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花屋は商魂たくましい  作者: Who
開店編
76/159

side 正輝

「…………。」


朝。

目を覚ました俺は、とくに何をするでもなく城の中にある自分の部屋から、外の景色を眺めていた。

そうしていると、どうしてもこの世界に来てからのことを考えてしまう。

はっきりと言えば、少し退屈だった。

召喚されたあの日、不謹慎だとは思いながらも少しわくわくしている自分がいた。

男なら誰だって冒険に憧れる。

その冒険の日々がこれから始まるんだと、一人で叫びたくなったりもした。


(それなのに……。)


もやもやとした感情が膨らんでいくのを感じる。

剣を呼び出せる不思議な力をもらった。

魔族とだって一度剣を交えた。

国の兵士とも互角以上に渡り合って、今ではヴォルドさんにだって負ける気はしない。

だけど、そこどまりだ・・・・・・

俺はまだ一度も魔族を倒していない。

ナルメア姫の勧めで、この役割で呼び出せる剣を増やすために、剣が封印されている場所へ向かった。

そこには住み着いてしまった魔物がいて、それを倒しながら進むことになったが、それも難なく済んだ。

魔物と魔族の間には強さに壁がある。

未だにあの日、王国を襲った魔族のようなやつには出会っていない。


(くそ……。)


思わず拳で、壁をかるく小突いてしまう。

もやもやした気持ちは晴れず、行き場のない感情が心の中に溜まっていく。

後から思えば、この時の俺は調子に乗っていたんだろう。

俺は。

勇者なのに、と。

だからこそ、その日城に伝令が走って来た時に、心のどこかで喜んでしまっていたのかもしれない。



◇◆◇◆◇◆



「伝令です!!」


そう言って一人の兵が城に駆け込んで来たのは、そんな日の午後だった。

少し前に考えていたことが事だけに、少しそわそわしてしまう。

もちろん、そんなことを考えているなんて誰にも知られるべきではないのだが。


「国に、魔族が潜んでいるのが発見されたそうです。」

「何!?」


その伝令の言葉に、思わず立ち上がる。

『魔族』。

その言葉に思ったより反応してしまう。


(あの時の借りを……。)

「場所は?」


急いで走り出してしまいそうな逸る気持ちを抑えて尋ねる。

こういう時こそ落ち着かなくてはならない。

俺はもう、あの時の俺じゃないんだ。


「はい、場所は……。」

「んにゃ!?」


兵が口にした場所を聞いて、最初に反応したのは近くにいたテト姫だった。

遅れて俺、ナルメア姫、間も気がつく。

その場所。

つい最近聞いたことのある、その場所は。

信志が店を開いた・・・・・・・・、その場所ではなかったか。


「くそ!!」


言って、俺は走り出す。

椿信志。

俺や間と一緒に召喚されたやつで、付き合いはまだ短いが、友人だと俺は思っている。

そんなやつが。


(どうして。どうして、あいつばっかりそんな目に……!)


走り出してから気付く。

俺は、信志のことを心配しているのか?

それとも……?

わからない。

わからないが、今はそれどころじゃない。

後ろから間達がついて来ているのを感じながら、俺は出せる限りの速度で走った。



◇◆◇◆◇◆



城から件の店まではそれほど離れていない。

早々にたどり着いた俺は、すぐさまドアを押し開けた。

魔族がいたって知ったこっちゃない。

開けた先にいたのは果たして……。


「あれ、正輝くん?どうしたの?」


そんな普段と何も変わらない信志の姿だった。


「あ、ああ……。いや、少し悪い噂を聞いたからな……。」

「ふーん……。」


そのあまりの普段っぷりに驚きながらも、店の中をぐるりと見渡す。

特に何かが壊れていたり、争ったりした後はない。


「なぁ、信志。さっき城に『ここで魔族を見た』って話が来たんだが、何か知らないか?」


店の様子を確認しながら、信志に尋ねる。

その答えは、信志の口からではなく、店の奥から現れた。


「っ!誰だ!!」


バッとその方向を振り向く。

そこにいたのは見覚えのない少女。

ここにいるのは信志とアイリス姫、それから子供のメイドが一人だけだったはずだが

いや、少女なのか……?

赤い髪の女の子に見えるが、気配は普通の人のそれではない。

まさか!


「わー、待った待った!!」


俺がその子に剣を向けようとすると、信志が割り込んで来た。


「この子はロットって言って。……えーと、うん。その通り、『魔族』だよ。」

こんばんは、Whoです。


久々の正輝くん視点。

勇者として召喚されたのにほとんどイベント起きなかったら退屈だよねって。

もうちょっと絡めたいところだけど、ごめんよ、この話のメインは信志なんだ……。

活躍の場はもう少し先です。


ではでは。

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