもあるはずだ。」
「ーーー、ーーー。ーー。」
「うん?そうだね、またよろしく頼むよ?」
まるで主人に仕える一人の騎士のように、その鳥は再び飛び立つ。
それを見送った少年は再び視線を前に戻して。
「あぁ、世界は一体、どこに向かっているんだろうね?」
視線の先にある、たった今ユーステスから出発した馬車に向かって、その言葉を投げた。
言葉は風に乗って、ある少年の元へ届ーー。
◇◆◇◆◇◆
俺は、どうすればよかったのだろうか。
信志が乗った馬車を見ながら、そのことばかりを考えてしまっている。
「………………。」
あいつとはなんの接点もなかった。
この世界に来るまで、会うこともなかったかもしれない。
だが、実際に喚ばれて、出会った。
元の世界に帰るという、同じ目的を持つ仲間だ。
でも。
それでも。
俺はあいつを羨ましく思っていた。
思ってしまっていた。
なぜ、どうして。
あいつばっかり勇者みたいなことに巻き込まれているんだ、と。
(クソッ!!)
思って、自分が嫌になって、壁を叩く。
これの繰り返しだ。
時々、自分ですら意識しないでそう思うことすらあった。
(少し頭でも冷やすか……。)
訓練場には出た汗を流すための水浴び場がある。
そこで冷水でも被って、落ち着こう。
そう考えて、足を訓練場に向ける。
(ついでに、体も動かすか。……ぅわ!!)
「…………。」
正輝が一歩二歩と歩き始めた直後。
それは目の前に現れた。
「……誰だ。」
静かに、それでいていつでも剣を抜ける体制になりながら正輝は目の前にいる影を睨みつける。
それは、頭までをすっぽりと覆うようなフードマントを被って、顔を隠している。
当然、そんな格好の兵士は見たことがない。
城にいる兵士はみんな、顔が見えるような装備をしていた。
「…………。」
「……答えない、か。」
少し待っても、その影は身動き一つしない。
それならば捕まえて問い詰めようと、一歩踏み出す。
それに合わせるかのように
「…………。」
(何っ!?)
影も前に出て来る。
突然のことで間合いを外された正輝は、そのまま影と交差する。
「……オマエハ」
(……?)
その時確かに聞こえた声。
「オマエハイッタイ、ナニニマヨッテイル?」
そこまで聞いたところで。
「!?……ここは。」
目が醒める。
とても信じられないことだが、さっきまでも確かに起きていたはずなのに、確かに思う。
自分は今、確かに目が覚めたのだと。
「ここは……。訓練場、か……。」
周りを見渡すと、さっきまで向かおうとしていたはずの訓練場。
その場所に自分は座り込んでいる。
自分は知らないうちに眠ってしまっていたのか?
当然考える疑問もすぐに打ち消す。
手が、尋常じゃないほどの汗をかいてしまっている。
さっきまで相対していたことが嘘じゃないと、全力で教えてくる。
「っくそ。」
自分でも覚えがないほどの感情が、心の奥から湧いて来る。
『オマエハイッタイ、ナニニマヨッテイル?』
わからない。
そんなこと、俺が一番知りたい。
(俺は一体、どうしたいんだ?)
正輝の疑問に答える声は、まだない。
こんばんは、Whoです。
おもったより短くなってしまったので、ふたつをひっつけちゃいました。
これで「開店編」はお終いです。
店も閉めちゃったので。
それから、少しの間、休載します。
いろいろやることが増えたのもあるんですが、なによりプロットが完全になくなってしまいまして。
部分部分の描きたい場面はあるんですが、そこへ向かうための話が不十分ですので、しばらく考える時間とさせていただきます。
多分1月中も再開は厳しいかもしれませんが、少しばかりお待ちください。
ではでは、少し早いですが、良いお年を。




