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花屋は商魂たくましい  作者: Who
開店編
75/159

side 信志

その日は、朝からずっと雨が降っていた。

そのせいか来るお客さんもおらず、店のある通り全体がひっそりとしていた。

聞こえて来るのは雨の音と、たまに通り過ぎる馬車が鳴らす車輪の音ぐらい。


「こんな天気だと、お客さんも来ませんね……。」

「ひまー。」


もともと毎日お客が来るような店ではなくても、できたばかりの最近はそれなりに繁盛していた。

そのせいもあってか、今日は余計に暇に感じる。

カウンターにいるセレスちゃんも、いまにも眠ってしまいそうに船を漕いでいた。


「うむむむむ……。」


そんな中、ロットだけが難しい顔をして、窓の外を眺めていた。


「どうしたの?なにか気になることでも?」

「あ……シンシさん。……いや、大したことじゃないっす。」

「ふーん……?」


言って立ち上がる。

大したことない、と本人が言うなら特に気にすることもない。

暖かい飲み物でもいれようと台所へ向かう。

そこでふと思い出した。

雨が降ったり風が強かったりで、妙に落ち着かなくなる日がある。


(もといた場所にも、そんな日を表す言葉があったな……。なんだっけ。)


『嵐の前の静けさ』。


その時は、その言葉を思い出すまでにはならなかったけど。

結果として、その日はきっとそうだったのだろう。

そんなことを翌日、思うことになってしまった。



◇◆◇◆◇◆



ガシャン!!


昨日とは打って変わって、晴れ渡った日。

物珍しさから来るお客さんは今日もそれなりにいた。

そんな、そこそこ賑わっている店内で、突然物が割れる音が響き渡った。


「だ、大丈夫ですか!?」


慌ててアイリスが駆け寄り、セレスちゃんと一緒に片付けを始める。

そこまではよかった。

でも。


「……………………。」


服に水が跳ねてしまっているのに、それを拭こうともせず。

アイリスが駆け寄って来ても、そのお客さんは呆然と立ったままだった。


「?あの、どうしました……?」

「どこかケガでもしたのか?」


さすがにおかしいと思ったのか、アイリスとセレスちゃんが声をかけるも、当然のように無視。

一点を見つめ続けている。

その視線の先は……ロット?


「あ、ああ、あ……。」


視線に気づいたロットがそのお客の方を振り向いた途端。

そのお客の顔に広がっていく表情は、『驚異』。


「な、なななんでそいつがこんなところにいるんだよぉ!!」


ビシッ、とロットを指差して叫ぶ。

もちろん、周りには他のお客もいて、その視線もロットに集まった。


「えーと、なんのことっすか?」

「し、しらばっくれるな!お、俺は夜にそいつが家から家へ飛び移ってるのを見たんだ!!」


続いた男の言葉に、店の中の人も一斉に喋り始める。

そういえばそんな窃盗犯がいるって話が。

あれって捕まったんじゃないの?

いやまだ捕まってなかったはず……。

ざわざわ、ざわざわ……。


それが一度落ち着いた時。

最初の男がもう一度口を開く。


「ま、魔族……。」


その一言が引き金だった。

言葉を聞いたお客は一斉に店の入り口へ殺到する。


押すな!やめろ!ガシャン!!おい俺が先だ!!

逃げろ!!パリ!王女様に知らせるんだ!!急げ!!

助けておくれ!!バサッ!!嫌だ!死にたくない!!!


いくつもの足音が、店から遠ざかっていく。

店と、ついでに店の前の通りからも、音がなくなった。

後に残ったのは、店にいるアイリスとボク、セレスちゃんと、俯いたロット。

それから倒され、踏まれていったたくさんの花だった。

こんばんは、Whoです。


夜とはいえ、盗みなんてしてたら誰かが見てるよねって。

ついでに言えば、戦争している相手が目の前にいれば怖がるよねって話。


まだこの店の人しか、ロットの話を知らない。


ではでは。

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