side アイリス
「待ってください!!私も。私も、一緒に行きます!!」
信志さんの言葉を、私のその声で打ち消します。
彼と一緒に、頑張ると決めたのだから。
「アイリス、あなたは本当にそれでいいの?」
「……はい。私も決めたんです。」
信志さんの考えていることを聞いたその時から。
いつかこうなると思っていました。
すぐに打ち解けられた、と言っても、それは私たちだけの話で。
それが国の人全員に当てはまるとは限らない。
「私も、ロットさんが『魔族』であることを知っていました。」
その一言に周りの空気はさらに硬くなりました。
それでも、きっと。
「あなた一人だけなら、なんとかごまかせるとは思うわ。それでも……?」
私は王女だから。
ここにいる人たちが口を揃えていえば、私は知らなかったことになるでしょう。
そう、ナルメア姉様は止めようとしてくれます。
それでも。
「それでもです、ナルメア姉様。私は『勇者』である信志さんと共にあると、そう誓います。」
言い切った。
それは覚悟。
これから何が起ころうとも、彼について行くという確かな気持ち。
「……わかりました。では、『追放』の準備を始めてください。」
ナルメア姉様がため息をついて、そう口にします。
それにより、私、アイリスと、信志さん、それからロットさんのこの国からの『追放』が決定しました。
◇◆◇◆◇◆
「おい、知ってるか?」
「あぁ、あの魔族が国の中にいたって話だろ?」
「それで匿ってる奴らがいたんだよな?」
「ああ。なんでもそいつらは国から追放されるらしいぞ。」
「追放?なんだってまた、そんなに軽い罰なんだ?」
ヒソヒソ……。
ざわざわ……。
街のいたるところ、それこそ表通りから裏通りにあたるところまで、その話題で持ちきりでした。
「まさかここまで大事になるなんてなぁ……。」
「まったくっすよ。自分だけならともかく、なんでシンシさんまで出て行かなきゃいけないんすか。」
街を移動する馬車の中。
信志さんとロットさんはそんなことを呟いていました。
もちろん、二人とも文句を言いながらも粛々と馬車に乗り込みました。
これが、いわゆる『追放』とはほど遠いからです。
「少し離れた街まで連れて行かれるんだっけ?」
「はい。確か名前は、『シン・ドルム』。昔からある、比較的大きな街です。」
普通、『追放』といえば、国から少し出た、山や野で捨て置きにされます。
でも、ナルメア姉様はそれをしませんでした。
身を隠してこの国を出るため。
それから街のすぐ近くまで連れて行けるように私たちを馬車に乗せ、城を出してくれました。
もちろん、拘束なんてものはありません。
「…………。」
ゴトゴト……。
ゴトゴト……。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
門が近づくに連れて、私たちの口数が減っていきます。
私の中にあるのは寂しさ。
『追放』という手前、私たちがここに戻ってこれることはまずないでしょう。
ナルメア姉様にも、テト姉様にも、もう会えない……。
目元がじわぁっと熱くなってきます。
不意に、私の手を誰かが握りました。
「大丈夫。ボクらも一緒だから。」
信志さんです。
彼と、天野様と間様はまさしくこんな体験をしたんですね。
それもこうやって悲しむ暇もなく。
「……ありがとうございます。」
一度目をぎゅっと閉じて、熱を払う。
それから、この悲しさを背負ってなお、自分を案じてくれた彼の手をぎゅっと握りしめた。
こんばんは、Whoです。
ここで『開店編』終わり、と思っていたのですが、書きたいシーンが少しばかり増えまして。
もう二、三回ほど続きます。
そのあとは……、やっぱり『探索編』になるんでしょうか。
お楽しみにお待ちください。
ではでは。




